高市早苗内閣を巡っては、著者個人的には高く評価できる部分とそうでない部分が混在しているとは思いますが、ただ、高市総理自身が対中強硬派であることは間違いなく、日本国民は少なくとも対中強硬姿勢を含めて高市総理に圧倒的なパワーを与えた以上、中国がいくら日本に制裁・圧力を加えても日本を動かすことはできません。つまり、中国としてはメンツを重んじるあまり、勝てない戦いに自ら身を投じているのです。
目次
高市内閣と中国
高市内閣、是々非々で評価しましょう
これまでに当ウェブサイトにてしばしば述べて来たとおり、著者自身は高市早苗政権を無条件に是認するつもりはなく、良い政策は良い、悪い政策は悪い、と、是々非々で取り上げるというスタンスを維持したいと考えています。
高市政権、あるいは高市総理の良い点は、そのスピード感でしょう。
たとえば緊迫するイラン情勢を受け、ガソリン価格が上昇する気配を見せていますが、こうしたなかで高市内閣は早々に、燃料油価格激変緩和対策基金の残高を活用した補助金で小売価格の抑制を図るとともに、原油備蓄を放出すると発表しました。
具体的には、来週・16日以降、まずは民間備蓄を15日分放出するとともに、当面、1ヵ月分の国家備蓄を放出するのだとか。
イラン情勢に関する政府の対応についての会見
―――2026/03/11付 首相官邸HPより
補助金方式による価格抑制が正しいのかどうかは別として、スピード感は大したものです。
石破茂・前首相のスピード感のなさを覚えている人はなおさら、高市総理のスピード感には良い意味での新鮮な衝撃を受けているのではないでしょうか。
高額療養費問題には失望
ただし、高市内閣の行動で首をかしげる項目も、いくつもあります。そして深く失望せざるを得ない項目もありますが、そのひとつが高額療養費の引上げでしょう。
高額療養費の自己負担上限額の引き上げ 患者らが撤回求める 厚労省試算では医療保険制度改革で1人あたりの保険料は年間約2200円減
―――2026/03/12 16:05付 Yahoo!ニュースより【TBS NEWS DIG Powered by JNN配信】
高額療養費は、大病を患うなどして高額な医療費の支出を余儀なくされた際に、患者の自己負担を抑えるものですが、これが高額な保険料を支払っている人に対しては大幅に引き上げられることになり、それが13日に閣議決定されてしまったようなのです。
これも普段から当ウェブサイトで指摘している通り、高額療養費という制度は極めておかしなものです。
「保険」と名乗っていながら、普段から払っている保険料が高い人ほど高額な医療費負担を余儀なくされるというもので、端的にいえばこの制度を考えた厚労省の官僚らは、控えめに申し上げても頭がおかしいとしか言いようがありません。
普段から高額な社会保険料(というか事実上の「医療税」)を支払っている人は、社会的にもそれなりに稼いでいる人が多いと考えられ、そのような人たちに高すぎる医療費負担を強いるというのは、彼らに治療を諦めさせることで社会的な稼ぎを喪失させるという意味で、あまりにも愚かな政策です。
いずれにせよ、高市政権については無条件に支持するつもりもない一方、良い政策は良い、悪い政策は悪いと、しっかりと論評していくべきだと考えている次第です。
対中外交についてはしっかりと評価すべき
さて、こうしたなかで、個人的にはわりと無条件で褒められる分野があるとしたら、そのひとつは対中外交でしょう。
高市総理は昨年11月、立憲民主党(※当時)の岡田克也衆議院議員(※当時)による質問に対し、台湾有事が日本にとっての存立危機事態となり得るとする趣旨の答弁を行ったのですが、これに中国政府が強く反発。
さまざまな「対抗措置」を日本に対して講じてきていたのです。
当ウェブサイトでもこれまで(なかばおちょくるように)取り上げてきたとおり、中国政府の日本に対する「制裁(?)措置」はことごとく無意味であっただけでなく、むしろ中国の立場を悪くしています。
中国が日本に講じて来た「制裁措置」
- SNSを使い日本人を脅す
- 日本向けの団体旅行の自粛
- 日本製のアニメの上映延期
- よくわからない会合の中止
- ロックコンサート公演中止
- 日本人歌手の歌中断→退場
- 自衛隊機FCレーダー照射
- パンダの貸与期限の不延長
- 世界各国に向けた日本批判
- 日本に対する輸出管理強化
- 総領事へのアグレマン遅延
- 日本の企業や団体への制裁
(【出所】報道等をもとに作成)
レアアース規制はそれなりの脅威だが…
これらの措置、『日本はピンチをチャンスに変える国…中国の制裁の結末』などでも指摘したとおり、いずれも制裁としてはまともに機能していません。
| 中国がレアアース等の戦略資源輸出を巡って複数の日本企業に制裁を発動するなど、日本に対し、圧力を強めています。そんな日本にとっては、中国依存を直ちにやめることが難しいのも実情です。ただ、石油ショックを省エネ技術開発で乗り切ったことからもわかるとおり、日本という国はピンチをチャンスに変えることが得意な国です。楽観は禁物ですが、たとえば深海資源開発や都市鉱山開発など、可能性がいくらでも広がっていることについては無視すべきではありません。高市総理は「持っている」人なのか高市早苗総理大臣が「持っている... 日本はピンチをチャンスに変える国…中国の制裁の結末 - 新宿会計士の政治経済評論 |
いや、もちろん、まったく機能していないわけではありません。
日中貿易の構造を見ると、日本は中国から非常に多くの製品などを輸入しており、これらのなかには産業で欠かすことができないレアアース(希土類)や、レアアースを含めたレアメタルなどが含まれているからです。
中国政府がこれらの対日輸出を禁止/制限すると匂わせただけでも、日本の産業関係者が気にする程度には、日本を揺さぶることができます(ただし株価影響に関していえば、中国の対日制裁よりも米国のイラン攻撃の方がインパクトとしては遥かに大きかったのですが…)。
実際のところ、レアアースやレアメタル、あるいはその他の重要鉱物については、元素によっては世界の製錬工程に占める国別シェアで中国が9割以上を占めているケースも多いのが実情です。したがって、これらの安定供給は、日本にとっても重要な課題のひとつでしょう。
たとえば、国際エネルギー機関が昨年取りまとめた報告によれば、レアアースの製錬シェアは92.1%に達するほか、▼ガリウム98.7%、▼グラファイト95.2%、▼マンガン95.0%、▼金属ケイ素84.8%、▼モリブデン81.0%―――などとなっています(※)。
仮に中国が製錬シェア90%以上を握っている品目で、対日輸出の全面禁止措置などを講じた場合は、少なくない日本企業の生産活動は大混乱に陥る可能性もあります(※といっても、輸出禁止措置を講じれば、中国にとっても売り先がなくなるため、セルフ経済制裁という側面もありますが…)。
だからこそ、短期的には日本もレアアース、医薬品といった重要物資の供給断絶に対してはそれなりの警戒が必要だといえるでしょう。
強まる日本国民の意思、そして中国の選択
日本国民の結束は却って強まった:自民圧勝の結果に!
ただ、それと同時に、先般より当ウェブサイトにて繰り返しお伝えしている通り、中国の対日制裁は、結果的に日本を挫けさせるのに失敗し、それどころか日本国民の結束を強めさせる効果をもたらしています。
その最も強烈な証拠が、衆院選でしょう。
自民党が単独で3分の2を超える圧倒的な議席を確保する一方、最大野党・立憲民主党が衆院選直前で公明党と合体して結党した中道改革連合が、衆院選で公示前の167議席から一気に49議席へと勢力を3分の1以下に減らしたのです。
しかも、獲得した49議席のうち6議席は自民党が候補者不足で他党に「譲った」14議席の一部であり、実力ベースで見れば、自民党が330議席に相当する票を獲得していたのに対し、中道改革連合のそれは43議席分に過ぎませんでした。
(より厳密にいえば、中道改革連合はチームみらいからも1議席を譲り受けていますので、「実力ベース」の議席数は、49議席ではなく42議席に過ぎなかった、という言い方もできるでしょうか。)
そして42ないし43議席のうち、比例上位を占めた公明党系の候補者が27ないし28議席を占有したため、立憲民主党系の当選者は15議席に過ぎず、しかも小選挙区での当選者数は7人と、日本維新の会(20人)や国民民主党(8人)に続く「第4政党」に転落してしまったのです。
対中強硬派である高市総理に圧倒的なパワー
これが、日本の有権者が下した審判です。
対中政策という側面だけで見れば、対中強硬派(と中国がみなしている人物)である高市総理が率いる自民党が圧勝したという事実をもって、日本国民が対中強硬政策の推進にお墨付きを与えた格好だといえます。
しかも最大野党の立憲民主党改め中道改革連合が、重鎮議員に大量に落選者を出したのです。
たとえば、高市総理から台湾答弁を引き出した岡田克也氏が小選挙区で落選し、比例復活もできずに国会を去ったのですが、その岡田氏といえば、旧民主党政権時代に副首相を務めたほか、野党時代の民主党代表、民進党代表なども歴任したという、立憲民主党にとっては重鎮ともいうべき議員のひとりでした。
また、1993年の非自民連立政権の旗振り役でもあり、自由党などを経て立憲民主党に再合流した小沢一郎氏も落選しましたし、民主党政権時代に財務大臣を務め、立憲民主党では幹事長の地位に安住淳氏も落選しました。
さらには野党時代の民主党代表を務めた海江田万里氏や立憲民主党の初代代表だった枝野幸男氏、立憲民主党で共同選対委員長を務めていた馬淵澄夫氏、共同政調会長だった本庄さとし氏らも議席を失っています。
こうした「派手な負け方」は、もちろん、小選挙区という「勝者総取り」の仕組みに加え、比例で公明党出身者らが上位を占有していたなどの事情もあるのですが、それだけではありません。
やはり、「国民が中道改革連合を選ばなかった」ことに尽きるのです。
しかし、対中関係という側面では、「日本国民が対中強硬派である高市氏を積極的に選んだ」という側面もあるといえます。すなわち、対中強硬派である高市総理に、日本国民が選挙を通じて圧倒的なパワーを与えた、という意味です。
中国政府の見落とし
このあたりは先日の『台湾有事を巡る「日本国民の覚悟」を指摘する鈴置論考』などでも指摘したとおり、選挙結果自体は中国と立ち向かうという日本国民の意思表示です。
| わが国を代表する韓国観察者といえば鈴置高史氏ですが、その鈴置氏が産経『世論』に、非常に気になる現状整理を寄稿しました。ただ、当ウェブサイトで普段から述べるとおり、鈴置論考は韓国論というよりも、韓国という鏡に映った日本を鮮やかに描き出しており、その意味では半ば「日本観察論」でもあります。鈴置論考では、「日本国民が台湾有事で米国とともに戦う合意を固め始めた」という、極めて重要な点が指摘されているのです。正直、今回の論考、日本国民必読です。中国の対日制裁措置に改めてのけぞる当ウェブサイトでは昨年11... 台湾有事を巡る「日本国民の覚悟」を指摘する鈴置論考 - 新宿会計士の政治経済評論 |
こうしたなかで、中国側は最近、壊れたレコードのように、日本に対する挑発的な言動を繰り返しているわけですが、先ほど指摘したとおり、中国側の対抗措置など限られていますし、「禁断」のレアアース規制に手を掛けてしまった瞬間、中国は最大のカードを捨ててしまった格好です。
中国側から見えてくるのは、「どうして日本がまったく折れてくれないのか」という、ある種の焦りです。
パンダを回収し、観光客の日本行きを制限するなどすれば、日本のマスコミがいつものように「中国に配慮しろ」と焚き付けてくれて、それによって国民感情が沸騰し、政権支持率も下落して高市総理が退陣に追い込まれるはずだったのに、高市総理は選挙で圧勝し、支持率も高止まりしているのは何故なのか。
これは結局、中国側も日本社会の変化を完全に見誤ったからだと考えるのが自然です。
そして、2024年前後から、日本社会は明らかに変容しました。インターネット/SNSの社会的影響力が、飛躍的に上昇したのです。
今回の中国による対日制裁(もどき)に際しても、一部メディアは相変わらず、「中国がこんなに怒ってるぞ!?」、「中国人が観光に来てくれないと日本は困るぞ!?」、「パンダがいなくなると日本は困るぞ!?」、といったトンチンカンな報道に終始しました。
しかし、そんなメディアの戯言を本気で信じているのはテレビ層の老人などにほぼ限定されており、現役層の多くはそもそもテレビ自体を視聴しておらず、新聞も購読していません。たまにSNS上で晒し者にされる一部のテレビや新聞の報道内容が目につくくらいでしょう。
いずれにせよ、メディアの社会的影響力が低下したことと、もともと日本国民は中国をまったく恐れていないことを、中国政府は見落としていた可能性があるのです。
中国が日本に対して折れない理由とは?
「制裁しても制裁してもまったく折れない日本」に焦っているのは、じつは中国の側だ―――。
こうした視点は、意外と重要ではないか、などと思うのですが、こうしたなかで少し気になる話題があるとしたら、それはこれかもしれません。
なぜ日本だけが「目の敵」にされるのか 習近平政権が台湾問題で絶対に譲らない理由
―――2026/03/13 11:53付 Yahoo!ニュースより【WEB Voice配信】
これは、『ウェブボイス』というサイトが13日付で配信した記事で、『Voice』2026年2月号より、内容を一部抜粋・編集したものだそうで、早稲田大学の岡本隆司教授とジャーナリストの野嶋剛氏の対談で構成されています。
岡本教授といえば、中国史を専門としていて、昨年12月にはラジオNIKKEIのポッドキャスト番組『中国経済の真相』にも出演しています(2025年12月26日付『日中対立「起源は日清戦争と台湾出兵」 岡本隆司・早大教授』等参照)。
また、野嶋氏も昨年11月にWedge ONLINEに『中国が目指すは日台の分断か?日本人が知っておきたい高市発言で習近平が絶対に許せないと思っていること』という記事を寄稿するなど、中国側の視点から中国の行動を読み解こうとしていることでも知られています。
今回の記事でも「戦狼外交」、「王毅モデル」など、大変興味深いキーワードがいくつか出てくるのですが、ご興味があればそれらについてはリンク先記事で直接お確かめください。
ここでは、野嶋氏のこんな趣旨の指摘を取り上げます。
- 中国の歴史観や世界観からすれば、日本が台湾と接近して仲良くすること自体が生理的にも理念的にも許せない
- 中国共産党にとって、台湾統一とは理屈ではなく、結党以来の夢であり、ドグマであり、成し遂げなければいけない命題である
- 先の大戦で「罪」を犯した日本が台湾問題に首をつっこむのは、モラルとして「レッドライン」を越えたという判断になる
中国が日本に対し、(もうほとんど対抗措置は残っていないにも関わらず)執拗に対抗措置を繰り返す理由については、たしかに野嶋氏のこの説明で筋が通っています。そして、この野嶋氏の説明を補うかのように、岡本氏もこんな趣旨のことを述べます。
- 戦後の中国知識人が抱き続けてきた「一つの中国」を明確に脅かす相手がいると認識すれば、彼らからすれば強硬な手段で対抗するのは当然
- しかも中国は、いまや軍事的にも経済的にも大国であるため、日本に対してまさに公然とハラスメントを繰り返している
- また厄介なのは、いまの中国では官僚や軍の高官が習近平の顔色を窺い、忖度する体制が構築されている点である
…。
勝てない戦いに身を投じる中国
ただ、これも言い換えれば、中国は現在、彼らのメンツを重んじるあまり、勝てない戦いに自ら身を投じている、ということではないかと思えてなりません。
日本は日本で「(対中強硬姿勢を取る)高市内閣に圧倒的な政治パワーを与えた」という有権者の判断が下っているわけですし、日本のマスコミには世論を動かす力はもう残っていないわけですから、中国が日本にいくら対抗措置を講じたとしても、それで日本を動かすことなどできっこありません。
そして、日中の産業が(水平分業ではなく)垂直統合の関係にあることを思い出しておくと、日本が脱中国を進め、戦略物資の中国依存を脱することとなり、逆に日本製の半導体製造装置等の対中輸出が止まれば、それによって大きな打撃を受けるのは、むしろ中国の側です。
このように考えたら、中国はメンツを重視するあまり、日本という「経済・産業的には絶対に勝てない相手」に喧嘩を吹っかけているわけであり、それは自滅への道であると断じざるを得ないのです。
中国政府がそのことに気づいているのかどうかはわかりませんが…。
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野嶋剛さんは元朝日新聞記者で、香港に取り組んでおられたかたです。今は台湾島に活動対象を変えています。
ワカモノを中心とした反大陸運動は実は香港における世代闘争でもありました。刹那的で拝金主義者の親の世代を糾弾するものだったのです。結果はご存じの通り。野島さんは矢板明夫さんと、台湾の TV 番組あるいは Youtube チャネルで頻繁に発言しており、時事問題において中国語が通じる日本人として現地ではよく知られています。
ちうごく紅衛兵(代理発言人を含む)を自認する新聞社や TV 局にはもう人もカネも集まらないと判断するのが自然です。