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石破政権の置き土産:複雑怪奇な基礎控除とどう戦うか

あと2ヵ月で今年も終わります。こうしたなか、経理担当者にとっては年末調整の季節がやってくることになりますが、今年の年調は石破茂・前首相(あるいは宮沢洋一・前税調会長)の置き土産でもある、極めて複雑怪奇な税制に直面しなければなりません。理想を言えば高市総理には突貫工事でこの税制を改正していただきたいところでもありますが、スケジュール的にはかなり厳しいところです。

今年もあと2ヵ月で終わります

早いもので、もうすぐ10月も終わります。

10月が終わると、今年も残すところあとたった2ヵ月です。

ちなみに著者に関しては、当ウェブサイトにて自身の近況についてあまり述べることはしないつもりだったのですが、ひとつだけお知らせしておくと、おかげさまで今年の自身の目標については、ある程度は順調に進んでいる、とだけお伝えしておきます。

その反面、どうしても多忙になってしまいましたので、現在の頻度での更新も、もしかしたら厳しくなるかもしれません。しかし、著者にとって当ウェブサイトは「とある目的」のために欠かせない手段のひとつでもありますので、これについては何とか継続したいと考えている次第です。

無駄に負荷がかかる年末調整

今年の年末調整は大変だぞ~!

さて、あいさつはそこそこにして、もうすぐ年末である、という点を思い出しておきましょう。

年末になると、勤労者の皆さまであれば、年末調整を受けるはずです。

今年は所得税の基礎控除が、かなりややこしくなりました(図表1)。

図表1 基礎控除額の改正

(【出所】国税庁『令和7年分 年末調整のしかた』ページから一括ダウンロード可能なパンフレットP3を抜粋)

正直、「いったい、なんじゃこりゃ?」、と思う人も多いでしょう。ただでさえ複雑な税法が、さらに複雑怪奇な者となっているからです。

じつはこれ、昨年の衆院選で躍進した国民民主党が掲げていた「手取りを増やす」政策の一環で、石破茂首相(※当時)が率いる自民党が国民民主に加え、与党だった公明党との協議が迷走した末に出て来たものです。

年収190万円超に恩恵がない給与所得控除見直し

当時、国民民主が掲げたのは、所得税が発生し始める「年収の壁」を、103万円(給与所得控除の最低額55万円+基礎控除48万円)から178万円へと大幅に引き上げるとするもので、かりにこれが実現していれば、中間層の多くに年間で10万円前後かそれ以上の減税の恩恵が生じていたはずでした。

ところが、当時の自民党がやったことといえば、基礎控除をその人の合計所得金額に応じて非常に複雑にし、あわせて低所得者限定で給与所得控除の最低保障額を10万円だけ引き上げる(図表2)という、極めてショボい、まさに有権者を舐めているとしか思えない対応だったのです。

図表2 給与所得控除の見直し

(【出所】国税庁『令和7年分 年末調整のしかた』ページから一括ダウンロード可能なパンフレットP3を抜粋)

ちなみにこの「給与所得控除最低保障額10万円引き上げ」については、年間の給与・賞与などの合計が190万円を超える人にはいっさい恩恵がありません。年収190万円を超えるであろう大部分の給与所得者に恩恵があるのは、基礎控除10万円の引き上げ「だけ」です。

現実の減税効果はさらにショボい!

しかも、この基礎控除引き上げは住民税には適用されません。

ということは、これに税率を掛けた額が減税額ですが、乗じる税率は次の図表3でいう「所得税と復興税」の部分のものを使います。

図表3 所得税・復興税・住民税の現在の実質的な税率
課税所得 所得税 +復興税 +住民税
1,000円~1,949,000円 5% 5.105% 15.105%
1,950,000円~3,299,000円 10% 10.210% 20.210%
3,300,000円~6,949,000円 20% 20.420% 30.420%
6,950,000円~8,999,000円 23% 23.483% 33.483%
9,000,000円~17,999,000円 33% 33.693% 43.693%
18,000,000円~39,999,000円 40% 40.840% 50.840%
40,000,000円~ 45% 45.945% 55.945%

(【出所】当ウェブサイト作成)

何ともショボい話です。

仮に所得税の税率が20%ならば、それと復興税をあわせた20.42%を基礎控除の10万円に乗じた20,420円が減税額、というわけです。こんなに複雑な制度でたった数万円ぽっちしか返ってこないというのは、なんとも有権者をバカにした話です。

何ですか、これ?「特定親族特別控除」

ちなみに、さらに凄いのは、特定親族特別控除と呼ばれるものの創設です(図表3)。

図表4 特定親族特別控除

(【出所】国税庁『令和7年分 年末調整のしかた』ページから一括ダウンロード可能なパンフレットP4を抜粋)

最後のこのデコボコした図表、著者の場合は脳が理解することを拒否しています(笑)。

これ、石破内閣(あるいは税調インナー、さらにはその裏にある財務省の権力)を象徴する残骸のようなものといえるかもしれません。

いずれにせよ、年末調整は粛々と実施しなければならないため、全国の年調担当者の皆さまの気苦労を思うと、なんともやりきれないものがあります。これだけ複雑な制度変更が行われたことで、得られる減税効果は所得税(+復興税)のみ、しかもたった10万円×税率分に過ぎないからです。

高市総理はどう動くのか

高市総理は年内制度設計を目指すが…?

さて、高市内閣が発足したことを受け、この年収の壁が引き上げられるのかが気になるところです。

正直なところ、高市早苗総理大臣の発言を聞いていても、この年収の壁の引き上げを最優先にしているという雰囲気はなく、ただ、自公国3党幹事長が昨年12月に取り交わした覚書で「壁を引き上げることになっているから」その約束を果たす、といったニュアンスです。

また、高市総理の就任時の会見でも、この年収の壁の話題が質疑で出て来ましたが、おそらくこれについては「年内に再度、壁の引き上げを実現する」という雰囲気はありません。高市総理は日本テレビ記者の「103万円の壁をいつ引き上げるのか」とする趣旨の質問に、こう答えているからです。

いわゆる103万円の壁でございますが、今般、自民党・維新の連立合意を踏まえまして、所得税の基礎控除等をインフレの進展に応じて見直す、その制度設計については、令和7年内、今年です、今年の年末をめどに取りまとめてまいります」。

この発言、年末をめどに「取りまとめる」と断言していますが、逆に言えば、最速でも年内取りまとめであり、法案提出は来年以降(おそらくは通常国会でしょうか?)となる、ということでもあります。

なんとも歯がゆい思いを持つ人も多いのではないでしょうか。

念のために申し上げておくと、石破前首相が7月の参議院議員選挙に負けたくせに2ヵ月も居座ったため、さまざまな政策が遅れに遅れまくっているという側面があり、これについて高市総理の責めに帰するのは若干筋違いかもしれません。

しかも、自民党は衆参両院で過半数を持っておらず、また、公明党が連立離脱してしまっているわけです。日本維新の会が連立入りしたとはいえ、それでも自維両党は、衆参両院では依然として過半数を制していないのです。

かつ、政権のスタートが10月下旬になってしまったなかで、最速で取り組んだとしても、実務上は今年の年末調整に間に合わせる法改正はかなり困難でしょう(せめてあと1~2ヵ月時間があれば突貫工事もできたかもしれませんが…)。

現実的には、年収の壁を引き上げるためにはまずは自維両党で政策合意を形成し、そのうえで必要に応じて「言い出しっぺ」である国民民主党の協力を得て衆参両院で採決する、といった流れとならざるを得ないでしょう。

どうせなら公平・中立・簡素を目指せ

ただ、どうせ時間がかかるなら、自維両党にはやはり「税の原点」に立ち返っていただきたいところです。

税の3原則は「公平・中立・簡素」ですが、石破前首相(というか、宮沢前税調会長)の置き土産である複雑骨折した基礎控除は、公平でもなければ中立でもなく、簡素でもありません。このような現在の税制については、可能な限り早期に、抜本的に改めるのが望ましいのではないでしょうか。

この点、国民民主が主張していた基礎控除は、所得税、住民税ともに現在よりも75万円ほど引き上げる、とするものですが、極端な話、べつに引き上げ幅は75万円でなくても構いません。

インフレ基調が進んでいることなどを踏まえ、いっそのこと基礎控除を48万円ではなく、150万円や200万円、あるいは300万円など、キリの良い水準にまで引き上げても良いかもしれません(もちろん、所得税だけでなく、住民税も、です)。

それに、基礎控除は合計所得金額が2500万円を超えるとゼロになってしまうのですが、この仕組みも廃止すべきでしょう。基礎控除は生活にかかる部分に課税しないという、憲法でいう生存権とも密接にかかわる規定だからです。

さらには、民主党政権時代に廃止されてしまった年少扶養控除も復活すべきでしょう。

ちなみに扶養控除がひとり50万円程度あれば、正直、所得税の税率が20%以上の人は合計税率が30.420%ですので、児童手当を受け取るよりもトータルの手取りは増えます。なんなら児童手当の所得制限を復活しても良いと思います。

税法は修正点が少ない!

ではなぜ、所得税・住民税の基礎控除が有効なのでしょうか。

その理由はいくつかあるのですが、関連する条文が少ないことです。

所得税法ならば第86条第1項を、地方税法ならば第34条第2項を、それぞれ改廃するだけで実現できます。

所得税法第86条第1項

合計所得金額が二千五百万円以下である居住者については、その者のその年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額を控除する。

一 その居住者の合計所得金額が二千四百万円以下である場合 四十八万円

二 その居住者の合計所得金額が二千四百万円を超え二千四百五十万円以下である場合 三十二万円

三 その居住者の合計所得金額が二千四百五十万円を超え二千五百万円以下である場合 十六万円

地方税法第34条第2項

道府県は、前年の合計所得金額が二千五百万円以下である所得割の納税義務者については、その者の前年の所得について算定した総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める金額を控除するものとする。

一 当該納税義務者の前年の合計所得金額が二千四百万円以下である場合 四十三万円

二 当該納税義務者の前年の合計所得金額が二千四百万円を超え二千四百五十万円以下である場合 二十九万円

三 当該納税義務者の前年の合計所得金額が二千四百五十万円を超え二千五百万円以下である場合 十五万円

これらの規定を、それぞれ、たとえば次のように修正すれば完了です。

所得税法改正私案(第86条第1項)

居住者については、その者のその年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から五百万円を控除する。

地方税法改正試案(第34条第2項)

道府県は、所得割の納税義務者については、その者の前年の所得について算定した総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から五百万円を控除する。

シンプルです。

社会保険料よりも税法を急ぐべき理由

なお、もちろん、「税社保取り過ぎ問題」の抜本的な改正のためには、上記のみならず、社会保険料の制度改正も必要です。

著者自身としては以下の「イチ押し記事」でも触れている通り、少なくとも厚生年金は廃止して国民年金に統合し、後期高齢者の9割引医療についても応急措置的に直ちに本人3割負担化を実現しなければならないと考えています。

最近のイチ押し記事(現時点)

ただ、厚生年金を含めた年金にせよ、健康保険にせよ、介護保険にせよ、あまりにも問題は根深いため、改正にはかなりの時間と政治パワーが必要でしょう。このように考えていくと、まずは所得税法や地方税法で減税に先鞭をつけるのが、国民経済発展のためには必要であり、かつ、有意義なのです。

高市政権に個人的に期待したいのは、一刻も早く(できれば年内に)年収の壁引き上げを実現することであり、それがかなわぬようであったとしても、来年の年調では間違いなく壁引上げを実現することです。

また、高市総理肝いりの「給付付税額控除」に関しても、どうせやるならば年金廃止(または大幅縮小)とセットであるべきです。

いずれにせよ、今後の国内政治シーンでは、財政政策とセットで目が離せない展開が続くことは間違いないでしょう。

新宿会計士:

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  • こくみんの恨み晴らします
    動画投稿サイト・SNS 界に新たな流行、今度は投げ藁人形が登場
    栄えある投げ縄人形第一号は、「眠る前首相」「寝ている前首相」「寝言の前首相」に
    投げ藁人形とは、この人物だけは許せない、そんな相手に怨念の象徴たる仮想藁人形を贈呈する行為である
    投げ藁人形のしくみ
    ・仮想藁人形を購入する(交通系カード、QRコード決済、デビットカード決済に対応)
    ・仮想神社の杉に藁人形を仮想五寸釘で打ち付ける(丑の刻に予定投稿指定可能)
    ・恨み節が前政権に届くように「くぬくぬくぬ」とつぶやく
    ・オプションのハチマキと額に付ける二本の和蝋燭を使用すると仮装度が高まります
    ネットから寄せられた投げ藁人形は、神主のお祓いで清めた後、段ボールに詰めて鳥取1区に回送します。成仏してクレメンス

  • 高市総理には、世論調査での支持率が高いうちに、複雑怪奇な基礎控除の簡素化に着手してもらいたいものです。(もちろん、出来れば、それにこしたことはありませんが、時間的に、そこまでは無理でしょう)

    • 高市総理は、複雑怪奇な基礎控除の簡素化を掲げて、総選挙にうって出ることもあるのでは。

  • 国保には法定の7.5.3軽減という低所得者への軽減措置があり、今回どうかは存じませんが基礎控除が変わった場合には連動して国保法も改正する必要があり、市町村の条例も改正する必要があります。
    これを委員会で議員に説明するのが面倒なんですよね。
    条例改正して、システム改修して、無駄に人件費コストをかけて、得られる効果がどのくらいかよう分からんという。
    仕組みが複雑になるのを一概に否定はしませんが、これはダメなヤツですね。

  • 10月ももうすぐ終わる。10/4の総裁選からトランプ大統領訪日までを時系列に並べてみると、これは大変なスケジュールだとわかる。聞いた話によると総理の体重がその間多いときで5~6kgぐらい減ったとか。また、須田慎一郎氏の取材で得た情報によれば高市総理不在中に元税調インナーが足を引っ張るべく蠢いていたとか。
    一方で自分のスケジュール感ときたら確定申告を出したと思えばもう年末調整か、といった具合。高市総理の有言実行と言える働きぶりには頭が下がる。
    とはいえ、政治は結果を見て評価しないといけない。正直な感想で言えば10月は減点どころか期待を上回った。恐らく高い支持率は似たような感想を抱いた人が多いからだろう。
    周りで言っている人もいたが、今年の年末調整どうなるの? と把握が追いついてない状況になっている。高市総理自身は信念を持った仕事人間だと評価するが、政権としてどうなのかはこれからになるだろう。

    • サミット会場で1人スマホをいじってた人は、どんなスケジュールだったのでしょうかね。

      また、同盟国大統領が六年ぶり来日してるのに東京から居なくなってるとか、さぞかし大事な用件で忙しいのでしょうかね。

      あ、都知事もですな。
      エジプトより米国ちゃうんかいな。
      少なくとも横田基地の件で石原慎太郎だったなら居残りしてどこかで一言なり話をしようとしたのではないかな。

  • >デコボコした図表
    これが財務省が設計した「税は理屈の世界」なのか。頭おかしい。

    • ゼロからの座標軸で等差数列で縦横の升目が出来ているみたいなので、まだマシなほうですね。財務省資料ではないですが、ヒドいのになると0からの目盛りでないものや、マス目が(対数でもない)非線形もありえたりするので油断できません。

  • 一年前頃のSNSを眺めていたんですが、基礎控除引上げへの期待値、熱量がものすごいですね。今は落ち着いているのかシラケてしまっているのか。
    連立崩壊以降でも3党合意は生きていると3党の責任者が述べていますし、玉木氏も数日前に基礎控除引上げに言及して年内実施を求めると述べています。
    3党合意とはいえネットで文書が公開され大いに期待を高めたことで、ある意味有権者への約束の面もあります。
    スケジュールはタイトなようですが各者の誠意を示してもらいたいものです。制度変更のメリットは永年続くわけですから、年内実施できないからといって評価ゼロというわけでもなく、着地点によって点数も変わると思います。

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  • 昨年の年末調整の控えをもとに同じように書き込もうとしたところで、いきなり躓いてしまった。
    ほんと、彼の置き土産には閉口する。まるで取り忘れた犬の○ンチのようだ。
    説明書とにらめっこで、2‐3時間。俺の時間給を知っているのか?簡潔にしてくれ。
    そして手取りが増えるよう税制も改定してほしい。

    サナエ、コバホーク期待しているぞ。

  • 議員定数削減にはどちらかといえば反対の方ですが、レジ袋有料化しただけとかこういうやったつもりになっているだけの議員(※与野党関係なく)にはとっとと政界から永久退場願いたい。

  • パレート最適の文句を考慮するならば、
    「3党合意で壁を無くす」

    時についでにいろいろな階段も一気に無くしてしまえればよいのですけどね。
    「損する方向への調整変更は一人も居ないから、よろしく!」

    ま、調整に時間がかかるようなら、まず目先の1点先取を最優先!でもちろん構いませんですハイ。

    • >損する方向への調整変更は一人も居ないから

      財務省「あ?」

      とか聞こえてきそうです。

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