マイナンバーカードが普及していけば、社会全体の生産性の向上が見込めます。こうしたなか、医療分野ではすでにマイナ保険証でレセプト返戻が激減するなどの大きな効果が生じているようですが、地上波テレビでは相変わらず、出演者が「ぼくはマイナンバーカード自体持っていない」、「不便と思ったことは1回もない」などと発言しているようです。そうであるならば、マイナ保険証を持たない人は、今後は窓口でいったん全額を支払ってもらうべきではないでしょうか?
目次
社会のボトルネック解消手段としてのマイナンバーカード
先日の『「日本社会のボトルネック」としてのオールドメディア』では、「ボトルネック」という用語を紹介したうえで、社会全体がひとつの生産工場だと仮定すると、日本社会全体の生産性を高めていくためには国単位でボトルネックを特定し、それを解消する努力が必要だと申し上げました。
ここでいう「日本社会のボトルネック」として、「組織論」の観点から著者が真っ先に挙げるのは官僚、メディア、特定野党ですが、とりわけ情報発信の能力が足りないのに社会的な影響力が強すぎるオールドメディアや特定野党の存在は非常に有害です。
せっかく世の中を効率化させるような新たな仕組みが登場しているのに、あれこれ理屈をつけて、その導入を阻もうとすることが大変多いからです。
その具体例として、マイナンバーカードを挙げておきたいと思います。
マイナンバー自体は、国民ひとりひとりに13桁の番号を割り振るというもので、実質的には国民の背番号のようなものです。
一部メディアは国民総背番号制を批判してきた
「背番号」というと、過去に一部の新聞が「国民総背番号制」を舌鋒鋭く批判してきた事実を思い出しますし、昔の近未来SF小説で国民から名前が奪われ、番号で呼ばれるという社会を思い浮かべてゾッとする人もいるでしょう。
国民総背番号制は私たち人間からヒトとしての尊厳を奪いモノとして管理する仕組みだ。
私たち人間はモノではなくヒトであり、番号ではなくちゃんと名前で呼ばれる権利があるんだ。
だいたい、こんな感じの批判です。
たんに行政上の管理の問題を「人間としての尊厳の問題」にすり替えている時点で詭弁だと断じざるを得ませんが、ただ、かつてはこうした感情に訴えかけるような「国民総背番号制」への反対論があったことは事実です。
逆に、今日においてマイナンバーは非常に大きな威力を発揮し始めています。
銀行や証券会社などに口座を開設するときはマイナンバーの提出があればかなりスムースですし、マイナンバーとの紐づけが行われていれば、転居したときにも住所の届け出も役所だけに提出すればあらかた完了です。
最近だと運転免許証のマイナンバーカードへの搭載も始まっていますし(いわゆるマイナ免許証)、確定申告のデータを各所から引っ張って来る機能も実装が始まっており、さらには(お住いの自治体によっては)住民票や印鑑証明は全国どこのコンビニでも取得できるようになりつつあります。
さらに、マイナンバーカードを持ち歩くのが嫌だという人は、スマホにマイナンバーカードのデータを搭載することができるようになっています。Android携帯に加え、今年はiPhoneのマイナンバーカード搭載が始まりました。
著者自身の感想を述べるなら、まだまだ使い勝手はいまひとつですが(たとえば現時点において、マイナ免許証のスマホ搭載はできないようです)、それでもユーザー・インターフェイスの改良は今後急速に進んでいくだろうとも考えられますし、世の中の利便性はますます向上していきます。
マイナ保険証の大きな効果
そして、このマイナンバーカードが威力を発揮している大変大きな分野のひとつが、医療です。
当ウェブサイトの読者の皆さまにも経験したという方はいらっしゃるかもしれませんが、マイナンバーカードを健康保険証として使用できるようになったのです。
医療機関でマイナンバーカードを読み取り機にセットし、顔認証か暗証番号のいずれかの方法で認証すれば、それで本人確認が終了し、保険診療が可能となります。
これについては、患者の側から見れば、窓口で保険証を提示するのと何が違うのか、と思うかもしれませんが、それは利便性が「見えていない」だけの話です。医療機関におけるレセプト(診療報酬明細書)などの事務が「激変」したというのです。
歯科クリニックの受付業務とレセプト点検が激変!オンライン資格確認導入で月20枚のレセプト返戻がゼロに
―――NTT東日本ウェブサイトより
NTT東日本の法人顧客向けソリューション提案サイトによると、とある歯科医院でオンライン資格確認を導入したところ、それはでは多いときに月20件ほどあった資格過誤によるレセプト返戻が、オンライン資格確認の場合は実質ゼロになったというのです。
当たり前です。資格確認が手作業ではなくオンライン化したからです。
それまでであれば、健康保険証をスタッフが目視で確認するなどし、それらを物理的に手入力する(あるはOCRを使って紙の保険証を認識する)作業だと入力ミス、読み取りミスなどは必ず発生していたとのこと(記事によると7を1と誤読するケースや全角が半角で入力されるケースなどがあったそうです)。
「目視で確認」が不要になるだけでミスが激減した
院長はインタビューで、こう述べています。
「医療保険の資格確認は、受付スタッフが目視で確認していましたが、どうしても確認ミスは発生します。資格過誤によるレセプト返戻は多い月で20件ほどあり、忙しくて溜めてしまうと再請求も大変でした」。
「近年は、働き方の多様化に伴い、転職する人も増え、退職による資格喪失が原因の返戻が増えていた印象です。転職に伴う引っ越し等で正しい請求先がわからなくなり、再請求ができずに当院が金額を負担したこともあります」。
つまり、マイナ保険証の導入により、日本全国でこれと同じことが起きているものと考えられますが、それだけではありません。保険証の使いまわしなどによる不正受給を(完全にとはいわないまでも)かなりの程度封殺することができるのです。
それに、医療を受診した本人も、(本人が同意すれば)一定の医療情報を他の医療機関に共有することができるようになりますし、確定申告の際の医療費控除のデータなども(設定次第では)可能になります。
日本全国で生産性が著しく向上しつつあることは間違いありません。
もちろん、マイナンバーカードを使った本人確認が困難という人もいますが(たとえば車いすに乗っている人が顔認証をするのが大変だ、といった事例など)、こうした特殊事例を除けば、健康保険証を紙媒体に戻すというのは、なかなかに考え辛いところです。
テレビ出演者「マイナなくても不便感じない」
こうしたなかで、従来の健康保険証が12月1日で期限切れを迎えたことが、ネット上でちょっとした話題となっています。
ちなみに『東洋経済オンライン』の次の記事によると、12月1日以降、保険証がまったく使えなくなったというわけではなく、いちおう厚労省の通達で来年3月末までは経過措置として使用できるのだそうです。
健康保険証「12月1日期限切れ」の大誤解! 実質使える期限と選べる3つの受診方法とは?
―――2025/12/01 5:30付 東洋経済オンラインより
ただ、それ以降に関しては、どうすれば良いのでしょうか。
これは結局、マイナンバーカードってマイナ保険証の利用登録を行うのがいちばん早いのですが、どうしてもそれが嫌だという人であれば、従来の健康保険証の代わりとなる「資格確認書」を使う、という方法もあるのだそうです。
これを受けて、さっそく、こんな話題が出て来ました。
玉川徹氏は今もマイナンバーカード持たず「不便さ1回も感じない」マイナ保険証への私見も示す
―――2025/12/02 11:41付 Yahoo!ニュースより【日刊スポーツ配信】
とあるテレビ番組で2日、テレビ出演者が「ぼくは従前から、マイナンバーカード自体持っていないと公言している」、などとしたうえで、次のように発言したのだそうです。
「持っていないことで不便と思ったことは1回もないですね。今のところ」。
自分自身が不便を感じたことがないというのはそれこそ「個人の感想」でしょう。
過去に1度もスマホを持ったことがない人に「スマホを持っていないことの不便を感じたことがありますか?」と尋ねても「不便を感じたことがない」という答えが返って来るようなもので、利便性を享受したことがなければそもそもそれを持っていないことの不便さに気づけないだけではないか、とい気がします。
持たないなら持たないでいったん全額払ってもらえば良いのでは?
ただ、これを公共の電波で堂々と流すことは、やはり大きな問題でしょう。
非常に残念なことですが、高齢層を中心に、現在でもテレビが垂れ流す情報を鵜呑みに信じる人たちは存在しているからです。なかには紙の資格確認書にいつまでも拘泥し、頑なにマイナンバーカードに移行しないという人もいるかもしれません。
そうなると、医療機関もレセプトの一部は依然として紙の資格確認書をもとに起票しなければならず、ミスは完全にはなくならないことになりますし、社会全体の生産性の向上を阻むとともに、不正利用リスクを完全に撲滅することもできません。
ただ、これについては、著者自身の見解は、わりと明確です。
そもそもマイナンバーカード自体はあくまでも任意ですので、作りたくないという人は作らなければ良いと思います。
ただ、マイナンバーカードが社会の利便性・生産性を上げるための仕組みであるという点を考慮するならば、社会全体の生産性を犠牲にしてまで、マイナンバーカードを作らない人に配慮する必要もありません。
紙の資格確認書も、いつまでも発行し続けるのではなく、やはり一定のタイミングですべて廃止するのがスジではないでしょうか。
そのうえで、マイナ保険証を持たない人については、次のようにすれば良いと思います。
- 窓口でいったん全額支払う
- 医療機関の領収書をもらう
- 加入健保にその原本を郵送
- 後日7割部分を口座に振込
…。
要するに、レセプトの請求義務を医療機関から患者本人に移管すれば良いのです。このようにすれば、医療機関もレセプトの手間を排除することができますし、本人としても、保険診療を受ける権利を妨げられません(※ただし、健保組合は事務手数料を本人に請求すべきかもしれませんが)。
もちろん、この方法でも、レセプトの事務ミスなどをなくすという意味では有益かもしれませんが、不正受給のリスクを完全に排除することはできません。
しかし、少なくとも一部の人が妙なこだわりのために社会全体の生産性向上を妨げているという事象への対処は必要ではないか、などと思う次第です。
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1 2 次へ »NO6「番号なんかで呼ぶな!」
NO1「困るのはナンバーのない奴だけだ」
NOO7「国家最高機密級の俺だってナンバーを持ってんだぜ」
日本はIT化が遅れてる後進国
海外を見習え!
マイナンバー反対
これらを同時に口にするからたちが悪い
カルテや薬の履歴が共用されると
適切な処方ができるようになり薬のムダ遣いなどが減って医療費削減できるでしょう
テロリストや指名手配犯など真っ当なマイナンバーを作れないので苦労するでしょうが
「俺の名は内田洋、男はそう言って灰になった」
逃走潜伏を続けていた桐島聡容疑者はどうやって偽名で70歳まで社会的に生き延びれたのでしょうか。不思議でなりません。手口を公表するとマネする輩が出現するから明らかにされない、のか。
マイナンバーカードが保険証以外で使えるものが少ないのでスマホで使え、更新は自動でできるとかしてほしいですね。
あと、カードを持参していなくてもスマホで保険証として使えたらいいと思う。
マイナンバーカードの機能自体をスマホに入れられるので、スマホだけでカードを持ち歩く必要はないですよ。
更新はカードの更新→スマホへ、で直接できませんが。
これは電子証明書の新規発行自体が市町村の住基ネットが繋がる端末機経由でないとできないので、現状どうしようもありません。
「マイナカードが運転免許証と統合される」と聞いていたので期待してたらとんだ期待ハズレ
まー“統合”でも無かったし
タテ割りのせいか『写真撮影からカード発行までワンストップで即日対応』の免許センターと比して非効率極まるマイナカードの発行過程でも8割には届いたみたいやから、そのうちまだもっと広がるでしょ保険証機能付与
知らんけど
「私は苦労など知りません。便利な生活などしたことがないので。なので皆さん便利なものなど捨てて大丈夫です。私が大丈夫ですから。」
これほど相手に響かない謎の訴えは、そうそうありません。
単純に論理が稚拙なだけでなく、そう言われた相手がどう感じるかの想像力も全く無いという証左です。きっと氏は、社命で嫌々ながら心にも無い低質な発言を強いられているのでしょう。さすがに。
マイナカードはすこぶる便利になりました。10年前に作った頃に比べ、格段に進歩しています。健康保険証としても大変便利と思っています。マイナカードの問題点は、マイナポータルサイトでしょうか。お役所的で直感的ではないですね。説明が分かりにくく、新機能を試すのが難しいですね。
マイナンバーカードと免許証の統合はしないほうが良いらしいです。
統合した場合、自治体窓口でマイナンバーカードの更新をすると
免許証の情報が無くなる(再度、警察署で書き込んでもらわないといけない)
結果、警察署迄、車での移動ができなくなります。
警察署と自治体窓口間が近所か公共交通機関で結ばれてないと
めんどくさいことになります。(タクシー代がかかる)
そのうち何とかされそうですが。
てか、モー『運転免許証にマイナカードを統合しろと以下ry.』て知らんけど
eSIM のユーザ領域にマイナンバーカード情報(免許証を含む)が格納される予定だと聞いたことがあります。
インドでは免許証やパスポートは最寄りの警察署に預けるよう推奨されています。土地に拠るも知れません。街頭で警官に誰何されたら携帯を見せる。すると警察がオンラインで免許証情報を確認するという段取りになっています。このやりかたでもっとも実利があったのは交通違反の摘発。たまたま不携帯だったと偽る摘発逃れ行為を破ることができる。泥棒・ID窃盗の多い国ですので、基幹身分証明書を自宅保管するでなくて、泥棒が避ける最も安全な場所で保管できるとも ...
正)予定ではなくて、田舎の一市民さまの上記発言通りすでに利用可能
そうでした、そうでした。すみません。
あと Gemini AI さまの御宣下によると、マイナンバーカード更新(これは内蔵の証明書有効期限が切れるため)があっても、免許証情報は今年9月1日以降自動引き継ぎ可能となったのだそうです。
現状、健常者を前提としたシステムになっており、
重度障碍者(寝たきりとか、精神障害で対面も困難とか)だと作るところからハードルが跳ね上がるので
マイナ保険証に統一するなら、重度障碍者等も想定した仕組みが欲しいですね。
マイナンバーカードに紐付けるかどうかは別として、個人の学習履歴とか、業務履歴とかが企業と共有されて、失業のない完全雇用の世界になりそうですね。人と人の間に入る商売は消えるのかどうか。世の中、激変の真っ只中で、身近なところでは、マイナンバーカードということですかね。医療データの共有でどんな世界になるのか。医療の効率化は進みそうです。レセプトチェックの会社はどうなるのか?
母が施設に入居中です。
健康保険証はマイナンバーカード化しましたが、施設がマイナンバーカードを預かれないというので健康保険証のマイナンバーカード化を解除し資格確認証にしました。
それぞれ事情があるので資格確認証化に不満はないです。
ご提案にあるように「いったん全額払ってもらえば良いのでは?」で特に問題ないように思います。まずは不正利用を無くし、無駄な負担を防いで欲しい。
ついでに、資格確認証には顔写真が無いので、不正利用が可能かも知れないので資格確認証に顔写真追加して欲しい(ここまでやればマイナンバーカード化を拒否する理由はかなり下がるのでないか、と思う)。
母の場合は顔写真の登録が若干面倒かも知れないが不正利用する人がいる以上は一般人の若干の面倒も仕方がない。