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SNS規制論はオールドメディア自身のためにならない

当ウェブサイトに普段、無慈悲で切れ味が鋭すぎるコメントを残していくことで知られる「農民」様という読者の方から、ちょっとギョッとするほどに正鵠を射た指摘をいただきました。オールドメディアの現状を巡る当ウェブサイトの記事に対し、「オールドメディア各社はネットに勝つべく研鑽するよりも、一縷の望みをかけてSNSを潰すしかない」という冗談じみた指摘です。ただ、この指摘はオールドメディア問題の本質を突いたものでもあります。

2025/12/16 08:40追記

記事にサムネイル設定が抜けていたため追加しています(記事本文に変更はありません)。

テレビ局の問題はどうなったのか

昨日の『外国紙「格安購読キャンペーン」は新聞経営のヒントか』では、前半ではSNSで話題になっているテレビ局の取材ドタキャン事件を取り上げるとともに、後半では著者自身が最近体験した、某米経済紙(ウェブ版)の格安購読キャンペーンについて、話題に取り上げました。

前半は「いつものテレビ業界の話題」です。

北海道にあるラーメン店が「全国テレビ」の取材アポイントに備えて食材を仕入れるなどしたものの、ドタキャンされてしまい、店舗のXアカウントが来店協力を呼び掛けた、というものです。これには続きがあり、昨日夕方時点までに麺がすべて売り切れるほどの盛況だった、というものです。

これ、想像ですが、同店舗への取材をドタキャンしたテレビ局が本当に存在したとしても、名乗り出ることはないでしょう。同店自身がテレビ局や番組の実名を伏せると宣言しているからです(これも温情でしょうか?)。

本件についてはのちほど紹介する読者コメントにもあるとおり、さまざまな意味で、テレビの限界をこれでもかというほどに示した事件だったのかもしれません。

新聞格安サブスク

一方、記事の後半は、著者自身がおカネを払って閲覧している数少ないメディアである某紙の話題です。

これは「1年間限定・月額2ドルで読み放題」というキャンペーンで読み始めたものの、その期間が終了した段階でサブスクを解除しようとしたところ、再び「1年限定・月額2ドルキャンペーン」の表示が出現した、という話題です。

いちおう申し上げておくと、正直、この某紙は日本のメディアにはない情報も得られるため、いちおう参考程度に読んでいる、というレベルですが、それでも「キャンペーン終了後の月額9.99ドル」を払う価値があるとまでは考えていません。

言い換えれば、キャンペーンがなければ購読を継続しない、ということでもあります。

主観ついでにもうひとつ申し上げておくならば、この「メディアに支払うサブスク料」の価値は、年々低下していると実感せざるを得ません。いうまでもなく、SNSを含めたネット空間で無料で手に入る情報の価値が上がっているからです。

昨日の繰り返しになりますが、著者は専門家ですので、専門紙/専門誌についてはそれなりに高額な購読料を支払ってでも購読を続けているものの、専門外の一般的な情報であれば、わざわざ高い金額を支払ってでも読もうとは思っていません。

この某米紙を購読しているのもシンプルに「安いから」であり、日本のメディアについては内容に比べて少々高すぎるというのが率直な感想です。

某米紙に倣って「月額200~300円レベルで読み放題」、といったレベルにまで価格破壊してくれれば、喜んで購読する場合もあるかもしれませんが、さすがに日本の新聞に月額1,000円前後を支払うつもりはありません。現在の報道のレベルと割に合っていないからです。

キレッキレの無慈悲コメント

さて、こうしたなかでちょっと気になったのが、当ウェブサイトに普段から無慈悲で切れ味が鋭すぎるコメントを残していくことで知られる「農民」様という読者からの、こんな趣旨のコメントです(半角を全角にするなど、意味を変えない範囲で表現を変更しています)。

  • 情報を一手に握っていた組織の横暴に対して、個人が無料で普及しているツールを使って即座に自力救済も反撃も出来てしまう。なんなら放送された場合よりも宣伝効果が高い可能性すらある(現に私はTV番組などではこのお店を知り得なかった。そもそもTV無いし、あったとて見る番組ではなさそう)
  • 単に「いつもの連中の不祥事」というだけでなく、メディアのパワーバランスを象徴している一件に思えます。確かに、オールドメディア各社はネットに勝つべく研鑽なんてしてる暇があるなら、一縷の望みをかけて攻撃し続けSNSを潰すしかないような気もしてきました

…。

相変わらず、キレッキレの無慈悲ぶりです。

コメント前段の「組織の横暴」とは、ラーメン店の取材ドタキャンという被害を、SNSというネットの手段をうまく使い、万バズを発生させて、ピンチを逆にチャンスに変えるという手法は、なかなかのものです(※なお、同店が主張する被害は、現時点ではあくまでも「自己申告ベース」ですが…)。

そして、宣伝という観点からは、テレビ番組を否定した方が高い宣伝効果が得られるという実例を作ってしまったという点において、まさにさまざまな意味において、テレビの限界をこれでもかというほどに示した事件だったのかもしれません。

読み手にファクトチェックを強いるオールドメディア

ただ、ここで注目したいのが、農民様のコメントの後段部分です。

コメント主様としては冗談のつもりで書いたのかもしれませんが、じつはこの部分、今日のオールドメディア問題のきわめて本質を突いているのです。

敢えて厳しいことを言わせていただくと、オールドメディアの「オールド」たるゆえんは、既得権益の上に胡坐(あぐら)をかいて自己研鑽を怠り、不正確な報道を垂れ流している点にあるのだと思います。

もちろん、すべてのメディアがそうだとは言いませんが(たとえば産経新聞あたりは経済学的に見て比較的正しい記事が多いです)、とても残念ながら政治的な左右を問わず、大なり小なり正しくない情報を垂れ流しているメディアが大変に多いのです。

いわば、オールドメディアの情報は、読み手自身がファクトチェックしなければならない、というレベルのモノが多いのです。

問題はそれだけではありません。

これもメディアの実名を挙げることは控えますが、某社の記事は中身がとくにスッカスカで、あんこが入っていないたい焼きのようなレベルの代物が多く、とりわけ最近は「タイトルを読んでも意味不明」、「中身を読んでも意味不明」、といったケースが散見されます。

ただ、これもおそらくそういうレベルの記事が「最近になって増えた」わけではなく、もともとその手の記事が多かったところ、社会がネット化したことで当該メディアのレベルの実態がバレた、という方が実情を正確に表しているのかもしれません。

このあたり、一部メディアの記者(あるいは記者OBのジャーナリストら)はいまだに「新聞やテレビの役割は権力の監視にある」と思い込んでいるようですし、実際、そのように発信する事例を多く見かけます。

ただ、水道の利用者が無色透明の水を求めているのと同様、本来、国民がメディアに期待しているのは「情報を正確に過不足なく伝えてくれること」であり、メディアには「政治的なアジェンダ・セッティング」や「権力の監視」など求めていないと考えるべきではないでしょうか。

その意味では、メディア業界の「中の人たち」が考えるメディアの役割と、一般国民が期待するメディアの役割との間には、かなり大きなエクスペクテーション・ギャップが存在しているのではないかと思います。

オールドメディアがSNSを敵視する理由

そして、そのギャップがどうしても埋まらないならば、サービスの受け手としては、代替的手段を考え始めます。

その「代替的手段」こそがSNSだったのではないでしょうか。

こうした状況を踏まえて農民様のコメントで示された仮説を改めて読みます。

オールドメディア各社はネットに勝つべく研鑽なんてしてる暇があるなら、一縷の望みをかけて攻撃し続けSNSを潰すしかない」。

これは、戦略としては(一見すると)合理的です。

オールドメディア業界にとって最も都合が良いのは、自分たちの報道を一般大衆が盲信してくれていたという状況が再び出現することであり、その意味では、一般大衆が「無知蒙昧(むちもうまい)」のままでいてくれた方が好都合なのです。

ということは、「SNS側はデマばかり」、すなわち「正しい情報を発信しているのはオールドメディア側だけである」、といったデマを一生懸命に唱え、それを人々に信じ込ませるのが、「ネットに勝つべく研鑽を積みたくない人たち」にとっては、一見最も合理的な選択肢なのです。

ただし、この道は非常に危険です。

ネットはそれ自体が意思を持っているわけではなく、それを使う人たちの意思の集合体だからです。当然、オールドメディア側から「SNS規制」論が出てくれば、それに対し必ず、オールドメディアの過去の誤報事件がしつこく蒸し返されます。

自由な言論空間こそ健全

もちろん、SNSで流れている情報のすべてが正しいというわけなどありません。

ネットを使うのに免許などは不要ですから、科学的リテラシーを身に着けていない、「反ワクチン」、「(故・)安倍晋三(総理大臣)は統一教会だ」、「国の借金は膨大だ」、などとカルトじみたことを主張する者たちが情報発信をすることも禁止できません。

ただ、ネットの側では、明らかにおかしな主張をする者たちはたいていの場合、仲間内で盛り上がっているのが関の山で、多くの良識的な一般国民からは見向きもされなくなります。面白いもので、国民が健全であれば、少数のカルトじみた勢力、放っておいても多数派になることはないのです。

だからこそ、著者はSNS規制などには反対です。ヘンテコな珍説を垂れ流す者も含めて、情報発信は自由であり続けるべきなのです。まさにおかしな言説が観測されるくらいに自由な言論空間があることこそが健全、というわけです。

いずれにせよ、オールドメディア側が滅亡を回避したいのならば、やはり国民に過不足なく正確に情報を伝えるための「中身」を充実させるべきですし、それを怠ってSNS規制を唱えるならば、業界の滅亡が加速するだけの話ではないかと思うのですが、いかがでしょうか?

新宿会計士:

View Comments (23)

  • この中に5人、ネットを声高に非難する文章を書き続けながら、SNS 投稿や Youtube コメントをこそこそと読み廻り、使える言葉やネタを剽窃して新聞記事に仕立ててやろう、流行トレンドを盗みながらあくせく汲々としている報道記者がいる。おまえらやろ。

    「5人揃って違うんジャー」

    おまえらやー ♪

  • オールドメディアがSNSを敵視するのは護国論と売国論が混在する為に国民が「考える」事を始めたからですね。

  • SNS規制論を言っていれば、オールドメディア社内では文句は出ないし、「何かやっている」感を出せて安心(?)のではないでしょうか。

  • 権力闘争だけで生き残ってきた人たちは、相手に勝つべく研鑽を積むのではなく、相手を引きずり降ろしてマウントをとろうとする。

  • 読売新聞社は生成 AI との共生を謳う提言を今朝公開しました。負けを認めたのだと当方は判断します。
    いくら文章を記者が書いても AI 学習の餌になるだけです。そこでそこからカネを取ろうと考え始めたのかも知れません。ですが多寡は払う側が決めるので、当てにすると事実上お金をくれるひとたちの軍門に下ったということになります。国産 AI をわが手中に収めようとしてもそうは問屋が卸さない。

    • 先日に広告としてニュースフィードされてきた記事には、
      「朝日新聞社のAI校正を使いませんか?」
      てのがありました。

      うーん、わかる。
      記者にはマヌケが多いけれども、言葉使いの校正ならば百戦錬磨のプロだらけ。

      でも人力ではなくてAIと書いてある。
      はてな。
      社内のエキスパート集団がよってたかってAIを鍛え上げた(だから先行組のAIとは一味違うのだ)、という意味かな?

      各新聞社の中ではひたすらにリストラ人員削減が続いていて、記者より先に校正の人たちがまとめてバッサリ解雇されている的な噂話もチラホラ。

      鍛える人がおらんやんか。
      あるいはリストラチームの最後の徒花アダバナなのか?

      よくわからないけど強く印象に残る広告ニュースでした。

    • Amazon Mechanical Turk というオンラインサービス商品があります。一言で言うと、ネット化された人海戦術のことです。crowdworkers という名無しのネット労務者たちが、検索テクニックを競い合ったり、各自にツールを創造して工夫したりして、リクエストを投げてくるお客が満足するようなアウトプットを拵えて納品し売り上げに替えるという段取りのことを言っています。
      朝日新聞の「校正 AI」の実態が、メカニカルターク(機械のふりをしているが中に人がいる)人海戦術の可能性は否定できません。

  • 陰謀論的に言えば、オールドメディアを操ってる側が洗脳装置としてしか見てないなら、機能不全を起こしてもまともになるわけもなく、新たな洗脳装置を探すだけ。

  • オールドメディアがSNSを敵視するのは、エビデンスで殴られるから。
    「悪意のある切り取り」がファクトをもって、白日の下に晒されるから。
    ・・・・・
    >社会がネット化したことで当該メディアのレベルの実態がバレた
    ⇒国会中継が切り取られ「立・共・公」の実態もバレちゃいましたね。

    彼らの食卓に並ぶのは、リスク増す契機(リスクマスケーキ)と揚足鶏(アゲアシトリ)・・。

    • 揚足鶏、おいしそうです ...
      自家中毒・自己中毒=自己中心イエロージャーナリズムを素敵に調理するとすぐできあがりそう。今年の X'mas ディナーは揚足鶏で決まり(小さい字で)肉はついていません。

      • >ディナーは揚足鶏で決まり(小さい字で)肉はついていません。

        それって、もしかしなくても(もっと小さい字で)cコクノワンチャンノオヤツ・・

  • 国産生成 AI の主たる使い道は、報道記事の誤謬・インチキ学説・インチキ学位の調査解明に使われるはずです。だっておもしろそうでしょう。喜んで無償協力するボランティアが沢山出現するであろうと預言します。

  •  "半ば"冗談だったので恐縮ですが、業界をとりまく現実がもはや冗談じみた段階に来ているのではないか、という感じでもあります。もちろん実情は知る由もありませんが。

    >「タイトルを読んでも意味不明」、「中身を読んでも意味不明」
     これだけでも目に余るのに、「タイトルを見て中身を読んだら意味が逆だった」というのが、当該コメント直前の体験です。政権を肯定する内容が記事タイトルによって一見政権批判のように見える、といった具合。低質と言うより悪質。

     隠す気もなくマスメディアの事が嫌いですが、嫌いになる大きな理由の一つが「本当はデマを打ち消す信頼できる情報源であってほしかった」のに、進んで情報を捻じ曲げている事が許しがたいからです。それさえ良ければ別に少しくらい横柄でも良いんですが。(ラーメンの件などは事実とすれば「少しくらい」の範疇には含みません。)
     高速双方向だがデマも多いネットに対し、低速一方向でも信頼の置けるマスメディア、という両輪であってほしかったものですが、前述のように後者がネットの"釣り"みたいな手法に悪びれもなく手を染めているようでは、自浄も期待できずさりとてSNSに勝つ見込みもなく。私如きの冗談なんぞすら否定できないでしょう。

    • >タイトルを見て中身を読んだら意味が逆だった

      見出しを決めるのは文章を書いた記者本人ではなくて「整理部」というセクションが担当していると聞いたことがあります。間違っているかも。
      整理部がやりたい放題で出鱈目な仕事でぶいぶい言わせている。読者が眉を顰めるご乱行の背景はこうだろうと観測的に結論できるのではないでしょうか。

      認証文字:てにひひ(ひひひ)

      • しばらく前から少し気になってたのでGoogle先生に「認証文字を晒すのは予測精度向上に繋がらないか?」と投げてみた

        AI による概要
        はい、その通りです。認証文字(CAPTCHA)とその正解の組み合わせを機械学習モデルの訓練データとして提供することは、AIの予測精度(CAPTCHAの突破精度)の向上に直結します。
        予測精度向上に繋がる理由
        学習データの増加: 機械学習モデルの性能向上には、大量の多様なトレーニングデータが不可欠です。晒されたCAPTCHA画像とその正解テキストは、AIモデルにとって貴重な教師データとなります。
        モデルの強化: AIは、ノイズ、歪み、回転、文字の重なりといったCAPTCHAの「読みにくくする工夫」を学習し、それらを克服する方法を習得します。これにより、CAPTCHAを自動的に突破できる、より高性能なモデルが開発されてしまいます。
        攻撃の効率化: 攻撃者はこのデータを利用してCAPTCHA突破専用のAIを訓練し、ウェブサイトへの自動アクセスやスパム行為などに悪用します。Googleの研究では、AIがCAPTCHAを99.8%の精度で解読できたという結果も出ています。

        とかダカダカ返してきたので、オモロイ文字列もあるんだけんど片隅御留意オススメ??
        知らんけど

        • まあテキストだけで画像は無いから片手落ちだとは思うンやけど、教えてエライひと???

  • >面白いもので、国民が健全であれば、少数のカルトじみた勢力、放っておいても多数派になることはないのです。

    時が経つにつれ、これを実感しますね。一部少数カルトに肩入れしたマスコミの影響力も、世論調査の数字を見ることで下がっていることが実感できます。マスコミが世論を支配したのは19世紀以降でしょうかね、「世論が一色に染まる恐れ」なんてのは一方通行メディアのマスコミ時代の現象だったのだろうと思ってます。
    先日近所の複数のご高齢の方と話す機会があり、方々はネットへの恐れを語っていました。「新たなマスメディアが現れた」程度の認識なんですよね。一方通行メディアとの質的な違いは、使ってなけりゃなかなかわからんよなーと思い、深くは議論しませんでした。

    多様な意見が生まれて様々なクラスターができあがったり(それはマスコミ時代でもあったのでしょうが)、それが顕在化する現象もネットならではなのでしょう。それらの中から相対的に見て穏当な意見によって世論の多数派が形成されるようなら、これほど健全な状態はないですよね。
    どこの国でも同じように機能するかというと疑問ですが、少なくとも日本はいい方向に進んでいるように思います。

    と、いつものように毒にも薬にもならない独り言でした。

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