日本人にとって海外旅行に関する動画は面白いと思う人が多いと思いますが、たまには「逆の視点」を持っても面白いかもしれません。新たな発見があるからです。こうしたなか、本稿で紹介したいのは、外国人が日本に観光客としてやってきたときにどんな体験をするか、です。東京について深く知っている人が見たら、「あぁ、そうじゃないのに…」、とモヤモヤを覚えるかもしれません。それはいったいどういうことでしょうか?
目次
インバウンドの過剰振興には疑問だが…
当ウェブサイトを長くご愛読いただいている方であれば、山手線の駅名を冠した怪しい自称会計士であるウェブ主自身がインバウンド振興、つまり「外国人観光客を増やす政策」に、非常に批判的な立場であることはご存じではないでしょうか。
とりわけ『児童性的虐待疑惑浮上…入国ビザ免除の適正化措置必要』でも紹介したとおり、つい最近も外国児童の性的搾取事件が発生したばかりですが、これも特定国からの入国ビザ免除プログラムに深刻な問題があると断じざるを得ません。
しかも、少なくとも事件発覚直後、日本政府がタイ向けの入国ビザ免除措置の運営を止めたとする話題はありませんが、これも「インバウンドが大事だから入国ビザ免除制度の運用を停止せず継続する」、といった発想でもあるからでしょうか(それとも官庁がリスクに対しあまりに鈍感だからでしょうか)?
いろいろと首をかしげざるを得ません。
ただ、繰り返しになりますが、当ウェブサイトでこれまで批判してきたのは、「盲目的にインバウンドの人数を増やす政策」であり、インバウンドも正しく振興すれば、重要な国を日本の味方につけることができるほか、それなりのカネを日本に落としてくれるなどの効果が得られることは事実です。
そして、私たち日本人が海外に出かけるとワクワクするのと同じく、多くの外国人にとって、私たちの国・ニッポンがワクワクする国であることもまた間違いなく、こうした外国人に素晴らしい日本体験をしてもらえば、海外に日本ファンが増える効果も期待できます。
もちろん、現在問題となっているオーバーツーリズム・観光公害を抑制することは必要ですので、ビザ免除制度の適用対象国はおもに欧米、豪州、台湾、香港といった先進国・地域に絞りつつ、あるいは外国人観光客のみをターゲットとした入国税や宿泊税なども導入すべきだとは考えられます。
しかし、これらの対策をしっかり講じたうえで、そのうえで来日してくれる友好国・地域からの観光客は基本的に歓迎すべきではないかと思う次第です。
海外旅行動画は面白いが…その逆の視点も新鮮!
さて、YouTubeなどの動画サイトが進化し続けているなかで、個人的に「これは面白い!」と思っているジャンルのひとつが、旅行動画です。
コロナ禍の時期は海外への渡航が非常に難しく、また、逆に外国人観光客が日本に入国することも難しかったことは間違いありません。
ただ、各国ともにコロナによる渡航制限がすっかり解除されるなかで、円安と海外物価高のためでしょうか、日本人にとって海外旅行は高根の花となりつつあります。こうした事情もあってか、個人的には海外旅行に行ってみる系のジャンルの動画が非常に楽しみだったりもするわけです。
そして、YouTubeといえば、その「逆の視点」が得られる場でもあります。クリエイターは世界各国に存在するからです。当然、「日本人が海外に出かける」系の動画だけでなく、「外国人が日本に出かける」系の動画もあるわけであり、最近嵌っているのは外国人による訪日動画だったりします。
これらにはいくつかのパターンがあるのですが、多いのはやはり、「初めての東京体験」です。
たとえば世界最大規模に複雑な地下鉄網、コンビニで取り扱っている食品の豊富さ、渋谷のスクランブル交差点の人混み、プリクラ、あるいは回転寿司やラーメンや自動販売機、歴史ある寺社仏閣、といった具合に、歴史と伝統と文化と現代テクノロジーが混在する東京に、多くの外国人は度肝を抜かれるようです。
さらには新幹線は、一部の外国でもそのまま “Shinkansen” で通じるらしく、ことに国内に高速鉄道を持たない米国、時刻通りの運航ができていないドイツなどから来た人は、運行の正確性と快適性を兼ね備えた高速鉄道である “Shinkansen” に感動するといいます。
とあるYouTuberの交通トラブル
ただ、こうした外国人の動画のなかで、正直、視聴して「モヤモヤ」が残るものもないではありません。
そんなひとつが、ドイツ人YouTuberが投稿した、次の一連の動画です。
この人物は成田空港から日本に入国し、初日は空港から東京駅まで成田エクスプレスで移動してホテルの最寄駅である東京メトロ有楽町線・新富町を目指すのですが、どうもいまひとつスッキリしません。
というのも、動画で見るとこの人は訪問国のことを事前にあまり調べない主義の人らしく、初日はそれでちょっとしたトラブルに見舞われるからです。
東京に詳しい方ならご存じかと思いますが、東京の地下鉄には「乗換駅」というものがあります。現在自分がいる駅から目的地にダイレクトにたどり着けない場合は、途中駅で降りて異なる路線に乗り換える、というシステムで、これ自体は世界中の主要都市でも同じような仕組みがあります。
ただ、東京の地下鉄の場合、乗換駅が物理的にやや離れた場所にある、というケースもありますが、これが俗にいう「改札外乗換」です。
改札外乗換が適用されるためには、出場する際にいったん切符を返してもらうために、オレンジ色の特別な仕様の改札機を通る必要があります。そのうえで地上などをしばらく歩き、乗換扱いが適用される別の駅で再び改札を通る、という仕組みです(なお、60分以内に乗り換える必要があります)。
たとえば東京駅から新富町まで地下鉄で行きたい場合も、一般には丸の内線を使って東京駅から1駅先の銀座駅に行き、銀座駅でいったん「オレンジ色の改札」を出たうえで、地上に出て銀座一丁目駅まで歩き(直線距離で300メートルほどあります)、改めてそこから1駅乗車する必要があります。
ところが、この人はその「改札外乗換のためにはオレンジ色の改札を使う必要がある」というシステムを知らなかったらしく(結局、動画でもその解説は出て来ませんでした)、通常の改札を通ってしまったため、切符が回収されてしまったのです。
この人は「なぜあの改札機は切符を回収したのだろう」といいながら、「ユウラクチョウライン…金色の路線」と言って、もう1回切符を買い(しかもあろうことか銀座一丁目駅ではなく銀座駅で!)、「ゴールドライン」と言いながら日比谷線に向かってしまうのです。
結局、駅員さんに尋ねると、「新富町に行きたいなら日比谷線で築地駅を目指してください」といわれ、無事、ホテルにはたどり着けたわけですが(ちなみに築地駅と新富町駅も直線距離で約200メートル離れていますが乗換駅です)、どうしても「そそっかしい」としか思えません。
単純に勉強不足だったんじゃないですかね?
これ、東京に詳しくない人であれば日本人でもやってしまいそうなミスですし、このYouTuberは外国人であり、日本語の駅名にそこまで詳しくないため、仕方がないといえば仕方がない話です。
ただ、それでも現在の東京では、基本的にJRであれ、地下鉄であれ、私鉄であれ、駅にはアルファベットと番号がついていますので(たとえば丸の内線銀座駅はM16、有楽町線新富町駅はY20)、東京駅の観光案内所で「Y20を目指している」といえば乗り方を教えてもらえたのではないでしょうか?
あるいはいちいち現金で切符を買うのではなく、たとえば成田空港にある窓口で外国人用の “Welcome Suica” などのカードを1枚購入すれば移動は飛躍的に楽になるはずです(なんならモバイル向けの “Welcome Suica Mobile” などでも良いかもしれません)。
交通系ICカードの場合、改札外乗換駅でもオレンジ色の改札機を探す必要がなく(通常の改札機で問題ありません)、60分以内であれば自動的に乗換扱いが適用されます。また、運賃も微妙に割引されるのが地味に嬉しいところです。
「外国人が体当たり的に日本旅行を楽しむ」というジャンルの動画、個人的には決して嫌いではないのですが、やはりちょっとあまりにも下調べが不十分過ぎると視聴していてモヤモヤしてしまうのは、決して気のせいではないでしょう。
いずれにせよ、「人のふり見て我がふり直せ」といわれます。
余談ですが、たしかに私たち日本人も、外国に出かけたときには最低限、その国の基本的なルール(簡単な挨拶はもちろんのこと、通貨の単位や交通システムなどのルール、その国の文化的なタブーなど)についてはわきまえておくべきではないでしょうか。
東京という複雑だが効率的なシステム
ただ、動画を見ていてもうひとつ気づくのは、東京や大阪などの日本の大都市圏、交通システムは複雑でありながらも非常に効率的であるという事実です。
特に東京やその近郊(首都圏)の場合だと、経営主体は大きくJR、東京メトロ、私鉄(京急、東急、小田急、京王、西武、東武、京成、相鉄など)、公営(東京都営、横浜市営など)、三セク(横浜高速鉄道、埼玉高速鉄道)など、さまざまです。
じっさい、先ほど紹介したYouTuberの方も、東京都内の移動手段はJRが遠距離、地下鉄が短距離だと思い込んでいるフシがある(たとえば最初の動画でそのような発言があります)のですが、たとえばターミナル駅間(例:渋谷から新宿、など)の移動はJR山手線が大変に便利だったりもします。
このように考えたら、たいていの鉄道は交通系ICカードが1枚あればことたりる、というのは、非常に合理的なシステムです。
というか、現在の日本では、大都市部などの生活は、ICカードだけでだいたい完結します。
SUICAなどの交通系ICカードは、(発行された主体にもよりますが)たいていの場合は札幌市営地下鉄・JR北海道や沖縄ゆいレールに至るまで、多くの交通システムで使用可能ですし、コンビのなどの買い物にもそのまま利用できます。
つまり、日本列島、北は北海道から南は沖縄に至るまで、いまやICカードは(一部を除いて)それこそ全国津々浦々で利用可能なわけであり、かくいう著者自身もその恩恵を受けていたりします(『【速報】サイフを忘れて出かけても「愉快」で済む時代』等参照)。
しかも、最近だと新幹線に乗車するときですら、紙ベースの切符が不要だったりします。
使いこなしている人であれば、iPhoneやAndroidのおサイフケータイ機能でモバイルSuicaなどをインストールすれば、また、スマートEXなどのアプリをインストールしておけば、それこそ完全キャッシュレスで近距離鉄道から新幹線までスマホだけで乗れてしまうわけです。
このように考えていくと、日本では交通システムが独自に発達し過ぎていて、一部の外国人観光客にとってはなかなか理解に苦しむほどに複雑化している、というのが実情なのかもしれない、などと思う次第です。
View Comments (12)
自分も夏季や冬季の大型休暇に国内をぶらりと旅行をしていますが、事前に調べたりする事はよくありますね。
この問題は外国人云々という問題ではないみたいですが、やはり事前に確りと下調べをしないという観点で、外国人の比率が圧倒的になるのでしょう。
出川哲郎さん などが県外や海外などの見知らぬ土地であたふたする
のは一種の「定番」ですからね。
それの逆バージョンといったところなのでしょうか。
再生数や視聴率的に美味しい内容にするにはあたふたするほうがいいでしょうしね。
自己レスですが、ゴルゴ13が
このような「海外を移動する動画」をあげたとしても
再生数は「全く伸びない」と思います。
テレビ東京の旅番組ってそういう傾向がありますよね。
1泊2日の鉄道旅にしても、3泊4日のバス旅にしてもね。
鉄道旅は10ヶ所のお勧めスポットなどを駅員や観光案内所、地元民から聞き込みをして、実際にそこへ足を運んでみる(勿論、営業していて撮影許可が下りないとNG)というルールがありますし、バス旅もネットなどで時刻や行先などを調べるのはNGで、バス会社や観光案内所、地元民などから聞き込み、最終目的地へと向かう(中にはチェックポイント制で、途中立ち寄る箇所もあり)というルールがありますしね。
ホテルが最寄り駅を新富町と案内しているのも不思議ですね。築地のほうが、ずっと知名度が高いのに。
はじめから目的地が築地だったら、成田から京成スカイライナーに乗れば、上野で1回乗り換えるだけで済みましたね。
そもそも有楽町線は、池袋以外に大きなターミナル駅を通っておらず、JRとの乗り換えには、ちょっと不便な路線です。
>ホテルが最寄り駅を新富町と案内しているのも不思議ですね
動画、見ました?
この人が止まったのってあの有名なロボットホテルですよ?
https://www.hennnahotel.com/ginza/
新富町駅のすぐ近くです。
モバイルSuicaなどは海外からの旅行者は(何回も来る人なら分かりませんが)インストールしないかもしれませんね。 最近、海外ではクレジットカードのタッチで乗れるようになっているそうですが日本でも早くそうなると便利だと思います。
クレジットカードとデビットカードでそれぞれ1回ずつ関西の私鉄に乗車しました。
乗れました、ちゃんと。でも、急ごしらえ感満点の、ぼろい仕掛けでした。
・いくら出費したかを告げるメール連絡が即時に到着しない
・メールは翌日が精いっぱい
・どこからどこへ乗るためにいくら払ったか記録に残らない
・往復で合算されてしまい総額しか分からない
するっと関西カードという豪勢な仕掛けがかつてありました。使用済みカードを捨てずに保管しておき、行動記録&経費管理の手段として使っていたこともありますが、今の「カードの NFC 決済で乗れる電車」は、ぼろい。運用しているどこかは、猛省し精進して欲しいです。
当方は近距離でない移動では、JR 券売機でカードもしくはクレジットを経費分類ごとに使い分けて切符購入することを心掛けています。
有楽町線の銀座一丁目駅と銀座線の銀座駅の乗り換えは、一旦、外に出る必要がありますね。松屋でつながると便利なのですが。メトロとか地下の工事をして、つなげて欲しいですね。
有楽町線の新富町駅と日比谷線の築地駅は、乗り換えは難しいかも。
日本人:交通系ICカードが便利ですよ!
訪日客:oh! I see.
oh! Icy atmosphere. (失礼!)
いえいえ、お気になさらずに!
この手のコメントに寒い風が吹くってのは、この上ない讃辞なのです。
(事∀実)V