「韓国観察者」の鈴置高史氏によると、ついに韓国はみずから三権分立を壊し始めたようです。ただ、鈴置氏のすごいところは、その意味を見抜いたところだけではありません。「日本人もよほど気を引き締めて国の舵取りをしないと、国家百年の計を誤る」と警告を発した点でしょう、納得です。おりしも台湾が韓国を「南韓」呼びし始めるという話題が出て来たなかで、改めて基本的価値の共有という観点の重要性を意識する必要がありそうです。
目次
日中関係と台湾
中国の対日「制裁(?)」と先月の衆院選
高市早苗総理大臣が昨年11月に衆院予算委員会で「台湾有事は日本にとっての(集団的自衛権発動要件のひとつである)『存立危機事態』に該当し得る」と答弁したことを受け、中国の日本に対する圧力が高まっているといわれます。
ただ、中国側が日本に対して講じて来た「制裁(?)措置」については、正直なところ、それらはどれも制裁としての実効性を欠いているのが実情です。
たとえば中国政府高官らがXなどSNSを通じて日本政府や日本国民に対して脅迫めいたことを行っていますが、これについてはほぼまったく日本の世論を動かすのには影響していないと断じて良いでしょう。
実際、先月行われた衆議院議員総選挙で高市早苗総理大臣率いる自民党が歴史的な圧勝を記録したことを見るに、少なくとも中国政府の日本国民に対する世論工作は完全な失敗に終わったと考えて差し支えありません。選挙は「最も正確な世論調査」だからです。
それどころか、立憲民主党と公明党が合体して出来上がった中道改革連合は、選挙後も辛うじて最大野党の地位には留まっているものの、獲得議席数は49議席(立民21+公明28)と、選挙前の172議席から3分の1以下になってしまいました。
おそらくは、これが全てなのでしょう。
もちろん、普段から当ウェブサイトにおいて報告している通り、「高市圧勝」が日本にとって良いことなのかどうかについてはまったくの別問題であり、とりわけ重すぎる税・社会保険料負担の是正を含め、高市総理が本気で経済立て直しに踏み切れるかどうかは未知数です。
(※というより、ざっくばらんに申し上げれば、あまり期待していませんが、本件に関していえばまた「別のアプローチ」で政権に働きかけることを個人的には検討している次第です。それが何なのかについては、本稿では言及しませんが…。)
なぜ中国は台湾に拘るのか
さて、この「中国による日本への制裁(?)措置」に関しては、ほかにもいくつか議論したい論点はあるのですが(とくにレアアースに関していくつかツッコミどころのある話題なども発見しています)、それらについてはとりあえず機会を見ながら(できれば近日中に)別稿にて議論したいと思います。
本稿で取り上げておきたいのが、近隣諸国の動向です。
やはり、高市総理の「台湾発言」に対する中国の反応は、もはや異常と言っても良さそうです。まるで、「中国としては自国の国益を多少損ねることになったとしても、なんとしても高市(総理)に発言を撤回させること」が自己目的化しているフシもあるからです。
なぜ中国が台湾併呑に拘るのかを巡っては、すでにいくつかのメディアが取り上げており、個人的には『絶対折れない日本との「勝てぬ戦い」に身を投じる中国』でも取り上げた次の記事あたりが参考になると考えています。
なぜ日本だけが「目の敵」にされるのか 習近平政権が台湾問題で絶対に譲らない理由
―――2026/03/13 11:53付 Yahoo!ニュースより【WEB Voice配信】
これは、『ウェブボイス』というサイトが13日付で配信した早稲田大学の岡本隆司教授とジャーナリストの野嶋剛氏の対談記事で、『Voice』2026年2月号に掲載された内容を一部抜粋・編集したものだそうです。
記事ではたとえば野嶋氏がこんな趣旨の内容を指摘。
- 中国の歴史観や世界観からすれば、日本が台湾と接近して仲良くすること自体が生理的にも理念的にも許せない
- 中国共産党にとって、台湾統一とは理屈ではなく、結党以来の夢であり、ドグマであり、成し遂げなければいけない命題である
- 先の大戦で「罪」を犯した日本が台湾問題に首をつっこむのは、モラルとして「レッドライン」を越えたという判断になる
冷静さを欠く中国の対応
この野嶋氏の説明を補うかのように、岡本氏もこんな趣旨のことを述べます。
- 戦後の中国知識人が抱き続けてきた「一つの中国」を明確に脅かす相手がいると認識すれば、彼らからすれば強硬な手段で対抗するのは当然
- しかも中国は、いまや軍事的にも経済的にも大国であるため、日本に対してまさに公然とハラスメントを繰り返している
- また厄介なのは、いまの中国では官僚や軍の高官が習近平の顔色を窺い、忖度する体制が構築されている点である
…。
すなわち、中国としては台湾併合を巡って、いわばメンツの戦いに突入している可能性があるのです。
この点、日本側では「(対中強硬姿勢を取る)高市内閣に圧倒的な政治パワーを与えた」という有権者の判断が下っているのに加え、日本のマスコミには世論を動かす力はもう残っていないわけですから、中国が日本にいくら対抗措置を講じたとしても、それで日本を動かすことなどできっこありません。
冷静に考えたら、日中両国の産業が「水平統合」関係にある以上、ここで日本を敵に回すという中国の判断が正しいとは思えませんが、それは「産業論から冷静に考えたらそういう結論になる」というだけの話であり、現在の中国政府が冷静さを保持していないという可能性を考慮に入れていない考察なのです。
いずれにせよ、(偶然かどうかはわかりませんが)中国が常軌を逸した動きを取ろうとするなかで、少なくとも現時点において日本の舵取りを担っているのが(石破茂・前首相や野党の党首らではなく)高市早苗総理大臣であるという事実が日本にとっては僥倖となる可能性があります。
台韓関係の悪化と「南韓」呼び
さて、こうしたなかでちょっとしたネタとして、「南韓(なんかん)」という話題を取り上げておきましょう。
台湾、韓国電子入国申告書上の不当表記に対抗 期限内に未訂正なら相応の措置へ
―――2026/03/18 16:39付 中央通訊日本語版より
台湾メディア『中央通訊』(日本語版)の報道によると、韓国がオンライン電子入国申告システムで台湾を “CHINA (TAIWAN)” と表記している件で、外交部(外務省に相当)が18日、韓国に関する表記に「相応の措置」を講じると韓国側に警告。
外交部はさらに、台湾はすでに対抗措置として、今月1日から、台湾に居住する外国人に発行する身分証明書「外僑居留証」(ARC)で、当初は「韓国」としていた箇所の表記を「南韓」に変更した、などと明らかにしたのだそうです。
この「南韓」という表記は、日本ではあまり見られませんが、中華圏では香港などでときどき見かけるものです(ついでにいえば、北朝鮮は韓国を「南朝鮮」と呼んでいるほか、米国など英語圏では “South Korea” 、仏語圏では “Corée du Sud” 、独語圏では “Südkorea” のような表記が一般に見られます)。
ただ、中央通訊の記事から判断するに、これまでは少なくとも政府レベルでは台湾は韓国に配慮して「韓國」などの表記を採用していたところ、これを段階的に「南韓」に切り替えていく、ということなのでしょう。
私たち日本人にとっても、「韓国人が『南韓』、『南朝鮮』などの呼称を嫌がるならば、そのような呼称は避けよう」、という配慮が働きますが(これも外交上の儀礼でしょう)、こうした呼称で「相手が嫌がることをやる」というのは、関係悪化の重要な第一歩です。
もともと台韓間に公式の外交関係はないにせよ、台韓関係がさらに悪化していけば、地域の安定にも微妙な影響を与えるかもしれません。
価値と利益の外交関係
日本は台韓関係悪化でどう動くのか
さて、こうしたなか、ちょっとだけ頭の体操をしてみたいのですが、もしも台韓両国の関係がさらに悪化し、対立が激化した場合、日本としては、いったいどうすれば良いでしょうか。
模範解答をいえば、台韓両国に対し冷静になるように呼び掛ける、といったところです。
幸いにして現在の日本政府は台韓両国間と(少なくとも現時点においては)感情的対決の新たな火種を抱え込んでいません(※竹島不法占拠問題、自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題などの従前からのものを除けば、ですが)。
したがって、日本は比較的中立の立場から、台韓両国に関係改善を呼びかけ得るのです。
ただ、ここでもうひとつ忘れてはならないのは、日本は台韓両国と等距離ではない、という点でしょう。
参考になるのが『外交青書2025』のこんな記載です。
- 「台湾は、日本にとって、自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった基本的価値や原則を共有し、緊密な経済関係と人的往来を有する極めて重要なパートナーであり、大切な友人である」(P46)。
- 「韓国は、国際社会における様々な課題への対応にパートナーとして協力していくべき重要な隣国である」(P56)。
日本は安倍総理の時代に韓国を「価値共有」から外した
これは、なかなかに興味深い現象です。
日本から見て台湾は(公式には)「国」ではなく、あくまでも「地域」であり、国家間としての正式な外交関係はありませんが、その台湾を日本政府は「基本的価値を共有し」、経済関係と人的往来などの観点からも「極めて重要なパートナー」かつ「大切な友人」と位置付けています。
これに対し韓国は公式な国交があり、もちろん国家承認もしているのですが(対照的に日本は北朝鮮を国家承認していません)、肝心の「基本的価値の共有」や「戦略的利益の共有」などの最上位の文言は、韓国に関しては見当たりません。
著者自身の記憶ベースですが、外交青書上、韓国についての「基本的価値と戦略的利益の共有」という表現は、故・安倍晋三総理大臣が再登板した直後あたりまでは存在していたのですが、朴槿恵(ぼく・きんけい)大統領(=当時)の時代の日韓関係悪化により、こうした表現が消えてしまいました。
当時の韓国といえば、たとえば2015年ごろに安倍総理の米上下両院議会演説を全力で妨害しようとしたり、安倍総理の演説に韓国国会が全会一致で糾弾決議案を採択したり、はたまた明治期の産業革命遺産のユネスコ世界遺産登録を妨害しようとしたり、と、無法の限りを尽くしました。
また、日韓間の関係冷え込みなどもあってか、日韓為替スワップは2013年7月に、日韓通貨スワップは2015年2月に、それぞれ消滅しています(ただし、日韓通貨スワップについてはその後、岸田文雄首相乃時代の2024年12月に復活しています)。
こうした日韓間の関係悪化(正確にいえば「日韓関係の信頼を損ねる韓国の特殊な行動の数々」)について書き出していけばキリがないのですが、ここで重要な事実は、少なくとも日本が台湾を「価値を共有する友人」と位置付けている反面、韓国について、「価値と利益を共有する相手国」とみなしていないことでしょう。
鈴置論考では「韓国の民主主義崩壊」を解説
ではこの「韓国は日本と価値を共有していない」という点について、違和感はあるのでしょうか。
結論からいえば、個人的にこの日本政府の評価に違和感はありません。妥当だと思います。
それはいったいなぜなのか―――。
それを考察するうえで、偶然でしょうか、「台湾による『南韓』事件」と同じ18日のタイミングで、こんな記事が出てきました。
有罪判決を逃れようと裁判所を支配下に置いた李在明 韓国の民主主義は「司法改革3法」で完全に壊れた
韓国の左派が、「誤った判決」を下した裁判官に刑事罰を科す「法歪曲罪」などを制定した。李在明(イ・ジェミョン)大統領に対する有罪判決を阻止するため、司法支配に乗り出したのだ。韓国観察者の鈴置高史氏は「隣の国の民主主義は崩壊に向かう」と警告する。<<…続きを読む>>
―――2026/03/18付 デイリー新潮『鈴置高史 半島を読む』より
記事を執筆したのは、自らを「韓国観察者」と称している鈴置高史氏です。
「韓国観察者」、とカギカッコ付きで表現している理由は簡単で、鈴置論考は韓国観察論としても秀逸ではあるものの、裏読みしたら韓国という鏡に映り込んでいる私たちの国・日本について、深く論じていたりするからです。
そして、今回の論考のタイトルには、「韓国の民主主義」が「完全に壊れた」、とあります。
「『韓国における民主主義の終了』とは、何を大げさな」。
そう思った方もいるかもしれませんが、残念ながらこのタイトルは誇張ではありません。
どういうことかといえば、韓国の国会で多数を占める左派政党「ともに民主党」が、李在明(リー・ツァイミン、り・ざいめい)韓国大統領に対する有罪判決を防ぐため、2月26日から28日にかけ、相次いで「司法改革3法」を可決した、というのです。
なぜこれで三権分立が壊れるのか
これについて、鈴置氏はこう説明します。
- ①法歪曲罪=「法を歪曲して適用した」裁判官や警察官らを10年以下の懲役または10年以下の資格停止処分を科す
- ②憲法裁判所改正法=最高裁判所(大法院)の判決が不服なら憲法裁判所に審査を請求できる制度を導入する
- ③裁判所組織改正法=大法院の裁判官を増員する
…。
これのいったい何が問題なのでしょうか。
鈴置氏によると李在明氏は公選法違反など5つの刑事裁判で被告となっており、これらの刑事訴訟は現在、李在明氏自身の大統領就任により裁判が止まっているものの、仮に有罪が確定すれば2025年6月の大統領選への「出馬資格に疑いがつき、当選が無効となりかねない」状況にあります。
そこで、(明確な定義のない)「法歪曲罪」なるものを導入し、あわせて最高裁(大法院)の最終審をさらに憲法裁に上訴できることとし(=事実上の四審制)、さらには保守の尹錫悦(いん・しゃくえつ、イン・シーユエ)前大統領が任命した裁判官の影響力を判事増員で薄める、といった狙いがあるのだとか。
論考では鈴置氏のいつもの「深く掘り下げる」スタイルがバリバリ全開で展開されていくのですが、このあたりは当ウェブサイトごときが逐一言及するのもおこがましいところですので、是非とも原文で直接ご確認ください。
「韓国では遡及立法はあまり問題になりません」、「韓国人は法律を尊重しません」、といった、なかなかに破壊力満点な文言がちりばめられていて、魅力的です。
いずれにせよ、この3法は、まさに「三権分立の崩壊」、というか韓国が自らの手で三権分立を突き崩した、ということでもあります。
鈴置氏からのメッセージ
ただ、個人的に注目したいのが、論考の末尾にある、こんな趣旨の記述です。
- 韓国はすでに、国家の危機でもないのに非常戒厳令が宣布される国になってしまった。民主主義が壊れていくと、韓国はさらに不安定な国になる
- それに今、韓国は米国との同盟を堅持するのか、破棄して自主防衛に走るのか、外交的な岐路に立っており、この選択が左右対立を招き、内政混乱に拍車をかけるのは間違いない
- 「おかしくなった」のは韓国だけでなく、人民解放軍最高幹部がほとんど粛清され、台湾併合を虎視眈々と狙う習近平政権も同様であるし、北朝鮮も核武装に邁進している
この異常事態にあって、私たち日本人が心して読まねばならないのは、この一文ではないでしょうか。
「東北アジアの明日は予測が付きません。日本人もよほど気を引き締めて国の舵取りをしないと、国家百年の計を誤ります」。
これ、鈴置氏がこの文章を記事末尾に置いた意図を想像すると、やはり強いメッセージであるように思えてなりません。「国家百年の計」とありますが、これは本当に大げさではなく、まさに日本にとっても現在が岐路そのものだからです。
まさに納得の論考といえるでしょう。
ただし、くどいようですが、高市早苗総理大臣がこの難局を乗り切るうえでの適任者なのかどうかは、現状ではまだ把握しきれません。
しかし、少なくとも石破茂・前首相の時代に衆参両院で相次いで自民党が惨敗したこと、高市総理にバトンタッチしてから3ヵ月目に電撃的に衆院解散して自民党が圧勝したことを踏まえると、石破前首相にノーを突き付けた有権者が高市総理は是認したという意味で間違いありません。
なにより、(選挙制度の特徴もありますが)左派政党が完膚なきまでに惨敗したことも含め、少なくとも日本の有権者の総意はすでに示されていると考えられます。
ただし、強い国づくりには強い経済が必要ですし、志を同じくする主要国との強力な連携も必要です。
高市総理が有権者の負託にこたえられるか、まずは見極めるのが先かもしれない、などと思う次第です。
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>日本は台韓両国と等距離ではない
新しい基線になる予感がします。
新聞 TV 出版界に寄生する特亜勢力が騒ぐはずだからです。
騒げば騒ぐほどに「彼らにとって逆効果」になるのですが、そうは考えて行動しない。それがポイントです。鈴置さんは未来予知感度が高いですね。忘れたつもり、なかったふり。日本人はもっともっと台湾島を勉強しないといけないのです。
鈴置氏論考「なぜ韓国人は法律を尊重しないのか? それは儒教国家だから」
日本にも儒教は伝わり礼儀、道徳に根付いていますが、国民の意思により制定された法律を厳格に遵守する法治国家です。かの国は見栄法治国家で権力者の都合で三権分立までないがしろにするお国柄。
「こうはなりたくない」ですね。
ところで本題ではないのですが、新宿会計士様が「李在明(リー・ツァイミン、り・ざいめい)」と表記した意図が気になります。
韓国語読みを併記しないのはここは日本なのだから日本語読みの、り・ざいめいと読むべきなのは理解できます。今回リー・ツァイミンの中国語読みを日本語読みより優先して併記した意図は何なのか。
以前の記事でも見かけた表記である記憶があります。著者意図が既に解説されていましたらどなたかご教授頂きたく。
それは、もう、言わぬが花というもの。という暗黙の合意があったと。
ですよねー。野暮な質問にお答え頂きありがとうございました。
「南韓」の次に出てくる更に嫌がる呼称はあるのでしょうか。「李氏朝鮮」とか?
「下朝鮮」なぞいかがでしょうか?ただし、「下」の読み方は各々方の自由ですm(__)m
法歪曲罪は罪刑法定主義を否定するから、法歪曲罪を適用するとそれ自体が法歪曲罪であるので、、、
うーん
*国禍非役捻之刑(こっかひやくねんのK)
すべては『法恥(ほうち)』の名の下に・・。