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比例の欠陥?当打ち記者「候補者どんどんいなくなる」

自民党が比例で本来ならば81議席を獲得していたところ、候補者が不足し、14議席をドント商に基づき他党に譲ったことに関し、取材現場で「当打ち」に当たっていた朝日新聞記者が当時の様子を振り返り、「候補者がどんどんいなくなる」と表現しました。国民が本来選んでいない政党に議席が行くというのは、考えてみたらおかしな仕組みでもあります。

自民圧勝?でも得票数は…

先般の『衆院選はSNS時代本格化と護憲リベラル拒絶感の表れ』でも述べたとおり、2026年2月の衆院選は、「自民党が圧勝した選挙だった」という側面とともに、「(最大野党である)中道改革連合や護憲リベラル系の政党が惨敗した選挙だった」という側面があることは間違いありません。

もちろん、自民党が圧勝したというのは、小選挙区でも比例代表でも圧倒的な票を得たことからも明らかですが、ただ、自民党の得票は選挙区で2771万票、比例代表で2103万票で、これはどちらも「小泉郵政解散」当時と比べると低い数値であるという点には注意が必要でしょう(図表1)。

図表1 過去の国政選の状況(自民・得票)

これに対し、最大野党(民主党または民進党または立憲民主党または中道改革連合)の得票状況は、図表2のとおり、長期低落傾向にあります。

図表2 過去の国政選の状況(民主or民進or立民or中道・得票)

公明票を含めたら中革連は惨敗

しかも、図表2で見ると、今回の衆院選の得票は、比例、選挙区ともに前回の参院選よりは増えたような錯覚を覚えますが、これは正しくありません。2026年衆院選の中道改革連合の得票には、公明票部分も含まれているからです(図表3)。

図表3-1 過去の選挙結果(選挙区・得票)【公明党+民主or民進or立民or中道】

図表3-2 過去の選挙結果(比例代表・得票)【公明党+民主or民進or立民or中道】

したがって、今回の選挙では、「サナエ旋風」はそれなりに吹いたものの、それ以上に最大野党である中道改革連合が「ズッコケた」回だったと断じざるを得ないのです。

もちろん、(その理由が「有権者が積極的にサナエを支持した」のか、「有権者が最悪ではない選択肢として仕方なく自民党を選んだ」のかはわからないにせよ)自民党が支持されていたいたことは間違いないのですが、最大野党である中道改革連合に対しては、有権者が「退場勧告」を突き付けたことも間違いありません。

ふと気になる:なぜ衆院選と参院選で「デコボコ」が生じているのか?

ただ、図表1~3を眺めていると、奇妙な「デコボコ」に気づくことも事実です。

たとえば、選挙区に関しては自民党は(24年衆院選や25年参院選を除くと)毎回2000万票以上を獲得しているものの、衆院選と参院選では獲得票数に大きな違いが生じています。また、比例代表に関しては、民主・民進・立民・中道は比例で参院選だと1000万票割れ、衆院選だと1000万票台です。

このデコボコは、不思議ですが、これについてはこんな仮説が成り立ちます。

選挙区は衆院側だと小選挙区で勝者総取りとなるため死票を防ぐために各党の乱立が抑制され大規模な政党に票が集約されるが参院側だと複数人が当選する中選挙区があるため少数政党乱立となりやすく大規模政党に票が集約され辛い」。

この仮説は一見するとごもっともですが、欠点もあります。

衆院選と参院選のデコボコが、最大野党に関しては比例代表についても発生している点です(自民党だとそこまで露骨なデコボコは確認できませんが…)。これに関しては残念ながら、大きな謎でもあり、著者自身は明確な回答を準備していません。

ただ、これについては次の2028年参院選で、衆参同日選ともなれば、なんとなく見えてくるかもしれません。

参院選が行われるのは今から2年半後の予定ですので、場合によっては国政の大きなテーマに合わせて同日選が行われる可能性もゼロではなく、もしそうなれば、有権者の投票行動を巡るいくつかの謎が解けるかもしれない、などと個人的には期待している次第です。

当打ち現場で朝日記者が「候補者がどんどんいなくなる」

さて、選挙に関連し、こんな話題を発見しました。

候補者がどんどんいなくなる…衆院選の「当打ち」に起きた、自民圧勝の〝余波〟

―――2026/02/24 07:02付 Yahoo!ニュースより【withnews配信】

記事は朝日新聞の江崎憲一記者が執筆したものですが、この江崎氏は取材・出口調査などのデータをもとに、候補者や政党の「当選確実」を独自に判断する手法(当打ち)を担当したことを振り返っています。

じつは、朝日新聞は選挙速報ではかなり確度が高く、今回の衆院選でも「序盤調査」などで早々に自民圧勝を予測していたりしたメディアのひとつですが、江崎記者は投開票日の夜、「自民圧勝の余波に直面」したと打ち明けるのです。

自民は東京ブロックで最終的に8議席分の比例票を得ました。/ただ、29人の重複候補全員が小選挙区で当選したため、比例区で当選できたのは3人のみ。5議席を取りこぼし、公職選挙法の規定により、自民をのぞくドント商上位の政党にその議席が割り当てられました」。

「ドント商」とあるのは各政党の総得票数を自然数で割り、得られた商の大きい順に議席を配分する日本の選挙の基本的な仕組みのことです。

自民党が取りこぼした議席は4ブロックで合計14議席にも達したのですが、江崎記者はこれについて、ざっくばらんにこう述べます。

これほど大量の候補者不足は想定以上でした<中略>候補者不足がなければ、与野党の勢力構成はさらに変わっていたことになります。当打ちはいつも、かくも難しく、そして悩ましいものです」。

国民が選んでもいない政党に議席が行くのは変じゃない?

これについて個人的な感想を申し上げると、この「取りこぼした議席が他党に配分される」という仕組みは、得票順に議席を配分するという意味においては民意を歪めるものであり、是正の必要があるのではないか、という気がしてなりません。

結果的に、国民が選んでもいない政党に議席が行くことになるからです。

もしも自民党が十分な数の候補を擁立していたならば、国会の勢力はまた違った姿になっていたことでしょう(図表4)。

図表4 本来の議席と実際の議席の差異
本来の議席 候補者調整 実際の議席
自民 330 ▲14 316
中道 43 +6 49
維新 34 +2 36
国民 26 +2 28
参政 14 +1 15
みらい 10 +1 11
共産
れ新 +1
減ゆ
無所属
合計 465 465

(【出所】報道等)

中道改革連合は6議席少ない43議席、国民民主党は2議席少ない26議席、チームみらいは1議席少ない10議席、参政党も1議席少ない14議席にとどまっていた計算ですが、それだけではありません。れいわ新選組のように、本来はゼロ議席だった政党がドント商の結果、1議席を得たのは、やはりよくわかりません。

小選挙区と比例代表に配分される議席の割合を1対1にする、重複立候補を認めない、比例代表も参議院と同様の非拘束名簿方式の全国比例とする、といった制度改革も検討の余地はありそうです。

ただ、単純小選挙区が良いのか、単純比例代表が良いのか、といった議論はあってしかるべきではあるものの、わが国の選挙制度を全否定するのもおかしな話ではあります。

実際、日本では「1選挙区で当選者が1人」という制度(衆院小選挙区、参院一人区)、「1選挙区で当選者が複数」という制度(参院複数区)、「ブロックごとに比例代表・重複救済措置」(衆院ブロック比例)、「政党名と候補者名を両方選択可能」(参院非拘束全国比例)などが混在しています。

これについては選挙制度が複雑だという批判もあってしかるべきではありますが、それと同時に多様な方法で代表者を選ぶ仕組みであり、衆院側では最大政党が圧倒的な議席を得やすい反面、仮にそうなったとしても参院側を支配できるとは限らない、といったバランスが成り立っています。

いずれにせよ、事前に決められたルールに従って選挙が実行されたことは間違いなく、その意味において、日本はいまや世界に冠たる自由言論・民主選挙が両立する近代国家であると断定して良いと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (3)

  • 今回衆院選の争点の一つに議員定数削減、が有りました。とっかかりとして、今回のような事態が発生した場合には議員数削減対象として扱う、という提案は有権者の理解を得やすいと思っています。

  • 自民党の比例候補者不足で他政党の候補がゾンビ復活した件については、正直あまり気にならなかった。衆院で単独議席2/3を超えた時点で誤差の範囲、もし自民が素人に毛が生えた新人議員を十分な人数当選させていたとしても仕事ができるかどうかについては疑問がある。
    自民党内でかろうじて当選しながら高市政権を後ろから撃つ面の皮が分厚い人たちと比べたら、今後わりと長く比例ゾンビ復活議員という負のレッテルを貼られることが多い政治家の存在感は繰り返しになるが誤差の範囲。
    とはいえ自民党のミスはミス、有権者が納得できないことをしてしまった責任はあるだろう。しかし、敢えてルール変更を優先的に議論する、という必要性までは個人的に感じない。

  • まー衆院については比例廃止して同数のブロック枠を設けブロック内の小選挙区落選者惜敗率上位から定数充足するまでをブロック枠議員として復活当選させればヨロシかろ
    『比例』分の投票無くなるから選挙資材も事務も軽減できてエコやで