パンダが「外交カード」になるらしい―――。もし本当にそう思っているならば、かなりおめでたい話です。東京都が15日、恩賜上野動物園で飼育展示している2頭のジャイアントパンダを近日中に中国に返還すると発表したことを受け、一部左派メディアがこれをあたかも「高市外交の失敗」であるかのごとく、非常にネガティブに報じているのです。ただ、これを中国から見ると、数少ない外交カードを切ってしまったのと同じでもあるのです。
目次
日中関係ギクシャク…中国がさまざまな措置講じる
当ウェブサイトは「政治経済評論」と名乗っているわりに、最近、取り上げる話題がわりと偏っています。
いうまでもなく、中国に関する話題が増えているのです。
先月7日、高市早苗総理大臣が立憲民主党の岡田克也衆議院議員の質問に対し、台湾有事が日本にとっての存立危機事態となり得ると答えたことを契機に、中国側の日本に対する激しいレトリックが続いているからです。
そして、中国が打ち出してきた対日措置のひとつに、日本旅行の自粛があります。
すでに一部のメディアが報じているところによれば、(地域によっては)中国人観光客が激減し、それにより大打撃が生じているという事例もあるとかないとか(※そのわりに打撃が生じているのは中国人経営の民泊ではないか、といった指摘もあるようですが…)。
それだけではありません。
日本製のアニメの上演を延期したり、歌っている途中の日本人歌手を強制退場させたり、Xを使って日本国民を脅したり、挙句の果てはわが国の自衛隊機に火器管制(FC)レーダーを照射したり、と、本当にさまざまな手段を使っているのが実情でしょう。
中国はほかにどんな「カード」を持っているのか
中国が日本に対して講じた「対抗措置」の例
- 日本向けの団体旅行の自粛
- Xを使った日本人への脅し
- 日本製のアニメの上映延期
- よくわからない会合の中止
- ロックコンサート公演中止
- 自衛隊機FCレーダー照射
(【出所】報道等をもとに作成)
とくに最後の火器管制(FC)レーダー照射は対抗措置となっているのか疑問でもありますが、それだけではありません。中国はほかにも、日本人に対するビザ免除措置の改廃やレアアースの輸出制限、あるいは邦人拘束、通関遅延、軍事的威嚇などの「カード」を持っている、といった報道もあります。
中国が持っている「カード」(?)の例
- ビザ免除措置の廃止
- 邦人の嫌がらせ拘束
- レアアース輸出制限
- 税関の輸入手続遅延
- 対日軍事的威嚇行動
(【出所】一部報道などを加工)
もしこれらが本当に対抗措置になっていると信じているならば、中国共産党政権というものはずいぶんとおめでたい人たちだと思わざるを得ないところですが…。
「カード」ならばじつは日本の方が多い
もちろん、日中双方が本格的に経済制裁合戦に入るようなことがあれば、日中双方に大きな経済的打撃が生じるので、そうした事態を避ける努力は必要です。
ただ、『経済制裁から考える日中関係…カードは日本の方が多い』などでも詳しく論じたとおり、経済制裁の「カード」をどちらがたくさん持っているのかといえば、それは間違いなく日本の側です。もしも経済制裁合戦になれば、中国経済は案外早く崩壊するでしょう。
しかも、『じつは続いていた…日本企業の中国からのステルス撤退』でも指摘したとおり、大きな動きで見るならば、日本企業の中国からの「ステルス撤退」の動きは少しずつですが着実に続いており、産業、金融面などでの日中デカップリングは少しずつ進んでいます。
(※なぜ「少しずつ」しか進めないのかについては上記記事で論じていますのでご参照ください。)
正直なところ、中国問題に関しては、中国が持っている「カード」は限定的であり、日本経済に対してほとんど打撃を与えることなどできません。
考えられる数少ない選択肢としては、たとえば「レアアース禁輸措置」や「在中邦人の出国禁止措置」などもないわけではないのですが、おそらくそれをやれば中国は国として終わります。
とりわけレアアースに関しては、鉱種によっては中国の生産シェアは依然高いと見られているものの、日本だけでなく欧州連合(EU)などもレアアースの中国への過度な依存を減らす試みを続けており、中国の行動いかんではこうした西側諸国の「脱中国」が一気に加速する可能性があります。
したがって、中国政府としては現状、打つ手が限られている、といったところでしょう。
東京都がジャイアントパンダを中国に返還→一部メディアが批判
こうしたなかで、最近出てきたのが「パンダ外交の終焉」です。
ジャイアントパンダ「シャオシャオ」と「レイレイ」の返還について
―――2025年12月15日付 東京都庁総合ホームページより
東京都は15日、恩賜上野動物園で飼育展示しているジャイアントパンダ2頭を「近日中に」中国側に返還すると発表しました。これにより、国内の動物園からジャイアントパンダが「ゼロ」になるのだそうであり、日テレNEWSは「高市政権の間は新たなパンダ貸与は難しい」とする中国政府関係者コメントを紹介しています。
上野の双子パンダ、来月返還へ 「国内ゼロ」に…次いつ日本へ
―――2025年12月16日 6:33付 日テレNEWSより
ただ、本件で目立つのは、一部メディアの報道の異常性です。
一部左派メディアを中心に、これをあたかも「高市外交の失敗」であるかのごとく、非常にネガティブに報じているのです(※スラップ訴訟を仕掛けられるおそれがあるので記事のリンクは示しません)。
はて?
パンダの国内飼育が続くかどうかが「外交カード」になる、とは、いったいどういうことなのでしょうか?
ジャイアントパンダはたしかに貴重な動物ではありますし、動物園でパンダ飼育に関わっていた飼育員の皆さまにとっては寂しくなるのも当然の話でしょう(当ウェブサイトとしても、飼育員の皆さまには心の底から御礼申し上げたいと思います)。
しかし、それと同時に当たり前の話ですが、動物の貸与云々は、平和が維持されてこその話です。「ジャイアントパンダの貸与を続けてもらうために高市総理が台湾有事関連の答弁を撤回しなければならない」、などと言い出すのであれば、それを日本語では「本末転倒」と呼びます。
むしろ「貴重なカード(?)」を切ってしまったのは中国の側
なにより、非常に興味深いのは、ネット空間の反応でしょう。
少なくともいくつかの記事に関するポストを眺めていると、パンダを返還することをネガティブに報じているメディアの姿勢そのものに対する批判も多く(※くどいようですがスラップ訴訟のリスクがありますのでリンクは示しません)、その圧倒的多数はまっとうなものばかりです。
面白い時代になったものです。
ここから先はあくまでも想像ですが、仮にこの「高市発言」が出てきたのが今から10年前、2015年前後だったとしたら、高市総理はいまごろ答弁撤回に追い込まれていたのではないでしょうか。場合によっては支持率が急落し短命内閣に終わっていたかもしれません。
もちろん、メディアが「パンダがいなくなって子供たちが寂しがる!どう責任を取るつもりだ!!」、などと大騒ぎし、少なくない国民がこれに同調していた可能性があるからです。
しかし、昨今の国民は、日本が置かれている安全保障環境の厳しさを知っていますし、パンダ外交が「外交カード」にならないことも知っています。
メディアが中国共産党政権の意向に忖度(そんたく)し、高市政権に対する怒りを焚き付けようとしても、国民の怒りは高市総理に対してではなく、むしろ中国共産党とその意向を受けているメディアに対して激怒しているフシがあるのです。
おそらく、これはメディア関係者にとっても想定外の話なのでしょう。
そして、問題は中国です。
中国は「パンダ」という残された数少ない貴重な「外交カード」を切ってしまいました(それがそもそも「外交カード」だったのかどうかは別として)。残っているカードといえば「レアアースカード」か「軍事的威嚇カード」か「邦人渡航制限カード」、あるいは「邦人不当拘束カード」あたりでしょうか。
中国に進出している日本企業にとっても株主説明責任がありますので、これからの中国政府の行動次第では、日本企業の脱中国の動きがさらに加速していく可能性がある、という点については注意が必要ではないか、などと思う次第です。
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1 2 次へ »毎度、ばかばかしいお話を。
オールド左派メディア:「パンダカードが高市総理に有効でないと我々が困る」
蛇足ですが、「パンダ返却で、日本の子供が泣いている」と、オールドメディアは書くでしょう。(パンダが飼育(?)されていない県の子供は、どうなるのでしょうか)
中国のパンダカードは、日本の左派メディアには有効ではないでしょうか。
もしオーストラリアが「高市早苗総理が、台湾有事答弁を撤回するようなら、コアラを返してもらう」と言い出したら、日本の左派メディアは何て書くでしょうか。
まだ在中邦人を人質にしたり、日本や日本人関連の在中資産を没収或いは凍結するなどというカードもあるのでしょうが、それをすると台湾関係なく存立危機でしょうなあ。
自爆型行動はまだ止みません。
浜崎あゆみの無観客コンサート完遂が弾圧に対する抵抗の象徴となってしまって、火消しというか芸能人を貶め持ち上げる行動を始めているようです。台湾芸能人たちが一つの中国支持の態度表明させられたのと同じ展開にも。
>中国共産党政権というものはずいぶんとおめでたい人たちだと思わざるを得ないところですが
そこまでおめでたいひとたちではないように思います。彼らからすれば、議員とか評論家とかマスコミがどんな反応をして、自分たちにとって誰が役に立つのか、その関心事項はなんなのかを改めて評価し直しているんじゃないでしょうか?
そして評価を受ける側も、それがわかってるから、一所懸命アピールをしてるようにも思います♪
年末考課をやってるとこだから、まだしばらくは続くんじゃないでしょうか?
つよつま
まだありますよ、最強の対日カードが。
「在日中国人即時帰国命令」
わ〜、日本経済が今度こそ駄目になっちゃう〜!!()
「饅頭怖い」デスか?
まー可能性は低そうデスが、いざそうなった時のために『帰化』に関する諸々再整備は急いだ方がよいでせうね
「日本のパスポートが便利だから」と地上波で公言するやうな帰化人を輩出する中華人民共和国デスから
>上野の双子パンダ、来月返還へ 「国内ゼロ」に…次いつ日本へ
中共が崩壊した後に、"チベット国"との友好の一環として借りれば良いのでは?多分今までよりも好条件で借りれます。良かったね子どもたち。
面子が保てる中国、パンダに再会できる日本、独立できるチベット。三方良しです。
日本にはパンダがいなくても熊がいるから大丈夫
流石西朝鮮です。
手首を切りながら、どうだ!怖いか!怖いだろうと叫んでます。
ただ、本場と違い切り方が甘い。
表層だけ切って真皮までは切ってません。
ここは日本人の入国禁止までしないと。
機械のメンテが出来なくなってからが本番です。
このサイトで紹介されていた「なぜ中国から離れると日本はうまくいくのか(PHP新書 898)」。曰く、遥か昔の聖徳太子、その後の江戸幕府、明治時代の福沢諭吉氏、現在の安倍元首相といった方々はその好例であった、というのを幾つもの実例で説明していました。曰く、国を挙げて脱亜入欧を目指し実現した日本は、東方アジアに存在しながら実態は西欧国、基本的価値観を共有していない東方アジアの中国や朝鮮半島の国とは距離を空けることが国益になる。という、K国もC国も共通の教訓です。
ちなみに逆の悪い方の最新例で挙げられていたのはルーピー氏でした。
中華の精神的侵略を象徴するアイコニック、アイドルであるパンダが不在になる、というのは国益に資する分かり易い例と思いました。
シルクロードに舞い上がり、すり寄って、中華を味方にもしくは後見人いつけた。そして俺は強くなった、利口になったと幻想したひとたちがこの国はたくさんいます。パンダの時代は終わった。赤い紳士と赤い経済新聞社の落日は来年はっきりするでしょう。
騒音おばさんになぜそんなことをするのかと尋ねたら
隣んちの新しい奥さんが隣家がご近所とトラブルを起したら私が止めに入る、と朝日さんの告げ口を聞いたので隣んちのくせに生意気だから騒音とごみをまき散らしてやったとのこと。
それを聞いた朝日さんの仲間たちはそりゃ新しい奥さんが悪い、されて当然と騒音おばさんに味方する世界。