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今回の衆院選を読む最大のポイントは「サナエ旋風」か

すでに選挙期間に入ってしまったため当ウェブサイトでは個別具体的な政党名ないし候補者名を挙げての具体的な選挙情勢分析や個別政党・個別候補者への投票呼びかけは行いません。こうしたなかで、本稿では過去の選挙戦の数値を振り返りつつ、改めて選挙情勢を読むための、一般的なポイントをいくつか確認してみたいと思います。

選挙期間に入りました

昨日、つまり1月27日は、第51回衆議院議員総選挙の公示日でした。

報じられている通り、すでに主要政党の党首らは全国各地で第一声を上げており、史上最短レベルではありますが、もう選挙戦が始まりました。

著者自身、駅前で演説し、ビラ配りする某政党の関係者を見かけましたし(現役層に支持されていないのか、こころなしか人々がその政党関係者を見る目が冷ややかな気がしました)、また、近所にある某政党支持者経営の店舗でも、さっそく政党名を書いたポスターが貼られているのを目撃しました。

(※選挙関係のビラやポスターには公選法の制限があったような気がしますが、彼らの活動は大丈夫なのでしょうか?)

もっとも、『債「権」や株式で運用する日本基金(仮)構想の問題点』などで事前に宣言した通り、すでに選挙期間に入ってしまったため、当ウェブサイトではこれから投開票日(2月8日)の午後8時まで、個別政党や個別候補者に関する話題をできるだけ回避することとします。

また、もし余裕があれば、前回の参院選(昨年の7月20日)や衆院選(2年前の10月27日)のように、午後8時をめどに個人的な選挙情勢に関する分析をアップロードするかもしれません。

選挙予測の難しさ

ただし、残念ながら著者自身はジャーナリストではなく、一介のビジネスマンに過ぎません。

予測に当たって入手できる資料は、①前回までの衆院選や参院選などの選挙結果に関する公開データ、②各メディアが事前に公表した支持率調査や情勢分析―――などであり、これに著者自身の感覚を加味したものですので、予測精度は決して高くありません。

ちなみにこのアプローチで、前回の衆院選については自民党がそこそこ伸びるとする予測を出しましたが(『「自民苦戦と立民躍進」は本当か』参照)、この予測に関しては盛大に外し、現実には自民党が単独過半数割れし、立憲民主党が小選挙区を中心に議席を伸ばして大勝しています。

一方、昨年の参院選に関しては、これと似たようなアプローチを取りつつも、直前の東京都議選などの分析を加味した予想を立てたのですが(『もし自民惨敗でも石破氏を総裁に選んだ議員の自業自得』)、こちらは議席予想が現実の選挙結果とかなり近く、自分でも正直驚いた次第です。

ついでに石破茂首相=当時=の居座りと、自民党党内から党則第6条第4項を使った事実上の解任動議が出てくる可能性を、この時点で予測していたことについては、ちょっとだけ自慢したいと思う次第です。

このように、当ウェブサイトの2つの選挙予測が大きく違った点については、第一義的には「選挙分析の難しさと」に尽きますが、ほかにも「参考となる指標がどれだけあるか」、という点にも依存するという教訓が得られたのではないかと思います。

たとえば衆院選に関しては石破茂氏が首相・自民党総裁に選ばれて初めてのケースであったため、読みを盛大に見誤る一方、参院選に関しては直前の東京都議選で有権者の動向が何となく読めた、という要因が大きかったのかもしれません(※これが自分なりの勝手な分析です)。

自民党は勝つのか、負けるのか

同じ基準でいえば、今回は高市早苗総理大臣が就任後、初めての解散総選挙でもあるため、正直、自民党がどれほど勝てるのか(あるいはまったく勝てないのか)については、なかなかに読み辛いところでもあります。

野党の動向次第では自民圧勝も自民大敗も両方あり得る』でも述べたとおり、あるいは『自由主義と民主主義を貫徹すれば日本はさらに良くなる』でも指摘しましたが、今回の選挙に関しては、少なくとも自民票が減る要因は2つ、増える要因も2つあります。

  • ①立民公明の組織票…自民票⇩減らす要因
  • ②保守票の食い合い…自民票⇩減らす要因
  • ③左派支持層高齢化…自民党⇧増やす要因
  • ④サナエ旋風の発生…自民党⇧増やす要因

ひとつが、立憲民主党と公明党が「合体」したことで出現した「中道改革連合」です。

公明党は(近年票数が減少傾向にあるとはいえ)全国比例で毎回500~600万票を獲得しており、これを全国289の小選挙区で単純に割り算すれば、1選挙区あたりの「公明票」が18,000~22,000票は存在するという計算です。

そして、小選挙区ではほとんどの選挙区で候補を立てられる最大政党(現在は自民党)と最大野党(前回は立憲民主党、今回は中道改革連合)の一騎打ちとなるため、前回までの総選挙では自民に廻っていた公明票が最大野党である中道改革連合に廻れば、選挙結果がひっくり返る事例が出てくるかもしれません。

仮に公明票が2万だったとして、その2万が自民候補から剥落し、中道改革連合候補に廻れば、両候補の得票差は4万票縮まることになるからです。

これが、自民党が惨敗するとする予測を強く裏付ける推測でしょう。

自称保守政党がどこまで伸びるか(伸びないか)

自民党にとって困った要因は、それだけではありません。

2024年衆院選あたりから、「自民党ではない保守」という選択肢が出現したからです。

その典型例が、今回の衆院選では国民民主党、参政党、日本保守党、チームみらいの各党あたりでしょう(※著者自身はこれらの政党が「保守」だとは思いませんが、本稿では便宜上、「保守系の野党」、ということにしておきたいと思います)。

ことに、今回の衆院選では、自民・中道保守連合の両候補が競っている選挙区などで、参政党が候補を積極擁立しており、比例を含めて全国すべての都道府県で総勢190人もの候補を立てているのだとか。

もし自民票が参政党などに「食われる」効果が発生すれば、その分、自民・参政両党候補が共倒れとなり、結果的には中道改革連合に有利に働きます(いわゆるタナボタ効果)。

ただ、その一方で読めないのが、左派政党の支持層の高齢化が急速に進んでいることに加え、今回の参院選ではいわゆる「サナエ旋風」が発生する可能性があることです。

ことに、左派の支持層の動向は読み辛く、たとえば▼公明票が小選挙区でそのまま中道改革連合の票を上積みする効果が本当にあるのか、▼そもそも公明票は本当に2万票前後もあるのか(国交省票などが含まれたりしていないか)、といった疑問も尽きません。

そして、自民党は過去に小泉郵政解散・小泉旋風(2005年)、安倍旋風(2012年、2014年、2017年)などを発生させているわけですから、カリスマ性のある指導者(小泉純一郎・元首相や故・安倍晋三総理大臣ら)が選挙を率いる効果は侮れません。

(※ただし、2009年に民主党を圧勝させた政権交代選挙のように、自民党にとっての「逆の旋風」が吹くこともありますが…。)

とくに、普段は投票所に足を運ばないような人たちが選挙に行く効果が生じれば(これは2005年郵政解散や2009年政権交代選挙が典型例です)、多少の組織票など完全に吹き飛ばし、第1党が圧倒的な議席を獲得して圧勝することもあります。

過去の選挙戦でわかる傾向:小選挙区の特徴は勝者総取り

参考までに、2005年以降の各衆院選における各党の議席状況は図表1のとおりです。

図表1 衆院選・獲得議席数(選挙区+比例代表合計)
選挙年 最大政党 第2政党 第3政党
2005 自民(296議席・占有率61.67%) 民主(113議席・占有率23.54%) 公明(31議席・占有率6.46%)
2009 民主(308議席・占有率64.17%) 自民(119議席・占有率24.79%) 公明(21議席・占有率4.38%)
2012 自民(294議席・占有率61.25%) 民主(57議席・占有率11.88%) 維新(54議席・占有率11.25%)
2014 自民(290議席・占有率61.05%) 民主(73議席・占有率15.37%) 維党(41議席・占有率8.63%)
2017 自民(281議席・占有率60.43%) 立民(54議席・占有率11.61%) 希望(50議席・占有率10.75%)
2021 自民(259議席・占有率55.70%) 立民(96議席・占有率20.65%) 維新(41議席・占有率8.82%)
2024 自民(191議席・占有率41.08%) 立民(148議席・占有率31.83%) 維新(38議席・占有率8.17%)

(【出所】総務省『衆議院議員総選挙・最高裁判所裁判官国民審査結果』データをもとに作成)

2024年を除いて、どの回でも第1党が全体の過半を上回る議席を占有していることがわかりますが、ここまで極端な差がつく理由はもちろん、小選挙区制度にあります。小選挙区では過半の得票がなくても、圧倒的多数の議席を獲得し得るからです。

このことを示したのが、選挙区における獲得議席数を示した、次の図表2です。

図表2 衆院選・獲得議席数(選挙区)
選挙年 最大政党 第2政党 第3政党
2005 自民(219議席・占有率73.00%) 民主(52議席・占有率17.33%) 無所(18議席・占有率6.00%)
2009 民主(221議席・占有率73.67%) 自民(64議席・占有率21.33%) 無所(6議席・占有率2.00%)
2012 自民(237議席・占有率79.00%) 民主(27議席・占有率9.00%) 維新(14議席・占有率4.67%)
2014 自民(222議席・占有率75.25%) 民主(38議席・占有率12.88%) 維い(11議席・占有率3.73%)
2017 自民(215議席・占有率74.39%) 無所(26議席・占有率9.00%) 希望(18議席・占有率6.23%)
2021 自民(187議席・占有率64.71%) 立民(57議席・占有率19.72%) 維新(16議席・占有率5.54%)
2024 自民(132議席・占有率45.67%) 立民(104議席・占有率35.99%) 維新(23議席・占有率7.96%)

(【出所】総務省『衆議院議員総選挙・最高裁判所裁判官国民審査結果』データをもとに作成)

これも、「石破自滅効果」で自民党が盛大にズッコケた2024年を除くと、どの回でも最低でも3分の2近く、多いときは8割近い議席をかっさらい、2009年では民主党が、それ以外の回では自民党が、それぞれ圧勝していることがわかります。

サナエ旋風なら自民圧勝シナリオもあり得る

サナエ旋風が生じることがあれば、①や②の要因を吹き飛ばし、小選挙区だけで200議席台に乗せるほどの大躍進を遂げる可能性すら視野に入って来るのです。

以上の①~④の要因がどう作用するかが読めないわけですから、今回の選挙戦についての予測はなかなかに困難ですが、ただ、それ以上に注意したいのが、マスメディアの世論調査でしょう。

公選法ではいわゆる「人気投票」の公表が禁じられている(公職選挙法第138条の3)はずなのに、なぜマスメディア各社は選挙情勢調査を堂々と行い、それを公表しても罰せられないのか、といった疑問については、とりあえず脇に置きます。

今回の選挙でも、おそらくメディア各社は選挙情勢調査を行い、報じるでしょうが(その結果を当ウェブサイトで引用することは可能な限り控えるつもりです)、その情勢調査自体が投票動向にも影響を与え得る、といった点も読めません。

ただ、繰り返しになりますが、当ウェブサイトとしては、選挙が始まって以降の調査を引用するなどして、個別の政党ないし候補者の有利・不利に関して論評することについては、2月8日(日曜日)の午後8時までは控えるつもりです。

じつは、今回の選挙でも一定の仮定を置いたうえでの選挙戦の有利・不利に関するシミュレーション計算をすでに始めたりしています。これを公表するかどうかは未定ですが、少なくとも開票日の夜8時より前に、それを当ウェブサイトに公表することはしません。

これについては計算の詳細な条件設定にも依存しますが、いくつかのメディアが報じている「A党が有利だ」、「B党が不利だ」、といった内容とは、ずいぶんとかけ離れた結果も出ていたりもするなど、こればっかりは実際のところ蓋を開けてみないとわからない部分もあります。

裏のテーマは「SNS対オールドメディア」

ただ、当ウェブサイトのポリシー上、現時点で言えることがあるとすれば、それは今回の選挙戦における「裏のテーマ」が、SNSとオールドメディアの影響力合戦にあるのではないか、という点です。

2024年あたりから、新聞、テレビの報道を参考にして投票する人が顕著に減り始め、SNSが選挙に大きな影響を与えることが増えていると指摘されることもありますが、おそらく今回の選挙戦では、その傾向がさらに強まるのではないかと思います。

その意味でも、やはり今回の選挙戦は読み辛いところなのですが、いずれにせよ私たち有権者の側にとって必要なことは、①SNSを含めたインターネットをうまく使い、情報を自分で集めるなどしたうえで自身の判断と責任において投票先を決め、②選挙当日(あるいは不在者投票期間中)に投票することです。

これについては、何度強調してもし過ぎではありません。

どうか読者の皆さまも、選挙権をお持ちの方(日本国籍を持つ18歳以上の成人)は、必ず選挙に出かけ、有効票を投じてくださいますよう、心よりお願い申し上げる次第です。

新宿会計士:

View Comments (12)

  • 今回の衆議院選挙の裏テーマは、(国内外関係なく)認知戦の効果(?)では、ないでしょうか。

  • メディアが報じないから解りにくいような気がするだけで、そもそも
    「石破が嫌い」
    が、シンプルな本質だと思いますよ。

    メディアは「大義がない!」と言うけれども、首班が変わったのだから民意を訪う問うのは当たり前。
    石破がダメダメだったと認める訳にはいかんから、大義がない!という設定にせざるを得ないところがもう説明苦しいですわ。

    政権選択を!というならなぜ石破の時に不信任を出さなかったのやら。
    不信任を出さなかった時の与党の公明党とくっついたら、今度は全面対決姿勢!なのですから、露骨に解りやすく政権選択選挙じゃん、と。
    もはや大義だらけ!にしか見えないのですけどね。

    石破の惨敗(有権者の判断)は、有権者が「ノー」を突きつけたからなので、総裁を変えて首班も変えてあらためて有権者に信を問う。
    戦略的にはそれだけのシンプルな話。

    戦術的には、こちょこちょ細かい小細工がありそうですが、大きな流れとしては
    「石破にノー」だったけど
    「高市早苗はどうか?」のみが焦点。

    中道は、個人的には木っ端微塵に惨敗予想ですが、小選挙区だからどうかなあ。

  • 無党派層の自民投票意向が高め、若年層の自民投票意向も高め。
    サナエ旋風が吹くかどうかは投票率次第でしょうかね。

    >2024年あたりから、新聞、テレビの報道を参考にして投票する人が顕著に減り始め、SNSが選挙に大きな影響を与えることが増えていると指摘されることもありますが、

    当方団塊Jr世代ですが、サラリーマン時代の同期入社連中と10年ぶりくらいに会話しましたが、皆挙って「テレビは全く見なくなった」と。
    マスコミ不信は共通理解でしたね。

  • んー見覚えの無いフリーダイヤル番号から着信し「運転中とかやったら切ってね(意訳)」…いやソレ取った時点でアカンやろ!?
    共同通信も暇やの〜て騙り詐欺電話だったのかしらん??

  • SNS等で1つの選挙区で保守的な政党の候補が乱立し、漁夫の利で中道が議席を獲得したらどうするんやという内容をよく見ますが、それは今の選挙制度でガチンコ勝負になるだけで、1票でも多く得るように候補者が努力するだけなのではと。
    まぁもっとも大阪では旧立憲は元々弱体化著しく(大阪選出の衆議院議員は比例ゾンビばかり)、公明も落ち目(改選4議席の2025年参議院選挙で当選したものの4番目の得票)。ほとんどの選挙区で自民vs維新に参政がどの選挙区で候補者を擁立するかという様相。
    ちなみに大阪5区はれいわの大石あきこ共同代表に自民の杉田水脈氏が立候補。これに国民や維新に参政、共産などが候補者を立てている状況。
    今回は短期決戦なので新人候補にとっては知名度を浸透させることに苦労しそうな選挙戦となり、知名度のある現職が有利に働きそう。

    • 候補者が中道といっても立憲なのか公明なのか判らない。
      政策も同じようなことを言っているので、どちらにしても票は入れてられない。
      入れる政党は決まっているけれど、気持ちが悪い。

  • 全く同意です。
    今回の選挙は読めません。
    自民の圧勝は無いと思っては居ます
    だから、みんな選挙へ行こうぜと言ってるんですがね、

  • *野田氏、サナエ旋風の傍らできりもみ急下降!

    けいしょうでじゅうしょうとはこれ如何に!
    けいしょう(=佳勝会)で重症と云うが如し。
    ・・。