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東京の中古マンション価格は昨年1年間で1割以上上昇

2025年を通じて、東京都内の中古マンション価格は14%上昇したことが判明しました。国土交通省『住生活基本計画(全国計画)』(令和3年3月19日閣議決定)では、「最低居住面積水準」は独居で25平米、2人以上で暮らしている場合は「10平米×世帯人員+10平米」だそうですが、東京都心3区(千代田区、中央区、港区)で子育て用の50~60平米の物件を買おうと思うと「億ション」状態になっている可能性が高い、ということでもあります。

価格上昇続く東京のマンション

東京は集合住宅が全体の7割超

東京都内だと集合住宅(マンションなど)に暮らしている人が多いと考えられます。

昨年7月に公表された『住宅・土地統計調査結果』(東京都集計分)によると、2023年10月1日時点において東京都の「総住宅数」は8,201,400戸、うち人が住んでいる住宅は7,235,400戸で、1世帯あたり人員は1.90人だったそうです(ということは空き家が96万6000戸、ということでしょうか)。

また、人が住んでいる7,235,400戸のうち「共同住宅」が全体の5,180,700戸で、全体の71.6%に達しており、一戸建ては1,900,500戸と全体の26.3%に過ぎません(足しても100%とならない理由は、全体の1.8%にあたる128,800戸が「長屋」だからであり、また、「その他」が25,300戸あるからです)。

いずれにせよ、東京都内(とくに23区内)で暮らそうと思えば、多くの場合、必然的にマンションやアパートなどの集合住宅に暮らすというのが現実的な選択肢であろうと考えられます(もちろん、一戸建てに暮らしている人もいますが…)。

こうした観点から当ウェブサイトで長らく「定点観測」しているデータのひとつが、公益財団法人東日本不動産流通機構(東日本レインズ)が毎月公表している首都圏の中古マンションの成約状況です。

一般にマンションは物件の個別性が強いという性質がありますが、東京都内における中古マンションのなかでも、たとえば「ワンルーム」「ファミリー向け」などの場合は比較的規格化されている傾向にあり、とりわけ独身のサラリーマンなどが暮らす物件は、非常に似たような間取りだったりもします。

こうした観点からは、東京やその周辺地域のように、中古マンションの供給件数が多い地域の場合は、成約状況に関するデータ(たとえば平米単価など)を定点観測すれば、住宅市場の動向をざっくりと把握することができると思う次第です。

中古マンション価格は昨年通じ14%も上昇

こうしたなか、先日、東日本レインズから2025年12月分までのデータ公表されたのですが、これを手に入れて計算したところ、昨年(2025年)を通じて東京都下で平均するとマンション価格が14%も上昇したことが判明しました。全体のサマリーが図表1のとおりです。

図表1 首都圏の中古マンション市場動向(平米単価)
地区 2025年12月 前年同月比
首都圏 85.08万円 +7.03万円(+9.01%)
東京都 120.12万円 +14.89万円(+14.15%)
都心3区 224.82万円 +22.28万円(+11.00%)
城東地区 109.41万円 +18.86万円(+20.83%)
城南地区 131.9万円 +15.57万円(+13.38%)
城西地区 147.25万円 +21.50万円(+17.10%)
城北地区 109.09万円 +12.50万円(+12.94%)
多摩地区 54.64万円 +0.60万円(+1.11%)
埼玉県 43.43万円 ▲1.91万円(▲4.21%)
千葉県 40.4万円 +0.80万円(+2.02%)
神奈川県 60.4万円 +1.48万円(+2.51%)

(【出所】公益財団法人東日本不動産流通機構『レインズデータライブラリー2025年』データをもとに作成)

レインズの用語でいう東京都下の区分

これによると首都圏全体でもマンション価格は平均9%押し上げられ、東京都内に限定すると約14%ですが、東京都下では城東地区と城西地区がとくに大きく伸びました。ただ、近年価格の高騰が続いていた都心部に関しては、上昇率は11%大きかったものの、都内平均を下回りました。

また、同じ東京都内でも多摩地区の場合は価格上昇率は1%少々であり、東京都外は神奈川県が2.5%、千葉県が2%少々の伸びにとどまったほか、埼玉県内だと4%ほど価格が下落していることがわかります。

なお、東日本レインズの用語でいう「都心3区」「城東」「城南」「城西」「城北」「多摩」の定義は次の通りです。

東京都下の区分
  • 都心3区…千代田区、中央区、港区
  • 城東地区…台東区、江東区、江戸川区、墨田区、葛飾区、足立区、荒川区
  • 城南地区…品川区、大田区、目黒区、世田谷区
  • 城西地区…新宿区、渋谷区、杉並区、中野区
  • 城北地区…文京区、豊島区、北区、板橋区、練馬区
  • 多摩地区…都区部・島嶼部以外

データ分析…2008年以降でどれだけ上昇したのか

これについてはもうひとつ、興味深いデータがあります。

当ウェブサイトでは東日本レインズのデータを2008年1月分から入力しているのですが、入力済みの全データと比較してみると、最も安かった時期と比べて神奈川県でも1.79倍、千葉県で1.97倍、埼玉県で2.05倍、そして東京都の場合は2.52倍にまで膨らんでいることがわかります(図表2)。

図表2 首都圏の中古マンション平米単価の推移(成約価格ベース、一都三県)
略称 最高 最低 変化
首都圏 85.47万円(2025年7月) 37.17万円(2009年4月) 2.30倍
東京都 121.06万円(2025年10月) 48.08万円(2012年11月) 2.52倍
埼玉県 45.74万円(2024年9月) 22.26万円(2009年7月) 2.05倍
千葉県 42.44万円(2024年9月) 21.50万円(2012年5月) 1.97倍
神奈川県 60.40万円(2025年12月) 33.70万円(2009年6月) 1.79倍

(【出所】公益財団法人東日本不動産流通機構『レインズデータライブラリー』の2008年以降のデータをもとに作成)

具体的なシミュレーション

東京23区は2~3倍かそれ以上に!

これを東京都内に限定すると、さらに印象的です(図表3)。

図表3 首都圏の中古マンション平米単価の推移(成約価格ベース、東京都内)
略称 最高 最低 変化
都心3区 240.93万円(2025年5月) 69.03万円(2012年11月) 3.49倍
城東地区 109.41万円(2025年12月) 39.37万円(2009年5月) 2.78倍
城南地区 131.90万円(2025年12月) 55.94万円(2009年3月) 2.36倍
城西地区 158.60万円(2025年10月) 57.49万円(2011年12月) 2.76倍
城北地区 109.09万円(2025年12月) 44.63万円(2009年6月) 2.44倍
多摩地区 58.89万円(2024年1月) 31.94万円(2009年5月) 1.84倍

(【出所】公益財団法人東日本不動産流通機構『レインズデータライブラリー』の2008年以降のデータをもとに作成)

これによると都心3区(千代田区、中央区、港区)の中古マンション価格は、(2008年以降で見て)最も安かった2012年11月時点の69.03万円から2025年5月には240.93万円へと、じつに3.49倍にも値上がりしたことがわかります。

また、都心3区ほど極端ではないにせよ、都区内(とりわけ都心に近い地域)では価格が大きく上昇した様子がうかがえます。

たとえば城西地区は2011年12月の57.49万円から2025年10月には158.60万円へと2.76倍に値上がりしていますし、城東地区も2009年5月の39.37万円から2025年12月には109.41万円へと2.78倍に値上がりしていることがわかります。

都心から外れると上昇率はやや鈍る

ただし、こうした傾向は、都心に近い地域で顕著ですが、同じ都区内でも都心部が含まれていない地域の上昇はやや鈍ります。城西は新宿、渋谷区が、城東は墨田、江東、台東区が、それぞれ含まれていますが、いわゆる都心部から離れると、上昇率は緩やかになります。

たとえば城南地区は2009年3月の55.94万円から2025年12月には131.90万円へと値上がりしており、じつに2.36倍になった計算ではありますが、都心3区や城東、城西などと比べると上昇率は緩やかであることがわかります。

同様に城北地区も、2009年6月の44.63万円から2025年12月には109.09万円へと2.44倍に値上がりしていますが(城北地区には一般に都心とされる文京区が含まれます)、やはり都心3区などと比べると上昇率は控え目です。

多摩地区に至っては、2009年5月の31.94万円から2024年1月には58.89万円へと1.84倍に値上がりしているものの、値上がり幅で見れば都区部と比べかなり緩やかです。

なお、一都三県および東京都内各地区の価格推移については、「資料集」として本稿末尾に付しておきます。

最低居住面積で見た東京の不動産

こうした価格変化を見ていると、東京都内などで自宅を購入するためのハードルが上がっていることは間違いなさそうですが、そもそも生活に必要な面積を東京で普通のサラリーマンが手に入れられるものなのでしょうか?

この点『住生活基本法』に基づく国土交通省の『住生活基本計画(全国計画)』(令和3年3月19日閣議決定)では、「最低居住面積水準」(健康で文化的な住生活を営む基礎として必要不可欠な住宅の面積に関する水準)は単身者で25平米とされています(本文のP31)。

また、2人以上の世帯に関しては、「10平米×世帯人数+10平米」とありますので、子なしの夫婦だと30平米、夫婦と子ども2人の4人世帯だと50平米が最低限でも必要、という計算です(ただ、さすがに4人世帯で50平米は少し狭い気がしますが…)。

この点、著者の勝手な見解ですが、独り暮らしだと現実には25平米以下でもなんとかなりますが、先月の『東京都内の狭い暮らしは「徒歩商圏」が前提で成り立つ』でも取り上げた「9平米ロフト付きの物件」のように極端に狭い物件だと、やはり健康な暮らしができるものなのか疑問です。

いずれにせよ、こうした状況を踏まえ、2025年12月時点の単価をもとに各地域の平米数に応じた価格の試算値を計算しておくと、次の図表4のとおりです。

図表4-1 首都圏中古マンション価格試算(2025年12月)
地区 20平米 30平米 40平米
首都圏 1702万円 2552万円 3403万円
東京都 2402万円 3604万円 4805万円
都心3区 4496万円 6745万円 8993万円
城東地区 2188万円 3282万円 4376万円
城南地区 2638万円 3957万円 5276万円
城西地区 2945万円 4418万円 5890万円
城北地区 2182万円 3273万円 4364万円
多摩地区 1093万円 1639万円 2186万円
埼玉県 869万円 1303万円 1737万円
千葉県 808万円 1212万円 1616万円
神奈川県 1208万円 1812万円 2416万円
図表4-2 首都圏中古マンション価格試算(2025年12月)
地区 50平米 60平米 70平米
首都圏 4254万円 5105万円 5956万円
東京都 6006万円 7207万円 8408万円
都心3区 11241万円 13489万円 15737万円
城東地区 5471万円 6565万円 7659万円
城南地区 6595万円 7914万円 9233万円
城西地区 7363万円 8835万円 10308万円
城北地区 5455万円 6545万円 7636万円
多摩地区 2732万円 3278万円 3825万円
埼玉県 2172万円 2606万円 3040万円
千葉県 2020万円 2424万円 2828万円
神奈川県 3020万円 3624万円 4228万円

(【出所】公益財団法人東日本不動産流通機構『レインズデータライブラリー』の成約データの平米単価をもとに試算。ただし価格は任意の平米数にレインズデータの平米単価を単純に乗じて求めているため、現実に成立した価格を示すとは限らない)

都心3区だと子育て物件は「億ション」状態か

現実には、物件価格は平均の平米単価と面積の単純な掛け算で求まるわけではありませんが、ざっくりとしたイメージでいえば、一人暮らし用の20~30平米程度の物件であっても都心3区だと4496~6745万円、都心に近い城西地区だと2945~4418万円という計算であり、なかなか手が出づらい状況です。

(逆に、もしも20平米の物件を2012年11月の時点で都心3区に1381万円で購入していたとしたら、3倍以上の値段になっていた、という計算です。)

しかも、平米数が上がると取得のハードルも飛躍的に上がります。これがファミリー向け物件(たとえば50~60平米程度)だったとしたら、城西地区だと7363~8835万円、都心3区だとじつに1億1241万円~1億3489万円と「億ション状態」となります。

現実に不動産仲介サイトなどを眺めていると、最近は都心部だと、築年数や駅からの徒歩距離などの条件によってはそこまで広い物件でなくても「億ション」はポコポコと出てきている状況であり、たとえば東京で家庭を持ち、子どもを育てるというのも、なかなかにハードルが高く、厳しい状況にあるといえるでしょう。

賃貸データも公表されている

なお、参考までに、レインズのデータは売買だけでなく賃貸に関するものも公表されています。

賃貸データは売買データと異なり、3ヵ月に1回しか公表されませんが、今月(1月)はちょうど10~12月における賃料データが公表されるタイミングでもあります。

これについては本日中に公表する予定の『東京マンション賃貸価格上昇はこれから本格化の可能性』で詳しく述べたいと思う次第です。

資料集:グラフ

なお、本稿末尾にレインズデータをもとにした地区別の平米単価推移を置いておきます。

 

新宿会計士: