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数字で見る衆院選:ほんの数十票差で選挙結果は変わる

先月行われた衆議院議員総選挙に関連し、いつものわかり辛い選挙資料を総務省が公表してきました。これを受け、早速ですがこの資料を入手し、とくに小選挙区における状況を計算したのですが、興味深いことに、北海道10区では21票差で中道改革連合候補が勝つなど、僅差の選挙区がいくつも発見されました。また、中道改革連合の現代表でもある小川淳也氏も、自民党の平井卓也氏に829票差まで迫られていたのです。

自民圧勝・中道改革連合惨敗

先月の衆院選では、自民党は315議席(※)という未曽有の議席を獲得して圧勝。立憲民主党と公明党が事実上合流して誕生した中道改革連合は49議席に留まる惨敗を喫しました。

(※正確には、自民党の獲得議席は追加公認された福井2区の斉木武志氏を含めると316議席、さらに無所属で当選した世耕弘成氏まで含めれば317議席ですが、本稿では総務省資料をベースに議論するため、あくまでも選挙時点をベースに「自民=315議席」、としています。)

これについては公示前と新勢力を比べておくと、自民党の「独り勝ち」であることがわかります(図表1)。

図表1 公示前勢力と新勢力
会派 公示前 新勢力 増減
自民 198 315 +117
維新 34 36 +2
与党合計 232 352 +120
中道 172 49 ▲123
旧立民 148 21 ▲127
旧公明 24 28 +4
国民 27 28 +1
参政 2 15 +13
未来 0 11 +11
共産 8 4 ▲4
れ新 8 1 ▲7
減ゆ 5 1 ▲4
保守 1 0 ▲1
社民 0 0 ±0
無所属 10 5 ▲5
合計 465 465 ±0

(【出所】「公示前」は報道等、「新勢力」は総務省資料。ただし、中道改革連合の「旧公明」「旧立民」は当選者の氏名等で判断している。「公示前勢力」には選挙直前に離党した人を含めるか含めないかなどの考え方が異なり得るため、上記数値は一部報道や『ウィキペディア』などの記載と異なっている可能性がある)

選挙情勢を確認する

公示前勢力の考え方

なお、ちょっとだけ注記です。

『ウィキペディア』の『第51回衆議院議員総選挙』では、中道改革連合の公示前議席数は167議席であり、上記図表1の数値はこれと異なっていますが、これは結論からいえば、どちらも間違いとは言えません。

「公示前勢力」は考え方にもよりますが、一般には衆院解散直前の時点での議席数を指します。

たとえば当ウェブサイト側では立憲民主党の公示前勢力を148議席としていますが(同様の考えのメディアもあります)、このうち2人が引退し、2人が離党したため、立憲民主党の公示前勢力は148議席ではなく144議席だった、という考え方があります(一部メディアはその立場を取っています)。

また、公明党も公示前勢力は24議席としていますが、3人が引退したため、公明党も本当の意味の公示前勢力は21議席で、これと立憲民主党の144議席、無所属から合流した2議席をあわせが167議席が中道改革連合の公示前勢力、とみなす考え方もあるのです。

おそらくウィキペディアの執筆者の立場は、こちらの「公示前議席数=解散時点ではなく公示直前時点の議席数」、という考え方に近いのでしょう(こうしたあいまいさが残ること自体、当ウェブサイトでウィキペディアを極力引用しない理由でもあります)。

小選挙区で圧勝した自民党

ただ、本稿では選挙分析が中心であるため、中道改革連合の公示前議席が167議席であろうが、172議席であろうが、あまり関係ありません。ここで重要なのが、小選挙区と比例代表の獲得議席の内訳とその割合です(図表2)。

図表2 獲得議席の内訳(2026年衆院選)
党派 小選挙区 比例代表 合計議席
自民 248議席(85.81%) 67議席(38.07%) 315議席(67.74%)
中道 7議席(2.42%) 42議席(23.86%) 49議席(10.54%)
維新 20議席(6.92%) 16議席(9.09%) 36議席(7.74%)
国民 8議席(2.77%) 20議席(11.36%) 28議席(6.02%)
参政 0議席(-) 15議席(8.52%) 15議席(3.23%)
未来 0議席(-) 11議席(6.25%) 11議席(2.37%)
無所 5議席(1.73%) 0議席(-) 5議席(1.08%)
共産 0議席(-) 4議席(2.27%) 4議席(0.86%)
れ新 0議席(-) 1議席(0.57%) 1議席(0.22%)
減ゆ 1議席(0.35%) 0議席(-) 1議席(0.22%)
合計 289議席(100.00%) 176議席(100.00%) 465議席(100.00%)

(【出所】総務省『衆議院議員総選挙・最高裁判所裁判官国民審査 速報結果』資料をもとに作成)

先ほど「自民党は単独で3分の2を超える315議席を獲得した」という話を取り上げましたが、内訳で見ると小選挙区が圧倒的に強く、なんと248議席と、小選挙区の定数(289議席)全体の85.81%(!)という圧倒的な占有率を誇っているのです。

小選挙区は小政党に不利な仕組み

これに対し、他党は小選挙区では手も足も出ないかのごとき状況です。

大阪府下などを中心に存在感を放っている日本維新の会が小選挙区で20議席を確保したのと、「手取りを増やす」などの公約で注目を集めていた国民民主党が8議席を確保したのが印象的ですが、それ以上に強烈なのは、最大野党であるはずの中道改革連合が7議席しか取れなかったことでしょう。

つまり小選挙区に限定すれば、比較第2党は日本維新の会、最大野党は国民民主党であって、中道改革連合は「最大野党」でないだけでなく、「比較第2党」ですらないのです。

また、自民、維新、国民、中道改革連合の4政党以外で小選挙区に議席を確保したのは無所属の5人と「減税・ゆうこく」の1人に過ぎず、このことから大政党以外の政党が小選挙区で議席を確保することがいかに難しいかがわかるのではないでしょうか。

なお、自民党は小選挙区で85.8%もの議席をかっさらったのに対し、比例代表では67議席しか獲得できませんでした。これは比例の定数176議席に対し38.07%に過ぎず、決して少なくはないものの、やはり小選挙区での勝ち方と比べてあまりにも少ないです。

ただ、これについては自民党の「候補者不足」の問題があります。自民党は小選挙区で勝ちすぎて、比例重複立候補していた候補が小選挙区側で議席を確保する事例が相次いだためか、最終的に比例代表で候補者が不足し、14議席を他党に譲ったのです(うち6議席が中道改革連合に行きました)。

このため、「実力ベース」では、自民党は比例で67議席ではなく81議席であり、合計すれば329議席を獲得していたはずだ、ということでもありますが、そうだったとしても比例の議席占有率は46.02%(=81議席÷176議席)であり、やはり小選挙区の占有率と比べれば大きな差異が生じています。

前回衆院選では自民党は苦戦した

いずれにせよ、小選挙区において、「最大政党が圧倒的な議席をかっさらう」という傾向があることは間違いありませんが、もうひとつ注記をしておくと、いつ・いかなる場合でも、最大政党が小選挙区で圧勝できるわけでもない、という点には注意が必要でしょう。

その事例として確認しておきたいのが2024年衆院選です(図表3)。

図表3 獲得議席の内訳(2024年衆院選)
党派 小選挙区 比例代表 合計議席
自民 132議席(45.67%) 59議席(33.52%) 191議席(41.08%)
立民 104議席(35.99%) 44議席(25.00%) 148議席(31.83%)
維新 23議席(7.96%) 15議席(8.52%) 38議席(8.17%)
国民 11議席(3.81%) 17議席(9.66%) 28議席(6.02%)
公明 4議席(1.38%) 20議席(11.36%) 24議席(5.16%)
無所 12議席(4.15%) 0議席(-) 12議席(2.58%)
れ新 0議席(-) 9議席(5.11%) 9議席(1.94%)
共産 1議席(0.35%) 7議席(3.98%) 8議席(1.72%)
参政 0議席(-) 3議席(1.70%) 3議席(0.65%)
保守 1議席(0.35%) 2議席(1.14%) 3議席(0.65%)
社民 1議席(0.35%) 0議席(-) 1議席(0.22%)
合計 289議席(100.00%) 176議席(100.00%) 465議席(100.00%)

(【出所】総務省『衆議院議員総選挙・最高裁判所裁判官国民審査 速報結果』資料をもとに作成)

こちらだと自民党は比較第1党ではあるものの、小選挙区の獲得議席は132議席と定数289議席中45.67%にとどまり、比較第2党かつ最大野党である立憲民主党は104議席、定数289議席に対し35.99%の議席を獲得したのです。

また、小選挙区では維新が23議席を確保したほか、国民も11議席を確保しており、さらには公明党が4議席、共産・保守・社民も各1議席を得ています(残り12議席は無所属)。

つまり、2024年時点では「石破自民」が盛大にズッコケたせいで、自民党は単独過半数を失い、小選挙区では自民、立民、維新、国民、公明、共産、保守、社民という、じつに8政党が小選挙区での議席獲得に至ったのです。

こう考えると、小選挙区を主体とした選挙制度では、ちょっとした「風」で選挙結果が大きく左右されることは間違いないといえます。

今回も接戦が多かった小選挙区

たった21票差で勝敗決した北海道10区

さて、こうした文脈も踏まえつつ、本稿でもうひとつ考えておきたいのが、ちょっとした風が吹けば、選挙結果がどう転ぶか、という論点です。

先日、総務省が『衆議院議員総選挙・最高裁判所裁判官国民審査 速報結果』のページでいつものわかりにくい資料を公表したのですが、これを受けて「いつもの計算」を行ってみました。

「いつもの計算」とは、その小選挙区で得票数が1位だった人(つまり当選者)と2位だった人を比べ、それが何票差だったのかを確認する、という作業です。今回の選挙について調べてみると、2位との得票差が際どかったケースがいくつかあったのですが、その典型例が北海道10区でしょう。

当選したのは中道改革連合の神谷裕氏で得票数は74,908票だったのですが、小選挙区で落選した自民党の渡辺孝一氏は74,887票を獲得しており(※比例復活)、両名の得票差は、なんとわずか21票差に過ぎませんでした。

「私がひとりくらい選挙に行かなくても選挙結果って大きく変わらないでしょ?」、などと軽く考えている人もいるかもしれませんが、北海道10区のケースだと、本当にそういう考えの人が20~30人、考えを変えて選挙に行くだけで、選挙結果がひっくり返っていた可能性があるのです。

また、北海道10区はかなり極端な事例に見えるかもしれませんが、ほんの少しの票差で当選の明暗が分かれたケースは他にもあります。

たとえば兵庫6区の場合、当選したのは自民党の大串正樹氏で得票数は58,410票でしたが、落選した日本維新の会の市村浩一郎氏は57,697票を獲得しており、両者の得票差は713票に迫っていたのです。

さらに香川1区は中道改革連合の小川淳也氏(選挙後に同党代表に選出)が73,237票で当選しましたが、自民党の平井卓也氏が72,408票で829票差に迫っていたのです。

ほんの数千票で選挙結果は動いた可能性も?

このように、得票差が少なかった選挙区について並べてみると、図表4のとおりです。

図表4 得票差5,000票未満の選挙区(2026年)
選挙区 第1位 第2位 得票差
北海道  第10区 中道改革連合(74,908票) 自由民主党(74,887票) 21票
大阪府  第19区 自由民主党(58,410票) 日本維新の会(57,697票) 713票
香川県  第1区 中道改革連合(73,237票) 自由民主党(72,408票) 829票
佐賀県  第1区 自由民主党(84,220票) 減税日本・ゆうこく連合(83,028票) 1,192票
秋田県  第3区 国民民主党(87,573票) 自由民主党(85,063票) 2,510票
茨城県  第6区 自由民主党(107,388票) (無所属)(104,844票) 2,544票
鹿児島県  第3区 中道改革連合(88,518票) 自由民主党(85,782票) 2,736票
茨城県  第1区 自由民主党(87,570票) (無所属)(84,703票) 2,867票
神奈川県  第9区 自由民主党(87,531票) 中道改革連合(84,024票) 3,507票
兵庫県  第1区 自由民主党(73,219票) 中道改革連合(69,111票) 4,108票
東京都  第27区 自由民主党(85,249票) 中道改革連合(80,997票) 4,252票
栃木県  第3区 (無所属)(58,483票) 自由民主党(53,975票) 4,508票

(【出所】総務省『衆議院議員総選挙・最高裁判所裁判官国民審査 速報結果』資料をもとに作成)

この12選挙区では自民党は7人でしたが、中道改革連合の候補者も3人含まれており、あとは国民民主と無所属が1人ずつでした。

各選挙であとほんの数千票から場合によってはほんの数十票、自民党に傾いていたとしたら、中道改革連合はさらに数議席を失っていた可能性がある、ということであり、また、逆にあと数千票、中道改革連合側に傾いていたら、中道改革連合は3~5議席、あるいはもっと多くの議席を得ていた可能性がある、ということです。

微妙な選挙区は前回と比べてかなり減った

もっとも、こうした「微妙な選挙区」は、前回、つまり2024年と比べてかなり減りました(図表5)。

図表5 得票差の状況
得票差 2026年 2024年 増減
1000票未満 3選挙区 9選挙区 -6選挙区
1000票以上5000票未満 9選挙区 26選挙区 -17選挙区
5000票以上1万票未満 15選挙区 26選挙区 -11選挙区
1万票以上2万票未満 30選挙区 60選挙区 -30選挙区
2万票以上 232選挙区 168選挙区 64選挙区

(【出所】総務省『衆議院議員総選挙・最高裁判所裁判官国民審査 速報結果』資料をもとに作成)

前回選挙のときは、得票差が1,000票未満だった選挙区は9つあり、5,000票未満の選挙区は26、1万票未満の選挙区も26あったのですが、これがグッと減った格好です。

ただ、いずれにせよほんの数千票、いや、数百票、数十票というレベルで当落の明暗がわかれるわけですから、やはり衆院選はなかなか読むのが困難でもあります。

参院選で自民単独過半数回復は考え辛い

また、今回の衆院選の結果だけをもとに、次回・2028年7月の参院選でも自民党が圧勝し、単独過半数を回復する、などと予想するには少し無理があります。そもそも参院は解散がなく、任期は6年で半数が3年ごとに改選されるという仕組みだからです。

現在、参院側では定数248議席のうち自民党は101議席しか保有しておらず、しかも61議席が改選を迎えるためです(図表6)。

図表6 参議院における勢力図(会派ベース)
会派 2028年改選 2031年改選 合計
自民 61議席 40議席 101議席
維新 12議席 7議席 19議席
(中道) (30議席) (31議席) (61議席)
公明 13議席 8議席 21議席
立民 17議席 23議席 40議席
国民 7議席 18議席 25議席
参政 1議席 14議席 15議席
みらい 0議席 2議席 2議席
共産 4議席 3議席 7議席
れ新 2議席 3議席 5議席
社民 1議席 1議席 2議席
保守 0議席 2議席 2議席
無所属 4議席 2議席 6議席
その他 1議席 1議席 2議席
合計 123議席 124議席 247議席

(【出所】参議院『会派別所属議員数一覧(令和8年2月10日現在)』。なお、「中道」は便宜上、「立民」と「公明」の数値を足したものを表示している)

248議席の過半数ラインは125議席ですので、自民党が2028年参院選で単独過半数を取りたければ、非改選の40議席を除いて85議席獲得する必要があり、これは改選議席数の7割近くに相当しますが、さすがに今回の衆院選なみの得票があったとしても、この議席には届かないと考えられます。

なにせ、参院選では124議席のうち、衆院の小選挙区と似た「一人区」は32議席しかなく、全国比例で50議席、中選挙区に42議席が割り当てられていて、小規模政党などに非常に有利な仕組みだからです。

ただし、時代はどんどんとネットの社会的影響力が増しており、あと2年も経てばネット人口がさらに増えると考えられますが、こうした社会的変化はおそらく左派政党には不利に働くでしょう。

このように考えていくと、2年後の選挙でどういう結果が出るかについては興味深いところだと思う次第です。

新宿会計士:

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  • 石破前政権の負の遺産。次回参議院選挙は、与党自民党にとってそう言い切ってもよいでしょう。次回参院選挙の改選対象は前々回当選議員が対象者。即ち石破前政権以前に当選された方々ですから、そもそも改選対象者の数が多いので改選後にそれを上回るのは難しい。その上で石破前政権下で当選した自民党議員数が少ないという状況は次々回参院選挙まで続く。
    大型選挙で三連敗しても退陣せず更に自民党内からの退陣要求にも驚異の鈍感力で徹底的に抗った石破前総裁。それを生み出した岸田前々総裁。それを後押しした風見鶏自民党議員。この連中の事は忘れる事は出来ません。