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廃税は「SNS個別撃破」方式の実現を目指すのも一手

高市早苗総理大臣が年頭の記者会見で、ガソリン税廃止を巡って「やればできるんです」と力説したことが、ちょっとした話題を呼んでいます。自民党はそれを阻止していた側だからです。また、年収の壁の件で「2割」(あるいはそれ以上)を切り捨てたことも失望すべき点でしょう。ただ、世論が税制を動かしたことは間違いありません。その意味では、相続税、所得税、「税と名乗らぬ税」(社会保険料など)についても、「個別撃破」していくというのはひとつの手かもしれません。

高市総理「やればできるんです!」

インターネット上で、ちょっとした話題となっているのが、高市早苗総理大臣の今月5日の年頭記者会見です。

高市内閣総理大臣年頭記者会見

―――2026/01/05付 首相官邸HPより

ご興味がある方は、読んでみてください。また、動画もありますので視聴してみてください。

前任者があまりにも酷かったから、という事情もあるのかもしれませんが、高市総理には一本筋が通っているうえに、何より明るいので、「未来に対し希望が持てる」ような内容であることは間違いありません。

ただ、ここで注目しておきたいのが、高市総理のこんな発言です。

昨年は、ガソリン税及び軽油引取税の暫定税率が廃止されることが決まりました。半世紀以上にわたって続いてきた暫定税率をなくすことができた。やれば、できる。やれば、できるんです」。

大変力強い発言です。

実際、ガソリン価格の下落というかたちで、私たち国民はその恩恵を受け始めています。

たとえば「e-燃費」というウェブサイトの『最近3年間のレギュラー価格』というページに掲載されたグラフによると、(本稿執筆時点で)過去3年で最高だったのが2025年4月の172.6円でしたが、これが2026年1月には141.3円にまで低下していることが確認できます。最高値から20%ほど下がった計算です。

自民党はむしろ妨害した立場

ですが、これを高市総理が手柄であるかのように誇ることには、やはり違和感を覚えます。

このガソリン減税については、間違いなく、国民民主党の功績でしょう。いわゆるガソリン税などの暫定税率の廃止は、野党である国民民主党がかなり強く主張してきたものであり、高市総理のイニシアティブが加わったことは間違いないにせよ、同党が主張し続けたことが廃止につながった格好です。

自民党はむしろ、宮沢洋一・前税調会長ら宏池会系の「ザイム族」を通じて、ガソリン減税を徹底的に妨害してきた立場です。高市総理自身は宏池会系の人物ではありませんが、これまで減税を妨害してきた自民党の総裁という立場でもあるのです。

そのような人物の口から、「やれば、できるんです。」といわれても、なんだか困惑する限りです。

もっとも、著者などは、政治家を評価するときは必ず「是々非々」で行うべきだと考えている人間です。

高市総理がいわゆる「台湾答弁」で一歩も引かなかったことについては、個人的には極めて高く評価したいと考えていますが、それと同時に「年収の壁」で「2割(※)」を切り捨てたことについては、失望以外の何物でもありません。

(※ちなみに高市総理が切り捨てた「年収665万円超の層」は、子育て世帯に限定すれば、現実には「2割」ではなく、それよりもかなり多いのではないか、といった指摘もあります。この点について、著者としては十分な検証はできていないものの、著者自身の肌感覚とも合致しています。)

その意味では、現時点における著者個人の「高市評」は、「前任者よりかなりマシ」で「外交安保については高く評価したい」が「経済政策は不合格」、といったものです。

相続税は日露戦争を契機とした税制

ただ、本稿の目的は、別に著者による手前勝手な「高市評」を読者の皆さまに押し付けることではありません(高市総理に限らず、内閣総理大臣を含めた政治家の評価は、読者の皆さまの自己責任においてお願いしたいと思います)。

本稿で強調しておきたいのは、税金というものは、いちど導入されたら滅多なことでは廃止されないものである、という点です。

有名なものでいえば、相続税があります。

国税庁の『相続税の解説書』というサイトによると、相続税はもともと、日露戦争の戦費調達を目的として創設されたものです。原文は次の通りです。

相続税は、そもそも日露戦争の戦費調達のため、明治38年(1905)に通行税とともに創設されました。相続税は、相続・遺贈または死因贈与により財産を取得した個人を納税義務者とし、相続財産を課税標準としました」。

ところが、現在の財務省の言い分は、これとは全く異なります。

財務省『Q&A ~身近な税について調べる~ 「相続税について教えてください。」』によると、相続税は「資産の再配分」、「経済格差の縮小」、「経済格差の固定化を防止する」などの機能がある、としています。

相続した財産の一部を国に納めていただき、広く社会のために使うことになるので、相続税には、資産を再分配する機能があります。また、相続した財産が大きいほど相続税額は大きくなるので、生まれた家庭の経済状況による差を縮小させ、格差の固定化を防止する機能もあります」。

貧富の格差是正?相続税は一般財源ですが?

この財務省の言い分、どこかで聞いたことがあると思いませんか?

そう、いわゆる「貧富の格差是正」論です。

共産主義者や社会主義者らが好む論調ですが、ただ、一見するともっともらしい言い分であるがために、これを支持する人がいることは間違いありません。

しかし、もし相続税が「貧富の格差の是正」に活用されているというのであれば、低所得者向けの給付のための目的税として使われるのがスジですが、現実にはそうなっていません。相続税は単なる一般財源として、肥大化した官僚組織の無駄遣いの原資になっているのが関の山だからです。

(その無駄遣いの筆頭が、2025年当初予算ベースで140兆円を超えたとされる社会保障費です。)

しかも、現在の相続税法は、基礎控除額が「3000万円+600万円×法定相続人の数」です。

昨今のように不動産価格が高騰しているなかで、(居住用資産の特例はあるにせよ)うっかりするとあっという間に評価額が膨らみ、相続税を納税するために不動産を売らなければならない、といった事態は頻発しているのではないでしょうか。

所得税の累進課税というおかしな方法

そういえば、わが国の所得税法は、所得水準が上がるほどに税率も上がるという、いわゆる累進課税が適用されていますが、考えてみればこれもおかしなルールです。

試算してみるとわかりますが、課税所得が195万円未満の場合は税率が5%ですので、たとえば課税所得が100万円だったという人は、(復興税と住民税均等割を無視すれば)税負担は5万円で済みます。

ところが、所得税の最高税率は45%です。課税所得が4000万円以上の場合、4000万円を超えた部分には45%の税率がかかって来るのです。

このため、課税所得が5000万円の人の場合は、所得税額は17,704,000円、実質的な負担率は35.41%に跳ね上がります(これに復興税や住民税が別途かかってくるため、実効税率は50%近くに達します)。同じく課税所得が1億円ならば、所得税額は40,204,000円(!)です。

課税所得が100万円から1000万円に10倍となった場合、所得税額は1,764,000円と35.28倍に、そして1億円に100倍となった場合には、所得税額は4020万円へと、じつに804倍(!!)に増える計算です。

  • 課税所得百万円…所得税額5万円(1倍)
  • 課税所得千万円…所得税額1,764,000円(35.28倍)
  • 課税所得一億円…所得税額40,204,000円(804.08倍)

なんとも「トチ狂った税制」です。

もちろん、「担税力」に応じてある程度税率が変わるのは諸外国でも一般に見られる現象ですし、また、日本はかつて高額納税者には区分によっては90%(!)という頭のおかしいレベルの税率が課されていた時期がありますので、これと比べれば「マシになった」という主張は成り立つでしょう。

ただ、「過去と比べて累進課税がマシになった」、「諸外国にもそのような例がある」からといって、現状の極端すぎる累進課税が是認されるというのは、ちょっと議論が雑過ぎます。

結局、この所得税の累進税率が是認されるのも、俗に「貧富の格差の是正」「担税力に応じた賦課」、といったものが考えられるのですが、これにもかなりの無理があります。所得税は一般財源であり、累進税率とそれ以外の税率で区分管理されていないからです(財務省の予算・決算を見てもそのような記述はありません)。

ガソリン税に倣い個別撃破でいかが?

さて、こうしたなかで本稿で提案しておきたいのが、税制に関する見直しを国民世論にしていくことの重要性です。

なぜその税制が制定されたのか。

なぜその税率が設定されたのか。

税と名乗らない税は適正なのか。

当たり前ですが、社会環境は常に変わっていきます。

ガソリン暫定税率の廃止は野党である国民民主党が主張し続けてきたものですが、その裏には同党を支持していた多くの有権者が控えています(想像するに、その多くは現役勤労層でしょう)。

残念ながら同党は「年収の壁」の「ミッション・コンプリート」で盛大にやらかした(『政治家が「税社保重すぎ問題」に真摯に向合うべき理由』等参照)ため、SNS上では少なくない有権者が同党を批判しているようですが、べつに失望する必要はありません。

「減税」「社保下げ」を前面に掲げれば選挙に勝てるということがわかれば、減税などを掲げる政党が同党以外にも出てくる可能性はあるからです(意外と自民党あたりが旧宏池会系議員を粛正し、減税政党に姿を変えてくれる可能性だってあります)。

なにより、相対的にSNSの力が伸びていけば、新聞、テレビを中心とするマスメディア(≒オールドメディア)が社会的な影響力を失い、官僚の意見をさも世論であるかのごとく捏造するという今までの手法が通用しなくなります。

こうしたなかで、ガソリン税の廃止は、大変良い事例であることは間違いありません。「この税制、ここがおかしい!」という点をSNSなどで盛り上げ、個別撃破していくというのも、アプローチとしては大変に行く王ではないかと思うのです。

当ウェブサイトでは社会保険料の抜本的改革の必要性を提唱していますが(『改めて問う:社会保険が「保険」と呼べない理由とは?』)、それと同時に、社会保険料に関しては議論がかなり分かれる部分でもあるため、今年すぐに抜本的な改廃ができるというようなものでもないでしょう。

しかし、社会保障改革の必要性を強調し続けるのは必要ですが(当ウェブサイトでももちろん、今後、定期的にその論点の問題提起を続けるつもりです)、それ以上に有意義なやり方は、少しずつ廃税の実績を積んでいくことです。

せっかくSNSのおかげで自由主義が貫徹する社会となったのですから、私たち国民/有権者も、SNSなどを通じて積極的に意見を発信していかなければもったいないと思うのですが、いかがでしょうか?

新宿会計士:

View Comments (10)

  • 所得税も相続税も累進課税で、自分で努力しても、また、親から受け継いでも、3代も経てば、すべて財産は国に吸い上げられる。
    要は、国は、私有財産制度を実質的に否定しているようです。
    累進課税がこれほど酷くなる前の戦前までは、「篤志家」なる方々が居ましたが、今は根絶やしにされてしまいましたね。
    米国などは、まだ累進課税がそれほどでないので、富裕層には寄附だとか慈善事業だとかする習慣(社会的要求)が残っている。
    しかし、日本の富裕層は、そんなことをする前に、国にむしり取られて訳のわからないこと(公金チューチュー)に使われている。

    • 相続に関しては、私有財産制度に密接に関係しており、それに付随して、婚姻制度(社会的、法的制度)や「姓」の問題にも関係しているのかなと考えている次第です。

    • 私有財産制度を否定した 班田収授の法が成り立たなくなり 三世一身法、墾田永年私財法と進化してきたのに 財務省は奈良時代に戻りたそう。しかも憲法29条にも引っ掛かりそう

  • 働いて、働いて、働いて参ります体制により税収を稼ぐという基本姿勢。個別撃破ということでインパクトがありそうなのは、医療機関による営利行為の解禁では。株式会社病院を解禁して、医療の抜本的な改革が必要です。既にファンドが医療機関を買収しており、それを事実上、厚労省も黙認。営利行為を認めて医療保険の負担を減じるべきかと思います。ファンドがクリニックまで買収してロールアップを開始しています。

  • 廃税を個別撃破で狙うというのは面白いと思います。お隣の国は、廃「人権侵害」で個別撃破されだしていますね。ISSBのサステナ開示規制で上場企業は、さすがに人権侵害国家の片棒を担ぐわけにはいきません。有価証券報告書で開示する必要があるのに加えて、笑えるのは、どう改善するのかまで記載が求められています。中国だけでサプライチェーンを回すという方法を考える人もいるかもですが、そもそも連結の範囲に入ってしまっては、開示がMustです。習近平さんも人権侵害で各国の企業がサプライチェーンから中国を外していることが、中国の国民にバレる前に、外国企業の撤退理由を作りたいのだと思います。廃人権侵害は、強烈です。

  • 私は、ガソリン減税の功績の件については、高市総理の功績も大きいと思う。
    理由は、50年変えられなかった総裁の中で高市総理が変えたから。
    (他の人にこんなに早く出来たかなぁ~、と思う)

    さておき、SNSで個別に撃破、大賛成です。
    私は手始めに「再エネ賦課金」の廃止を訴えたいです。

    ▽再生可能エネルギー発電促進賦課金の推移
    https://pps-net.org/statistics/renewable
    2012年 年額792円
    2025年 年額14328円

    マジふざけてます。小さく生んで大きく育てる。官僚の考えそうな事です。
    自然破壊して、動かせる原発を動かさず、中国製のパネルを使うためにひたすら徴税され続ける悪税です。
    そもそも「再エネ賦課税」って言えよ、と思います。

    本丸は消費税、社会保障でしょう。
    相続税も目的税と言いつつ一般財源化、消費税も福祉の為と言いつつ一般財源化。
    財務省は本当に信用できません。声を上げていかないと毟り取られていくだけで、そして左翼の財源にされるだけです。

  • >「外交安保については高く評価したい」が「経済政策は不合格」、といったものです。

    確かに今回の税制改正については不十分ですが、高市首相の立場に立てば、一気に自分の政策を実行するという事も、党の運営を考慮する立場であれば難しいのかなとも思います。
    特に今回後ろ盾となった麻生副総理への配慮あるいは遠慮があるように感じます。
    麻生氏は財務大臣の経験者でもあり、財務省的思考にかなり染まっているのではないかと私は感じています。
    小野寺氏を税調会長に据えたのも、宏池会ではなく、一気に財務省派を排除しては不味いのではという麻生副総理への配慮もあったのではないでしょうか?
    また、国民の税負担が際限なく拡大していく要因として、財務省と厚生労働省が主導権確保のため、収入確保を競っているという背景もあるのではないでしょうか?
    まずは、社保と徴税を一つの組織にまとめたほうが良いと思います。
    税制のあるべき姿については、今後政府内で議論を深めていただく事を希望します。
    本格的な税制と社会保険制度の見直しの議論は、高市政権が次回の衆議院選挙で単独過半数を超えてからにならざるを得ないと思います。
    高市さんが本当に税制や社会保険改革を考えているのなら、維新や国民民主との協力関係に加えて、内なる敵との戦いに勝利する必要があります。

    • 高市さんにとっては、議会内で言えば左派野党や党内左派は当然ながら抵抗勢力であり数も多い。既得権益を維持したい官僚組織やマスコミ・メディア勢も抵抗勢力でしょう。これに加えて高市さんの政策支持者が完璧主義者であって100%の成果を出さないと落第と言い出したら高市さんには辛すぎると思うのです。
      しかも周りは抵抗勢力だらけなのですから、高市さん政策側に振り子が大きく振れたら、もしも高市政権に何かあったら揺り戻しが大きくでて「石破以上が出現」になっちゃうって悪夢も有り得なくも無い。
      本当に力を発揮できるのは自民党党内左派を除いた(風見鶏を含む)議員で過半数を確保できた時でしょう。
      そもそも私は前回の総裁選議員票で宏池会の抵抗に遭いまさかの落選、その後の石破政権によるノラクラ運営に耐え、今回の総裁選でも小泉氏を推す反対勢力の抵抗、更には総裁選勝利後もx連立政権を組む公明党の離脱を乗り越えたことに驚きを覚えるのです。この狭くて困難な道をよくもまぁ脱輪すること無く渡ってきたなぁ、と感嘆する方なのですが甘いですかねぇ。

    • 僕も現状をもってやむなし合格点としますね。
      (アバタもエクボかもですが)

      自民党の中ですら石破に投票した189人は裏切り者な(少なくとも信用できない)訳だから、ゆっくり詰め将棋を進めて行くしかないのが現実。

      左遷だけど適材適所であれば、覚醒して頼もしい右腕に化けてくれる例もあります。
      「立場が人を作る」
      ような人事もありますから、とりまナマ温かい目で見守ろうと思っています。

      解散説は読売新聞のトバしですな。
      たぶん。
      現状でもとくに不都合がないのですよ。
      内輪の敵の189人は解散がこわい。
      (落選するから)
      維新も国民も解散がこわい。
      (石破が嫌で自民党から逃げた票でバブリー得票してたから)
      高市早苗に反対するより、丸のみで延命させる方がメリットあるし、それで高市早苗ファンから味方認定を勝ち取れたら次の選挙も安泰ですし。