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「パンダ中国帰国を嘆き悲しむ日本国民」の偽AI動画

日本に対し、パンダ貸与期限の不延長だ、レーダー照射だ、レアアース輸出制限だ、といったさまざまな「制裁」(?)措置を講じている中国政府が、ここに来て焦りを示しているのかもしれません。「パンダ貸与期限不延長を沿道で嘆き悲しむ日本人」という、ありもしないAI動画を(おそらくは中国政府の工作アカウントと思われるユーザーが)Xにアップロードしているようだからです。

中国は日本にとって最大の貿易相手国

現実問題、日本が中国とどう付き合って行けばよいかについては、端的にいえば著者自身の中ではすでに答えが出ていると思っています。それは、「中国は日本にとって経済的に大きな影響をもたらす相手国」ではあるにせよ、「いずれ脱却しなければならない国」でもある、ということです。

ただし、中国からの脱却、言うに易しですが、行うは難し、です。

なにせ、中国は日本にとっての最大の貿易相手国であり、2025年11月までの貿易額(累計202.8兆円)のうち、対中貿易はその20%あまり、約41.2兆円を占めているからです(図表1)。

図表1 累計貿易額(2025年1月~11月)
相手国・地域 金額 構成比
合計 202兆8294億円 100.00%
1位:中国 41兆1983億円 20.31%
2位:米国 30兆3747億円 14.98%
3位:台湾 11兆6240億円 5.73%
4位:韓国 10兆4230億円 5.14%
5位:豪州 8兆2612億円 4.07%
6位:タイ 7兆3083億円 3.60%
7位:ベトナム 6兆6711億円 3.29%
8位:UAE 6兆2521億円 3.08%
9位:香港 6兆0156億円 2.97%
10位:ドイツ 5兆6438億円 2.78%

(【出所】財務省税関『普通貿易統計』をもとに作成)

これだけを見ると、脱中国はなかなかに難しいといえるのではないでしょうか。

品目別分解をやると見えてくる「垂直統合」

ただし、ここで「金額」だけを見て思考を停止してしまうのは、ちょっともったいないです。普段から当ウェブサイトにてお伝えしている通り、日中貿易を「品目別」に展開していくと、中国が日本を必要としていることは間違いないにせよ、日本が中国を必要としているかどうかは微妙だからです。

たとえば自動車などを除くと、日本の対中輸出品目は「モノを作るためのモノ」、たとえば半導体製造装置だの、半導体等電子部品だのといった「川上工程品」、B2B品目などが中心を占めている(図表2)という実情が見えてきます。

図表2 日本の対中輸出品目(2024年通期、主要品目のみ)
品目 金額 割合
合計 18兆8625億円 100.00%
機械類及び輸送用機器 9兆9185億円 52.58%
うち半導体等製造装置 2兆1770億円 11.54%
うち半導体等電子部品 1兆3130億円 6.96%
うち自動車 9247億円 4.90%
化学製品 3兆3649億円 17.84%
うち有機化合物 6463億円 3.43%
原料別製品 2兆2011億円 11.67%
雑製品 1兆3399億円 7.10%
うち科学光学機器 6763億円 3.59%
特殊取扱品 1兆1858億円 6.29%

(【出所】財務省税関『普通貿易統計』データをもとに作成)

これ、要するに「モノを作るためのモノ」(資本財、製造装置、素材など)を日本が中国に輸出している、という意味であり、いわば、産業面で日本と中国が「垂直統合」している証拠でもあるのです。

対等ではない日中関係

しかも、その関係は対等ではありません。日本の中国からの輸入は、組立加工品や軽工業品といった「川下工程品」、あるいはB2C品目が中心だからです(図表3)。

図表3 日本の対中輸入品目(2024年通期、主要品目のみ)
品目 金額 割合
合計 25兆3132億円 100.00%
機械類及び輸送用機器 13兆1071億円 51.78%
うち通信機 2兆9835億円 11.79%
うち事務用機器 2兆4642億円 9.73%
うち音響・映像機器(含部品) 1兆0341億円 4.09%
雑製品 5兆2916億円 20.90%
うちメリヤス編み及びクロセ編み衣類 9483億円 3.75%
うち衣類 6414億円 2.53%
原料別製品 2兆9707億円 11.74%
化学製品 1兆8744億円 7.40%
食料品及び動物 1兆2770億円 5.04%

(【出所】普通貿易統計をもとに作成)

日本が対中貿易で大幅な赤字を計上している、という点もさることながら、輸入品目の圧倒的多数が最終消費財であるという点にもご注目下さい。要するに、「カネさえ払えば代替可能」な品目ばかりだ、ということです。

中国依存の前提条件が変わってしまっている

以前の『総領事アグレマン拒否でビジネス環境壊す中国政府の愚』でも指摘しましたが、日本企業が中国との関係を深めてきたのは、中国によるコスト(物量、価格、納期、環境、人権など)を度外視した安定した供給元としての魅力が高かったからです。

しかし、高市早苗総理大臣の「台湾答弁」以降の中国による日本に対するなかば常軌を逸した対応などを眺めていると、「物量、価格、納期、環境、人権といった諸々のコストを度外視した安定供給源」というその前提条件自体がすでに崩壊したと断じざるを得ません。

それは、「なにか少しでも政治的に気に食わないことがあると、すぐに経済を政治利用してくる」という点です。

その典型例がレアアースでしょう。

中国以外の国でもまだ代替可能な製品ならばともかく、「中国からしか調達できない」という品目があり、しかもその品目が日本の経済・産業にとって死活的に重要であれば、そんな相手国にそんな重要な品目の調達を依存するというのはリスク以外の何物でもありません。

レアアースに関しては幸いにして、すでにその調達源の多角化が始まっており、しかも片山さつき財相の活躍により、国際社会があっという間に団結して、「脱中国」の必要性に合意するという成果まで上げました(『中国の対日制裁発表からたった1週間で国際社会が団結』等参照)。

南鳥島のレアアース泥の採取が商業ベースに乗るのかどうか、といった点も気になるところですが、それ以上に、現在のわが国は同時並行でレアアースなどの調達源の多様化に取り組んでおり、(過度な楽観は禁物とはいえ)成果については期待して待つ価値がありそうです。

いずれにせよ、日中の産業構造は、「日本企業がコスト優位を求めて中国に合弁会社を設立し、現地で生産した品目を逆輸入する」という側面もあるため、日本企業がこれらの合弁会社などの「損切り」をしたうえで、東南アジア諸国、あるいは日本国内に生産拠点を移していくという活路はあり得る話です。

このように考えていくと、現時点においては、日中関係の悪化を嘆くよりも、どちらかといえば日中関係が悪化していくことを前提として、事態が悪化しないように管理していくことが求められているといえるのではないでしょうか。

そもそも対抗措置の「カード」になっているのか?

さて、中国政府がこれまでに日本に対して講じて来た措置、あるいは彼らが切ってきた「カード」(?)を改めて列挙しておくと、これがなかなかに壮観です。

中国が切ってきた対抗措置の「カード」
  • Xを使った日本人への脅し
  • 日本向けの団体旅行の自粛
  • 日本製のアニメの上映延期
  • よくわからない会合の中止
  • ロックコンサート公演中止
  • 日本人歌手の歌中断→退場
  • 自衛隊にFCレーダー照射
  • パンダの貸与期限の不延長
  • 北京の各国大使に日本批判
  • 日本に対する輸出管理強化
  • 総領事へのアグレマン遅延

(【出所】報道等をもとに作成)

これらの措置、短期的に日本への対抗措置となる可能性があるものとしては、レアアース輸出制限や中国人観光客の訪日自粛などが考えられます(あるいはこれらが対抗措置になると「考えられていた」、というべきでしょうか)。

ただ、蓋を開けてみたら、中国人訪日客の激減は日本への対抗措置としては不十分でしたし(『「旧正月の訪日自粛呼びかけ」は対日制裁にすらならず』等参照)、レアアース輸出制限に関しても上記の通り、日本経済に与える打撃は極めて限定的(というか、むしろ逆効果)だったりします。

パンダ問題で妙なAI動画を見かけるようになった

さらに困ったのが、パンダでしょう。現実問題、パンダを中国に返還することに伴う経済損失の額を計算することは困難です。影響があまりに小さすぎるからです。

上野動物園を訪れる人がこれから激減するのかどうか、あるいは上野公園近辺で売られるパンダのぬいぐるみの売上が減るかどうかは注目点かもしれませんが、それらの効果が数十兆円に及ぶとも、あるいは日本経済を揺るがすとも考えられません。

こうしたなかで、最近、ちょっと気付いたことがあるとしたら、SNSを通じた中華系のネット工作です。

パンダを中国に返還しなければならなくなり、それを嘆き悲しむ日本人、ということなのでしょう。

街の看板の文字がおかしい時点でAI生成動画だと容易にわかりますが、沿道に詰めかけた日本人が日の丸を振りながら泣きながらパンダを見送るというのが「中国人が願う日本人の反応」だ、ということだけはビシビシと伝わってきます。

中国政府系のアカウント?

ちなみに該当する動画をアップロードしているユーザー、「アカウントの所在地」は “China” で「接続元」は “China Android App” と記載されていますが、一般に中国からXにアクセスできるのが中国政府・中国共産党関係者などに限られると考えられることから、これが中国の工作アカウントの可能性は高そうです。

要するに、中国政府がどこまで対日制裁措置を講じても、日本政府としては「高市答弁」をいっさい撤回する気配もなく、それどころか世論調査でも若年層・中年層に関しては内閣支持率がほとんど変わっていないため、中国政府の当てが外れまくっているのではないでしょうか。

だからこそ、こんな雑な動画を乱造することで「沿道でパンダ回収に嘆き悲しむ日本人」という現実には存在しない画像をAIに作成させてバラ撒いているのではないか、と思えてならない次第です。

もっとも、中国政府の措置を過大評価させたいというのが中国の意図であろうと考えられる反面、新聞・テレビなどのオールドメディアによる虚報と長年戦ってきたことで培われてきたメディア・リテラシーに照らし、これで騙される日本人が多数を占めるとも思えません。

いずれにせよ、「中国政府が困っている」ことに関しては間違いないといえるのではないでしょうか。

新宿会計士:

View Comments (20)

  • NHK や新聞社にはパンダ組と呼ぶべき工作班が居て、中国に不利な状況が生まれるとそのたびにパンダ上等、パンダすごいの記事を繰り出してきていました。中国エライ、中国強い、中国すごいが通じなくなって冷笑を浴びるようになり、加担して来た新聞も TV も等しくさげすまれるようになってしまった。不都合な真実を日本を代表する低収益衰退産業は認めたくなくてしょうがない。

    • さげすまれるのはなぜか。ゴマすり根性が透けて見えるからです。

  • 「パンダ中国帰国を嘆き悲しむ日本人」動画で、中国と中道改革連合とオールドメディアは、高市総理の支持率と(選挙での)得票数を下げにかかるのでしょうか。

  • 中国政府は韓国か北朝鮮に雑コラの作り方を教わった方がいいんじゃないか。
    ・韓国のレーダー照射事案の雑コラ
    ・北朝鮮の海水浴場の雑コラ
    こちらの方がまだ笑える。

  • 見せたいのは「効いてる!効いてる!!」としか聞かされぬ御仁。
    もはや、AI動画は「裸の王様生成プロセス」なのかもですね。

    ラストに登場する女性の右手。指の生え方がエイリアンですね。

    • 「中国と韓国に注目され続けたい」そうゆう動機付けが NHK や新聞社に働いている。
      そんな仮定を置いて、記事見出しと内容を検分すれば、はっきりと分かります。それで売り上げがV字回復したり、収益性が改善されたりするはずがない。分かっていないのは当人たちだけです。

  • 真偽は不明ですが大陸からの資金が頼りらしいM新聞。しかし代替手段のAI動画をC国で内製できるようになった(?)のであれば、またC国の経済的体力低下によってM新聞への資金提供は途絶えるのかもしれません。先日のM新聞印刷工場のキノコ(きくらげ)栽培転用の話しはその先駆けなのかも。他のC国バイアス著しいマスコミ・メディアも五十歩百歩でしょう。
    金の切れ目は縁の切れ目。
    それがC国自身の経済的体力低下によりC国関係の多くの分野で可視化していくのを望んでいます。

    • これですね。確かにきくらげ工場立ち上げてました。うちの身内も営業ですが、新聞社勤務で10年前に子会社のスポーツ新聞に転籍となりました。聞くと本社は業績悪化でもスポーツ新聞はそこそこ安泰のようです。

      きくらげ工場
      https://www.tonichi-printing.co.jp/news/2025050901

      • 昔データイーストというゲーム会社が、潰れる前にキノコ栽培に手をだしてました。溺れる会社はキノコをつかむ?。

  • んーナンゾまじに習近平氏を“集近閉”化してゆくプロセスみたいな…
    中共挙げて「キンペー帝に精神勝利を捧げようぞ!」モード全振りなんやろーか
    ココに来てまた軍部に手ェ突っ込んでなんやしよるみたいなし、グリップ回復してきよるンやろかな?
    なんにせよナマジ規模だきゃアルだけに、ウマイコト解体爆破してくれりゃええんやけどなぁ
    知らんけど

  • 中国の簡単にできることはなんでもやる、使えるものはなんでも使う、というのは馬鹿馬鹿しく感じることも多いが、選挙で高市総理を短命に終わらせることが目的と考えれば、結局は選挙結果で判断するしかない。
    途中でどれだけ無駄な手を打とうと、効果があるのかどうかわからない状況であろうと、目的が達せられれば作戦成功。そんな考え方をするのではなかろうか。
    選挙戦の本命がSNSでオールドメディアが単なる賑やかしという役割分担だとして、SNS上で嘘の情報を流しても真偽が検証されて拡散されるが、そこには時間差がある。直前に風向きを変えようとする情報には注意が必要かもしれない。

  • すみません、しょうもない話です。

    引用動画から辿った先の動画投稿主の"曦月"というアカウント、"アカウントの所在地 China"って点でアレなのですが、他の投稿を眺めてみても全てが中国のプロパガンダでした。100%無駄なくプロパガンダ。なのでまあ、一見して怪しいです。
    そのアカウント情報画面の末尾にこんなものが。

    >7,547 フォロー中 2.7万 フォロワー
    >宋 文洲 さんと 原口 一博 さんにフォローされています

    中革連に反旗を翻し新党を作って気を吐く彼の政治家。陰謀論との絡みが無けりゃ支持層ももっと広がったかもしれないんでしょうけどねー。

    ネット化で一定数の情弱・陰謀論者の存在が可視化されましたが、それらの人々が一つのベクトルに組織化・システム化される実例を、とある自称保守政党の躍進で目の当たりにしていると感じています。手口はとっくにマニュアル化されているんだろうと思います。ビジネス応用なら自己責任の世界ですが、政治に応用されると社会全体へ影響が及びます。
    その特定層を見捨てることなく各党が意図して取り合う状況ならベクトルが正しく分散するのでしょうが、陰謀論に頼らない手法が確立しなければディストピアかもしれません。

    なんて、パンダの動画を見て脳内妄想が進んでしまいました。

    • 補足します。
      とある特定政党の支持者が全てそうだと言っているわけではなく、彼の党にはあの層の取り込み機能が整っていると言っております。
      誹謗中傷の意図はありません。

  • 自称権力の監視者はちうごく様が大好きであり思想的に帰依している。朝貢とは、へりくだり、媚を売り、代わりに権威を授けてもらいライバル周囲を威圧する戦術のことを言っている。だから中国をことさら持ち上げることで権力の監視が『できているつもりで』いる。ところが通信技術の発達により幻想は通用しなくなった。権威と思っていたものは紙製の虎であった。いまここ。

  •  愛くるしいパンダが奪われてしまう…なんてこと!許せない!!よし、中国共産党に断固抗議しよう!媚中派ではない政権を応援しないと!!パンダの政治利用と報復的返還の「発言撤回」を求めます!!!

     ってならんの?と思った大熊猫にミリも興味が無い猫派。

     こんな動画作って「本気?www」とバカにされるくらいならいっそ、パンダの代わりに薛剣総領事が大阪から出ていくのを大衆が押しかけ涙する明白なネタ動画を作った方がウケたと思います。
    コメント欄:
    「はよ出てけwww」
    「無駄に壮大」
    「イイハナシダナー」
    「中国やるやん」

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