中国政府は私たち日本人が考えていたほどには賢くない人たちだったようです。実効性のない対抗措置を講じて日本政府に行動を促すという「単線思考」から脱却できていないからです。そしてこれには日本社会でSNSが力をつけ、新聞、テレビなどのオールドメディア、さらには特定野党が力を失いつつあることも関係しています。いずれにせよ、高市早苗総理は平和安全法制の使い勝手強化と並び、減税を中心とする経済強化策を打ち出さなければなりません。
官僚+オールドメディア+特定野党
これは著者の持論ですが、日本のオールドメディアと特定野党はいわば「共犯関係」で、とくに特定野党は政府・与党の足を引っ張るような言動ばかりを国会で繰り返しており、これをオールドメディアが好意的に報じることで、有権者が騙されてきた、といった構図があります。
また、オールドメディアは官僚機構とも共犯関係にあります。
官僚機構は自分たちの利権をさらに拡大するために、「国の借金」論を含めたありもしないデマをばら撒いてきたのですが、こうした自分たちにとって好都合なデマを拡散するために、オールドメディアを「記者クラブ」「軽減税率」「電波利権」などで支配し、利用してきたのです。
それに、官僚機構とオールドメディアには、「強すぎる与党を嫌う」という共通項もあります。
だからこそ、オールドメディアが与党を貶めるかの報道を繰り返すのは官僚機構にとっても必ずしも悪い話ではなく、そこに官僚機構とオールドメディアの「共闘関係」が成立していたフシがあるのです(それでモンスター化した野党議員に官僚がぱわはらを受けるという副作用もあったにせよ)。
SNSの普及で壊れた既得権益:その被害者は中国
ただ、彼ら―――官僚機構、メディア、特定野党―――にとって想定外だったのは、ネットが普及し、SNSが発達したことで、オールドメディアの報道に騙される人が絶賛、激減していることではないでしょうか。
XなどのSNSの空間をちょっと覗いていただけるとわかりますが、そこはオールドメディアの報道に対する批判で溢れ返っています。
ネットをあまり使わないとされる70代以上の層を除けば、すでに世の中の人々の圧倒的多数はオールドメディアの報道を盲信しておらず、それどころか日々、情報の受け手側である国民がファクトチェックしながら報道を読んでいるのです。
そして、こうした状況の「被害者」(?)がいるとしたら、それは中国かもしれません。
というのも、中国のやり方が、かなり使い古された「一本道」で、単線的思考に基づくものだからです。
思うに中国の常套手段は、日中間で何らかのトラブルが浮上した際、経済的実効性がまったくない対抗措置を日本に対して講じることで日本のメディアや特定野党に大騒ぎさせ、それで動揺した政府・与党に対し譲歩を促すという単線思考から脱却できていないのです。
中国政府はあまり賢くない
というよりも、最近とみに思うのですが、もしかすると中国は、私たち日本人が考えていたほどには賢い国ではなかった可能性があります。『「パンダカード」切ってしまった中国に残されたカード』でも指摘したとおり、中国は日本への「対抗措置」となり得るカード(?)を、あらかた使い果たしてしまったからです。
中国が日本に対して講じた「対抗措置」の例
- 日本向けの団体旅行の自粛
- Xを使った日本人への脅し
- 日本製のアニメの上映延期
- よくわからない会合の中止
- ロックコンサート公演中止
- 自衛隊機FCレーダー照射
- パンダの貸与期限の不延長
(【出所】報道等をもとに作成)
これらが日本に対する「対抗措置」となっているかどうかはこの際論じません。いちおう、中国政府幹部の頭の中では、「対抗措置」ということになっているのでしょう、たぶん。
中国が日本に対していらだちを示すかのように、これらの「対抗措置」を繰り返している要因のひとつは、おそらくは先月7日の高市早苗総理大臣による台湾有事に関する国会答弁ですが、それだけではありません。
これだけ多くの圧力を加えたわりに、内閣支持率はほとんど下がらず(※)、それどころかどんなに脅しても日本政府と日本国民(世論)がビクとも動かないからです。
(※余談ですが、最新の世論調査では内閣支持率が下がり始めているようですが、これはおそらく「増税」関連の反応であり、中国要因ではありません。ただし、この論点については本稿の主題から外れるため、本稿では触れません。近日中に別稿で取り上げるかもしれませんが。)
とりわけ、日本のオールドメディア(とくに新聞とテレビ)や特定野党が、中国共産党政権の意向に忖度(そんたく)して、高市総理に対する総攻撃を仕掛けていることまでは想定の範囲内だったのかもしれませんが、肝心の国民世論がまったく動じないのです。
「別の戦略」すら考えられない中国の単線思考
この点、これも著者の主観ですが、オールドメディアや特定野党はべつに中国共産党の支配下にある、というわけではありません。彼らの発想も基本は単線思考で、単純に「政権与党の支持率を下げられそうなネタがあればそれに飛びつく」というだけの話です。
中国による対日カード(例:パンダ回収)などは、その「支持率を下げられそうなネタ」のひとつに過ぎず、したがって、オールドメディアや特定野党にとっては、パンダ回収で日本経済に具体的にどんな損害が生じるのか、定量的に示すことなどできっこありません(そもそもそういう能力がないという問題もあるでしょうが)。
このように考えたら、普通は「別の戦略」を考えるべきところなのですが、こうしたなかで飛び込んできた「驚くべき話題」が、これです。
中国、高市首相の台湾発言撤回を改めて要求
―――2025/12/16 18:15付 Yahoo!ニュースより【ロイター配信】
ロイターによると中国外交部の郭嘉昆(かく・かこん)報道官が16日の会見で、台湾答弁の撤回を「改めて要求した」のだそうです。
本当に単線的です。
これについては、当ウェブサイトではすでに2週間前の『日本側に「選択権」を握られてしまった中国外交の失敗』でも指摘したとおり、どうも中国政府側には、「もし日本が中国政府の要求(答弁撤回)を呑まなかったらどうするのか」に関する「プランB」が見当たらないのです。
中国側の要求は「高市答弁の撤回」の一点張りですので、「これに応じることで中国政府を満足させる」という選択肢と、「これに一切応じないことで中国政府をますますヒートアップさせる」という選択肢を持っているのは日本政府の側だ、ということです。
中国の暴発に備えよ
ただ、中国にとってはこれ以上打つ手が限られているなかで、日本政府に自分たちの思うような行動を取らせたければ、このままさらにヒートアップして、さらに「次なる禁じ手」に手を出してくる可能性があります。
中国が持っている「カード」(?)の例
- ビザ免除措置の廃止
- 邦人の嫌がらせ拘束
- レアアース輸出制限
- 税関の輸入手続遅延
- 対日軍事的威嚇行動
(【出所】一部報道などを加工)
ちなみにこれらは「カード」でもなんでもなく、単なる禁じ手です。
これらの措置を講じたら、基本的には中国にそのまま跳ね返っていきます(セルフ制裁)。
実際、中国軍機は今月6日、火器管制(FC)レーダー照射事件を起こしたりもしていますが、こうした危険な行為に手を染めるあたりに中国の焦りが凝縮されています。
したがって、日本としては中国を過度に刺激すべきではないものの、やはり、中国がさらにヒートアップしてくる可能性に備える必要はあります。日本政府は水面下で在中邦人の安全を確保すべく、まずは日本企業に対し、中国駐在員の家族の帰国を促すべきです。
また、とても当たり前の話ですが、日本が中国リスクに備えるためには、「国防力の強化」と並んで「経済力の強化」が必要です。
現役層を疲弊させるほどに高すぎる税社保という重税状況を改善し、必要に応じて国債を発行し、また、戦略分野での財政支出を強化するとともに、平和安全法制のさらなる使い勝手の改善と強化を図らねばなりませんし、その過程で憲法改正も必要でしょう。
その意味で、高市早苗総理には目の前に課題が山積しており、申し訳ないのですが、休んでいる時間はなさそうだと思う次第です。
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1 2 次へ »中国にとっての日本とは、日本オールドメディアを介しての日本であり、それ以外の日本はあり得ななかったということでしょう。ということは、これから中国は、日本政府ではなく、オールドメディアだけを相手にするのでしょうか。
蛇足ですが、日本の情報弱者である高齢者と、中国政府は同じということでしょうか。
毎度、ばかばかしいお話を。
日本マスゴミ村:「我々の報道通りにならないなんて、世の中、間違っている」
この話は2025年12月17日時点では笑い話です。しかし、明日はどうなるかは分からない。
毎度、ばかばかしいお話を。
日本左派メディア:「我々は、中国様の気に入ることだけを報道します」
まさか。
毎度、ばかばかしいお話を。
オールドメディア:「取材相手の業界基礎知識より、仲間うちのお気持ち」
まさか。
サンフランシスコ講和条約の件は、
パタッと、聞こえなくなりましたね。
さすがに共産党中国政府の中からも
「まずいから無かったことにしろ」
という指摘が出たのでは?
「ねえねえ、なんで黙ってるの?」
とリストにして愚直に問い直すのが、効果的なように思われます。
他の件にしても、
・情緒的な修飾語が増えて行くけれどもOSINTな説明は無いまま放置。
・一方的な発表だけで、双方向なやりとりの場所は設けられない。
・日本の大手マスメディアと特定数人のコメンテーターだけが、レーダー照射を擁護し続けてますが、コメント欄ではフルボッコになってますね。
意見が割れてるという次元ではなくて、サンドバッグ状態。
主義主張の是非よりはるか以前に、そういう仕事のプロセスをなんとかしない限り、
世間の笑い者
という評価から逃げられないような?
>サンフランシスコ講和条約の件は、
>パタッと、聞こえなくなりましたね。
アレを喋った女性報道官はあれ以来記者会見に"出演"していないらしいですよ。
元タレント弁護士知事市長氏は今回はグレーで済まず真っ黒完敗でしたね。いわゆる逃げ道無しの論破。まさか太郎氏からあんな激詰めされるとは思ってなかったか。
ちょうど年の暮れやし、PRC在留日本人が帰省するのに別段疑問もないやろからね
知らんけど
果敢な攻めの戦略で曹操を歓喜させるのが郭嘉。
勝つ見込みも無いのに無駄攻めをして習近平を苛立たせるのが郭嘉昆。
現代の独裁者というのは、優秀な軍師を持てないものなのでしょう。自分以上の能力を持つ者など、むしろ真っ先に粛清しておきたくなりそうですし。
なんと、同じ文字だと今気づきました。
いやいや、お名前は立派な方なんですね。
色々やってくるのは、向こうも大して効いてないどころか、一部は大歓迎されてるのに気づいてるからだろうな。
ちょっとだけ配慮してあげて、効いてるフリをしてあげてるやさしさをみせてあげてもいいかもしれません。溺れている人に大丈夫かと声をかけるやさしさです(助けない)。
27年までに台湾統一という目標が決まっているから、引けないのかも知れませんね。この場合だと日本が引いても意味がありません。
中国政府はあまり賢くない? そう単純に断じるのは早計かもしれません。ここまで道化のような振る舞いを見せられると、額面どおりに受け取るのではなく、視点を変えて考える必要があると感じます。
「脅しても日本政府や日本国民(世論)が動じない」ことは、すでに想定済みだったとしたらどうでしょう。実際に脅している対象は日本ではなく、韓国だたと考えることもできます。
日本向けの団体旅行自粛やロックコンサート公演中止といった対抗措置は、日本にとっては蚊に刺された程度の影響しかありません。しかし、中国人団体旅行客の韓国訪問禁止やK-POPコンサートの禁止などの「限韓令」は、韓国経済に大きな打撃を与えました。
韓国人の心に「中国への恐怖」と「日本へのざまみろ」という感情をないまぜにして、強く刷り込む。もしその効果を狙っているのだとすれば、実に巧妙に機能しているのかもしれません。
在韓米軍司令官のX・ブランソン(Xavier T. Brunson)陸軍大将が「The East-Up Map」で示したように、在韓米軍基地は台湾から1245kmしか離れておらず、台湾有事に対する抑止力の重要な拠点です。
トランプ政権は関税を用いて韓国を揺さぶり、ファクトシートに「The United States and the ROK will enhance U.S. conventional deterrence posture against all regional threats to the Alliance(あらゆる地域的脅威に対して通常戦力による抑止態勢を強化する)」という文言を盛り込ませ、韓国は在韓米軍強化のために580億ドルを支出することになりました。
さらに、米造船業に1400億ドルを投資させ、米海軍力による抑止力を維持・向上させる道筋も整えました。
これらの合意が着実に実行されれば、台湾武力統一という中国の野望にとって大きな障害となります。
そこで、中国は韓国人の「中国恐怖症」を利用し、それを妨害しようとしているのです。実際、THAAD(サード)の配備は大きな妨害を受けました。
今回中国のやり方を見ていると、韓国のホワイト国騒動の時とそっくりで、既視感があります。
あと、韓国の嫌がらせで何があったかなー、と。
台湾有事そのものではなく台湾有事にまつわる状況についてのレバタラの話ですからね。
国会発言を撤回せよってそれこそ内政干渉でしょう、中国様は日本を属国と思っているんでしょうね、それを肯定して一緒に自国の首相を批判するマスコミやコメンテーターってどうよと思います、どこかの内戦状態(武力を使わない)の国みたい
日中対比
自由主義:誰が言ったか < 何を言ったか
権威主義:誰が言ったか > 何を言ったか
*なんてことは無い。プランBを要さない社会。