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玉木氏ポストで注目…原発再稼働による発電の「威力」

動かせるけれども動かない原発―――。原子力規制委員会ウェブサイト等によると、ステータスが「定期事業者検査中」となっている原子炉は日本全体で23基、出力は23,167,000kWに達します。設備利用率70%という前提で試算すれば、本来なら年間で日本全体の発電量の約15%に相当する1421億kWhもの電力を生み出していたはずですが…。

イラン危機受けた玉木氏発言

国民民主党の玉木雄一郎氏が9日、イラン危機を受けた原油価格高騰懸念などを受け、動かせる原発はすべて動かす方向に舵を切るべきだと述べました。

ちなみに玉木氏のポストにある「特重施設」とは、「意図的な航空機衝突などの状況に備えて、重大事故等への対策として用意している可搬型設備などに加え、信頼性を更に向上させるためのバックアップ対策として設置することが求められている施設」だそうです(定義は『原子力新聞』より)。

そのうえで、玉木氏は、とくにこの「特重施設」については「運転中審査を認めるなどの現実的な対応が急務」、などともしたうえうで、このように提言しているのです。

イラン情勢が緊迫化する中、海外依存度の低い脱炭素電源としての原発をフル活用しなければ電気代の高騰は避けられない。国民生活を守るための政策転換が必要だ」。

ちなみにこのXを通じた玉木氏の発言はロイターも報じています。

政治家の発言がメディアで報じられて人々に注目されるのではなく、まずはXなどのSNSで発信した情報が、むしろ逆にメディアに注目されるあたり、なかなかに興味深い時代になったものだと思う次第です。

日本全体で63基

それはともかくとして、再稼働可能な(つまり定期事業者検査中の)原発は、いったいどうなっているのでしょうか。

原子力規制委員会の『発電所の現在の運転状況』のページを見ると、現時点における原発の運転状況を、ほぼ網羅的に知ることができます(著者が見たところ、事業者のウェブサイト等に照らし、一部漏れもあるようですが…)。

このページの記載および各事業者のウェブサイトなどから原発の状況について調べてみると、原子炉自体は日本全体で63基あり(※建設中、廃止措置中などのものも含む)、総出力は56,629,000kWです(図表1、ただし原子力規制委員会に掲載されているのは61基)。

図表1 事業者ごとの原子炉合計
事業者 原子炉 出力(kW)
北海道電力株式会社 3基 2,070,000
東北電力株式会社 4基 3,274,000
東京電力ホールディングス株式会社 19基 20,078,000
日本原子力発電株式会社 4基 2,783,000
中部電力株式会社 5基 4,997,000
北陸電力株式会社 2基 1,898,000
関西電力株式会社 11基 9,768,000
中国電力株式会社 3基 2,653,000
四国電力株式会社 3基 2,022,000
九州電力株式会社 6基 5,258,000
日本原子力研究開発機構 2基 445,000
電源開発株式会社 1基 1,383,000
合計 63基 56,629,000

(【出所】原子力規制委員会『発電所の現在の運転状況』および各事業者ウェブサイトをもとに集計)

ただし、上記には廃止済みのもの(たとえば東京電力・福島第一原発など)も含まれています(余談ですが、原子力規制委員会ページの「建設中」のステータスが3基となっていますが、著者調べだと4基です)。

運転中は10基:停止中が23基も!

次に、これらをステータスごとに集計したものが、次の図表2です。

図表2 原子炉の稼働状況
ステータス 原子炉 出力(kW)
運転中 10基 10,068,000
停止中(定期検査中) 23基 23,167,000
廃止措置中 20基 13,172,000
廃止 6基 4,696,000
建設中 4基 5,526,000
合計 63基 56,629,000

(【出所】原子力規制委員会『発電所の現在の運転状況』および各事業者ウェブサイトをもとに集計)

この集計表、もととなった原子力規制委員会のウェブサイトの記載に多少漏れがあるほか、出力については各事業者のウェブページからひとつずつ転載するなどしてて集計しているため、多少の誤差が生じている可能性がある点についてはご了承ください。

ただ、出力という意味では、大きく実態と乖離しているものではないでしょう。

注目すべきは「運転中」が10基、合計出力が約1000万kWであるのに対し、「停止中(定期検査中)」が23基、2316.7万kWもある、という点です。

「停止中(定期検査中)」とは、いわば、「動かそうと思えば動かせる」ということであり、逆に「動かそうと思えば動かせるのに動いていない」ということでもあります。

もちろん、現行法では地元自治体の了解を含め、これを動かすのは容易ではない、といった指摘があるのは事実ですが、しかし、2022年のウクライナ戦争勃発時からすでに4年が経過するなかで、依然として23基の原発が「停止中(定期検査中)」のままになっているというのは政府の不作為ではないでしょうか。

運転中vs停止中 事業者別集計

ちなみに「運転中」と「停止中(定期検査中)」を事業者別に集計すると、次の図表3の通りです。

図表3-1 運転中の原子炉
事業者 原子炉 出力(kW)
北海道電力株式会社 0基 0
東北電力株式会社 0基 0
東京電力ホールディングス株式会社 1基 1,356,000
日本原子力発電株式会社 0基 0
中部電力株式会社 0基 0
北陸電力株式会社 0基 0
日本原子力研究開発機構 0基 0
関西電力株式会社 5基 4,572,000
中国電力株式会社 0基 0
四国電力株式会社 1基 890,000
九州電力株式会社 3基 3,250,000
合計 10基 10,068,000
図表3-2 停止中(定期検査中)の原子炉
事業者 原子炉 出力(kW)
北海道電力株式会社 3基 2,070,000
東北電力株式会社 3基 2,750,000
東京電力ホールディングス株式会社 6基 6,856,000
日本原子力発電株式会社 2基 2,260,000
中部電力株式会社 3基 3,617,000
北陸電力株式会社 2基 1,898,000
日本原子力研究開発機構 0基 0
関西電力株式会社 2基 2,006,000
中国電力株式会社 1基 820,000
四国電力株式会社 0基 0
九州電力株式会社 1基 890,000
合計 23基 23,167,000

(【出所】原子力規制委員会『発電所の現在の運転状況』および各事業者ウェブサイトをもとに集計)

…。

これ、なかなかに驚く話です。

とくに電力会社のうち、北海道電力、東北電力、中部電力、北陸電力、中国電力の5社については現時点で運転中がゼロ件であり(東北電力はテロ対策施設の完成遅れで女川2号機を昨年12月に停止)、その分、火力発電所などに依存せざるを得ないのです。

日本の発電量の約15%分がアイドルに!

ちなみにアイドル状態の23,167,000kWは、いかなる電力を生むのでしょうか。

日本の原発はいったん動かしても定期的に止めるため、仮に年間を通じて出力の70%が発電されるとすれば、24時間・365日に70%を乗じた約1421億kWhがその発電量であろうと推定されます。

資源エネルギー庁『電源別発電量』などによると、わが国の年間発電量はだいたい1兆kWhとされるため、ざっくり計算でもその15%程度に相当する発電能力が原発アイドル状態で無駄にされているのだ、という言い方もできるかもしれません。

また、現在建設中の東京電力・東通原子力発電所が完成し、運転を開始するなど、原発の新増設が進むとしても、増える発電能力は6,050,000kWであり、年間発電量は上記と同じ計算式でも371億kWhでもあります。まだまだ原発の新増設が必要でしょう。

なお、図表2のうち、「運転中」、「停止中(定期検査中)」、「建設中」のみを抜き出し、「設備利用率70%」という前提で計算した年間発電量は、図表4のとおり、約2400億kWhです。

図表4 設備利用率70%で運転できた場合の年間発電量
ステータス 出力(kW) 発電量(kWh)
運転中 10,068,000 61,736,976,000
停止中(定期検査中) 23,167,000 142,060,044,000
建設中 5,526,000 33,885,432,000
合計 38,761,000 237,682,452,000

(【出所】原子力規制委員会『発電所の現在の運転状況』および各事業者ウェブサイトをもとに集計・試算)

再稼働できる原発を動かすことができれば、最大で2317万kWもの発電力が生じ、それを70%で動かしたとしても1421万kWhもの電力を生みます。建設中の原発が完成し、フル稼働すれば、70%想定でも2377万kWhです。

なかなかの威力といえます。

物価高に苦しむ家計から再エネ賦課金などを徴収している場合ではありません。政治的なリソースは、そんなことより再稼働可能な原発を動かすことに、本来ならば費やすべきです(余談ですが、再エネ賦課金も社会保険料などと同様、さまざまな問題を抱えた制度ですが、これについては機会を見て別稿で議論したいと思います)。

いずれにせよ、玉木氏の発言はXなどネット空間でもさまざまな議論を招くことが多いようですが、少なくとも原発政策に関しては、資源・エネルギー政策の方向性としては正しいことは間違いないといえるでしょう。

新宿会計士:

View Comments (8)

  • 原子力規制委員会の権限がバランスを欠いて強すぎると思うんですよね。事業者との健全なコミュニケーション関係が築けていないようです。
    聞く耳持たないエラ過ぎの勘違い職員もいるようですし。

    電力需要も増加の見通し。今後のAIのデータセンター需要を満たすのも大変だそうで。
    既存の原発の活用だけじゃなく新増設も認めないと、産業として継続できない。
    現政権は、菅・岸田政権でGXに振ってた看板は少しトーンを落としてはいますが、看板を下ろしていないのがちょっとね。

    本記事ではエネルギーのことも金融のことももう少し触れていただけると嬉しいですね。

    • >聞く耳持たないエラ過ぎの勘違い職員もいるようですし。
      擁護するわけではありませんが
      審査資料の改ざんの動機もそのあたりにあるのではないでしょうか。
      安全を担保するための組織なのか?
      原発を再稼働させないことが目的の組織なのか?
      後者のような気がします。

  • 去年(2025年4月28日)に発生したスペインの大規模停電の原因について、同年6月に報告書が提出された。停電の技術的原因は、系統(送配電網)で電圧を許容範囲内に維持するために必要な同期型発電の不足としている。同期型発電とは、回転機械式発電機によるものであり、水力発電、火力発電(含原子力、地熱、大規模バオオマス)が該当する。スペインの報告書では系統安定化義務のあるサーマル発電所と明記されており、蒸気タービン発電機に系統安定化系のための運転義務があったようだ。日本でも統安定化余裕増ののためにも蒸気タービンを使用する原子力発電活用を進めて欲しい。
    https://www.renewable-ei.org/activities/column/20250703.php

  • DC(データセンター)は365日24時間稼働なのでベース電源である原子力発電とは非常に相性が良くDC増設には原子力発電再稼働は不可欠だと思っています。将来的にはDC近傍に超小型原子力発電所を設置で地産地消ということになるでしょうがそれまでの間はそうするしかないと思います。
    もしもEVがもっと普及する場合はEVの夜間充電需要に応えるにも原子力発電が必須となると思います。

  • ここはイデオロギーより生活者ファーストの観点で再稼働をしてもらいたいですね。

  • 中東地域の紛争に翻弄される中、明日は3月11日で福島原発事故も思い出されます。原発事故後の中曽根元総理の「昭和30年代は電力が不足していたが、(当時)紛争が続く中東にエネルギーを頼らざるを得ず、日本が戦争から復興するには安定した電力が必要で、原発を導入するしかなかった。」という新聞の寄稿がいまだに重いです。(いままだ続く話なので。)

  • 原子力規制委員会と規制庁も、負の民主党政権の遺産ですね。そんなもんとっとと改正しちまいましょう。

  • 原発再稼働は、当たり前として、核融合発電とか宇宙太陽光発電とか、高市旋風をお願いしたいです。再エネ賦課金は、即刻廃止で従来型の太陽光発電パネルは撤去して欲しいです。
    日本企業を日本に戻すためにも電力コストの削減はMustです。データセンターの電力を賄う必要がありますし、日本製の低消費電力の超高速プロセッサーの開発実装も必要です。まずは、AI監査で実装したいですね。それほどデータはないのですが。