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党の財政で見る…立憲民主党と中道改革連合の合流問題

新潟日報が25日に配信した記事によると、立憲民主党の立憲民主党の森裕子参議院議員は中道改革連合と合流する可能性について「衆院とは選挙制度も違うので難しい」と述べたのだそうです。仮に政党を「選挙互助会」だと考えているならば、「選挙制度が違うから新党に加わらない」というのは、短期的な判断としては決して間違っていませんが、ただ、ここでもうひとつ考慮しなければならないのは「党財政」です。

衆院選の正体は中道改革連合の惨敗

先日の『衆院選の実態は自民大躍進というより立民への退場勧告』を含め、繰り返し指摘している通り、今月の衆議院議員総選挙は「自民党が空前の勝利を収めた選挙だった」という側面だけでなく、最大野党である「中道改革連合」が惨敗を喫した選挙だった、という側面が強いのではないかと思います。

立憲民主党が公明党の組織票を取り込んだはずなのに、前回衆院選と比べ合計票数が落ち込んでいるし、躍進したはずの自民党は大して得票を伸ばしていない―――。そんな実態が浮かびます。数値で見ると、国民は最大野党である中道改革連合(実態は立憲民主党)に対し退場勧告し、その結果として自民党の議席が一時的に水膨れしたと見るのが、現時点では最も正確な見方ではないでしょうか。「自民党の圧勝」を予測できたのか日曜日に投票が行われた衆議院議員総選挙は、結果的に自民党の圧勝に終わりました。ただ、現時点では「自民党が圧勝...
衆院選の実態は自民大躍進というより立民への退場勧告 - 新宿会計士の政治経済評論

こうしたなかでやはり注目したいのは、「なぜ中道改革連合がここまで惨敗したのか」、です。自然に考えたら、中道改革連合は立憲民主党、公明党という2つの「組織票」が流入し、各地の小選挙区で自民党候補の票を奪い、圧勝する可能性もあったはずだからです。

なぜ、ここまで選挙結果が大きく動いたのか―――。

①②が発生せず③④が強く出た、しかも…

当ウェブサイトでは、選挙前時点では『野党の動向次第では自民圧勝も自民大敗も両方あり得る』などの記事を皮切りに、選挙の勝敗を決める要因として、「(選挙結果に関する)予測は困難だ」としながらも、次のようなものが考えられると指摘しました。

  • ①立民公明の組織票…自民票⇩減らす要因
  • ②保守票の食い合い…自民票⇩減らす要因
  • ③左派支持層高齢化…自民党⇧増やす要因
  • ④サナエ旋風の発生…自民党⇧増やす要因

このうち①と②が自民党にとっては逆風要因、③と④が自民党に通っては追風要因です。

結論からいえば、①と②の効果はほとんど出ず、③と④の効果が大変に大きく出た、というのが、得票状況から得られる考察でしょう。というのも、自民党の得票が大きく伸びただけでなく、公明党と立憲民主党の得票が盛大にズッコケたからです。

いや、③については「支持層の高齢化」だけでは説明がつかないほどの大きな変動が生じています。

実際、著者自身が手元に持っている過去選挙のデータでも、たとえば「立憲民主党」という名称の政党が初めて出現した2017年以降の両党合計の比例得票数からすると、1700~1800万票は堅いのではないかと考えるのが自然です。

立民+公明の比例代表得票状況
  • 2017年衆院選…18,062,602票(立民11,084,890票+公明6,977,712票)
  • 2021年衆院選…18,606,377票(立民11,492,095票+公明7,114,282票)
  • 2024年衆院選…17,528,637票(立民11,564,222票+公明5,964,415票)

(【出所】総務省『衆議院議員総選挙・最高裁判所裁判官国民審査結果』データをもとに作成)

ところが、蓋を開けてみたら、中道改革連合の比例得票は1044万票程度であり、2024年衆院選と比べて700万票以上減ったのです。

  • 2026年衆院選…10,438,801票

「マイナス700万票」の正体はSNSの影響力では?

この「マイナス700万票」の正体は、なかなかに興味深い課題です。「1+1」が2になるどころか1以下になってしまった格好でもあります。

これにはもちろん、「立憲民主党と公明党の支持層がお互い反目し合っていて、その両者が『票欲しさ』『議席欲しさ』に野合したことへの強い反発や失望」といった要因もあるのかもしれませんが、こうした要因だけでは、このマイナス700万票は説明がつかないのです。

残念ながらメディア報道などを眺めていてもその正体はよくわかりませんが、敢えてひとつの仮説を出すならば、それは「SNSの影響力」ではないでしょうか。

実際のところ、立憲民主党にしても、公明党にしても、支持層の高齢化が急速に進んでいて、その若返りに苦慮していたことはよく知られています。たとえばメディアが実施する世論調査などでも、とくに立憲民主党を支持する層は、明らかに高齢者に偏っているからです。

ということは、中道改革連合の大幅なマイナスは、たんに「熱心な支持層が高齢化したから」、という要因だけでなく、「社会のSNS化により若年層の支持者が逃げたから」、あるいは「SNSを使う層から忌避されたから」、といった要因がかなり強いのではないでしょうか。

もちろん、自民党の側も「サナエ旋風」で票が増えた、という要因もあるのかもしれませんが、ただ、少なくとも比例代表だけで見ると、今回の衆院選は2021年のそれと比べ、得票数がほとんど変わらない点に注意が必要です。

自民党の比例代表得票状況
  • 2017年衆院選…26,500,777票
  • 2021年衆院選…27,626,235票
  • 2024年衆院選…20,867,762票
  • 2026年衆院選…27,710,493票

(【出所】総務省『衆議院議員総選挙・最高裁判所裁判官国民審査結果』データをもとに作成)

すなわち、今回の衆院選は2024年の石破茂・前首相の失態を回復したというだけのものであり、これに小選挙区側で最大野党だった中道改革連合が盛大にズッコケたことで、自民党が小選挙区で議席を大きく伸ばした、というのが実態に近いのです。

森裕子氏は中道改革連合との合流「難しい」

さて、ここまでの考察から生じる疑問がひとつあるとしたら、「参院の立憲民主党は中道改革連合に合流できるのか」、というものではないかと思います。

現在、中道改革連合は衆議院だけの政党であり、参議院側では立憲民主党と公明党が残っており、さらに、両党には地方組織も基本的にはそのままで残っている状況にあります。

衆院選では中道改革連合が「1+1⇒1以下」という状況で、立憲民主党側にとっては公明党と合流することで、参議院側でも同じようなマイナス効果の発生を懸念している可能性はあります。

ただ、常識的に考えたら、3党が合流せず、このまま残っている状況は、非効率です。

どうして合流しないのでしょうか?

これについて考えるヒントがあるとしたら、こんな記事かもしれません。

中道改革連合と合流「難しい」立憲民主の森裕子参院議員が認識、公明の支持母体に「違和感」

―――2026/02/25 23:00付 新潟日報より

記事は新潟日報が25日付で配信したもので、立憲民主党の森裕子参議院議員(比例代表)が同日、新潟日報社の取材に応じ、(参院の立憲民主党が中道改革連合と合流する可能性について)「衆院とは選挙制度も違うので難しい」と述べたのだそうです。

記事自体は有料会員になっていないと一部しか読めませんが、個人的には無料で閲覧できる部分にある、この「衆院とは選挙制度が違うので(合流は)難しい」のくだりだけで十分だと思います。

裏読みすれば、衆参では選挙制度が違うため、立憲民主党が中道改革連合に合流してもあまりメリットはない、ということではないでしょうか。

選挙制度が違うのはそのとおり

もちろん、森氏がそういうつもりで発言したのかどうかはわかりませんが、ただ、現実の選挙制度では、たしかに衆参で合流のメリットは大きく異なります。

たとえば衆院側では定数465議席のうち、じつに6割超にあたる289議席が小選挙区に配分されており、しかも全国の小選挙区で満遍なく候補を立てられるのは、資金力、組織力の面から、基本的には大政党に限られます(今回の衆院選では参政党が頑張って各地に候補を立てたようですが…)。

したがって、野党はできるだけ集合し、頑張って各地(最大289選挙区)で候補を立てるしかなく、その意味では中道改革連合のように組織票に強い2つの政党が合流するのはある意味で理に適っている行動なのです(SNSのせいでそのメリットを遥かに上回るマイナス効果が出たのは想定外だったのかもしれませんが…)。

しかし、参院の選挙制度は、これとはまったくことなります。

参院は定数248議席のうち、3年に1回の選挙で124議席が改選され、その124議席は(衆院選でいう小選挙区と似た)「一人区」に32議席しか配分されておらず、50議席は全国比例(しかも非拘束名簿方式)、42議席は13都道府県の中選挙区に配分されています。

改選数が最も多い東京都の場合だと、1回の選挙で6人もの候補者が当選します(※2025年参院選では2024年の都知事選出馬で失職した齊藤蓮舫氏の補欠選挙を兼ねており、7人が当選しましたが、最下位で当選した立憲民主党の塩村あやか氏は任期が3年です)。

また、全国比例は毎回だいたい100万票前後で1議席を獲得できるため、そこそこに知名度があるタレントなどが政党を作るなどして出馬すれば、議席自体は確保できることも多いです(そのようにして当選したタレント議員が何らかの成果を残せるかどうかは別として)。

少数政党は参院から始めると議席を得やすい

なの、少しだけ余談ですが、参院選、とくに参院全国比例は、少数政党に有利な選挙制度でもあります。このため、まずは少数政党が国会に足掛かりを得るためには、3年に1度の参院全国比例で候補を立てるのが定石です。

たとえば参政党も2022年参院選の全国比例で177万票を獲得し、1議席を得ましたし、チームみらいも2025年参院選の全国比例で152万票を獲得し、1議席を得ています。

もちろん、2024年衆院選の比例で115万票を獲得し、2議席を得た日本保守党のように、衆議院から先に議席を獲得するという事例もあるのですが、これは例外でしょう(今回の衆院選の減税・ゆうこく連合のように小選挙区で議席を得るケースもありますが、これは候補者本人に知名度等の実力があるためでしょう)。

こうした状況から判断するに、仮に政党を「選挙互助会」だと考えているならば、「選挙制度が違うから新党に加わらない」というのは、短期的な判断としては決して間違っていません。

著者のように、政党は政治理念を共有する政治家が世の中を良い方向に変えるために集まっている組織だと考える人間からすれば、「政党=選挙互助会」という発想は理解に苦しむところですが、それでも世の中にはさまざまな考えがあることは間違いありません。

財政的な問題は大丈夫なのか?

余談はこのくらいにして、本論に戻りましょう。

先ほど、森氏が新潟日報に対し、参院立憲民主党の中道改革連合への合流が「難しい」と述べた件について、「政党を選挙互助会だと位置づけるなら、短期的な判断としては(合流しないという選択肢は)判断としては間違っていない」と述べました。

もっとも、「判断として間違っていない」というのは、あくまでも短期的な話であって、中・長期的な話ではありません。

実際のところ、先ほども述べたとおり、衆院選のことを考えるならば、やはり最大野党がいくつもの組織に分裂している状況は望ましくありません。衆院選では組織力・資金力の関係で、大政党でなければ全国の小選挙区に候補を立てることができないからです。

したがって、「選挙制度が違うから」という理由でいつまでも合流を拒んでいると、たとえば参院側ではまだ全国比例と中選挙区で議席が取れるとしても、32の一人区で組織基盤が弱体化していくかもしれませんし、なにより衆院側で、289の小選挙区の支部を維持できなくなる可能性もあります。

中道改革連合等を待つ「政党交付金の減少」という課題』でも触れましたが、著者自身が所持している過去の選挙データ等を参考に、政党交付金をざっくり試算してみると、中道改革連合が約26.3億円、立憲民主党が約19.9億円、公明党が約11.1億円で、合計約57.2億円です。

自民党はいまや衆院側で、最大野党・中道改革連合の6.6倍という圧倒的な議席を持っています。金曜日の高市早苗総理大臣の施政方針演説、ヤジがなくて非常に聞きやすかったという報告がSNSで多数見られている状況です。こうしたなか、日経新聞は社説で「中道は政策から立て直せ」と提言したのですが、正直、勝負はもうついているのかもしれません。そして、もっと切実な事情が、政党交付金の大幅な減少かもしれません。施政方針演説が行われた高市早苗総理大臣は昨日、国会で施政方針演説を行いました。第221回国会における高市内...
中道改革連合等を待つ「政党交付金の減少」という課題 - 新宿会計士の政治経済評論

解散総選挙前の時点で試算すると、立憲民主党が約71.2億円、公明党が約21.2億円で、両党合計だと約92.4億円が交付されていた計算なのですが、この時点ですでに約35.2億円、政党交付金が減少しているのです。

つまり、中道改革連合金はすでに財政状態が厳しいのに、立憲民主党、公明党との合流が遅れれば遅れるほど、財政状態はさらに厳しくなっていきますし(立民・公明の交付金が入らないため)、当然、政党支部も維持できなくなる可能性が出てくるのです。

先ほどの新潟日報の記事だと、森氏は公明党が創価学会を支持母体としていることを挙げ、「一緒にやることに違和感がある」、「私は少なくともできない」と述べたのだそうですが、正直、同党にとっては、いまはそんなことを述べている局面ではないような気がしてなりません。

立憲民主党、中道改革連合の両党が合流を拒否すれば、財政的には衰退への道を歩むことは確実でしょう。

こうなると、「立憲民主党+公明党」のマイナスのシナジー効果を甘受して中道改革連合への合流を受け入れるか、衆院側の中道改革連合を立憲民主党・公明に再度分党するか、そのどちらかしかないような気がしますが、いかがでしょうか?

新宿会計士: