例の番組は打ち切りとなったようですが、その一方、当ウェブサイトに昨日、大変強烈で面黒いコメントがわきました。AIの回答をもとに、強行法である放送法第4条第1項の規定を「強行法ではない」と言い張るのです。笑い過ぎて腹筋が攣りそうになりました。ただ、この点はともかくとして、問題があるコンテンツを作る業者に対し、私たち視聴者(≒国民)には「見ない」というペナルティを下すことができることも事実なのです。
目次
番組は打ち切りが決定
先日の『公共の電波で「あるまじき発言」…一線を越えたテレビ』では、では、BS朝日の番組で司会者が高市早苗総理大臣を念頭に極めて反社会的な内容を述べた件を取り上げたのですが、これについては昨日までに、番組の打ち切りが決まりました。
BS朝日『激論!クロスファイア』終了について
―――2025年10月24日付 株式会社BS朝日ウェブサイトより
BS朝日が発表した内容によると、19日に放送されたBS朝日『激論!クロスファイア』で司会者が「不適切な発言を行った」ことを受け、同社は24日に臨時取締役会を開催。その結果、司会者の発言は「政治討論番組としてのモラルを逸脱している」と判断し、「当該放送回をもって番組を終了することを決定」したそうです。
あわせて問題の放送が(生中継などではなく)VTR収録であり、その不適切発言を編集でカットすることができたにも関わらず、それを怠ったとして、編成制作局長を懲戒処分としたと表明。
そのうえで視聴者や関係者に対し謝罪する、という内容です。
正直、BS朝日の対応は遅いと断じざるを得ないにせよ、それでもこの「番組打ち切り」、「視聴者や関係者への謝罪」といった判断は妥当なものでしょう。
これに加えて当ウェブサイトとしても、個人攻撃をすることは目的としていません。
くだんの司会者については番組終了という形で社会的ペナルティを受けたと考え、今後、これ以上に過度な批判を加えることは控えたいと思いますし、当ウェブサイト読者の皆さまにも、普段通り、良識的にご対応いただけるものと期待しています。
放送法第4条第1項を巡る強烈なコメント
ただ、本件に関しては、もうひとつの論点があります。
くだんの発言が出てきたのは、司会者個人、あるいは放送局個社の問題ではなく、テレビ業界の問題、もっといえば監督官庁である総務省がしっかりと必要な行政処分などを怠ってきた問題を指摘しておく必要があるからです。
これに関連し、昨日の『テレビ放送の非常識な暴言…最大の責任は総務省にある』では、この番組の問題だけでなく、あわせて放送法第4条第1項の条文を紹介しました。
放送法第4条第1項
放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。
一 公安及び善良な風俗を害しないこと。
二 政治的に公平であること。
三 報道は事実をまげないですること。
四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。
これについて、真っ先に取り上げておきたいのが、傑作な読者コメントです。これについてさっそく紹介しておきます(中身がないわりに冗長であり、かつ支離滅裂な部分もあるのですが、原文のままとりあえず紹介しますので、我慢してお付き合いください)。
問題のコメント(少し長いですが…)
以下、原文です。
>放送法第4条第1項に定める①公安及び善良な風俗、②政治的公平、③事実を曲げないこと、④多角的論点―――は、単なる倫理規定と見るべきではありません。
>これは、守らなければ最悪停波処分もあり得るという意味で、「強行法」(絶対に守らなければならない規定)であると見るのが正解です。
最近、こういう雑な発言が本当に目につくようになりました。「強行法であると見るのが正解」とか言っちゃってますが、これは事実ですか?
ということで、例によってCopilotさんに聞いてみました。
Q.放送法第4条第1項の規定は、単なる倫理規定ではなく、絶対に守らなければならない強行法なのですか?
A.放送法第4条第1項は「倫理規定」としての性格が強く、法的拘束力を持つ「強行法規」とは一概に言えません。ただし、政府の解釈や運用によっては、一定の法的効果を持つ可能性も指摘されています。
(中略)
つまり:
従来の解釈では「倫理規定」とされてきた
政府は一部のケースで「法規範」としての運用を示唆
学界・法曹界からは「表現の自由」侵害の懸念がある
というように、法的性格については現在も議論が続いており、明確に「強行法規」と断定することはできません。(以下略)
・・・やっぱり、AIのほうが、よっぽどまともなことを言ってますよね。
個人的・主観的な意見として「強行法と考えるべき」と主張するのはありだと思いますが、「強行法であると見るのが正解」と言ってしまうのは事実に反します。
こういう、個人的・主観的意見をあたかも普遍的な事実であるがごとく語るのは、本当に悪質だと思います。なによりも、「客観的事実と主観的意見は明確に峻別することが重要」とかドヤ顔で主張している当人が、全く逆の行為をこうやって臆面もなくやっていることに、恥ずかしさは感じないのか?と、半ば呆れた心境でおります。
客観的事実を基に立論された論考は、多分に知的好奇心を刺激されるのですが、個人的・主観的な意見に基づく主張を一方的に聞かされるのは、アジテーションやオルグへの同調圧力にさらされているような気分になるだけで、本当に不快です。
個人的な感想ですが、ここ1年か2年で、このWEBサイトもかなり変質したなという印象を強く持ちます。エコーチェンバー化も進んでいるのではないかという気がします。少なくとも、以前のような、膝を叩いて同意できるような論考を目にすることは本当になくなりました。残念なことです。
なぜAIを根拠に批判できると思ったのか(笑)
…(笑)
なんとも面黒過ぎます。
どこからどう突っ込んで良いのかわからないほどに支離滅裂ですが、放送法第4条第1項が強行法ではなく倫理規定であると決めつける根拠がマイクロソフト社のAIだというのも強烈ですが、どうして専門職の人に聞かないのでしょうか(笑)。
もちろん、当ウェブサイトの場合は(犯罪予告などの反社会的内容などを除いて)記事に対する批判的コメントを入力するのも自由ですし、べつにAIの回答をドヤ顔でご開陳していただくのも自由です。しかし、それと同時に、書き込んだコメントについては、それを読んだ人には批判する自由があることもまた事実です。
さて、このコメントはなかなかに強烈ですが、それだけではありません。「本当に不快です」という個人の感想を読まされるのも「本当に不快です」(笑)と批判されたらどうするつもりなのか、といった点も含め、エンターテインメントとしても本当に面黒いです。
とりわけ、この手の「AIに聞いたから(当ウェブサイトの記載内容は)間違っているにちがいない」、「(当ウェブサイトの記載内容は)事実に反する」などと支離滅裂に決めつけるコメントは、読者コメント欄でおちょくられるのが関の山です。
プロレスでいう悪役みたいなものでしょうか?(笑)
放送法第4条第1項は強行規定である
いずれにせよ、当ウェブサイトではよっぽど反社会的なコメントなどを除けば、どんな内容であっても自由にコメントを打ち込んでいただけますので、この匿名コメント主様もせいぜい頑張ってお得意の「AI分析」とやらを根拠に当ウェブサイトの批判を続けていただければ良いと思います。
(汎用の生成AIを根拠に当ウェブサイトの記載内容を批判するというのも、ちょっと強烈に面白過ぎて、笑いをこらえることができませんし、腹筋が引き攣って腹痛を起こした責任を追及したいという気持ちもないではありませんが、それでも面黒いネタを提供してくださるという意味では本当に感謝申し上げます。)
さて、こういう強烈かつ面黒い読者コメントがわいたところですので、改めて強調しておきますが、放送法第4条第1項は「放送局が絶対に守らなければならない強行規定」です。そして、現在のテレビ局の放送スタンスを見るに、この放送法第4条第1項の規定は総じて守られていないと断じざるを得ません。
- ①公安及び善良な風俗を害しないこと→公安や善良な風俗を害していることもある
- ②政治的に公平であること→政治的に公平でないことがある
- ③報道は事実をまげないですること→しばしば事実を歪曲することがある
- ④意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること→「結論ありき」で一面的に論点を決めつけていることがある
じつは、これこそが当ウェブサイトが9年間かけて追いかけ続けているテーマのひとつでもあります。
繰り返しになりますが、放送法がこのような強行規定を設けている理由は、(あくまでも著者私見ですが)テレビなどの放送は公共の電波を独占的に使用して行われるため、極めて公共性が高いだけでなく、不適切なコンテンツが垂れ流されればそれ自体が自由・民主主義社会の存立基盤を脅かすからだと思います。
くだんの匿名コメント主さんは、法律の条文をAIで解釈できると勘違いしているたんなるおっちょこちょいさんなのか、テレビ業界関係者なのか、総務省関係者なのかは知りませんが、条文の文理解釈からも、立法趣旨からも、放送法第4条第1項が単なる倫理規定であるはずなどありません。
そして、このように考えていくと、テレビ局などが放送法に違反した反社会的なコンテンツを垂れ流していることは、それ自体が社会秩序に対する挑戦ですが、話はそれだけではありません。
放送法違反のコンテンツが横行しているなかで、総務省が必要な行政処分をまともに下さないこと自体が、総務官僚らの任務懈怠そのものであり、それだけで総務省から電波行政を取り上げなければならない理由でもあるのです。
司会者の問題ではなく業界と総務省の問題
というよりも、政治的に偏っている番組や、公安及び善良な風俗を害する番組、事実を歪曲した番組などが横行し、事実上の無法地帯と化している現在のテレビ業界を作った責任は、総務省の無作為にあるわけですから、本件も含め、最も責任を追及されるべきは総務省ではないでしょうか。
その意味では、今回の件についても「司会者が悪い」、「放送局が悪い」で済ませて良いほどに単純な話ではありません。実際、テレビ局側は、当初は司会者を厳重注意処分で済まそうとしていたからです。
やはり、なぜこんな発言が出て来たのか、なぜ放送局は発言をカットせずに放送してしまったのか、そしてなぜ放送局は初動が遅れたのか。
これらについては、強行規定である放送法第4条第1項を、業界挙げてないがしろにする風潮があった(あるいは上記で挙げた匿名コメント主様のご自慢のAIがいう「強行法じゃない」という屁理屈が蔓延していた)からだ、といった要因があったことは、おそらくは間違いないでしょう。
その意味では、やはりただすべき本丸は司会者や個々のテレビ局ではなく、テレビ業界そのものと総務省です。
新規参入を自由にしたら規制は必要なくなる!?
なお、最後にちょっとだけ「異論」も述べておきます。
じつは、先ほど挙げた面黒いAI匿名コメント主様が主張なさった、「放送法第4条第1項は強行法ではない」とする考え方にも、一理あります。放送法第4条第1項に反して事実を捻じ曲げた報道を行ったとしても許される可能性は、ゼロではないのです。
それは、いかなる場合でしょうか。
端的にいえば、放送事業者が無数に出現してくれば、個々の放送事業者が変な報道を行っても問題にならない、という事例が出て来ます。現在の日本だと、放送局の数は限られていますが、事業への参入が自由になれば、人々に支持されるコンテンツを作る業者が生き延びていくからです。
何の話を述べているのかといえば、YouTubeなどを含めた、ネット動画配信事業です。
ネット動画の場合は、べつに総務省などの役所の許可を取らなくても自由に事業に参加できますし、しかもそのコストは極めて低いのです。
じつは、すでに既存のテレビ局などを含めたオールドメディアは、ネットコンテンツ事業者との全面的な競争に巻き込まれています。著者自身は正直、放送法第4条第1項のような規定が存在する必要があるのか疑問ですし、いっそのこと同項を廃止し、どんな番組を作るのも自由にしてしまえば良いとすら考えています。
つまり、どんなコンテンツが許され、どんなコンテンツが許されないかを巡っても、総務省が決めるのではなく、私たち国民が決めれば良いのです。
具体的には、許されないコンテンツに対しては「見ない」というペナルティを与えれば良いのではないでしょうか?
それも、単に「問題があるコンテンツを見ない」だけでなく、「そのコンテンツ事業者のすべてのコンテンツを見ない」、「そのコンテンツ事業者についた広告主の製品を買わない」、といった具合です。
実際、今回の番組打ち切り騒動も、こうした文脈からは、テレビ主権の終了と視聴者(=国民)主権の始まりを予感させるものでもあります。
その意味では、現実の方が遥かに先を進んでいるのだ、という言い方もできるのではないか、などと思う次第です。
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1 2 3 次へ »法令違反なのか言論の自由なのか最高裁(地裁 高裁ではなく)の見解も聞いてみたいという知的好奇心。
言論は死んだ、言論万歳、言論よ永遠なれ、Long live 言論人!
言論を口にしただけで、言論という活字を目にしただけで、言論と聞いただけで、ぷくくくくく
個人的には、筒井康隆がてんかん問題で言葉狩りにあって、「言論」の業界からは誰も助太刀に入らず断筆したあたりで、日本におけるインテリゲンチヤは死滅していた感覚ですねえ。
七転八倒しながらでも世間の「常識」と向き合って言論の仕事を続けてきたのは宮崎駿くらいかしら。
次に起きそうなのは焚書です。書店から消えて図書館から排除される。そして焚書を免れた書籍が、匿名性の高いダークウェブネットワーク界隈でこっそり回し読みされる。
焚書は言い過ぎかなぁ。
普通に市場原理に従って廃棄焼却が進むと思います。
いまの若い人たちは紙の本を読まないし。
好きな人だけが趣味として集めて読んで保管して。
そういうのはたぶん、かつて浮世絵であったような構図かな。
日本人は当たり前に宝物に囲まれていたけど気付かず、捨てて捨ててガイジンが再発見してようやく再評価できるようになる。
みたいな?
サブカルチャー分野も、要するにそういう流れだったように思います。
好きな人だけが趣味として集めて読んで保管して。
ポリコレを押し売りしたインテリゲンチャは死滅しつつありますが、サブカルチャーは再評価されて地球規模の人気コンテンツとして爆発。
Youtube 運営による動画の削除、アカウント抹消=チャンネル消滅はこれまで繰り返して起きています。動画を消されて悔しい思いをしている、とか、繰り返し消されて運営にマークされ収益できないようにされた、とか、おおすめリストに表示されないような懲罰を喰らったとか、チャンネルごと消された、とか、虚無空間を漂っていたがこのたび黄泉から復活して人生をやり直しますよ発言、とか目にします。動画配信の世界線で生き残るのはほんとうに大変です。
テレ朝としては、もたもたして、フジテレビのように全スポンサー企業が撤退することを恐れたのではないでしょうか。
蛇足ですが、田原総一朗氏はテレ朝で別の番組を始めるのでしょうか。
田原総一郎は、老人層にはキラーコンテンツみたいなので、数字が録れるうちはまだまだ番組に使われるでしょうね。
とくに今は
「テレビは老人しか見ない」
のですから、エースで四番。
経営者に責任が及ばないための防波堤や身代わり札にも使えるから、ロシア戦車の仮組金網屋根みたいなもんで、不細工でも載せておくのでは?
みのもんたや、和田アキ子なども、老人層にだけ特化して生き延びたような?
毎度、ばかばかしいお話を。
テレ朝:「田原総一朗&みのもんた&和田アキ子で、新番組を始める」
まさか。
みのもんたさんはさすがに....
みのもんたさんはもう…。
バーチャルみのもんた、という手もあるのでは。
毎度、ばかばかしいお話を。
①テレ朝:「朝まで生テレビ。「どうなる、田原総一朗」」
②テレ朝:「田原総一朗司会で、国会やじ問題の特別番組をつくる」
どちらが、視聴率がとれますかね。
仮に新聞のようなものに規制するならそれは倫理規定なのでしょうが
公共の電波を格安で使わしてもらっているのだから契約書(強行規定)みたいなものでしょう。
電波は、国民の共有財産なので、電波オークションにして適格性のある事業者に電波を割り当てるべきでしょう。テレビ朝日やフジテレビについては、内部統制が全く機能していないことが示されたわけで、公共の電波を独占して、営利目的で使用できる事業者としては不適格者になります。不適格事業者に電波を割り当てている総務省は、仕事をしていない。高市さんは、経済成長させることを目指しています。テレビ局が不適切な番組を垂れ流したり、下請け業者に女性による接待を強要したり、公共の電波を事業に活用する者として適格性がありません。これではスポンサーも離れてしまい、電波を活用した効果的マーケティングを行う事業機会をまともな企業から奪っています。まさに「市場の失敗」状態であり、総務省としては電波オークションによって電波を使用する事業者の選定は、市場メカニズムに任せ、かつ適格性要件の整備、運用を厳格に実施すべきです。トヨタのようにお金があって、適格性要件を遵守できる事業者に電波を割り当てないと、経済成長という観点からも問題があります。テレビ朝日やフジテレビは、残念ながら適格性要件を満たしておらず、企業が電波の有効活用ができない状態であり、日本の経済成長にはマイナスです。
YouTubeを見ていると、小池都知事の批判動画が頻繁に出てくるのでついつい見てしまう。
内容は、勉強会と称してパーティ券の販売とか学歴査証とかうんざりだ。
悪き自民党時代の出来事か?これで都政はうまくいっているのでしょうか。自治体の税収が多くて税金を持て余しているみたいで非常に不愉快です。
地方で見るとこのyoutubeにアップしてトラフィックを稼いでいるのかよくわからない。
東京都の人に真相を聞きたいと思います。
ブログ主さんも人が悪いな。放送法4条は努力規定っていうのがマスゴミ言論人
の言い分で、ホードーノジユーヲマモレーってやつだけど、ネットで総ツッコミを受けているんだよね。ブログ主にかみついたあのコメント主は資格試験の受験を諦めた司法崩れかなんかじゃないかな。AIを持ち出したのも正論じゃブログ主に絶対勝てないから。
知恵は AI だのみ
身にしみますやんね。論破系は生き残れないかも知れない。「活字ファシズム」は完全に粉砕されて、ホネも残らない危険が大きい。
司法崩れとしたら崩れ過ぎてて…草
勉強不足で公認会計士受からない人では?
田原さんは問題が大きくなってから番組終了だけ。
少し前フワちゃんはテレビから村八分。
この違いは、お仲間か道具かの違いにみえて ああ左翼っぽいな。て感想しかでません。
衆議院総選挙に合わせて「放送をやめさせたい放送会社に✕印をつける」国民審査はいかがでしょうか。