高市内閣が発足し、閣僚名簿が公表されました。一部にやや狙いがよくわからない部分はあるにせよ、おおむね自民党内の力学などにも配慮しつつ、能力重視・実務重視の布陣であると考えられます。ただ、そんな高市総理には、さっそく個人的に注文があります。何とか年内に突貫工事を行い、石破前首相が取っ散らかしていった経済政策について、とくにあのメチャクチャな「4枚の壁」については撤廃していただきたいところです。
高市内閣の閣僚名簿
昨日は衆参両院の首班指名を経て、高市早苗総理大臣が就任し、皇居での認証式などを経て、高市内閣が正式に発足しました。首相官邸ウェブサイトやXなどで公表された閣僚名簿を抜粋し、要約すると、こんな具合です(図表)。
図表 高市早苗内閣 閣僚名簿(敬称略)
| 主な役職 | 氏名 | 主な担当 |
| 総理大臣 | 高市 早苗 | |
| 総務大臣 | 林 芳正 | |
| 法務大臣 | 平口 洋 | |
| 外務大臣 | 茂木 敏充 | |
| 財務大臣 | 片山さつき | 租税特別措置・補助金見直し担当等 |
| 文部科学大臣 | 松本 洋平 | |
| 厚生労働大臣 | 上野賢一郎 | |
| 農林水産大臣 | 鈴木 憲和 | |
| 経済産業大臣 | 赤澤 亮正 | |
| 国土交通大臣 | 金子 恭之 | |
| 環境大臣 | 石原 宏高 | |
| 防衛大臣 | 小泉進次郎 | |
| 官房長官 | 木原 稔 | 拉致問題 |
| デジタル大臣 | 松本 尚 | サイバー安全保障等 |
| 復興大臣 | 牧野 京夫 | |
| 国家公安委員長 | 赤間 二郎 | |
| 特命担当大臣 | 黄川田仁志 | こども政策等 |
| 特命担当大臣 | 城内 実 | 経済財政政策・規制改革等 |
| 特命担当大臣 | 小野田紀美 | 経済安全保障等 |
(【出所】首相官邸HP『高市内閣 閣僚名簿』を抜粋・要約)
維新からの入閣なしだが…総裁選候補3人が入閣へ
これによると全19名の閣僚は、基本的にすべて自民党の議員であり、連立相手である日本維新の会からの入閣はありません。「連立パートナー」であるはずの維新から閣僚が起用されていないことについては、懸念点のひとつといえるかもしれません(あくまでも個人的な意見ですが)。
もちろん、連立与党との連絡役という意味では、総理補佐官として起用した維新の遠藤敬国会対策委員長が機能することが期待されているようですが、果たしてそれで十分といえるのかは今後のお手並み拝見、といったところでしょうか。
また、公明党が連立から抜けたことで、国土交通大臣のポストも自民党議員が就きました。岸田内閣で総務大臣を務めた金子恭之氏(旧宏池会)です。自民党の国交大臣は2012年12月の第二次安倍内閣以来、約13年ぶりのことでもあります。
このほかにも、自民党総裁選で高市総理と競った4人のうち、すでに自民党政調会長に就任している小林鷹之氏を除く3人が、それぞれ入閣しました。林芳正氏は総務大臣、茂木敏充氏は外務大臣で、小泉進次郎氏は防衛大臣です。
著者ごときが組閣の意図について読み解くのはおこがましいというのはさておき、林氏を総務大臣に起用した意図については、金子国交相と並んで重量級のポストに抜擢することで旧宏池会にも配慮するというものではないかと思います(環境相の石原宏高氏もあわせれば閣僚は3ポスト)。
また、茂木氏はきっての外交通で、安倍政権時代から菅政権時代、さらには岸田政権時代の初期まで一貫して外相を務め続けました。外相を外れたのも2021年10月の衆院選で幹事長に就任したばかりの甘利明氏が小選挙区で落選した(※比例復活)ことで代わりに幹事長に就任するためです。
タフ・ネゴシエイターとして知られる茂木氏が再び外相に就任するというのは、総裁選で戦った相手でもあり、旧茂木派(平成研)のトップだった茂木氏を要職起用するという、高市氏なりの配慮なのかもしれません。
なお、小泉氏の防衛大臣については、意図がよくわかりません。一部では「農水相に留任して備蓄米放出政策などの事態を収拾させるべきでは?」といった声も出ていたなかで、ネット上では意外感を表明する人が多いという印象です。
もっとも、インターネット上では「防衛大臣には裁量権が少ない」(※自衛隊の最高指揮官は防衛大臣ではなく総理大臣)、「小泉氏には防衛大臣を任せることで高市氏が直接に小泉氏を指揮できる」、といった「狙い」もまことしやかに唱えられています。
このあたりは説明としては合理的ではあるにせよ、その狙いが正しいという確証は個人的にはありません。
租税特措法は利権の塊
その一方で、興味深いのは財相に就任した片山さつき氏でしょう。
片山氏自身は旧大蔵省・財務省の官僚を経験しており(とくに主計局を経験)、2005年に財務省を退職して2005年の「小泉郵政解散」で衆議院議員に当選したという経歴の持ち主です(ただし2009年衆院選でいったん落選しており、2010年参院選以降は全国比例で当選し続けています)。
それより、個人的に気になるのは、首相官邸の閣僚名簿にある「財務大臣・内閣府特命担当大臣【金融・租税特別措置・補助金見直し担当】」という肩書でしょう。
財務大臣が金融に関する内閣府特命担当大臣を兼務するのはこれまでも見られたことですが(たとえば麻生太郎総理は安倍内閣で副総理兼財相兼金融担当特命大臣でした)、そこに「租税特別措置・補助金見直し」の肩書がついたことは気になります。
租税特措法はたしかに利権の温床のようなものですが(※これは税務業界ではわりと有名です)、ここに正面から斬り込むという意味では、財務省の省内事情に明るく、一時は旧安倍派(清和政策研究会)にも所属していた片山氏の手腕に、高市総理が期待しているという意味なのかもしれません。
一方で石破茂前首相のもとで日米関税交渉を担当していた赤澤亮正氏を経産相に配置したほか、40代の鈴木憲和氏や小野田紀美氏らを起用するなど、党内力学に配慮しつつも能力重視型・実務重視型ではないかと考える次第です。
高市総理への注文
個人的に高市内閣に対しては、石破内閣時代に積み残しとなっていた経済対策(あるいは取っ散らかしていった政策の残骸)を急いで整理していただきたいと考えています。
個人的に、高市氏の総裁選時の演説(『今回も高市早苗氏立候補演説を全文文字起こししてみた』等参照)を読み返してみたところ、減税政策についてはサラッとしかふれていないのが気になる一方、石破前首相の肝煎りだった「1人2万円/非課税世帯等4万円」のバラマキは中止されるようです。
そうであるならば、自公政権時代に維新と合意してできた、あのヘンテコで複雑な「年収の4枚の壁」(『年収の壁を巡る与党案で観測される「奇妙なデコボコ」』等参照)については、年末調整の時期までに頑張って突貫工事で撤廃し、改めて年収の壁を一気に引き上げていただきたいところです。
個人的にはあまり期待していないにせよ、現在の「4枚の壁」は制度としてもあんまりにも不出来であり、あんまりにもデタラメすぎます(ついでにこれを作った宮沢洋一・前政調会長については、2028年参院選で非公認としていただくのが妥当でしょう)。
いずれにせよ、高市総理と高市内閣がどこまで「馬車馬」のように働いてくれるかについては、じっくりと見極めたいと思う次第です。
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1 2 次へ »大手町毒活字こと日本経済新聞社が妨害情宣をしそうです。集合知で戦い抜きましょう。
時事通信と同じく日経新聞も、高市総理支持率下げのために、変な写真を使うのでしょうか。
「戦って戦って戦い抜いて、一つでも多くの新聞カメラマンをやっつけて、死ぬべきじゃないんですか」
「分かってくれ、古代」
>大手町毒活字こと日本経済新聞社が妨害情宣をしそうです。
これ、よほどうまくやらない限り、今や難しくなっているでしょう。
「支持率下げてやる」が、魔除けのお札みたいになっちゃったからねぇ。
やっぱりジジツウシンと同じ穴の狢と言われないように、
クレバーに「高市下げ」やるなんて知力胆力
果たして、今のオールドメディアに、ありやなしや(笑)。
大手町経済新聞社の大罪
・出遅れ、周回遅れと読者を罵倒し続け
・韓日葛藤という日本語でない見出し記事をもってして、誰の注目を浴びようとしているか偏執部(編集部の誤変換)の正体・馬脚を露呈
・中国事業、韓国事業かわいさに、海の向こうの読者が気に入る記事を連発
(長文リストの一部のみ抜粋)
毎度、ばかばかしいお話を。
時事通信:「高市早苗総理の支持率を落とすために、変な写真を募集します」
それにしても、マスゴミが意図的に(高市総理だけでは限りませんが)女性の変な写真を使ったら、フェミニストは怒らないのでしょうか。
フェミは外見は女でも中身が男、つまり「男勝りの女」と言うのが嫌い、または女とは認めていないのではないかと思います。
だからそのような女性の変な写真を使っても侮辱とは思わないのです。
自分達が「社会の弱者」、或いは「社会の被害者」であり続ける事をマスコミが侵害しない限り、抗議なんてしないと思います。
まあ、一蓮托生の関係ですから、マスコミがフェミ達に対して害する事をするとは思いませんが…。
フェミニストは、都合が悪くなった時に自分たちの仲間のフェミニストを、女性扱いしなくなるのではないでしょうか。
「フェミニスト≒左翼」なので、左翼特有の内ゲバもやりますよ。
「ひっついたり、離れたり」というのは、利権を漁る活動家の宿命だと思います。
だからフェミ同士が対立することもざらにあります。
況してや「女の敵は女」と言う言葉もありますし、室井佑月さんとフェミ左翼との対立を見れば分かると思います。
閣僚に麻生派が公安の一人しかいないんやね…
岸田派、茂木派が占めてて、あとは各派閥からバランスよくという感じ。個人的に党内力学を考慮しても石破グループの赤澤は要らんやろ。日米間で右往左往してただけやん。
党人事とバランス取っとる、と云うかトコトン働かす系やろコレ
アカザワ氏もドナルドとの顔ツナギ、伝言係コロコロ換えるの避けたっつー側面もあるやろけど経産相にイワバ格上げで対米案件トコトン仕事させる気ちゃうけ?
知らんけど
赤澤さんと経済産業省は、80兆円の経緯を知っている方々なので、これからドツメにするにも内閣としては、必要な人材です。投資と言う言葉で誤魔化し、アメリカの基礎研究に日本の80兆円が使われる流れです。一部、LNGにも使われるようですが、ほとんどは最先端分野の試行錯誤の開発に使われるでしょう。AIの開発とかも含め。アメリカ人の優秀な人材を教育して終わりそうです。日本は、80兆円のお金を出すだけで終了です。この難題が最初に襲いかかるというのは高市さんが可哀想ですが、何とか支援したいと考えています。
たしか首班指名後の長いインタビューで、壁の事に触れていたような。
壁より生活保護の方が高い逆転状態は、不健全なので解消すると。
必死で頑張ってる人たちより、セーフティネットで一時休憩している方が裕福なのはダメだと。
そういう主旨だったような。
まずはお手並み拝見ですね。
人事はバランスよく考えられてるように見受けました。
無責任なマスメディアも野次馬もすぐに、
「報復だ」
「粛清だ」
「遺恨の解消だ」
と情緒的な方向にリードしようとしてますから、バランスよくしておけば凹んで黙りますからね。
実務的に優先順位を決めてサクサク進めたいのに、情緒的なクレームの対応なんかに時間と手間とをかけたくないわ、という表れか。
飴玉で黙る人たちには当面しゃぶらせておけばよろしい。
昔話風に言うなら「三枚のお札」
(史郎正宗風に言うなら「呪術的逃走」)
少なくとも、4枚の壁は取っ払ったうえで、生存権(生活保護相当=156万円)との整合性は担保していただきたいですね。
・・・・・
四つや開談(よっつやかいだん)
*「4枚の壁」を破ってみよ!
おいちま~い
おにま~い
おさんま~い
・
・
おしまい!!
ヾ(≧∇≦*)/やったー
「石破くんはおしまい」
略して、
いしまい!!
ヾ(≧∇≦*)/やったー
高市氏の場合、どうやって政策を実現するかをまず考えて必要な人材で席を埋めて、自分がやろうとしてることと「今は直接の」影響が大きくない席はバランスを取った。総裁選に出る人は党内の支持者も多いことから重要ポストもそれなり仕事ができると思われる。
また、最初の組閣なので問題が出たら改造するネタにするだけ、と。
先ずは先代岸田&石破政権が積み上げた負の遺産を解消するのがMUSTですす。それで漸く自身の本来やりたい政策活動が開始となる訳ですので、100%の成果を期待しては過大請求になるでしょう。まずは体感で70%の出来を期待したいところです。
自民党左派は少しは大人しくなるかもしれませんが、どうせ左派野党やマス・メディアは相変わらず揚げ足取りばかりでしょうし、対官僚はこれからですので。
目の前のゴタゴタ片付けしたらいよいよ本番ですね。
応援してます。
早速特定野党は「政治とカネ」とか言っていますし。
マスコミに守られているから自分達は大丈夫だと思っているのでしょうけれど、ネットやSNSの普及により今まで隠し通されてきた「不都合な事実」が炙り出されるので、自爆するだけなのですが、その辺り分かっていないのでしょう。
>「連立パートナー」であるはずの維新から閣僚が起用されていないことについては、懸念点のひとつといえるかもしれません
維新は大臣の人選について、当選回数や派閥など能力に関係のない基準で選ばれているのは問題だと主張していました。
維新の党内には、現状大臣が務まる人材は居ないと思います。
今回大臣を出さなかったのは、大臣の人選基準に対する維新の考えと整合性を取ったものと思われます。
ふと思い立って地元選挙区の自民党議員のHPをアクセスしてみました。
しれっと以下のような記述。
「今回私は若い力に期待して小泉進次郎候補を支持しましたが、高市さんは党員投票で4割、決戦時の議員投票でも過半を超え、見事な勝利を収めました。(中略)高市さんが訴えた名目金利を上回る成長を基本とするマクロ経済運営や給付付税額控除の導入などは、私も実現したいと考えてきた政策です。(中略)高市新総裁のもと、まずは経済対策としての補正予算を成立できるよう私も力を尽くしていきます。」
こういう風見鶏議員が多いのでしょうねぇ。
ちょっとの間は自民党内で波風吹くかもしれませんが、その後は石破政権の空気感は忘却の彼方となりそうです。
早速「財政規律派」の池田信夫氏がネガキャンをやっているようです。
高市内閣の「積極財政」は片山財務相で空振りに終わる
https://agora-web.jp/archives/251021121314.html
https://www.youtube.com/watch?v=gQRgf8POkqE
高市早苗氏は「日本のサッチャー」にはなれない(アーカイブ記事)
https://agora-web.jp/archives/251007054600.html
日経はトラス首相をことさら貶める記事を書いて来ました。
一般に新聞記者たちは前首相を不当に悪く書いてきたという印象を当方は受けています。ジョンソン政権時代、とくに外交面において、表に出ない貢献、たぶんスピーチライティング、が大きかったのではないかと、遠くから推測しています。英国民のハートを射止めることができなかったのは彼女の弱みで、正解を言い続けているからと言ってそれで首相を続けるわけにはいかない。ということだったのだと思います。メローニ首相のイタリア、経済指標は今ではフランスより改善しているとの Youtube 動画投稿が目に触れていますが、新聞記者による政治家レッテル貼りなど真に受けてはいけない実例だと考えます。