自民党の高市早苗総裁が内閣総理大臣に選ばれました。北条政子氏以来、女性が行政のトップに立つという事例は約800年ぶりなのかもしれません。そんな高市総理に期待する人も多いですが、ただ、石破茂・前首相の時代に停滞した外交・内政含めさまざまな課題にスピード感を持って対処しなければならない高市総理の前途は多難です。

祝・高市総理誕生！

先ほど衆議院で、自民党の高市早苗氏が内閣総理大臣に指名されました。参院側も指名選挙が行われますが、首班指名は衆院が参院に優越するため、（厳密にいえば天皇陛下からの任命が完了する必要がありますが）これにより事実上高市早苗総理誕生が確定です。

高市氏が獲得したのは237票で、自民党196票（＋議長１票）、維新35票、改革の会３票の合計235票と比べて２票多かったようです。

以降、当ウェブサイトでも正式に、「高市早苗総理大臣」あるいは「高市総理」と称することにします。

いずれにせよ、憲政史上初の女性宰相です。女性が行政のトップに立つという事例は、北条政子さん以来、およそ800年ぶりでといえるかもしれません。

（※ただし、北条政子さんを「行政トップ」と見るなら日野富子さんや淀殿さんをどう見るのかという論点も出てくるかもしれませんが、このあたりの詳細な議論はＸでも盛り上がっているようですので、興味があればそちらをどうぞ。）

ただ、ネット、とりわけＸなどで高市氏を支持していると公言している人たち傾向を見ていると、「高市氏が政治家として優秀だから支持している」という人が多く、「高市氏が女性だから支持している」という人は、ほとんど見かけません（これは著者自身がたまたま見つけられなかっただけという可能性はありますが…）。

この点、著者自身は高市氏が政治家としてある程度優秀であることは認めます。とくに『今回も高市早苗氏立候補演説を全文文字起こししてみた』でも見たとおり、高市氏は記憶力や政策理解力がずば抜けて高い政治家であることは間違いありません。

高市総理で課題は全解決！…とはならない

ただ、非常に申し訳ないのですが、著者自身としては高市内閣が発足したからといって、現在の日本が抱えるすべての問題が自動的に直ちに解決するとはまったく考えていません。現代の日本の課題は、あまりにも多すぎるからです。

もっとも、これについては比較的シンプルに考えることができます。古今東西、国家の役割はたった２つしかないからです。

• ①国民の安全を守ること。
• ②国民を豊かにすること。

少し難しい言葉を使えば、①が安全保障、②が経済政策です。

現代の日本は少なくとも1945年８月以降、一部地域を除いて日本の領土内ではほとんど戦闘行為が行われていませんし（※厳密にいえば千島、樺太では８月15日以降も戦闘が続いています）、一時期は「ジャパン・アズ・ナンバーワン」といわれる程度には日本は豊かな国にもなりました。

しかし、先の大戦以降、ソ連に奪われたままの領土は返ってきていませんし、島根県竹島は韓国に占領されたままで、あろうことか沖縄県尖閣諸島周辺地域は中国船舶による領海侵入などが相次いでいて、さらに北朝鮮による日本人拉致事件まで発生しています。

また、財務省などが主導した不必要かつ強引な増税などの影響もあってか、日本経済は「失われた30年」と呼ばれる長期停滞に直面しており、国民の手取りは増えず、近年の物価上昇でさらに人々の生活が苦しくなっているというのが実情でしょう。

老人福祉税や強引な税制などをどう解決するか

つまり、著者の勝手な見解ですが、現在の日本は、日本国民の努力の成果もあってか、そこそこ世界の中では豊かな国を実現したにも関わらず、日本政府が作り出した問題により日本が再び貧しくなる道を歩んでしまっているのではないかと思います。

実質的な老人福祉税と化しつつある社会保険料、高所得者からは所得の半分以上を奪っていく所得・復興・住民税、あるいは揺り籠から墓場まで徴税する消費税など、税金や社会保険料などの公租公課負担が異常に高い理由はさまざまですが、やはりその大きな要因は膨張する官僚利権にあります。

当然、これらにいずれ誰かが手を付けなければなりませんが、高市氏がここに正面から斬り込めるのかはまだ未知数です。

それどころか、何か新しい政策を始めれば、それにより逆に税負担が増えてしまう可能性だってありますし、高市氏が保守層を失望させたら短期政権に終わる可能性だってあります。

なにより現在の自民党は衆参両院で過半数を大きく割り込んでおり、ハンドリングを間違えると内閣不信任決議案を出されてしまい、高市内閣が崩壊することだってあり得る話です。

「史上初の女性総理」だ、「優秀な政治家」だ、などとあまり楽観的に構えるべきではありませんし、「高市氏で問題はすべて解決」などと考えない方がよさそうです。

私たち国民の役割

いずれにせよ、高市氏を支持するのであれば、そのような人は高市氏に何を期待しているかをＳＮＳなどで強く意見表明するとともに、高市氏がそれを成し遂げるだけの人物なのかどうかを見極め、積極的に応援するのが有権者の役割です。

高市総理は石破茂・前首相の時代に停滞した外交・内政含めさまざまな課題にスピード感を持って対処しなければならないからですが、高市氏にとってもおそらく国民の声は必要でしょう（『高市政権の発足はほぼ確定も…問題は最初に何をするか』等参照）。

あるいはもしもあなたが高市氏を支持しないのであれば、高市氏のどこがどう悪いのかについても積極的に意見表明して良いですし、高市氏に辞職を促す自由もありますが、逆に高市支持者としては反対者の意見を参考に理論武装していくべきでもあるのです。

著者としては高市総理に対し、まずは経済対策を急いでほしいと思います（できれば「年収の壁」問題などについては年内に解決していただきたいところです）が、とりあえずは閣僚人事なども踏まえたうえで、「お手並み拝見」と行きたいと思う次第です。