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自民圧勝を批判する人々は民主圧勝を批判していたのか

「自民党は小選挙区の得票が49%だったのに全体の86%の議席を得た。これは不当だ」―――。こんな批判が最近、一部の左派政党、左派メディア、左派活動家らから出ています。ただ、彼らが2009年の民主党の圧勝、あるいは2024年の立憲民主党の躍進を批判したという記憶はありません。「野党が勝ったときには文句を付けず、自民が勝ったときだけ文句をつける」、といった一部メディア、政党、活動家らの態度はいただけません。

中道改革連新代表に「期待しない」が61%

衆議院議員総選挙で自民党が定数(465議席)の3分の2を超える316議席(※追加公認1議席を含む)を獲得して圧勝する一方、最大野党だった中道改革連合の獲得議席が49議席にとどまり惨敗した件は、当ウェブサイトでも先週、ずいぶんと話題に取り上げたつもりです。

これに関して最初にちょっとしたネタです。

自民党は今回の圧勝を受け、高市早苗総理大臣は続投が決まる一方、『ある意味で潔い?中道改革連合が新代表選出…任期1年』でも取り上げたとおり、中道改革連の野田佳彦共同代表らは辞任し、後任の代表に小川淳一氏が選ばれています。

中道改革連合は金曜日、小川淳也氏を新代表を選びました。任期は2027年3月末までの約1年だそうです。ただ、今回の代表選で投票したのは衆議院議員49人のみでした。同党の代表選に参加できるのは同党所属の国会議員に限られているためだそうです。参議院側では立憲民主党も公明党も残ったままであり、代表ら党役員は両党ともに参議院議員で占められています。ただ、野田佳彦、斉藤鉄夫の両共同代表が潔く身を引いたのは、選挙で3回も負けたのに居座った「あの人物」の異常性を浮き彫りにします。自民比例「おこぼれ当選」のまとめ連...
ある意味で潔い?中道改革連合が新代表選出…任期1年 - 新宿会計士の政治経済評論

これを受け、日経・テレ東が13~15日に実施した世論調査が興味深いです。

中道・小川新代表「期待」3割 40・50代は2割どまり

―――2026年2月16日 2:00付 日本経済新聞電子版より

日経によると小川新代表に「期待する」と答えたのは29%で、「期待しない」の61%を大きく下回りました。また、年代別にみると40代と50代で「期待する」が2割にとどまったのだとか。

立民・公明に分けた考察を現在準備中

それはともかく、今回の選挙、この「自民党316議席」、「中道改革連49議席」というだけでも凄い話です。定数に対する宇占有率で見たら、自民党は70%近くに達する一方、中道改革連はわずか10%あまりに留まるからですが、話はそれだけではありません。

自民党は今回、比例(定数176議席)で67議席を獲得しているのですが、じつは本来の獲得議席は81議席であり、候補者不足のため14議席を他党に譲っていて、中道改革連は自民党から6議席を譲り受けています。

ということは、この「候補者不足」がなかりせば、中道改革連は43議席にとどまっていた反面、自民党は330議席を獲得していた可能性がある、ということです。本来の議席差は7.7倍、といったところでしょうか。

さて、中道改革連の獲得議席数については「立憲民主党出身者」、「公明党出身者」に分けたうえで、もう少し深い考察を行ってみたいと思いますが、これについては少し時間がかかるので、別稿に譲りたいと思います(おそらくは一両日中に公開できると思います)。

そういう制度なんだから仕方がない

本稿ではそれに先立って、「自民党が比例で2割しか獲得できなかったのに、議席で全体の7割近く(小選挙区に限定したら86%)を獲得するのはおかしい」、といった言説について取り上げておきます。

といっても、これについては先週の『自民圧勝が気に入らない?「得票2割なのに議席8割」』でも取り上げたとおり、「そういう制度なんだから、仕方がない」、というだけの話に過ぎません(※比例の得票率と小選挙区の議席率を比較している時点で比較のベースがおかしい、という点は脇に置くとして)。

選挙結果が受け入れられないからでしょうか、SNS上では「今回の選挙で自民党に投票した人は有権者の20%あまりだが、その自民党が議席の86%を獲得したのはおかしい!」といった議論が出ています。ただ、棄権票や無効票を母数に加えるのはいかがなものかと思いますが、違和感があるのはそれだけではありません。小選挙区の仕組みを採用しているのは日本だけではありませんし、また、日本は参院全国比例などで民意を細かく反映させる工夫をしていることは無視すべきではありません。有権者の2割しか自民党を支持していないのか今月...
自民圧勝が気に入らない?「得票2割なのに議席8割」 - 新宿会計士の政治経済評論

改めて事実確認をしておくと、自民党はたしかに小選挙区で248議席、つまり小選挙区に配分された289議席のうちの85.81%という圧倒的な割合を占めていますが、そのわりに小選挙区の得票は27,710,493票と、全体の49.09%を占めているに過ぎません。

もちろん、「50%未満の得票で9割近い議席を占有する」、という部分を聞くと、たしかにおかしいと思うかもしれません。じっさい、中道改革連合は小選挙区で12,209,642票、つまり全体の21.63%を得ているわけですが、獲得した議席はたった7議席、割合にすると2.42%に過ぎないからです。

  • 1位政党…49.09%の得票で85.81%の議席を得た
  • 2位政党…21.63%の得票で2.42%の議席を得た
  • 1位政党と2位政党の違い…得票は2.27倍、議席は35.46倍

「切り捨てられた民意」はいったいどこに行ったのか、と疑問に思うのも当然かもしれません。

民意が歪むという指摘も的外れではない

この点、「そもそもそういう制度がおかしい」、という批判があることは間違いありません。

もちろん、単純小選挙区制度を採用する英国などと異なり、日本の選挙制度では比例代表を併用しており、また、小選挙区と比例代表の重複立候補を認めているため、惜敗率などの要件を満たした場合は復活当選が認められます(実際、中道改革連の候補者が何人か復活当選しています)。

ただ、そもそも比例に配分された議席は176議席と定数465議席のうち37.8%程度に過ぎず、全体の6割超に相当する289議席が小選挙区に配分されていて、この289議席は「勝者総取り」となるため、死票が大変に多く出ることは間違いありません。

これだとたしかに民意が歪む、といった指摘も的外れではありません。

今回の選挙結果であれば、(単純比例は難しいにせよ)小選挙区で49%を得た自民党が全体の86%もの議席をかっさらっていくのではなく、獲得議席はせいぜい50~60%程度に留まるべきであり、また、中道改革連も得票に応じて15~20%程度の議席を確保するのが妥当ではないか―――。

そういう意見が出てくるのは、立法論としてはある意味で当然のことでしょう。

「2009年の民主党」を批判したんですか?

ただ、こうした主張が一部の左派政党、左派メディア、左派活動家、あるいは左派政党の支持者らから出てきていることに対しては、個人的には大変に大きな違和感を覚えます。

少なくとも著者が手元に持っている2005年以降の選挙結果に関していえば、比較第1党が50%を超える票を得たことはないにも関わらず、議席については(2021年と2024年を除いて)常に7割を超えているからです(図表1)。

図表1 選挙区得票1位の政党の得票と議席の状況
党派 得票 議席
2005年 自由民主党 32,518,390票(47.77%) 219議席(73.00%)
2009年 民主党 33,475,335票(47.43%) 221議席(73.67%)
2012年 自由民主党 25,643,309票(43.01%) 237議席(79.00%)
2014年 自由民主党 25,461,449票(48.10%) 222議席(75.25%)
2017年 自由民主党 26,500,777票(47.82%) 215議席(74.39%)
2021年 自由民主党 27,626,235票(48.08%) 187議席(64.71%)
2024年 自由民主党 20,867,762票(38.46%) 132議席(45.67%)
2026年 自由民主党 27,710,493票(49.09%) 248議席(85.81%)

(【出所】総務省『衆議院議員総選挙・最高裁判所裁判官国民審査結果』データをもとに作成)

とりわけ、2009年に関しては、民主党が47.43%の得票率で73.67%の議席を獲得していますが、今回、「自民党の圧勝は不当だ」、などと主張している人たち(あるいは一部メディア)は、2009年当時、「民主党の圧勝は不当だ」と主張していたのでしょうか?

「2024年の立憲民主党」も批判したんですか?

ついでにいえば、選挙区で得票が2位だった政党が小選挙区でわずかな議席しか取れていないことが多いのは事実ですが、「選挙区得票2位の政党」について精査していくと、物事はそこまで単純ではないこともまた事実でしょう(図表2)。

図表2 選挙区得票2位の政党の得票と議席の状況
党派 得票 議席
2005年 民主党 24,804,787票(36.44%) 52議席(17.33%)
2009年 自由民主党 27,301,982票(38.68%) 64議席(21.33%)
2012年 民主党 13,598,774票(22.81%) 27議席(9.00%)
2014年 民主党 11,916,849票(22.51%) 38議席(12.88%)
2017年 希望の党 11,437,602票(20.64%) 18議席(6.23%)
2021年 立憲民主党 17,215,621票(29.96%) 57議席(19.72%)
2024年 立憲民主党 15,740,860票(29.01%) 104議席(35.99%)
2026年 中道改革連合 12,209,642票(21.63%) 7議席(2.42%)

(【出所】総務省『衆議院議員総選挙・最高裁判所裁判官国民審査結果』データをもとに作成)

これによると、2位の政党は、たとえば2009年の自民党のように、得票では38.68%を獲得しておきながら、議席では21.33%に相当する64議席に留まったという事例がありますし、逆に2024年の立憲民主党のように、得票率は29.01%に過ぎないのに、議席では35.99%に当たる104議席を得た事例もあります。

著者自身、小選挙区が民意を正しく反映させるという観点から問題が多い制度であることは否定しませんが(とくに死票が多すぎる問題は深刻です)、だからといって「野党が勝ったときには文句を付けず、自民が勝ったときだけ文句をつける」、といった一部メディア、政党、活動家らの態度はいただけません。

結局、このSNS時代に左派メディアや左派政党、左派活動家らが影響力を猛烈に喪失しているのは、こうしたダブル・スタンダードに大きな原因があるのではないか―――、などと思わざるを得ないのですが、いかがでしょうか?

新宿会計士:

View Comments (18)

  • 情報がフローからストックに代わった現在、民主党や立憲が圧勝した時の言動が、掘り起される時代になった、ということですね。

    • 「正論でも、ダブスタは嫌われる。」
      「極論でも、一貫してたら敬意をもたれる。」
      ということですかねえ。

      なんとなく「七人の侍」の千秋実のシーンを連想しました。
      「おら野伏りが憎いだ。」
      「おら苦しいだ。」
      「おら死にてえだ。」

      千秋「ばあさん、そんなこと言うもんじゃない。あの世には悩みも苦しみもなんにもないんだ。」
      三船「嘘を言うな!」
      千秋「?」
      三船「俺は弱い奴が大嫌いなんだ!」

      このばあさん、後にえらいことをやらかしますが、ポリコレ正論はその時になんにも役に立ちませんでした。

    • 「高市総理の支持率は、いずれ下がる」と言い続けていれば、やがて当たるのではないでしょうか。

      • 人間はいつか亡くなる といってるのとおなじですね。そう言えば、東海(東南海の前)大地震がいつか来ると言われて幾星霜。気楽な〜稼業とキタもんだ。

  • まーパーペキな選挙制度なんて存在出来るの?とか思ってしまうワケですが…論点はソコじゃねぇオールドメディアとぱよちんのダブスタ論説スよネ
    ま、「あーまた自爆スイッチポチポチしてンのネ」と生温かくヲチしてましたが、コレも祭りとなるやろカシラン??
    オマケ
    死に票対策(穴多数)
    https://shinjukuacc.com/20260207-00/#comment-377494

  • ダブルスタンダードもさることながら、とにかく他責思考。選挙での敗戦の弁で岡田元代表と安住前幹事長は高市旋風とSNSによる誹謗中傷だと。
    敗因の分析をまともに出来ないあたりが一番の問題のような気がします。

    • 正しい事や前向きな事は日本が強く元気になってキンペーに叱られるので言えないのです。

      • 言えないというより、理論武装できていないという感じがします。まともな知識がないのでは。凄く勉強しているのかもしれませんが、がっかりする発言が多いように思います。人のことは言えませんが。

  • 左派政党の人々や左派政権支持マスコミ・メディアの人々を眺めて不思議に思うのは、自分達のやっている行動様式(=汗をかいて努力する人の足を引っ張り邪魔をする、生産的行動をしない)が、社会人の大部分が所属するであろう組織や社会に訴求できると考えているらしい事。
    が、世の中のまとも組織やまともな社会人は、汗をかいて努力する人が成果を出す事は当然と思うし、そういう人を応援して成果を出してもらい自分が所属する組織が繁栄する事で自身も幸福になりたいと思っているものでしょう。
    左派政党の人々や左派政権支持マスコミ・メディアの人々が所属する組織はその反対の価値観で、誰かが成果を出す事は望ましくない事であり止めなくはならない事。中の人はその価値観が普遍的なものと勘違いして、世の中の組織はみんなこんなもんだと誤解しているのかもしれません。
    そう言えば、左派系の人々は内ゲバ内紛が多い気がします。結構この仮説は合っているような気がします。

  • 時代遅れの北欧出羽守っぷりを生放送で恥ずかしげもなく晒した上に、エプスタイン文書事件の名前すら知らなかったという、あまりにも政治家としての意識が低い小川氏が党代表とは、どこまでもコント集団としては優秀ですわw
    落選組もまとめてよしもと辺りにでも拾ってもらえば良いでしょう。間違っても国民民主党には近づくな。

  • 1.支持層・NPOも含めて既得権益者になってしまい、改革勢力というより抵抗勢力と見做された 2.反対ばかりで代案がない。議論や違う意見に対し否定から入ってしまう。まず受け止め、共感、しかし〜と入る話法をすれば全然違ったかと 3.空想的平和主義と見做された。ロシアのウクライナ侵攻・中華の覇権主義を見ても批判の声を上げない。トランプも大概ではあるがそちらにしか文句を言わない 4.スキャンダル等批判をするがほぼ全てブーメラン。ネット時代は過去の言動等全て掘り返されるということを軽視し過ぎ。スキャンダル追求も大事だが、自らも反省し、再発防止の提言をするような流れの方がまだマシだった 5.支持が明らかに減ってきているからか、自らの岩盤支持者を向いた言動が多過ぎる。内輪ネタ・エコーチェンバー状態になり、浮動層がさらに離れた。離反した層を敵視し過ぎている。

    軽く見ただけでもかなり酷いですね

  • 人権重視のリベラル勢力と、アジアを敵視する極右勢力を一緒にしちゃダメでしょ。
    ネットウヨのみんな、目を覚ましなさい。

    • 記事の主旨と合ってないし人権とアジアは対義語じゃないしネットウヨじゃなくてネトウヨだし
      知的好奇心からほど遠くいろいろ残念でつまらない
      どうせやるなら七誌くらい面白くなれ

      •  論点の混同・すり替え、自画自賛、レッテル貼り、上から目線の啓蒙、そして全てが事実にそぐわないという、今回選挙で大敗した勢力を実に端的に示していて素晴らしいと思います。また、低俗な釣り師ですら、それら勢力の特徴をしっかりと捉えることが出来ているということでもあります。
         掲示板の釣りは「しょうもない輩がマトモな人を相手にわけのわからないことを言う」ことにより、相手が我慢できなくなることで成立します。つまり「こんなのが釣りになる」事自体が、現在の日本の世論・世相を案外証明できていると捉えると、中々面白いのではないでしょうか。

        認証文字:ふみつけ

  • 自民の得票が2割、白紙委任(選挙に行かない人)が5割。合計7割で合ってます。

  • 組織票が常に勝つ選挙なら
    プーチン、キンペーやジョンウンと変わりませんからね
    それが望みなんですかい?

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