X

「自民維新連立」でも衆参過半数に満たず…どうする?

自民党と日本維新の会の両党は昨日までに、両党が連立に向けて代表・政調会長レベルでの政策協議を始めることで合意しました。維新側は連立には「ハードルが高い」などと述べているものの、高市内閣実現に向けて一歩進んだことは間違いありません。自民にとって維新は政策面でも選挙面でも現実的な連立相手となり得るからです。ただ、「自民+維新」でも衆参両院では過半数には至りません。やはり現実的には、政権を安定運用するうえでは「それ以外の政党」の協力も必要ですが…。

自民・維新連立協議開始へ

連日、政治ネタ(しかも政局ネタ)が続いていて申し訳ないのですが、本稿も次期政権に関する話題です。

どうも自民党は公明党に代わって日本維新の会との連立を模索し始めるようです。

自民党広報の公式Xアカウントによれば、高市早苗総裁は15日のぶら下がり会見で、自民・維新両党が連立に向けて16日(つまり本日)以降、両党代表・政調会長レベルでの政策協議を始めることで合意したことを明らかにしています。

同様に、維新の吉村洋文代表も自民側から連立入りの打診と首班指名への協力要請があった事実を明らかにしています。

また、吉村氏と藤田文武共同代表は会談後の会見で、「時間は限られている」、「ハードルは高いかもしれないが(自民・維新が)お互いに政策をぶつける」などとして、協議を急ぐ考えを示しています。

維新の政策を巡って疑問も多いが…現実的な候補のひとつ

これについて、どう考えるべきでしょうか。

正直なところ、著者自身は維新という政党について、いわゆる「年収の壁引上げ」を潰してしまった政党、という強いイメージを抱いています(これについては同じような印象を持つ人も多いのではないでしょうか)し、例の「副首都」構想なども、(あくまでも個人的には)「今やることなのか?」という疑問があります。

ただし、その反面、維新の政策は最大野党である立憲民主党と比べると、自民党の方が近いでしょうし、現実の政治の世界では、歩み寄れる部分は歩み寄らざるを得ません。

さらにいえば、維新と自民だと(少なくとも現時点では)選挙区ではほとんど重なっていません。

維新は昨年衆院選挙で38議席を獲得したものの、内訳は大阪府の19の小選挙区を独占したこうかが大きく(他は滋賀、京都、広島、福岡で1議席ずつ、残りは比例)、現状の維新は選挙協力が最も成立しやすい野党のひとつでもあるのです(自民党としては不本意かもしれませんが)。

いずれにせよ、仮に―――あくまでも「仮に」、ですが―――、自民・維新連立が発足することになったとしたときに、「数の上で見て」、どんな政権運営が可能なのかを確認しておくことは有意義です。

自民党は参院で102議席にまで増える(かも)

改めて、現時点の衆参両院の勢力図を確認しておきましょう(図表)。

図表 衆参両院の勢力図(統一会派ベース)
政党・会派 衆院 参院 合計
自由民主党 196 101 296
立憲民主党 148 42 190
日本維新の会 35 19 54
国民民主党 27 25 52
公明党 24 21 45
参政党 3 15 18
れいわ新選組 9 6 15
日本共産党 8 7 15
有志・改革の会 7 7
日本保守党 2 2
減税保守こども 2 2
沖縄の風 2 2
無所属 6 8 15
合計 465 248 713
過半数ライン 233 125

(【出所】衆院『会派名及び会派別所属議員数 令和7年10月8日現在』および参院『会派別所属議員数一覧 令和7年10月15日現在』をもとに作成)

過半数ラインは、衆院で233議席、参院で125議席です。

自民党には「NHKから国民を守る党」の齊藤健一郎氏が会派に加わったため、現時点で自民党の参院の勢力は101議席に増えています。また、個人的には無所属の望月良男氏が自民党に復党する確率はかなり高いと考えており、近日中に、102議席に増えるのではないかと見ています。

ただ、そうだったとしても、衆参両院で自民党が過半数を失っている状況に変わりはありません。

自民党は衆院で196議席と過半数ライン(233議席)に37議席足りませんし、参院でも過半数ライン(125議席)には24議席足りません。仮に102議席に増えたとしても、不足議席数は23議席です。

自民+維新でも過半数を制することはできない

では、自民が維新と組んだ場合、議席はどうなるでしょうか。

じつは、自民と維新でも、衆参両院で過半数には至りません。衆院だと231議席であり、(造反や離党などがなければ)辛うじて首班指名選挙は制するものと考えられるものの、これだと法案が何も成立しない、といった事態にもなりかねません。

自民+維新…衆231議席+参120議席

やはり、政権運営という観点からは、ここにもうひとつ、別の政党が加わることが望ましいといえます。自維連立が成立したと仮定して、たとえばここに国民民主党が加われば、衆参両院で過半数を制することになり、当面の政権運営はこれで「安泰」(?)です。

自維+国民…衆258議席+参145議席

国民民主党は連立入りするのではなく、単なる政策協力に留まる、といったあり方でも構わないでしょう。

ただし、一般論としては、協力する政党が多くなればなるほど、政権運営の不安定性は高まります。

あくまでもひとつの考えですが、高市政権としては、まずは自民・維新連立で政権を発足させ、これに国民民主の閣外協力を得る形で、まずは年内に「年収の壁引上げ」「ガソリン暫定税率廃止」を実現したうえで、年明けすぐに衆院解散、といった流れが現実味を帯びてくるかもしれません。

それに、「高市政権発足→年内減税」、を実現した直後に解散すれば、減税実現に協力した政党にとっては安定した議席が確保できるという算段もあるでしょうし、こうしたメリットがあればこそ、「保守野党」(?)各党にとっても、「高市自民」に協力しやすくなるというものです。

著者個人的には、高市早苗総理の誕生を確実視しておらず、また、「年収の壁引上げ」を端緒とした減税がドミノ倒し式に進むなどと楽観視しているわけでもありませんが、いずれにせよ、まずは「首の皮一枚つながった状態の自民党」がどう動くかについては注目したいと思う次第です。

余談:本稿はメディア報道を参考にせずに書きました

どうでも良い余談ですが、本稿はメディア報道を一切参考にせず、純粋に政党の公式Xアカウントを通じた発表やYouTube公式動画、衆参両院のウェブサイトなどを参考に執筆しています。

メディア報道とは関係なしにウェブ評論が成り立つのは、大変良い時代と思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (30)

  • 記者クラブ経由の色のついたツギハギ情報しか手に入らなかった時代からすっかり変わりましたなぁ

  • 最後の一章がよいですね。
    僕も読みながら、それを思い浮かべてました。

    あちこちWEB上をうろつきながら、裏付けを自分で確認して回る手間がないだけでも、
    スカッ!
    と気持ちよいですね。

    手書きの伝票を手打ちでシステム入力するのではなくて、生データをそのまま流し込めるような気楽さ。
    あとは、内容の吟味に全集中できる訳でして。

    世論調査だって生成AIに訊けば(ハンイセッテイ次第ですが)今とんな書き込みが多いのか数秒で教えてくれるし。

    ほんま、オールドメディアは不要ですね。
    うらみつらみを除いてすら、不要。

  • 減税を潰した維新と連立では自民を支持出来ないな。高市さんは好きなんだが。無理に過半数取る必要は無いと思う。今の野党はなんでも反対の立憲共産の様な役立たずばかりでは無い。法案ごとに国会で審議して意見を出し合い決めていく方が良いと思う。過半数取ったら政党が勝手になんでも決めるは信用できない。高市さんには悪いが、次も比例は参政党に入れる。選挙区の候補者はその都度吟味したい。維新連立は一保守として裏切られたと言う思いが強い。

    • 維新は信用できません。なぜなら移民政策をシレ~と推進しているからです。今月末に大阪市はインド人の採用をしたい企業向けに説明会を実施します。既に中国人だらけの大阪が今度はインド人だらけにするつもりでしょうか?東京都のエジプト人受け入れ政策となんら変わりません。説明会は→https://www.jitco.or.jp/ja/news/article/41759

  • 首班指名選挙で決選投票になった時に勝てる算段を付けられなければどうなるかわからない。だから維新との協力(まだ連立とは表現しない)は一番現実的な選択肢だと思う。そもそも与党になれなければ政策実現も何もないのだから。
    国民民主に高市氏を首班指名してもらうことが可能だとしても、連合には逆らえないのだから長期の協力関係に関してはかなり不透明になるだろう。
    言い始めたら自民党も中身の闇深すぎて今の高市総裁だけを見て支持できない部分がある。高市氏なら単独過半数超えて欲しいが、そうでなければ超えて欲しくない。
    今は流動的過ぎて、当面は現実的な選択をするのは仕方ない。

  • 『企業団体献金の禁止』
    この旗には自由民主党と国民民主党は乗れないでせう
    連立すると云うコトはつまり日本維新の会は『企業団体献金の禁止』という主張を譲るコトになるワケですが、“譲り幅”によっては一気に党勢壊滅へ雪崩れる可能性はワリカシ結構有りソウ
    一部で“院政”ともイワレル橋下徹氏も維新をココまで育てた松井一郎氏も地方自治体トップが相応ドマリで後継は更に小粒ナノデ、10年以上掛けても今の位置デスカラ、『最後のひと花』となると公明がヨロコビそうでスな
    知らんけど

    • 同感。「地方自治体トップが相応ドマリ」、名言です。
      近畿圏至上主義者党は「もっと交付金をよこせ」という自治体の陳情団と変わりません。「木を見て森を見る気はない」から、永田町情勢に疎い。だから中央政界の寝業師(寝返り師)にポストを与えてスカウトしたんでしょうけど、その副作用が見えてないようです。
      いずれ自民党に吸収されることでしょう。もっとも、それを「是」とする体質なのかもしれませんけど。

  • 国民民主は、駆け引きばかりで「いつやるのか」わからない。
    どうせ立憲とは、組まないのに本当は自民とやりたかったのだろうが玉木代表は総理大臣を目指していたのだろう。
    しかしそれでは自民党もOKしない。結局野党としてやるしかないでしょう。
    自民党は、残りは無派閥議員と調整するでしょう。

  • ホント玉木ってセンスないなと思います。がっかりです。
    『対決より解決』が聞いて呆れます。もっとやり方あったんじゃないかと。
    玉木は党首に向いてないんじゃないかと思い始めました。

    • 国民民主にとって、自民党が単独で過半数割れの状況って、協力と引き換えに自党の政策を実現するためのまたとないチャンスだと思います。そう、千載一遇のチャンスです。
      にも拘わらず、玉木は旗幟を鮮明にせず、自民党にも協力するわけでもなく、かと言って野党と連合するわけでもなく、党首として方向性がはっきりしません。
      蝙蝠がみんなに嫌われることすらわかってないんじゃないかと思います。リーダーとして決断できないことは、正直言って致命的だと思います。

      将来的に政権与党を取る気でいるのならば、(選択肢の1つとして)連立を組んで与党としてのノウハウを学ぶいい機会でもあると思うんですがね。
      万年野党で、やるやる詐欺を続けていく気でしょうか。

    • そう言えば、このサイトで昔の名言を思い出したので添えておきます。
      「機を見るに鈍」

      • これで自民と維新を中心に手取りを増やすであったり、社会保障の改革を進められたら、国民民主からすればお株を奪われて存在感すら失いかねないですよね。
        支持母体である連合が首を縦に振らないという事情もあったんでしょうが、他にもやり方はあったんじゃないかと思ってしまいます。
        新宿会計士さんが仰るように、良い政策は最初に言い出した党以外がやってもいいわけですからね。

    • 僕もそう思います。

      「103万円の壁」
      で油田を堀当てたのに、つまらん失速で自民から逃げた保守票田は参政党にチーンじゃらじゃら。
      「公明党自爆離脱」
      で神風が吹いてるのに、決断できなくて維新に先を越される。

      乾いたベン・ハーに最初に水を手渡ししたから帰依してくれる訳でして、二杯目を持って行ってもだから何だというのやら。

      思うに自分で自分を器用で頭がよいと思ってる系のアホですね。
      何回も繰り返し同じプレイヤー同士で勝負するならゲーム理論が合理的で再現性があって正解ですが、こういう26年ぶりの突発事態は、センスだけ。

      玉木はあんまりセンスないかも。

  • >政権運営という観点からは、ここにもうひとつ、別の政党が加わることが望ましいといえます。

    もう一度、敢えて国民への参画を打診(呼び水)すべきなのかとも。

    国交相ポスト⇒維新
    財務相ポスト⇒国民

    での訴求でいいんじゃないのでしょうか?

  • 維新は毒杯を仰ぐ覚悟なのでしょうかね。連立組まなくても党勢衰退だったし、組んでも維新に明るい未来があるとは限らない。一か八かの勝負。

    維新の腰の軽さに先を越された国民ですが、国民は連合が連立ダメって言ってましたのでね。今回の組閣前という短期間での連立調整はそもそもムリだったと思います。
    そもそも基本政策の一致と、それ以前に党間の信頼関係醸成を挙げていたので、まー矛盾はなくブレていないんですけどね。
    103万円の壁引き上げを共にこなしてその後にでも連立の機会はくるでしょう。次の総選挙後も、どうせ国民民主の手を借りなきゃならなくなるでしょうし。

    ただ・・・ドンと構えてりゃいいのに、ここ最近の玉木ん氏、連立しない理由を「公明が離脱したから」「維新が連立協議し始めたから」と後付けでコロコロ変えてるんですよね。昨日も維新に恨み節を発信したんで軽く炎上気味です。
    相変わらず「発言が軽いよなー」と。
    ネットを駆使してうまく支持率を上げてきたけど、ネットに真摯に向き合うというより旧来の「世論を作る」みたいな古くさい仕草が臭うこともあって、氏もここらへんは今後も弱点になるかなーと言う気がします。
    多分、榛葉氏ならそこは間違えない気がします。

    • まー「ジブンらの“売り時”“売りドコロ”を理解しとらん」と云いますか、商売勘がナイと云うか勝負勘がポンコツんと云いますか…
      このまま“いつかの玉木ん”氏に回帰してまうとサスガニ“3匹目のどぜう”はおらんくなりそうでっけど
      知らんけど

      • 玉木ん氏肝心なところでイケてないですよね。うまく波に乗ってると思ったらいきなり落ちて波がどこにあるかもわからんようになったり。
        まあどうなるかはわかりませんが、今回機を逃したとすれば国民民主は元々そういう宿命だった、ということでしょうかね。

  • >本稿はメディア報道を一切参考にせず、純粋に政党の公式Xアカウントを通じた発表やYouTube公式動画、衆参両院のウェブサイトなどを参考に執筆しています。
    私もそう思いながら拝読いたしました。
    可能な限り一次ソースが望ましいですよね。

    他の方も指摘されてますが、最近はNHKの記事が表示前に同意欄が出るようになり、ますますいやらしさを増してます。右上の×で消せますけど、NHKの引用とかなるだけやりたくないです。
    あの同意欄、開示請求と合わせ技で妙なこと考えてるんじゃないですかね。

    • 読ませたくないなら、読まないだけだ
      という論理帰結で、報道機関としての NHK の存在は、当方の世界線から消滅しました

      • 「同意書を読みもせずに同意するな、同意したとて中身は不要なものかもしれないし、ヨソでも似たようなモンは手に入る。」

         という公共放送としての注意喚起なのでしょう。きっと同意して進んだらバーボンハウスでもあるんですよ。 やあ(´・ω・`)

1 2