X

官邸の情報発信は「わかりやすさと文字起こし」に課題

高市早苗総理大臣の肝煎りの日本成長戦略が始動しました。その方向性はともかくとして、動き自体は迅速です。さらに興味深いのがその情報発信です。首相官邸ウェブサイトでその概要を知ることができるほか、高市総理自身がXにてその狙いをわかりやすく解説しています。総理自身がその狙いについて、こうやって詳しく情報発信することで、少なくともメディアが不正確な報道で有権者に誤解を与える可能性は減っているといえます。もっとも、首相官邸の情報発信にはまだまだ課題もあるようです。

WLBを捨てる高市早苗総理大臣

高市早苗政権の動きが、なかなかに迅速です。

高市総理が自民党総裁に選ばれたのは先月4日のことですが、その際に、こんなことを述べました。

いま、(自民党議員は)人数少ないですし、もう全員に働いていただきます。馬車馬のように働いていただきます。私自身もワークライフバランスという言葉を捨てます。働いて働いて働いて働いて、働いてまいります」。

実際、内閣総理大臣に指名されたのは先月21日のことですが、高市総理自身はASEAN、日米首脳会談、APECなどの重要な外交日程をいくつかこなしたうえ、今月3日には2027年国際園芸博覧会式典に参加し、さらには都内で「全拉致被害者の即時一括帰国を求める国民大集会」でも挨拶しました。

オールドメディアなどは「ワークライフバランス(WLB)を無視しろと国民に命じるのはけしからん」、といった論調を展開しようとしましたが、高市総理の爆走でこうしたオールドメディアの批判が完全に蹴散らかされてしまった格好です。

日本成長戦略本部の設置

その高市内閣がさっそく重要な手を打ってきたようです。

首相官邸の発表によると、「日本成長戦略本部」の第1回会合が11月4日に行われ、危機管理投資や成長投資による強い経済の実現などを目指し、AI、半導体、造船、量子、バイオ、航空・宇宙などの戦略分野ごとに取りまとめ担当大臣がつけられ、官民投資促進策を策定するという流れだそうです。

ちなみにこれらの全体を取りまとめるのが「日本成長戦略担当大臣」、つまり城内実・内閣府特命担当大臣で、議事に示された課題の例を挙げると、こんな具合です。

分野横断的課題への対応
  • 新技術立国・勝ち筋となる産業分野の国際競争力強化に資する戦略的支援
  • 未来成長分野に挑戦する人材育成のための大学改革、高専等の職業教育充実
  • 世界に伍するスタートアップエコシステムを作り上げ、持続可能な経済成長と社会課題解決を両立
  • 金融を通じ、日本経済と地方経済の潜在力を解き放つための戦略の策定
  • 生産性の高い分野への円滑な労働移動や働き方改革を含めた労働市場改革
  • 介護、育児等によりキャリアをあきらめなくてもよい環境の整備
  • 物価上昇を上回る賃上げが継続する環境整備(中小企業等の生産性向上・事業承継・M&A等)
  • サイバー対処能力強化(技術開発・人材育成加速)

(【出所】首相官邸ウェブサイト『成長戦略の検討課題』P1より抜粋)

官邸からの直接の情報発信

これらの課題について、たとえばAIや半導体であれば人工知能戦略担当である小野田紀美・内閣府特命担当大臣と赤澤亮正・経済産業大臣が、フードテックであれば鈴木憲和・農林水産大臣が、といった具合に担当大臣がアサインされているのです。

正直、これが成長戦略として機能するのかどうかについては未知数ですが、ただ、内閣が発足してから2週間ほどで会議が設置されるなど、スピード感があることに関しては間違いありません。

ただ、それ以上に驚くのは、やはり情報発信です。

いまやXでのフォロワー数が200万人を軽く突破した高市総理本人が、この日本成長戦略本部の狙いについてXにポストし、次のように述べているのです。

今朝、閣議の後に、「日本成長戦略本部」の初会合を開催しました。

日本経済の供給力を抜本的に強化し、所得を増やし、消費マインドを改善させ、事業収益が上がり、税率を上げずとも税収を増加させることを目指し、高市内閣の成長戦略を始動させます。

さらに、「外国人の受入れ・秩序ある共生社会実現に関する関係閣僚会議」の初会合も開催しました。

一部の外国人による違法行為やルール逸脱を受け、国民の皆様が抱く不安を解消しつつ、外国人との秩序ある共生社会を実現してまいります。

午後は、夕方まで衆議院本会議で、各党の代表質問にお答えしました。

先週は「外交ウィーク」でしたが、今週と来週は「国会ウィーク」です。

代表質問や予算委員会の論戦を通じて、日本列島を強く豊かに、そして世界の真ん中で咲き誇る日本外交を取り戻すべく、道筋を明らかにしてまいります。

なかなかに、興味深い時代がやってきたものです。

政府の取り組みが総理自らの情報発信で有権者にダイレクトに伝わり、有権者はそれを見て政府の取り組みを判断・批評する。

そんな時代がやって来てしまったのです。

官邸の情報発信への不満

もちろん、首相官邸の情報発信には個人的に若干の不満もあります。

首相官邸の場合はXですべてが完結しているわけではなく、詳細な情報をたしかめるためには、Xから官邸ウェブサイトに飛ばなければならないからです。また、今回の会議に関していえば、分野別に図示するなどの工夫が欠落しているなど、改善の余地がありそうです。

たとえば先日のAPEC首脳会合で官邸が公開した、こんな図表などが参考になるかもしれません。

図表 APEC会合の要約(クリックで拡大)

(【出所】首相官邸公式Xアカウント)

現に官邸はこうしたわかりやすい情報発信ができているわけですから、やはりすべての情報発信にはもうひと工夫あってもよさそうです。

もしも日本成長戦略本部について発信するならば、「分野横断的課題」を図にまとめ、たとえば「AI」、「半導体」、「造船」、「量子」、「バイオ」、「航空・宇宙」といった分野別にアイコン化・図表化して、それぞれに簡単な説明を付す、といった具合に、情報発信を工夫する余地がありそうです。

このあたり、官邸の情報発信には分野によっては国民に対し非常に不親切なものも散見されます。

官房長官記者会見の文字起こしから始めては?

こうした流れでもうひとつ不満を述べておくと、それはおおむね1日2回行われている官房長官記者会見です(「官房長官会見」、などといいながらも、実際には副長官が会見に応じることもあります)。

この会見の模様は、官邸ウェブサイトで視聴することができるのですが、官房長官の冒頭発言があれば、それが文字起こしされて掲載されているのですが、冒頭発言がない場合は、とくに文字起こしなどされていません。

これについては、AIに頼るなどしても良いので、是非とも文字起こししていただきたいと思います。

また、官邸ウェブサイトの動画プレーヤーは使い勝手が悪く、埋め込み機能なども使えない(ようである)ため、いっそのことYouTubeを使って投稿し、あわせてコメント欄を開放してくれたらありがたいところです。

実際、すでに自民党の広報は記者会見のやり取りを文字起こしし、メディアの社名とともに全文Xに掲載するなどの手法でかなりの好評を博していますが、ぜひともこれと同じことを官邸にもやっていただきたいと思う次第です。

それをやることで、新聞社、テレビ局などの記者も有権者に「見られている」という意識を持つことができるでしょうし、いわゆる「報道しない自由」を根絶することも可能になるかもしれません(『【インチキ論説】政府は「報道しない自由」侵害するな』等参照)。

今後の官邸の情報発信には注目したいと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (6)

  • 毎度、ばかばかしいお話を。
    オールドメディア:「官邸側で官房長官会見の文字おこしをされたら、我々が困る」
    これって、笑い話ですか。

  • オールドメディアはほぼ直接目にすることがないから、SNS経由で彼ら彼女らがやらかした情報しか入ってこない。既にニッチなニーズ向け媒体と果ててることは現実だろうが、やらかした情報だけがSNSで流通するのも一種のエコーチャンバー現象。
    インチキ論説で言うところの「報道しない自由」は報道を独占しない限り無いのであるから、無いもの強請り。まあご愁傷様。

  •  立憲民主党はことあるごとにスピード感をもって「○○問題対策チーム」を立ち上げました。……会議室にチーム名をでっかく張り出して記念撮影してメディアに映させたら、仕事終わりなんですけどね。そもそも政策問題ではなく政局ばかりで、何かやったとしても無意味なものばかりでしたが。モリカケとか。
     旧来の自民党のもったいない部分は、粛々と仕事をこなしている所も全く伝わっていなかったこと。たまのやらかしによって「自民はやることなすこと全てダメな穀潰し」などという極端な評価をされるはめになりました。そして立憲民主党のもったいない部分……いやもったいない要素ねぇな、ダメな部分は「やるぞやるぞ」と喚いてしまったがためにやっていないのが鮮明になってしまったこと。
     現政権の方針はとても良いと思います。立憲と違って常識はあるでしょうから、やるぞとアピールした部分は徹底してやるはずです。さもないと「口だけだったな」と評価されるのは目に見えていますから。実際に批判的なオールドメディアからは既に、いかにも口だけ政権だということにしたさそーな期待の高さを危険視する記事が頻発していますし。
     政府はシゴトをバンバンアピールし、メディアは良いところは良いと褒め悪い所は悪いと追究すれば、要はただ「当たり前なこと」をすれば良いと思いますよ。

     前者はそれに期待され、後者はそんなことすら期待できなさそうですけどね。あと「わかりやすい」のために池上彰氏の起用はおやめになった方が。

  • 個人的には、
    「くれぐれも余計なカロリー使うなよ」
    と思いますね。

    ノーカット動画を即座に公式サイトへ上げるだけで必要十分。
    編集すれば(毎日のことだけに)スタッフが疲れます。
    マラソンですからね。楽が一番。

    解説や反論は、それこそ新宿さんなどの
    「市井の切り取り職人さんたちに任せて」
    無為無策こそ天衣無縫。

    編集加工や(誰でもAIでやれる)文字起こしなんかに余計なカロリーを使わないで、そんなマンパワーがあるならリプを丁寧に拾うとか傾向を分析するとかに注力すべきかと。、

    • 100%同意です。
      必要なのはリファレンス。
      抜け漏れない素材を提供できれば十二分です。
      そのまま生の食感を味わうのも良し。
      あとは在野の調理者が料理されたものを食しても良し。
      情報のプロたるマスコミ・メディアが加工した料理と比較するのも良し。
      そもそも、AI使おうが完全無欠のものはない上、文責がある以上は誤字修正とかで後処理は必要不可欠。ましては要約の為にAIなり人を使ってしまうとAIや人の特性によって要約の質が左右されるでしょう。
      素がイチバンです。