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    Categories: 金融

数字で見る「通貨危機生じない世界最大債権国・日本」

POLAND - 2020/04/04: In this photo illustration a one hundred US Dollar and a 10,000 Japanese yen banknotes. (Photo Illustration by Cezary Kowalski/SOPA Images/LightRocket via Getty Images)

当ウェブサイトではなかば「恒例」的に取り上げている国際決済銀行(BIS)の『国際与信統計』(CBS)の最新版が出て来ました。日本は相変わらず10年連続で世界最大の債権国であるとともに、外貨建て債務の額も外貨準備の額に留まるなど、非常に健全な姿を示していることがわかります。ちなみに外貨建て債務の額の少なさは「円安デメリットがほとんど生じない」、「通貨危機が生じない」こととも大きくかかわっています。

BIS統計の公表がやってきた

最終リスク統計の意味

本日は節分だそうですが、当ウェブサイトで節分といえば、国際決済銀行(BIS)統計です(?)。

当ウェブサイトではおよそ四半期に1回の割合で取り上げているのが、国際的な資金の流れに関するBIS統計のひとつである『国際与信統計』です(英語の “Consolidated Banking Statistics” を略して『CBS』と呼ぶこともあります)。

このBIS統計にはいくつかの特徴があるのですが、そのひとつが、「所在地ベース」だけでなく、「最終リスクベース」でも資金の流れを追いかけられる点にあります。

「最終リスク」とは、与信リスクの形式的な所在国ではなく、実質的・最終的なリスクの所在をベースに追いかけることを意味します。

たとえば日本の銀行が米国・ニューヨークに支店を持っていて、その邦銀ニューヨーク支店から英国・ロンドンにあるフランス企業の支店におカネを貸している場合、「所在地ベース」では「米国の銀行が英国の企業におカネを貸している」ことになります。

しかし、CBSの「最終リスク」だと、「日本の銀行がフランスの企業におカネを貸している」という実態が適切に反映されます。所在地ベースは「米国⇒英国」の与信であっても、最終リスクベースだと「日本⇒フランス」の与信として計上されるからです。

このため、いわゆる迂回融資などの影響を排除して、純粋に「どの国からどの国にいくらおカネが流れているのか」を見るうえでは、やはりCBSの最終リスクベースの値が最も手っ取り早いのです。

一部の国がデータを公表していないという限界もあるが…

すなわちこのCBSを見れば、どの国の銀行がどの国に対し、いくらの与信を積み上げているのかがわかりますので、うまく使えば大変有意義な統計です。しかも、公表される頻度が3ヵ月に1回と比較的多いため、これを定点観測すれば、世界各国の国際金融における地位がわかるという仕組みでもあります。

もっとも、このCBSについてはデータを提出している国が現状では先進国などに限られてしまっており、債権国側のデータ数が少なく、また、近年、債権国としての地位を高めている可能性がある中国は、このCBSデータを提供していません。

このため、たとえば「中国から北朝鮮にいくら資金が流れているか」、といったデータについては、入手できないのです。

このあたりは統計の限界であり、仕方がない部分でもあります。

ただ、国際的な金融機関与信の動きを世界共通の尺度で把握することができるという意味では大変有益であることに変わりはなく、その意味では、少なくとも著者自身はこのデータを非常に重宝しているつもりです。

(※ちなみに邦銀は2015年9月期以降、2025年6月期に至るまで、じつに10年連続で対外与信額が世界最多だったりもします。)

債権国と債務国の状況

債権国側のデータ一覧

さて、BISは先月末までにCBSの最新データをアップデートしており、現時点では2025年9月末時点までの数値を拾うことができるのですが、さっそく債権国側のデータを紹介します。これが図表1です。

図表1 最終リスクベース・債権【債権国側】(全報告国集計・2025年9月末時点・上位10ヵ国)
債権国 債権額 構成割合
1位:日本 5兆6123億ドル 14.84%
2位:米国 5兆2314億ドル 13.83%
3位:英国 5兆1315億ドル 13.57%
4位:フランス 4兆4088億ドル 11.66%
5位:カナダ 2兆9858億ドル 7.89%
6位:スペイン 2兆5064億ドル 6.63%
7位:ドイツ 2兆2567億ドル 5.97%
8位:オランダ 1兆8717億ドル 4.95%
9位:イタリア 1兆2047億ドル 3.19%
10位:スイス 9283億ドル 2.45%
その他 5兆6828億ドル 15.03%
報告国合計 37兆8204億ドル 100.00%

(【出所】Bank for International Settlements, Consolidated Banking Statsitics データをもとに作成)

日本が2015年9月以来41四半期連続でトップに!

これによると2025年9月末時点の国境をまたいだ与信は37兆8204億ドルであり、1ドル≒150円と単純に仮定すると、日本円にして約5673兆円(日本の名目GDPの約9.5倍)です。

ただ、この37兆8204億ドルという金額、トップを占めているのが日本であり、その金額はじつに5兆6123億ドルにも達しています。2位の米国(5兆2314億ドル)、3位の英国(5兆1315億ドル)と比べても頭ひとつ抜けている金額です。

いずれにせよ、債権国側で見ると、日米英3ヵ国がトップの常連であり、また、日本がCBSの最終リスクベース与信のトップとなるのは2015年9月以来、なんと41四半期(=10年以上)連続のことです。

ちなみに債権国側で見ると、日米英3ヵ国を除くと、トップ10に関しては、ほかはすべて欧州かカナダです。

欧州諸国(フランス、スペイン、ドイツ、オランダ、イタリア、スイス)についてはユーロ圏(※スイスを除く)を中心とする欧州内では経済の一体化が進んでいること、カナダについては国境を越えて隣国である米国への与信が多いことなどの事情があると考えられます。

このように考えたら、周囲に陸路で国境を接する隣国がなく、地理的に大きく離れた米国やケイマン諸島、欧州諸国などにカネを貸している日本の金融機関の特異性が目立ちます。

日本の与信先はアジア近隣国ではなく欧米豪が中心

なお、日本の金融機関の貸出相手国については『中国や香港からのステルス撤退続く邦銀=国際与信統計』などでも取り上げたとおり、欧米豪などが中心であり、同じアジアの経済大国であるはずの中国は上位10位にやっと入っている、といったレベルです(図表2)。

図表2 日本の対外与信相手国一覧(上位20件、2025年9月末時点、最終リスクベース)

(【出所】日銀『物価、資金循環、短観、国際収支、BIS関連統計データの一括ダウンロード』サイトのデータをもとに作成)

(※なお、タイが第9位にランクインしている理由は、日本のメガバンクグループであるMUFGがタイの銀行を連結子会社化しているためと考えられます。)

債務国側のトップは米国:4位にケイマンも!

さて、CBSの件に話題を戻し、今度は債務国側のランキングを見てみましょう(図表3)。

図表3 最終リスクベース・債権【債務国側】(全世界分・2025年9月末時点・上位10ヵ国)
債務国 債務額 構成割合
1位:米国 10兆0690億ドル 26.62%
2位:英国 2兆5375億ドル 6.71%
3位:ドイツ 1兆9488億ドル 5.15%
4位:ケイマン諸島 1兆8288億ドル 4.84%
5位:フランス 1兆7753億ドル 4.69%
6位:日本 1兆4030億ドル 3.71%
7位:イタリア 1兆0185億ドル 2.69%
8位:ルクセンブルク 9501億ドル 2.51%
9位:香港 8682億ドル 2.30%
10位:中国 8372億ドル 2.21%
その他 14兆5839億ドル 38.56%
合計 37兆8204億ドル 100.00%

(【出所】Bank for International Settlements, Consolidated Banking Statsitics データをもとに作成)

合計金額が37兆8204億ドルで、図表1の37兆8204億ドルと一致している点にご注意ください。

債務国側のランキングはトップが米国であり、10兆0690億ドル(国際与信全体の26.62%)を一国で借りています。その一方で2番目は2兆5375億ドルの英国ですが、債権国側のトップだった日本は債務額が1兆4030億ドルに過ぎず、なんと第6位です。

また、欧州諸国(ドイツ、フランス、イタリアなど)が債務国側にも入っているのは債権国側と同じ事情によるものと考えられますが、債務国側にはケイマン諸島というオフショアセンターに加え、9位に香港、10位に中国が入っています。

アジアの中の日本

アジアの状況①中国と香港

ただ、香港はともかくとして、経済発展著しいとされるはずの中国に、先進国からはせいぜい8372億ドルの資金しか流れ込んでいないというのは意外かもしれません。

しかも、中国や香港の債権国のトップは英国(金額は中国向けが2411億ドル、香港向けが4985億ドル)であり、隣国にしてアジア最大級の金融大国である日本からの融資は中国向けが860億ドル、香港向けが426億ドルに過ぎません(図表4)。

図表4-1 最終リスクベース・債権【債権国側】(債務国:中国・2025年9月末時点・上位10ヵ国)
債権国 債権額 構成割合
1位:英国 2411億ドル 28.80%
2位:米国 1570億ドル 18.76%
3位:日本 860億ドル 10.27%
4位:台湾 508億ドル 6.06%
5位:フランス 482億ドル 5.75%
6位:韓国 268億ドル 3.21%
7位:豪州 164億ドル 1.96%
8位:ドイツ 159億ドル 1.90%
9位:スペイン 54億ドル 0.64%
10位:カナダ 50億ドル 0.60%
その他 1845億ドル 22.04%
報告国合計 8372億ドル 100.00%

(【出所】Bank for International Settlements, Consolidated Banking Statsitics データをもとに作成)

図表4-2 最終リスクベース・債権【債権国側】(債務国:香港・2025年9月末時点・上位10ヵ国)
債権国 債権額 構成割合
1位:英国 4985億ドル 57.41%
2位:米国 910億ドル 10.48%
3位:日本 426億ドル 4.91%
4位:フランス 294億ドル 3.39%
5位:台湾 220億ドル 2.53%
6位:スイス 166億ドル 1.91%
7位:オランダ 152億ドル 1.75%
8位:豪州 102億ドル 1.17%
9位:韓国 88億ドル 1.01%
10位:スペイン 70億ドル 0.80%
その他 1270億ドル 14.63%
報告国合計 8682億ドル 100.00%

(【出所】Bank for International Settlements, Consolidated Banking Statsitics データをもとに作成)

英国の香港向けエクスポージャーが多いのは、単純に英国の大手銀行(HSBCなど)が香港に拠点を置いているからではないかと思いますし、英国の中国向けエクスポージャーが多いのも同様の理由によるものではないでしょうか。

アジアの状況②韓国、台湾、北朝鮮

中国と香港を見たついでに、同じアジアの明細、たとえば台湾や韓国、北朝鮮についても確認してみましょう。面白いのが、アジア各国では日本の存在感が非常に低い、という点です(図表5)。

たとえば韓国の場合、外国銀行からの債務総額は4500億ドルですが、内訳は米国からの調達額が1284億ドル、英国からの調達額が1049億ドルであり、3番手がフランスの594億ドルで、日本はわずか472億ドルと4番手に過ぎません。

図表5-1 最終リスクベース・債権【債権国側】(債務国:韓国・2025年9月末時点・上位10ヵ国)
債権国 債権額 構成割合
1位:米国 1284億ドル 28.54%
2位:英国 1049億ドル 23.31%
3位:フランス 594億ドル 13.21%
4位:日本 472億ドル 10.49%
5位:ドイツ 226億ドル 5.03%
6位:台湾 201億ドル 4.46%
7位:豪州 88億ドル 1.96%
8位:カナダ 25億ドル 0.57%
9位:スペイン 23億ドル 0.52%
10位:ベルギー 8.8億ドル 0.20%
その他 528億ドル 11.73%
報告国合計 4500億ドル 100.00%

(【出所】Bank for International Settlements, Consolidated Banking Statsitics データをもとに作成)

同じく台湾の場合も、外国銀行からの債務総額2762億ドルのうち、トップは米国の942億ドル、2番目が英国の548億ドルで、日本の銀行からの借入額は321億ドルに留まります。

図表5-2 最終リスクベース・債権【債権国側】(債務国:台湾・2025年9月末時点・上位10ヵ国)
債権国 債権額 構成割合
1位:米国 942億ドル 34.09%
2位:英国 548億ドル 19.83%
3位:日本 321億ドル 11.63%
4位:フランス 231億ドル 8.35%
5位:豪州 87億ドル 3.14%
6位:スペイン 30億ドル 1.08%
7位:韓国 28億ドル 1.03%
8位:カナダ 25億ドル 0.89%
9位:ドイツ 18億ドル 0.64%
10位:ベルギー 7300万ドル 0.03%
その他 533億ドル 19.30%
報告国合計 2762億ドル 100.00%

(【出所】Bank for International Settlements, Consolidated Banking Statsitics データをもとに作成)

さらに興味深いのが北朝鮮で、BIS統計上は総額1806万ドル、つまり30億円弱の資金を外国から借り入れていることになっていますが、統計データとして明示されているのはフランス、ベルギー、アイルランドの3ヵ国のみであり、少なくとも日本の銀行の対北朝鮮向けエクスポージャーはゼロです。

図表5-3 最終リスクベース・債権【債権国側】(債務国:北朝鮮・2025年9月末時点・上位3ヵ国)
債権国 債権額 構成割合
1位:フランス 500万ドル 27.69%
2位:ベルギー 100万ドル 5.54%
3位:アイルランド 2万ドル 0.12%
その他 1204万ドル 66.65%
報告国合計 1806万ドル 100.00%

(【出所】Bank for International Settlements, Consolidated Banking Statsitics データをもとに作成)

このあたり、日本は金融大国でありながらも、日本の銀行は近隣諸国にはあまりおカネを貸していないというのは、個人的には非常に興味深い事実ではないかと思います。

外貨建て債務が極端に少ない日本

さて、ここでもうひとつ、「とある目的」でこんな統計も取り上げておきましょう(図表6)。

図表6 日本の債権国としての地位と債務国としての地位(2025年9月末時点)
区分 金額 備考
日本の銀行から外国への債権 5兆6123億ドル 最終リスクベース
日本の銀行から外国への債権 5兆7612億ドル 所在地ベース
うち(相手国から見た)外国通貨建て 4兆5192億ドル 所在地ベース
うち(相手国から見た)自国通貨建て 1兆2420億ドル 所在地ベース
外国の銀行から日本への債権 1兆4030億ドル 最終リスクベース
外国の銀行から日本への債権 1兆4303億ドル 所在地ベース
うち外国通貨建て 5702億ドル 所在地ベース
うち自国通貨建て 8601億ドル 所在地ベース

(【出所】Bank for International Settlements, Consolidated Banking Statsitics データをもとに作成)

この図表は債権国側としてのデータ、債務国側としてのデータをそれぞれ集計したものですが、個人的に注目したいのが、「外国の銀行から日本への債権」、つまり日本が国として借りているおカネの額です。

これについては図表3でも触れたとおり、最終リスクベースでは1兆4030億ドルですが、これを所在地ベースに引き直すと1兆4303億ドルですが、驚くのはその内訳です。

なんと、外国銀行からの債務のうち、うち外貨建ての金額は、たった5702億ドルに過ぎません。同じ2025年9月末時点の外貨準備の額が1兆3412億68百万ドルであることを踏まえると、日本が通貨危機に陥る可能性はほぼゼロです。

これ、なかなかに驚くべき話です。

日本ほどの経済大国が外国の銀行からほとんど外貨を借り入れず、日本円だけで生産活動を行っている、という実態が、こうした細部から見えてくるからです。

ちなみに「外貨建てで外国の銀行から借りている金額」は、韓国が2747億ドル、台湾が1897億ドル、香港が4178億ドル、中国が4584億ドル―――などとなっており、いずれも絶対額で見たら日本より少ないのですが、対外与信のサイズなどと比較すれば、日本の外貨建て債務が異常に少ないことは間違いありません。

ちなみにこの図表6を紹介したのには、円安のデメリットが日本ではほとんど生じない、とする点を説明する目的があるのですが、この点について触れると少し稿が長くなってしまいますので、またどこかの機会で触れたいと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (5)

  • 高市首相が演説で言った「円安でホクホク」をネタに、マスコミと野党が騒ごうと話題づくりに躍起です。
    あの悪夢の民主党時代の超円高が日本にどのような悪影響を与えたか忘却してしまったらしい。
    あのとき マスコミは「輸入品がお安く買えます」、「海外旅行がお安くお得です」と、円高メリットを宣い 民主党を援護していましたね。
    実態は 海外からの安い一般製品が流れ込み、国産品に価格競争力がなくなり 海外に工場移転。造船、鉄鋼なども価格競争力がなくなり韓国中国にとられる。
    大企業から下町の零細企業まで工場閉鎖、廃業など暗い光景山ほどでした。農業も安い輸入品でダメージ大きかったですよ。
    現在の円安と中国リスクで 製造拠点が日本に戻ってきていることを マスコミは言わないですね。
    円安もデメリットだけではないのです。
    高市政権の支持がありすぎて 表面しか見ない愚民を扇動したいのでしょう。「支持率下げてやる」ですから。

  • 今日は節分、鬼(邪気)をはらう日。でも鬼は共生生物であり先住民族。
    彼ら彼女らの通貨はなんだろう、奇貨か。
    お豆が美味しかった。

    • 大江山の赤鬼は、難破漂着したロシア人だったのでは?
      という説もあるそうですね。

      • 赤鬼は酒に酔ったロシア人、
        青鬼は二日酔いのロシア人
        だそうです。

  • 何で省庁削減やろうとしないのか?憲法違反である記者クラブメディアもそうだが、無償・バラマキをやめればいいだけ。政府小さくすればいい。

    >消費税減税、海外メディアから批判相次ぐ…財政悪化や国債・株・通貨のトリプル安懸念

    https://www.yomiuri.co.jp/election/shugiin/20260202-GYT1T00492/

    >まったくないです。庁舎内に「記者クラブ」なる無料のオフィスを勝手に設けて、公務員にお茶くみやコピーなど雑用をさせる。全部、原資は税金です。カネの面から言っても、記者クラブは違憲・違法です。

    https://x.com/Yu_TERASAWA/status/1099203789486059520