X

IT化でサイフも働き方も変わる

POLAND - 2020/04/04: In this photo illustration a one hundred US Dollar and a 10,000 Japanese yen banknotes. (Photo Illustration by Cezary Kowalski/SOPA Images/LightRocket via Getty Images)

サイフを忘れて愉快な気持ちになれる時代は、まだ少し先のことでしょうか。ただ、社会のIT化がかなり進んだことで、キャッシュレス決済、リモートワークなど、さまざまな恩恵を、私たち現代人は享受できるようになりつつあります。こうしたなか、もし目ざとい人がいれば、これからは都心部ではなく、都心まで鉄道でアクセスできる郊外で少し広めの物件がお買い得になるかもしれません(※投資は自己責任ですが)。

サイフを忘れて出かけてなぜ愉快なのか

IT化の進展は、私たちの暮らしにどういう影響を与えているのか。

思えば、便利な時代になりました。

昨今の我々は、新聞、テレビがなくても、世の中の出来事をリアルタイムで(しかもかなり正確に)知ることができるようになったわけですし、ネットとPC/スマホが手放せない、という人も多いでしょう(もっとも、そのせいで著者のような「ネット廃人」みたいなのが出来上がることもあるのですが…)。

ただ、この便利さ、あるいはITの恩恵は、べつに情報入手の分野だけで生じているものではありません。

たとえば支払い(決済)の世界でもそうですし、仕事の世界でもそうです。

かなり以前の『【速報】サイフを忘れて出かけても「愉快」で済む時代』では、買物しようと街まで出かけたところ、サイフを持参するのを忘れてしまい、それが「愉快だ」と歌にされ、日曜日ごとに全国的に流されるようになったという東京都世田谷区在住の個性的な髪形の既婚女性についての話題を取り上げました。

昭和44年(1969年)以降、現在に至るまで、ほぼ毎週日曜日に全国のお茶の間に「買物しようと街まで出かけたところ、サイフを忘れたことが愉快だ」などとする報告が流され続けている既婚女性がいるそうです。サイフを忘れて何が愉快なのか、という気がしないではありませんが、最近だと案外、サイフを忘れても「愉快」で済む時代が到来しつつあるのかもしれません。スマホにキャッシュレス決済やマイナンバーカードなどを搭載できるようになりつつあるからです。【速報】サイフを忘れて愉快!?買物しようと街まで出かけたが…日本人の多...
【速報】サイフを忘れて出かけても「愉快」で済む時代 - 新宿会計士の政治経済評論

何度も繰り返しで恐縮ですが、せっかく買い物をするために都心部まで出て来たであろう個性的な髪形の既婚女性が「サイフを忘れたこと」がそんなに愉快なのか、そしてそのことは毎週のように執拗(しつよう)に追及すべき論点なのか、個人的にはやはり疑問でもあります。

IT化とキャッシュレス化

時代背景と「どうやってサイフ持たずに街まで出かけたのか」

ただ、この世田谷区在住の個性的な髪形の既婚女性が買い物しようと街まで出かけたがサイフを忘れるという出来事が生じたのは、少なくとも昭和44年(1969年)ごろかそれ以前であろうと考えられますが、たしかに当時、サイフ(現金)を忘れるとなれば、それは大ごとでした。

街中で立ち往生する事態にもなり得たからです。

もちろん、それなりの上顧客であれば、有名デパートでツケ払いで買い物することができたかもしれませんが、世田谷区在住の個性的な髪形の既婚女性、敷地面積約70平米前後とみられる一戸建て(平屋)に居住しているとはいえ、当時の世相に照らせば大金持ちというカテゴリーではなさそうです。

このように考えると、一般庶民がサイフも持たないで都心部に出て行けば、何もできなくて詰みます。

もっとも、サイフを忘れていたとしたら、そもそも行きの電車・バスの運賃が払えないのではないか、といった疑問もわきます。

どうもこの世田谷区在住の個性的な髪形の既婚女性、作中の描写で見ると、最寄り駅まではバスでアクセスしている様子があるため、そもそも「買物しようと街まで出かけたがサイフを忘れて愉快」、という状況が生じ得るのかは疑問でもあります。

このあたりは後年の研究にも委ねるべき論点のひとつなのかもしれません。

都会ではサイフを持たなくても結構過ごせてしまう

さて、以前からしばしば報告している通り、著者自身はかなり以前から、デジタルデバイスの強みと限界がどこにあるか、という論点について、実証研究を行っています。

その際に参考になるのが、ひとつは携帯電話(スマホ)の使い勝手の向上、ひとつはPCなどの性能とリモートワーク環境です。

たとえば、「現代ビジネスマンはどこまでサイフを持たずに過ごすことができるか」という論点は、興味深いところであり、個人的にはかなり長い期間、実験しています。その観点は、①スマートフォンひとつでどこまで街歩きができるか、あるいは②スマートフォンひとつで出張ができるか、といったものです。

このうち①の論点に関しては、東京や大阪といった大都会の都心部に限定していえば、かなりの程度、サイフなしでも過ごせちゃう―――、というのが現時点の結論です。

交通機関(JR/地下鉄/私鉄)などはほとんどの路線で交通系電子マネーが使えますし、同じく主要コンビニや大手系スーパーなどでも何らかのキャッシュレス決済に対応しています(某回転寿司チェーンでは交通系ICが使えませんがクレジットカードなどは使用可能です)。

電子マネー利用可能店舗が急速に広まる?

しかも、その電子マネー等が使える範囲が、昨今、さらに拡大しているようなのです。

著者の主観ですが、少し前までは現金しか使えなかったような街中の自販機や個人営業の飲食店などでも、最近だとキャッシュレス決済(クレジットカード、交通系電子マネー、コード決済など)に対応しているケースが増えているからです。

たとえばご近所にある個人経営の飲食店では、最近、「PayPayが使えるようになった」などと言っていましたが、やはりキャッシュレスに対応したら多少は来店者が増えるようです(体感的にはキャッシュレス決済を導入して売上が1~2割はアップした、とのことです)。

さらに、驚くべきことに、街中の自販機でも電子マネー等に対応した機種が増えてきています。それも交通系などの電子マネーだけでなく、 Apple Pay や Google Pay などが使える自販機もあります。

自販機といえば、公共施設(公営プールなど)や食堂などのチケット自販機も電子マネー対応型が増えてきているようですし、そういえばタクシーだって(とくに都心部などでは)キャッシュレス決済に対応しているものが多く走っています。

著者の例でいえば、ためしに家計簿をつけてみると、実際、3週間前後、まったくといって良いほど現金の支払いがないこともあります。

それもそのはず、キャッシュレス決済の多くはその名の通り、チャージする時点でも使用する時点でも、現金(紙幣、コインなど)を必要としないからです。

たとえば最近の交通系ICはスマートフォンに搭載することが可能であり、したがって、スマートフォン上で(あらかじめスマホに登録してあるクレジットカードによって)チャージが完了してしまいますし、サラリーマンであれば給与も手渡しではなく銀行振込というパターンが多いでしょう。

したがって、世田谷区在住の個性的な髪形の既婚女性の時代には一般的だったとされる「給与現金手渡し」と比べ、現代の取引は多額の現金を持ち歩くことがほとんどなく、それだけ世の中が安全になっているといういいかたもできます(もちろん、サイバー犯罪等の被害がまったくのゼロ、というわけではありませんが…)。

ここまでくると、将来的には、紙や金属のおカネではできないこと―――たとえば「円単位未満」の支払い―――だって可能になるかもしれません(それが良いことかどうかは別として)。

地域によってはサイフが必要

もっとも、この「キャッシュレス決済が普及している」というのも、現状では、特定の地域だけに成り立つ話かもしれません。

先日は某地域に泊りがけで出かけてきたのですが、結論からいえば、やはりサイフは必要でした。

現地に行くまで、あるいは現地に行ってコンビニなどで買い物をする、といった流れにおいては、基本的には現金を使う局面はありません。この地域、数年前から公共交通手段に電子マネーが使えるようになったからです。

  • 空港まで行く(交通系電子マネー)
  • 空港で食事する(モバイルオーダー、Apple Pay)
  • 飛行機に乗る(あらかじめ Wallet に追加した搭乗券)
  • 現地に到着し公共交通で市内に向かう(交通系電子マネー)
  • ホテルにチェックインする(事前にクレジットカード決済)
  • 現地でスマホ充電器を買う(交通系電子マネー)

…。

とりわけ、最近だと交通系電子マネーの全国共通化が進んでいるようであり、調べたところ、たとえばJR東日本が発行している Suica を1枚持っていれば、首都圏・中京圏・近畿圏はもちろんのこと、かなり広範囲の公共交通機関の使用が可能です。

札幌市営地下鉄や仙台市営地下鉄、富山市電、福井市電、広島市電、松山市電、あるいは沖縄のゆいレールなどに至るまで、多数の事業者に対応しています(詳しくはJR東日本『Suicaによる乗車等の取扱いを行う交通事業者』等参照)。

しかし、地方都市ではさすがにタクシーや地元の人気店などではキャッシュレス決済に対応していないというパターンがまだまだ多く、サイフを持たないでこれらの施設を利用しようとすると、大変なことになってしまいます。

著者の場合はスマホケースの小物入れに全国で利用できる某銀行のキャッシュカードを入れているほか、高額紙幣を折りたたんで収納しているため、サイフがなくても困らないつもりだったのですが、お釣りをもらっても収納場所がなく、初めてサイフのありがたみに気づいたという次第です。

やはり、サイフを忘れて愉快な気持ちになるのは難しく、このあたりはやはり、まだまだキャッシュレス決済を過信すべきではないのかもしれません。

場所を選ばず仕事ができる

どこでもワークの現状

さて、「出張」つながりでもうひとつ取り上げておきたいのが、「どこでもワーク」という論点です。

キャッシュレスとはやや話題が変わりますが、昨今のIT化が実務家にとって恩恵をもたらしている局面という意味では共通しています。

出張に出かけた際に、個人的には「どこまでキャッシュレスで過ごせるか」という観点から実務的な考察をしようと思っていたのですが、思わぬ気付きがあったとしたら、遠方に出かけているにも関わらず、ふだんとほぼ同じような仕事ができた、という事実です。

著者もたまに出張に出なければならないときがあるのですが、やはり最近はPCや無線キーボード、無線マウスを持参しており、空き時間はホテルでゆっくりと仕事するのがお気に入りのスタイルでもあります。たいていのホテルには無料のWiFiがあるため、(情報漏洩に気を付けつつも)仕事に取り組めます。

欲を言えばホテルの部屋に備え付けられたTVと自身のPCをHDMIで接続して大画面で仕事がしたかったのですが、この点を除けば、非常に快適に過ごすことができました。軽量のPCに大量のデータを入れることで、ふだんとほぼ同じ環境が実現できたからです。

最新スマホは「吾輩猫」1200万冊分

なぜそこまでの仕事ができるのか。

やはり痛感するのは、持ち運びできるメモリの能力の飛躍的な向上です。

たとえば、『ブンゴウサーチ』というウェブサイトの説明によると、作家の夏目漱石氏が執筆した『吾輩は猫である』の文字数は343,248文字だそうですので、シンプルに1文字2バイトと考えると、171,624バイト、すなわち約168KB(キロバイト)です。

数十年前に一般的だった媒体のひとつであるフロッピーディスクの場合、保存容量は約1.44MB(メガバイト)だったそうですので、フロッピー1枚に『吾輩は猫である』のテキストデータが約8.8冊分入る、という計算です。

これに対し、CDロムの容量は規格による微妙な違いもありますが、だいたい1枚当たり540MB~700MB(566,231,040~734,003,200バイト)ですので、計算上は『吾輩は猫である』が最大で約4,000冊前後も収納できます(※テキストデータのみですが)。

ただ、最近だと容量はさらに進化していて、ハンドキャリーできるデバイス(ノートPCやスマートフォン)で保存できる容量が飛躍的に向上しており、 iPhone の最新機種の最上位モデルだと2TB(テラバイト)、標準的な Windows 搭載ノートPCでも多くは512GB(ギガバイト)以上のデータが保存可能です。

2TBということは2兆1990億2325万5552バイト、文字数に換算して4兆3980億4651万1104文字、ということであり、『わがねこ』が12,813,029冊(!)分の情報が入る、という計算でもあります。

ここまでテクノロジーが進歩してしまうと、もう働き方そのものが大きく変化せざるを得ません。

紙が消滅する日本のオフィス

そういえば、日本全体のオフィスで真っ先に生じ始めているのは、「紙」の消滅です。

著者自身の事情で申し上げるならば、とりわけ2020年のコロナ禍以降、少なくとも印刷機(プリンター)を使用した大量の印刷はほとんど行っておらず、外部との書類などのやり取りも、もっぱらメール等が中心です。FAXもほぼ使用していません。

そのおかげで、出張中でも普通に外部とのメールの授受ができますし、ホテル内などのプライベート空間であれば、(音量にだけ気を付ければ)普通に通話もできます。

つまり、オフィスワーカーの場合、極端な話、PC1台と携帯電話さえあれば、仕事は社外でもできるのです(情報漏洩や周囲の迷惑、あるいはPCのデータ漏洩やPC紛失などに気を付ける必要はありますが…)。

すなわち、出張しているときはもちろん、そうでないときであっても、たまには気分転換がてらPC片手にカフェなどで1~2時間程度、仕事をしても良いかもしれない(カフェが混雑していなければ、ですが)、ということです。

ノマドとリモートワークの現状

こうした観点から興味深いのは、ノマドワーカー(「ノマド」=遊牧民、転じて「特定のオフィスを拠点とせず、働く場所を転々とする人、また、そういう生き方」のこと)という生き方です。コロナ禍を機にPCや携帯電話を会社から貸与され、自宅で仕事をし始めた人のなかには、その魅力に取りつかれている人もいるようです。

そういえば、コロナ禍の際に大々的に始まった「リモートワーク」については、最近だと多くの企業が廃止しつつある、との話もあります。

あくまでも一般論ですが、ふとした思い付きをみんなで共有し、それらをビジネスにつなげていくというスタイルは、従業員がみな同じフロアで働いていることで成り立つものでもあります。したがって、コロナ禍で一時的な措置として導入されたリモートワークが徐々に廃止されるのは仕方がない話なのかもしれません。

ただ、東京都心部などでは不動産価格や不動産賃料が高騰しているとする話題もあるため、やはり、不動産価格の高騰が行き過ぎれば、いずれリモートワークが大々的に復活する可能性は、十分にあると思います。

今から投資するなら郊外広め物件もアリ?

このあたり、リモートワークが再び広がっていけば、都心部の「激狭物件」に無理して暮らすのではなく、もう数腰人が少ない地域でゆったり暮らしたい、という人が増えてくるのかもしれません。

著者自身がもし独身の若年サラリーマンであり、かつ、週4日程度のリモートワークが認められるのであれば、東京都23区外の私鉄沿線などで、大型商業施設にも近い2DK程度の駐車場付きの物件を探して住むかもしれません。もちろん、ひと部屋はベッドルーム、もうひと部屋は仕事部屋です。

逆にいえば、首都圏の場合、「現在は都心部の9平米の物件に暮らしている」といった人がリモートワーク化していけば、都心部に30分から1時間程度でアクセスでき、周囲にそこそこ商業施設もある地域でまだ家賃がそれほど高くない地域に人々が殺到する可能性もあるのかもしれません。

先回りしてこれらの物件に投資しておけば、儲かる「かも」しれません。

※なお、当ウェブサイトは「未来予測サイト」、あるいは「不動産投資サイト」ではありませんので、投資はあくまでも自己責任にてお取り組み下さい。

新宿会計士:

View Comments (1)

  • >ホテルの部屋に備え付けられたTVと自身のPCをHDMIで接続して大画面で仕事がしたかった

    Amazon Fire を出張に持ち歩いて、ホテル居室に設置されている館内放送兼用の TV の裏配線につなぎこんで、お気に入りの動画配信サービスで番組なりスポーツ中継を観ているという発言を目にしたことがあります。
    ノートPCを最新式に買い替えたので、その快適性を実地評価するために、モバイルディスプレィとセットでバックパックに詰めて、電車を乗り継いで150Km先にあるコワーキング施設に出かけました(以前の話題の一部です)
    ノマドワークはぜんぜん大丈夫でした。無意味に重量が多い問題は当初危惧したとおりに顕在化しました。あれもこれもあったほうがいいというな「利便の虜=欲張り精神」をどれだけ抑え込むかは、ある種のスマート山登り術みたいな頭の切り替えが要るのでしょう。
    施設が貸してくれる自転車で気晴らしに出かけたりできて、よい気分転換になりました。眺めがよかったり温泉が付いていたりすると最高なんですが。リゾート施設はときどきは都会から逃げ出したいそんなノマドワーカーたちでうまく儲けることができるはずです。昔は温泉旅館には企業研修需要なんてのもあったのですが、21世紀なんだからもっと洗練されていてほしい。ちなみにそのコワーキング施設は大手企業と法人契約しています。オーナーさんがスマートなんでしょう。