最近のSNSでは、特定の野党の国会質問があまりにも下らなすぎるとして「炎上」しているようですが、野党の質問のなかにはそれとは逆に傾聴に値するものもあります。国民民主党の森ようすけ衆議院議員が10日、高市早苗総理大臣に対し、「手当と控除は目的が違う」と指摘したうえで、それらを併存させることが「異次元の少子化対策」にも有意義ではないかと述べたのです。
目次
特定野党に対する批判が強まる
当ウェブサイトではここ最近、連日のように、某特定野党が国会質疑を巡ってSNSなどで強く非難されている、とする話題を取り上げています。
最近だと、高市早苗総理大臣が国会対策などで早朝3時から大量の答弁書を読み込んだとする話題(『「早朝勉強会」批判矛先が一部メディアや野党に向かう』等参照)は記憶に新しいところですが、それだけではありません。
特定野党は予算委員会などで相変わらず閣僚らの発言の揚げ足取りをするかのような質問に終始しているとの話題もあります。
男性記者に「クマみたいだね」発言報道の国家公安委員長 「大変不適切だった」謝罪&発言を撤回
―――2025/11/07 19:31付 Yahoo!ニュースより【日刊スポーツ配信】
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―――2025/11/10 21:16付 Yahoo!ニュースより【デイリースポーツ配信】
クマだ、シカだといった話題がそこまで国政にとって重要なのか。
SNSで大炎上時代だが…自民党が選挙で勝てるわけでもない
正直、特定政党に対する批判が高まるのは当たり前すぎる気がしますが、それだけではありません。
かつてインターネットが存在しなかった時代であれば見過ごされていたであろう特定野党の質問が、SNSなどで大いに注目され、それによって「大炎上」が発生する時代となったのです。
これについては『国会審議見せるだけで勝手にSNSでの支持が減る政党』でも指摘しましたが、国会審議をありのまま見せることで、その政党に対する支持が(おそらくは勝手に)激減していく、という時代が、もうすぐそこまで到来しているのではないでしょうか。
ただ、特定野党のレベルが低すぎることについてはおそらく事実だと考えられますが、ことはそこまで単純ではありません。
従来であれば、最大野党(社会党、民主党、民進党、立憲民主党など)が弱まれば、その分、自民党が票を得る―――、といったパターンがしばしばみられましたが、おそらく現代社会の有権者の投票行動は、そこまで単純ではありません。
ここで参考になるのが、週末に行われたとある地方選です。
葛飾区議会議員選挙の開票状況
―――2025/11/10付 葛飾区HPより
高市旋風が吹いているようにも見えない
9日(日曜日)に投開票が行われた東京都葛飾区議会選挙(定数40議席)では、自民党が10議席と、改選前の12議席から2議席減らしました。現職が3人落選したためです(そのかわり、新人が1人当選しています)。
また、国政では連立から外れたばかりの公明党は立候補した8人全員が当選し、勢力を維持。立憲民主党は現職が1人落選したものの、もうひとりの現職に加えて新人2人の合計3人が当選するなどしており、日本共産党も4議席を維持しています。
このように考えたら、少なくとも葛飾区議会では「高市旋風」が生じているようには見えませんし、むしろ現在の自民党と対立関係にある公明、立民、共産という3政党が引き続き強いことは見逃せないポイントではないでしょうか。
これに加えて参政党の菅野勇人氏が7667票という他の候補を圧倒する票でトップ当選を決めたほか、「再生の道」から立候補した岩見奈津代氏も当選。国民民主党は現職と新人の2人がともに当選している点も興味深い点といえるのではないでしょうか。
もちろん、地方議会選挙はその地域なりの特性というものもあるため、あまり一般化し過ぎるわけにもいきません。
ただ、高市総理が就任したくらいで自民党の信頼が簡単に回復するというほどに甘いものではない、ということについては間違いないでしょう。
繰り返しで恐縮ですが、著者自身は高市総理を非常に聡明で優秀な政治家だと考えていますし、現代の日本の閉塞状況を打破してくれることを深く期待ししていることも事実ですが、それと同時に現在の日本が抱えるすべての問題を高市総理が自動的に解決してくれると期待するのも甘い発想です。
結局は言論と投票で国を変えて行くしかない
というよりも、正直、高市総理がすべての問題を個々人の思い通りに解決してくれるわけなどありません(というか、日本のような国だと異なる利益集団間での利害調整だけでも大変です)。
ただ、自民党が現在、国会で衆参ともに過半数を確保できていないこと、および高市総理自身が自民党内でさしたる基盤を持っているわけでもないなかで、自民党内にもさまざまな抵抗勢力がいると考えられるなかで、現時点で「高市(総理)もダメだったな」、と断定するのは少し性急です。
その意味では、私たち国民がSNSを通じて意見を述べるようにすべきですし、選挙では必ず投票するようにしたいものです。自由・民主主義社会においては、国家の方向性を決定するのは私たち有権者の権利であり義務であること、そしてその具体的な手段が言論と投票であることを、忘れてはなりません。
すなわち、これまでに当ウェブサイトで申し上げてきたとおり、結局は言論と投票で国を変えて行くしかないのです。
こうした点もさることながら、当ウェブサイトとしては是々非々で、良いことは良い、悪いことは悪いと述べるようにしたいとこれまで努めてきたつもりですし、これからもそうしたいと考えています。
(「そうは言ってもアンタ、石破茂・前首相や石破体制下の宮沢洋一・前税調会長や森山裕・前幹事長などのことは批判するばかりで、ほとんど誉めたことがないじゃないか」、というツッコミをしたい人もいるかもしれませんが、それは「誉めるところがなかった」ということです。)
これについては自民党側にも、あるいは野党側にも同じことがいえます。野党側に関しても、低レベルかつ無駄な質問については遠慮なく批判させていただきますが、逆に傾聴に値する質問についてもちゃんと取り上げておきたいと思う次第です。
森ようすけ議員の質問
そうした質問のひとつが、これです。
国民民主党の森ようすけ衆議院議員が10日付でアップロードしたもので、文字起こしについては「スナック鶴亀」さんというXユーザーの方が、非常にわかりやすくまとめてくれているのも参考になるでしょう。
ここで取り上げておきたいのが、森氏による次のような趣旨の質問です。
次に少子化関係の話です。
私たち国民民主党に声が多く届くのは、16歳未満の子供を育てる方への年少扶養控除の復活です。国民民主党は今回臨時国会の初日に法案も提出しましたけれども、子供ひとりあたり所得税38万円の所得控除を復活させるという法案を提出したところです。
「異次元の少子化対策」を進める上で、この年少扶養控除は復活させることが間違いなく必要な政策たと考えておリますが、その点総理の見解をお伺いいたします。
高市総理は従前の回答を繰り返すが…?
これに対し高市総理の最初の回答は、こんな具合です。
16歳未満を対象としたいわゆる年少扶養控除は税負担軽減効果が低所得者に比べて高所得者に大きくなる制度でございました。そうした点を踏まえて、平成22年度税制改正におきまして、所得控除から手当てへという考え方のもと、子ども手当の創設に伴って所得控除か廃止されたという経緯がございます。
その頃、私どもは野党でごさいましたけれども、その経緯というものを踏まえる必要があると思いますですから、再度それを導入するかどうかっていうのも、元々そういった課題があったから手当てに変わってきたということ、これはよく考えなきやいけないことです。
政府としては、この子育て支援については、こども未来戦略の加速化プランに基づきまして、結婚や出産、子育てについて希望を叶えられる環境整備を強力に進めておりまして、こうした取り組みは引き続き私どもの内閣でも進めてまいります。
そしてやはり先ほどから委員がおっしやってること色々聞いておりまして、やっぱり強い経済を作っていきたいと。投資アンドリターンだろうと、こういった考え方で大いに共感していたたいているんたと。
新たな負担を求めるのではなくて、どんどん稼ぎ出していく、そしてしつかりとリターンを得ていく。そして中長期的にいい形の未来を残していく。そういった点で、お互い共感できるんたろうと、そんな感想も持たせていたたきました。
子どもさんの教育も含めて、少子化対策も含めて頑張ってまいります。
…。
正直、ここまでは『高額納税者ほど減税効果大きいのは当然=年少扶養控除』でも見て来た高市総理のこれまでの見解通りです。
森氏「控除と手当は目的が違う」
ただ、興味深いのはこの次です。
答弁、ありがとうございます。
やっぱりこの年少扶養控除を質問するとですね、これまでの答弁よりは少し温かみのなる答弁をいただいてありがたいなと思ったんですけれど、やはりこれ基本的な考えはやっぱ変えていかないといけないと思っております。
これやっぱり民主党政権のときにこの年少扶養控除っていうものを児童手当に変えていったと。
控除と手当の関係ということはやっぱり整理はしないといけないとは思うんですが、控除と手当はそれぞれ政策目的は別だと思うんですよ。
この控除というのは憲法にも保障された生存権を確保するための制度であって、やはり子供をひとり育てるにあたって基礎的な費用については税金をかけないというような考えなので、これ、やはり併存させて進めていくことこそが異次元の少子化対策をする進める上で間違いなく必要だと考えております。
加えてご答弁の中にもありました「高所得ほど減税の幅が大きいのはどうなのか」ということもいただきましたけれども、これって裏返しでいえば、高所得者、頑張って働けば働いてる人ほど普段の納税額が多いわけです。
累進課税なわけですから、普段から納税をいっぱいしている分ですね、子供を産めばその分だけ減税額が大きくなるっていうのは、別におかしなことでは全くないと思うんですよ。
子供を育ててですね、子供のために頑張って働いて働いて、それで税金を収めていると。
そういう人たちの後押しをすることもですね、少子化対策を解決するような大事なことだと思いますので、ぜひ、こども家庭庁、財務省中心に前向きに検討していただきたいと思います。
…。
全肯定/全否定ではなく是々非々で!
なかなかに、理屈が通っています。
この点、年少扶養控除を廃止したのは国民民主党の前身でもある民主党が政権を握っていた時代であり、その意味では「あんたたちが何を偉そうなことを」、と苦言のひとつでも言いたくなる気持ちもあるかもしれません。
また、著者自身は、国民民主党が夏の参院選で、反ワクチン的な言動を取っていた人物を全国比例で擁立したという事実を忘れていません(※余談ですが、自民党も今でこそ高市早苗総理が総裁を務めていますが、つい最近までどうしようもない体制だったことについても忘れてはなりません)。
ただ、こうした経緯はともかくとして、「現在の」国民民主党がなにを主張しているのかについては、傾聴に値するといえます。正直、国民民主党が最大野党だったほうが、現状よりも国会運営が少しは良くなるのではないか、などと思わないでもありません。
いずれにせよ、私たち国民の側としても、ある政党について評価するときは無条件に全肯定、全否定するのではなく、あくまでも個々の質疑や答弁、政策を見ながら、それらのひとつひとつの良し悪しで判断する態度が重要ではないでしょうか。
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少子化問題・対策で無視してはいけない因子が「日本人の子供が生まれ健やかに育つ政策」であることです。前々政権の実質忌民政策も日本人の労働力不足分つまり日本人の出産減少から労働人口がだんだんに減ってきたのが問題であるならば日本人(日本国籍)の出産を促すと同時に実質忌民がこれ以上に殖えハレーションを引き起こし乗っ取りを許す様な事はあってはならず政策も消極的でも抑制的であってほしいです。であるならば、出産子育て世代への金銭的協力方法は旧来の制度をそのまま復活させ忌民が殖える要因になるよりもマイナカード等を利用した日本人への直接的な給付の方がいいのではないでしょうか。
まー兎角ヒトとは楽を求むモノと云へ、“観察考察にリソース割くを厭い誰かの貼ったレッテルを無批判に自身の判断決定に採る”、腐敗三角好みの国民有権者像が霧消するにはマダマダ…
“レッテル貼り”を乗り換えたダケ層も油断ナラン厚みや知れず、我が身省みて『感じとらんで考えよ!』と肝に命じ…
知らんけど
動画は開いていませんが文字は読みました。
主張の是非はともかく、互いに論理明快でわかりやすくていいですよね。
台湾有事の質問で「何を議論したいのかわからない」と、進次郎氏にも言われてしまう○憲議員には爪の垢でも煎じて飲んでもらいたいものです。
森議員、94年平成6年生まれ。環境省のOB。昨年の総選挙で東京13区が初。
質問通告期限の「ルールがない」等と強弁するような議員には早く引退してもらって氏のような方に変わってもらいたいです。
ところで森氏、連立相手の維新の考えを総理に聞いてますけど、そりゃ政府の長に聞く話じゃないでしょうに。党間の議論で維新に直接聞けばよい。
"連立"という名の閣外協力は今後国民だってあり得るわけだし、ヘンなツッコミしない方がよいのでは?(笑)
少なくとも田舎である我が地域では市議会議員への投票行動に国政政党の動きや議員の所属政党のカラーはほとんど関係ありません。共産党だけ多少政党色が出てる。
所属政党が参政党の人も、立憲民主の人も、公明党の人も地域の未来のために仕事されてる、かなりまともな方です。
むしろ自民系の人が利権屋みたいな人とか時代錯誤的な情報がアップデートできない使えない方が多いです。これは非自民でも一定数いて、両者を分ける要因は単純に年齢と多選による緩みだと思ってます。
ちなみに共産系の若手議員に至っては、自衛隊のイベントに自民系の議員と一緒に参加してて、「あんた党の方針的に大丈夫なの?」と心配されてましたが、「自分、戦車好きなんすよ」みたいな軽い返事をしてました。笑
年少扶養控除の復活自体に理があるとしてもやはり優先順位の問題があるという意味では高市総理の答弁の方に共感を覚える。
減税が経済対策になるという可能性の話も景気が浮揚して成長するからであり、あの手この手で成長を促すことが現状を考えると一番必要なことだと思う。制度が歪んでいても成長なしにいじくろうとすれば財源論に巻き込まれやすいのではないだろうか。
まあ高市総理の方向性に懸念(金融所得課税の考え方等)が無いかと言えばそうではなく、現状を悪化させる方向にいかないのであれば当面は支持すると思う。
保守系野党は3党あるのが良いような気がしてきました。
3党いずれも単独では過半数以下で、二つの政党が協力すれば過半数になるという形が、政策論争を活性化させるには効果的かも知れません。
現状保守系野党2党ではいずれの組み合わせも過半数未達ですが、次の選挙で立憲民主党が議席を減らして保守系野党3党体制になることを期待します。
自民党が派閥を無くしたら保守系野党が2つ出来た
この保守系政党で連立を組むのがこれからの政治かな
岸田石破系列は左気味の野党と連立を組んで
2大政党という望んだ構図のできあがり
拉致はありませんと言った政党の流れをくむ○○党(党首に問題あり?)と共産党は入れず
政策論議が出来ない立憲と対比される維新国民
維新国民との国会論戦も見ごたえがある場面が増えました
これからはこうなるのかな。と期待しました