政治家としての素質を検証する際には、その政治家が持つ志(こころざし)と政治家としての実務能力の2つの軸で判断すべきでしょう。こうした観点からは、志だけが先行して能力が足りない政治家というのは、正直、あまり評価に値しません。その一方、ちょっと気になる話題があるとしたら、ドナルド・J・トランプ米大統領が高市早苗総理大臣を「鋭く賢く、活気にあふれていた」と絶賛した、という点です。
目次
政治家の2つの素質
政治家の素質とは、いったい何なのか。
これについて、著者としては基本的に、次の2つを挙げます。
1、その政治家が高い志(こころざし)を持っているかどうか。
2、その政治家が政治家としての高い実務能力を持っているか。
このうち1番目については、わかりやすいと思います。
現在の日本の政治の体たらくをみて、「こんなんじゃダメだ」、「私ならもっとこの国をより良くして行ける」、などと強く感じ、政治を志す人がいますが、これは政治家になる動機としては非常に正当なものです。
政治を目指す人、あるいは現在の政治家(とりわけ、国会議員や地方議会議員)を見ていると、この「志」が高い人もいれば、低い人もいます。自分が政治家になって何がしたいのかという、最も中核となる部分があるのか、ないのか、という違いです。
世襲政治家のなかには志が低いケースもあるようで…
こうした観点からは、いわゆる世襲政治家と呼ばれる人たちの存在に注目せざるを得ません。
世襲政治家とはその名の通り、政治家としての地位を親から子、あるいは子から孫に受け継いでいる人たちであり、(すべての人がそうとは言いませんが)なかには大した志を持たず、ただ政治家としての地位を受け継ぐことだけが目的化しているというケースもあるでしょう。
これに対し、たたき上げの政治家は多くの場合、「コアな考え方」を持っています。
コアな考え方とは、「私はこの政策を実現するために政治家になったのだ」、「この政策を私は生涯かけてやり遂げる」、といった強い信念だと言い換えても良いかもしれません。
もちろん、そうした信念が結果的に正しいかどうかについてはわかりませんが、ただ、こうした信念が強ければ強いほど、また、繰り返し訴え続ければ続けるほど、有権者に浸透することは間違いなく、それが「素晴らしい」と思う有権者が多ければ、その人は選挙で勝てますし、議会で多数派を形成して首相にだってなれるでしょう。
(もっとも、日本国民は賢いので、仮に強い信念を持っていたとしても、それが日本にとって間違ったものであれば、その政治家ないし政党は徐々に議席を失っていくだけの話ですが…。)
どちらかというと実務能力の方が大事
いずれにせよ、強い信念がある政治家は多くの場合、尊敬されますし、それだけで一定の支持を獲得することも間違いありません。
ただ、ここで勘違いしてほしくないのですが、当ウェブサイトとしては、政治家に必要なのは高い志「だけ」でよい、と申し上げるつもりはありません。先ほど挙げた2番目に、「政治家としての高い実務能力」がありますが、著者自身はむしろこちらの方が重要ではないかと考えているからです。
ここで「高い実務能力」は、その名の通り、政治家が政策を実現するための能力のことです。
たとえば国会議員の場合だと、その大事な本職のひとつは「法律を作ること」ですが、逆にいえば、国会議員の実務能力とは法律を通じて社会を良くしていくことです。
もちろん、日本の場合だと、法律は政府が提出することが大変に多く、また、(昨今の選挙で自民党が過半数割れを起こしているとはいえ)法律は多数を制した政党(=与党)が多数決で通していくという性質もあるため、法案に賛否を示すだけであれば、個々の国会議員の能力はそれほど問われないと思うかもしれません。
ただ、国会議員である限りは、政府提出法案に賛成する場合も反対する場合も、あるいは自身が所属する委員会で政府提出法案を審議する場合も、自分が関わっている法案が何を目的としているものなのか、それを深く理解していなければならないことは間違いありません。
また、与党に所属し、政府の閣僚などの「政務三役」を務めることがあれば、現実に官僚機構と協力して行政を推進していかなければなりませんし、場合によっては政治判断や政治責任を求められることもあるでしょう。
そして、個々の政策を進めるうえでは政策に対する深い理解が不可欠ですし、その前提として、日本国憲法やその他の主要基本法(民法、刑法、会社法など)、経済学(マクロ・ミクロ)、会計学、金融などの基礎知識をひととおり網羅していなければなりません。
コミュ力や人脈、語学力なども大事!
こうした法や経済に対する理解もそうですが、話は政策理解力にとどまりません。現実に政策を進めていく上では、野党や官僚組織に加え、関連業界団体などとも折衝しなければならないこともありますし、その意味では、政策理解力とコミュニケーション能力・ディベート能力が必要です。
そして、さらに重要なのが、各界(たとえば経済界など)のキーパーソンらとの人脈でしょう。この人脈も、日本国内だけではなく、外国に広がっていれば、なお望ましいといえます。
たとえば官庁の大臣を務めることになった場合、外国(G7やASEAN、TPCPP諸国など)のカウンターパートと密接な協議を行う必要が出てくることもありますし、ときとして外国閣僚から意見を求められることだってあるでしょう。
このように考えたら、政策を進めるためには、政治家としての基礎体力(法律や経済などの基本・専門知識や語学力)に加え、人脈、政策上の課題把握力、さらには外国人とコミュニケーションをとるための語学力など、政治家にはさまざまな実務能力が必要です。
優れた政治家にとって、志が高いことは当然に必要ではあるものの、それではまったく足りません。
どちらかといえばこうした実務能力の有無が政治家としての適性を決めているのではないでしょうか。
この「政治家としての能力」に関する議論は、当ウェブサイトではかなり以前から展開しているものです。
「雄弁な(しかし能力がまったくない)政治家は却ってわが国に悪影響を与える」、といった考え方などは、たとえば約2年前の『弁が立つ、しかし実務能力がない者ほど始末に負えない』などでも議論したとおりです。
また、その際、特定政党の支持者っぽい人が当ウェブサイトで書いてもいないことをもとに、大変強烈な批判コメントを寄せてきましたが(笑)、これについては「政党も政党なら支持者も支持者だね」、とだけ申し上げておきたいと思います。
トランプ氏が高市総理を絶賛
さて、なぜこんな話を唐突に展開したのかといえば、共同通信が配信した、高市早苗総理大臣に関するこんな記事が目に留まったからです。
トランプ氏、高市氏を絶賛「鋭く賢く、活気にあふれていた」 日本訪問「素晴らしかった」
―――2025/10/29 12:44付 産経ニュースより【共同通信配信】
記事本文が短すぎるので引用はしませんが、ドナルド・J・トランプ米大統領のこの見解には同意せざるを得ません。
もちろん、トランプ氏なりの単なるリップサービスという可能性も多分にあるのですが、それでもあくまでも著者の印象も交えて申し上げれば、高市総理が就任してからの10日間は、高市政権の可能性に期待を抱かせるに十分なものでした。
そもそも『今回も高市早苗氏立候補演説を全文文字起こししてみた』を読んでいただければわかるとおり、高市総理は控え目に言っても記憶力が非常に高いうえに、政策理解力や専門能力がずば抜けています。
高市総理は故・安倍晋三総理大臣の時代に総務相などを務めていますし、また、岸田文雄・元首相のころには経済安保担当相も経験しているなど、通信、産業、安保といった政策分野に明るいことは明らかですが、それにしても大したものです。
就任前からすでに「高市自民」は、SNSなどを通じて国民に対し直接の情報発信を開始するなど、それまでの自民党と比べて変化を見せるものでしたし、高市内閣発足後もさっそくに高市総理の活動が目立ちます。
高市総理就任前から決まっていたこととはいえ、先日のASEAN訪問やトランプ大統領訪日時の映像で見ても、高市氏は外国首脳と笑顔でコミュニケーションをとる能力が非常に高く、国際会議でスマホ片手に座っていたことでも知られる前任者の石破茂・前首相などとは比べるべくもありません。
結局よりマシ論で考えるしかない
当ウェブサイトではなんども取り上げている通り、著者自身は高市総理を盲目的に100%支持するつもりはありませんし、とくに減税や社会保険料引き下げに関するスタンスは必ずしも前向きとは言い難い点についても、正直、警戒しているクチです。
ただ、この世の中に個々の有権者の意向を100%代弁した政治家なんていません。
政治とは、国民が「よりマシな政治家を選ぶゲーム」のようなものですので、現在存在するさまざまな政治家の中で、志もさることながら、高い実務能力を兼ね備えた高市氏は、とりあえずの総理としては上出来だったといえるのではないでしょうか。
また、幸いなことにこの世の中にはインターネットが存在しますので、自分が考えていることについてはウェブサイトやSNSなどを通じて表明することが可能です。運が良ければ政治家にも伝わるかもしれません。
この点、高市総理自身は大変に多忙な方ですが、高市内閣関係者、あるいは自民党の執行部、さらには自民党国会議員・自民党公認候補予定者など、野党国会議員、地方議会議員などに国民の声が届く可能性は飛躍的に上がっています。
現在の自民党政権の動向に100%満足ができない場合は、SNSで声をあげることもできますし、さらには自民党を牽制するために野党を支持することもできます(ちなみにわが国ではどの政党を支持するのも自由ですし、当ウェブサイトでも読者の皆さまに特定政党の支持を呼び掛けるつもりはありません)。
いずれにせよ、高市総理の約10日間、政治家としての実務能力を見せつけられた気がするのは、著者だけではないと思うのですが、いかがでしょうか?
View Comments (10)
毎度、ばかばかしいお話を。
韓国:「石破前総理は、鋭く賢く活気あふれていた」
ありそうだな。
官邸とホワイトハウスのSNS発信にありますが、今後いろんな場面で使い回されるであろう、いろんないい絵柄の写真や映像が記録されましたね。
首脳同士の関係構築が目的だとすれば、大成功だと思います。
ネット上のサヨ界隈の批判は「上目遣いだ」「肩に手を回されて」なんて、実利上どうでもいい主観に基づくものばかりで、要は批判できるところがなかったのだと理解しました。歯ぎしりが聞こえてきそうです。
どうせ「上から目線」で相手を見てたら「エラそうだ」って言うんだろうし。「よそよそしい」とか。(笑)
そんな批判をする人々は、プライドばかり高くて実利を無視する人々なのでしょう。私なんぞは日米首脳の関係の良さは国益に直結するので全然問題ないと考えます。
全然関係ないですが、替え歌王の動画で「わけのわからん日本語を話す誰かさんとはエラい違いだ」という行があって、私と同じ感想を持つ人がいるのだなと。
嘉門タツオ:ゆけ!ゆけ!高市早苗
https://youtu.be/2Vx-vO_n1Sk
芸能ネタですみませんでした。m(__)m
ゆけ!ゆけ!川口浩!!
https://www.youtube.com/watch?v=zm_kpK9xyA8&list
↑元ネタも懐かしく・・。
カズさんの反応があるかと淡い期待を抱いていました。(笑)
あの頃のテレビは牧歌的でそれはそれでおもしろかったです。
>ネット上のサヨ界隈の批判は「上目遣いだ」「肩に手を回されて」なんて、
>実利上どうでもいい主観に基づくものばかりで、
>要は批判できるところがなかったのだと理解しました。
これは明らかに言い掛かり、難癖、文句に該当しますね。
そして特定の国に甘いことで知られるサヨ界隈の発言なので、これを「イ・チャモン」と呼んでも宜しいでしょう。
発言内容にも生産性が感じられませんし、壮大な無駄発言とも言えます。
日本が今置かれている立場を全く考えていないか、或いは某国の属国になりたいのかのどちらかでしょうね。
アメリカ側と対峙した日本の政治家のレベルが問題でしょうね。やはり政治家にはビジネスの経験が必要では。赤澤さんとか80兆円のスキームについて、もまともに説明できないまま。今回の流れを見ると、日本企業の作ったスキームに日本がお金を出して、アメリカにモノを作る流れで、日本がお金だけ出すという状況は回避できたようですね。各案件ともに、メンテナンスが日本企業に流れる仕組みになれば、もしかしたら、良いスキームになるかも。確かに利益の9割がアメリカに取られるらしいのですが、原価がすべて日本側であれば、DCFで評価してメンテナンスフィーの設定次第では良い案件になるかも。ただ、先端技術の合意もしているようで、先端技術に80兆円が流れると、まさにアドベンチャー投資で日本は金を出しただけになるリスクもありますね。
楽観的にイイ方にだけ解釈してみるならば、
「利益の90%は米国がもらう!」
ということは、
「90%もらった体裁さえ作ってトランプの顔を立てたら、後は現場でうまいことやれ。」
という意味なのかも。
TOYOTAのケンタッキー工場や、
HONDAのイリノイ工場が、
投資利益の90%を受け取るスキームを作ればよい、のかな?
そう考えたならば、赤沢が黙ってるのは、仕方ないのかもしれないですね。
(かも、ですけどね。)
90%というのは、日本側がコスト回収した後の話ではないでしょうか。それまでは両者50/50で配分のはずです。
石破「何かできることがあるか検討しよう」
高市「何かできないことがあるか検討しよう」
高市早苗への評価で、
「仕事の上でのアウトプット」
ではもはやケチの付けようがないから、
「はしゃぎ過ぎ」
「媚を売りすぎ」
「トランプの現地妻」
と情緒的な領域での攻撃に移ってきた模様。
ホワイトハウスが公開した写真で。迎賓館の階段からトランプのエスコートで腕を組んでおりてくるシーンについて、やいのやいの。
うーん、理解不能。
比較的にうまいな!と思った寸評は、
「鹿鳴館なんてみたことない百姓女が、洋服を着てワルツを踊る高市早苗に、はしたない!と非難しているみたい」
ま、とにかく石破でなくてホントにホントによかったわ~。