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たった2議席差で予算空白の恐れ…これも政治的コスト

自民党や高市早苗政権には良い政策もあれば悪い政策もありますが、それ以上に「官僚-メディア-特定野党」という「トライアングル構造」は大きな問題です。こうしたなか、今年度予算案が「2議席差」で空白となってしまう可能性が残るなかではありますが、これも日本の自由・民主主義を健全な姿にしていくための必要な政治的コストなのかもしれない、などと思う次第です。

令和8年度予算は衆院を可決したが…

令和8年度予算案が先週、衆議院で可決され、今週からはさっそく、参議院側での審議が始まりました。報道等によれば、高市早苗総理大臣ら政府・与党としては、なんとか年度内、すなわち3月31日までに予算成立に漕ぎ着けたい考えなのだとか。

ただ、ここでポイントがあるとしたら、高市早苗総理大臣が率いる自民党は、参議院側では過半数を制していない、という事実です。

国会における勢力図を改めて確認しておきましょう(図表)。

図表 国会における勢力図
会派 衆院 参院 合計
自民 316議席 101議席 417議席
維新 36議席 19議席 55議席
与党合計 352議席 120議席 472議席
中道 49議席 49議席
立民 40議席 40議席
公明 21議席 21議席
国民 28議席 25議席 53議席
参政 15議席 15議席 30議席
みらい 11議席 2議席 13議席
共産 4議席 7議席 11議席
れ新 1議席 5議席 6議席
社民 2議席 2議席
保守 2議席 2議席
沖縄 2議席 2議席
減ゆ 1議席 1議席
無所属 4議席 6議席 10議席
欠員 1議席 1議席
合計 465議席 248議席 713議席

(【出所】衆院は『会派名及び会派別所属議員数(令和8年2月18日現在)』、参院は『会派別所属議員数一覧(令和8年3月15日現在)』をもとに作成。正確な会派名は衆参で異なる場合がある。また、細かい勢力については報道や『ウィキペディア』などの数値とは異なる可能性がある)

自民党は参院側で過半数を持たない

これでわかるとおり、自民党は衆院側では定数(465議席)の過半数ライン(233議席)どころか、3分の2ライン(310議席)をさらに上回る316議席という勢力を誇っています(追加公認等を含み、議長を含まず)。

したがって、衆議院側では自民党「だけ」ですべての法案を推し進めていくことができるわけですが、参院側ではそういうわけにはいきません。参院側の定数(248議席)に対する過半数ラインは125議席ですが、自民党は101議席しか保有しておらず、過半数にはなお24議席足りないのです。

しかも、高市総理就任に際し、自民党と連立を組んだ日本維新の会が19議席を保有していること、無所属の6議員のなかに自民党に賛同してくれる可能性がある議員が2人(※)いることを踏まえたとしても、「自民+維新+無所属2人」で122議席です。過半数には3議席足りません。

※この「2人」とは、「NHKから国民を守る党」に所属していた齊藤健一郎氏と、世耕弘成・衆議院議員とも近いことで知られる元自民党の望月良男氏です。

また、厳密にいえば参院側では欠員が1議席あるため、過半数ラインは125議席ではなく124議席で済む、という発想もありますが、それでもなお2議席足りません。

「たった2議席」が確保できない可能性も!

ではこの2議席、どう手当てすれば良いのでしょうか。

結局のところはどこかの政党、または追加で2人以上の無所属議員の協力を仰がないと、3月31日までの予算案成立は非現実的です。

この「どこかの政党」の候補は、現実的には25議席を保有している国民民主党(会派名は「国民民主党・新緑風会」)か、15議席を保有している参政党、2議席を保有している日本保守党、あるいは同じく2議席を保有しているチームみらい(会派名は「チームみらい・無所属の会」)などが考えられます。

ただ、これらのうちの参政党とチームみらいは13日、衆院側で中道改革連合、日本共産党の2党とともに坂本哲志予算委員長(自民党)の解任決議案を提出するなど、自民党に対する「ファイティングポーズ」のようなものも見えてきます。

また、昨年、自民・維新両党と政策合意を取り交わしたはずの国民民主党も、予算案の13日衆院通過を巡って自民党とひと悶着ありました。国民民主党は13日の予算案衆院通過に反対しており、(なぜか)16日(月)ならば賛成する、といったスタンスだったからです。

ちょっとした空白を許容すれば予算自体は成立する

すなわち、高市内閣から見れば、連携できる可能性があったはずの野党のうち、国民、参政、みらいの各政党とはすでにトラブルが発生してしまっており、その意味でもここからの連携ができるのかどうかについては楽観視できません。

もし国民、参政、みらいの3党が協力してくれなかった場合、考えられるとしたら、所属議員2人の日本保守党か、無所属の6人のうち、議長、副議長、先ほど挙げた2人(齊藤健一郎、望月良男の各氏)を除く2人(永江孝子氏と平山佐知子氏)を味方に引き入れることくらいでしょうか。

いずれにせよ、もしも自維両党が「2議席」のために「年度内予算案可決」に失敗する可能性はそれなりに高いのではないか、と個人的には推察しています。

この点、実際のところ、憲法の規定では衆議院側の議決だけで予算は成立します。

ただ、問題は衆院側を可決したのが3月13日である、という点です。関連する条文を調べてみると、憲法第60条第2項には、こうあります。

日本国憲法第60条第2項

予算について、参議院で衆議院と異なつた議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて三十日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。

今回のケースでいえば衆院側が可決した予算を受け取ってから30日以内(予算を受け取った日を3月13日とすれば4月11日まで)に参議院で予算の議決が行われなかった場合は、衆院で可決された予算案が令和8年度予算となりますが、その場合も年度を越えてしまいます。

過去の実例を見ると、年度内に予算が成立しなかった場合は、暫定予算が組まれてきました。今回についても(「参議院が衆議院の可決した予算を受け取った日」を3月13日だったとすれば)4月1日から10日までの暫定予算が必要となります。

「予算委の審議時間が足りない」、本当!?

もっとも、高市総理としてみれば、逆にいえば暫定予算を組んでしまうつもりであれば、今回の事態を何とか乗り切れる、という意味でもあります。

一部の報道記事などによれば、「高市総理界隈では暫定予算の『ざ』の字を口にすることさえタブーになっている」、などと記載されている例もあるようですが(その記事を書いた人は誰にそれを確認したのでしょうか?)、正直、短期間の予算空白であれば、暫定予算で乗り切るというのはあり得る話ではないかと思います。

また、短期的な衆院解散が考え辛いなかで、今回のような「予算案の年度内成立」が問題となるケースは、今後2~3年は発生しない可能性が高いです。

その理由はもちろん、先ほど挙げた憲法第60条第2項の規定です。

来年度以降、高市内閣は「参院側が予算案を受け取ってから30日」という期間を踏まえ、おそらくは参院側が予算案を可決しなくても年度内に自然成立するよう、余裕をもって予算案を可決するのではないかと思います。

それに、一部メディアや一部野党がしきりに強調する「審議時間が足りない」などの言い分も、怪しいところです。

口を開けばサナエトークン。

口を開けばカタログギフト。

口を開けば旧統一教会解散。

口を開けば閣僚WBC観戦。

口を開けば無断トイレ休憩。

これらのどこが予算案と関係する審議なのでしょうか。。

さらにいえば、審議時間が足りないとおっしゃるならば、土曜日にも質疑を行えばよいではないか―――。

参院側ではさっそく旧統一問題追及

そういう発想を持つ人は中央政界にもいるらしく、西村康稔衆議院議員も15日、自身のXにこんな内容をポストしています。

このあたりは正論でしょう。

そして、実際に参議院側でも昨日から予算案の審議が始まっているのですが、やはりこんな話題が出てきました。

蓮舫氏が高市首相追及 旧統一教会内部文書32回登場触れ「自民党は2度と関係持たぬと明言を」

―――2026/03/16 13:10付 Yahoo!ニュースより【日刊スポーツ配信】

記事タイトルにある「蓮舫氏」とは、立憲民主党の齊藤蓮舫参議院議員のことだと思われます。

日刊スポーツによると、(齊藤)蓮舫議員は16日、予算委員会で旧統一教会の内部文書に高市総理の名前が32回登場することなどを質問で取り上げ、「この機会に、あらためて自民党は二度と教団とは関係を持たないと明言をして欲しい」と迫ったのだとか。

正直、自民党の予算案にも、いわゆる高額療養費の上限を改悪するなど、かなりデタラメな内容が含まれているため、齊藤蓮舫氏ら野党議員にはそうした予算の「中身」についての建設的で前向きな質疑をしてほしいと思う有権者は多いのではないかと思います。

それに「旧統一教会との関係」、「政治資金パーティ」、「収支報告書記載漏れ」など、野党が大好きな追及ネタという意味では、それらはべつに自民党議員だけに限られる話でもありません。かなりの確率で、野党側にもブーメランが生じるのです。

健全野党出現するまでの政治的コスト

このように考えてみると、予算案や法案などを巡る本当の問題とは、その本質がほとんど議論されず、与党側にとっても野党のスキャンダル追及さえ通り過ぎれば(酷い場合はほぼ原案通りに)成立させることができることにあるのです。

民主主義を健全に機能させるうえでは、やはり健全な野党が必要です。

ただし、著者自身としては、このあたりはあまり悲観していません。

次の参院選までまだ2年4ヵ月ほどありますが、この2年4ヵ月という時間があれば、「官僚機構-マスコミ-特定野党」というトライアングル構造の溶解がさらに進むからです。

くどいようですが、当ウェブサイトとしては自民党や高市早苗政権を無条件に褒め称えるつもりなど毛頭ありませんし、良い政策は「良い」、悪い政策は「悪い」などと今後も断言していくつもりではありますが、それ以上に「トライアングル構造」の問題点については引き続き、客観的証拠とともに提示し続けて行こうと思います。

今年度予算案が「2議席差」で空白となってしまう可能性が残るなかではありますが、これも日本の自由・民主主義を健全な姿にしていくための必要な政治的コストなのかもしれない、などと思う次第です。

新宿会計士: