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立憲民主の「まさかの玉木首相」提案に国民民主冷笑も

玉木雄一郎政権が発足する可能性が出て来ました。もし自公連立が崩壊する場合、立憲民主党、日本維新の会の2党が首班指名選挙で「勝手に」国民民主党の玉木代表に投票したら、「数のうえでは」玉木氏が高市氏に勝ち、首相に指名されるかもしれないからです(単なる選挙管理内閣ができるだけかもしれませんが)。ただ、そのような提案をする立憲民主に対し、国民民主側は冷ややかだとか。

「ともに民主党」の違い

国民民主と立憲民主の大きな違い

口の悪い人は、国民民主党のことを、立憲民主党と並ぶ「ともに民主党」と呼びます(「ともに民主党」とはもちろん、韓国の李在明(り・ざいめい、リー・ツァイミン)大統領の出身母体である左派政党のことです)。

もっとも、当ウェブサイトをご参照くださっている方ならば薄々お気づきかもしれませんが、著者は国民民主党という政党については全面的に信頼しているわけではないにせよ、理念としては賛同・共感できる部分が多々あります(というか、そのように申し上げてきたつもりです)。

そのひとつが、同党の関係者(たとえば榛葉賀津也幹事長あたり)が口癖のように述べる、「基本政策」という概念にあります。同党がもつ基本政策については、たとえば産経ニュースの次の記事あたりがわかりやすいのではないでしょうか。

立民と国民民主、基本政策協議で合意も進展みられず 原発・安全保障・憲法で隔たり大きく

―――2024/11/20 21:06付 産経ニュースより

基本理念が明確な国民民主党

リンク先の産経記事は昨年の衆院選を受け、同党、および最大野党である立憲民主党との基本政策の違いをわかりやすく図示したもので、原発、安全保障、憲法という3分野に言及があります。端的にいえば、ずいぶんと大きく異なります。

立民と国民は、もともとは同じ政党(旧民主党、旧民進党)が事実上の母体となっていますが、基本的な政策の3分野でここまで大きな違いが生じてしまっているというのは興味深いところです。

基本的な考え方がここまで違っているのに同じ政党に所属してたというのにはシンプルに呆れますが、ただ、現状で見ると立憲民主党の考え方は漠然としていて抽象的であるのに対し、国民民主党の考え方は非常に実践的かつ具体的であることは間違いありません。

国民民主の考え方が正しいのかどうかを巡ってはさまざまな考えがあるでしょう(たとえばゴリゴリの左派から見たら「とんでもないウヨク的な政策」、ということになるのかもしれませんし、保守派から見たら物足りない部分があるかもしれませんが)。

しかし、あくまでも著者としては、同党が基本政策・理念を明確に打ち出していること自体は高く評価すべきと考えています(それを実現させる能力があるかどうかは別として)。

浮世離れして無責任な立憲民主党

もっといえば、立憲民主党は最大野党でありながらどこか浮世離れしていますし、無責任でもあります。

たとえば原発政策を巡っても「新増設は認めない」としながらも、「2050年までに原発に依存しないカーボンニュートラルを達成」、といった具合に、それを具体的にどう達成していくのかに関する道筋がまったく見えないのです。再エネの不安定さを踏まえると、脱原発なら火力発電を増やす以外に現実的な方策はありません。

いちおう、立憲民主党はかつて政権を担った旧民主党の片割れでもあるわけですし、また、最大野党は与党(現在は自民党)が選挙で大敗した場合にただちに政権交代する筆頭候補であるわけですから、そのような立場にある政党がここまで無責任であるのは困りものです。

いずれにせよ、著者の評価としては、国民民主党は現時点において最大野党ではないうえに(選挙での躍進が続いているとはいえ)依然として人数も少なく、現時点で政権を担い得る能力が十分ではないにせよ、ポテンシャルは十分にあると考えています。

これに対して立憲民主党については、政治の「実務家」という観点からは心もとない限りだと断じざるを得ないですし、「最大野党」として存在していること自体が日本の国益をずいぶんと害していると思います。

そもそも立憲民主党が政権を担ったときに、同党がどんな政権を形成し、どんな国づくりを目指すのかが、いまひとつ、見えてきません。産経の記事にある原発、安保、憲法という3つの分野に関する概略を読んでも、具体的な実現可能性が欠けているようにしか見えません。

年金制度改悪を主導した立憲民主

少しだけ脱線しますが、立憲民主党と言えば、「年金制度改悪」を忘れてはなりません。とくに厚生年金加入者やパートタイマーにとっては、著しい改悪です。

そもそも厚生年金はサラリーマンや公務員などが加入させられている年金制度ですが、自営業などが加入する国民年金に対し、現時点においてすら、積立金の流用が行われています。

立憲民主党はその流用額を増やすとともに、厚生年金の加入要件を強引に拡大し、さらには保険料の上限も増額するなど、年金制度の「改悪」(あえてこの表現を使います)に加担しました。

これにより月収75万円以上の層にとっては、今後の年金保険料負担が労使合計で毎月18,300円増えるわ、将来受け取れる年金は加入期間1ヵ月あたりで548.1円(年額)しか増えないわ、と、踏んだり蹴ったりです(計算プロセスは『【千年安心】の年金に向けて日本は厚生年金を廃止せよ』等参照)。

また、これまでは社保の加入要件を満たさないようにしていたパートタイム労働者も、いわゆる「年収106万円の壁」が撤廃されたことで社保加入要件が厳しくなり、ただでさえ多い「働き控え」が今後よりいっそう増えることが懸念されます。

正直、立憲民主党が私たち一般国民にとって正しい政策を行ってくれているのかといわれれば、それは大いに疑問です。これに加えて疑問なのが、立憲民主党がいったい何を目指している政党なのかがまったく見えないことであり、立憲民主党の存在意義でもあるのです。

玉木首相の実現可能性

具体的な勢力で見ると…?

ただし、その立憲民主党は、くどいようですが、最大野党です。

昨日の『もし自公連立が崩壊したら高市自民はどう対処できるか』でも指摘したとおり、現在、自公両党の連立協議が難航している、などと伝えられていますが、客観的事実を確認しておくと、自民は衆参いずれでも比較第1党ですが、立民は衆参いずれでも比較第2党です(図表)。

図表 衆参両院の勢力図(統一会派ベース)
政党・会派 衆院 参院
過半数ライン 233 125
自由民主党 196 100
公明党 24 21
立憲民主党 148 42
日本維新の会 35 19
国民民主党 27 25
れいわ新選組
日本共産党
参政党 15
日本保守党
有志の会
改革の会
沖縄の風
無所属

(【出所】衆院『会派名及び会派別所属議員数 令和7年9月29日現在』および参院『会派別所属議員数一覧 令和7年10月3日現在』をもとに作成。なお、図表には現在の与党である自民党と公明党を示していない)

自公政権崩壊なら…野党3党で政権が発足するかも?

現在の自民党が公明党と合わせても衆参両院で過半数に行かないこと(衆220・参122)を踏まえると、自公連立が維持されたとしても少数与党状態が続くことになりますが、その一方で野党がバラバラな状態のままだと、衆参両院で最大勢力となるのが自公であるため、高市早苗内閣自体は成立します。

ところが、公明党が連立から抜けた場合、自民党の勢力はさらに後退し(衆196・参100)、過半数ライン(衆233・参125)に大幅に不足します(衆院では37議席、参院では25議席)。

問題は、それだけではありません。

もし立民が維新、国民両党を巻き込むことに成功した場合は、有力3野党で少なくとも衆院側では自民を超える勢力を結集できます(衆210・参86)。首相指名は衆院が優越するため、3野党統一候補が210票を取り、高市氏が196票しか取れなければ、野党政権ができてしまう、というわけです。

野党政権ができる2つの条件
  • 公明党が連立から離脱すること
  • 立維国3党が同一投票すること

立民・安住氏が「玉木首相」を提案

こうしたなかで、急浮上しつつあるのが「玉木政権」です。

すでに報じられている通り、立憲民主党が他党に対し、首班指名での候補一本化にあたって、国民民主党の玉木雄一郎氏を指名しても良い、とする提案をしたからです(情報源のひとつとして、とりあえずは時事通信のものを挙げておきます)。

立民、玉木氏での一本化提案 首相指名、国民民主は慎重姿勢

―――2025年10月08日12時41分付 時事通信より

この提案は立民の安住淳幹事長が榛葉氏に行ったものだそうですが、時事通信は安住氏が次のように述べたと伝えています。

国民民主の玉木雄一郎代表で(野党各党が)まとまるなら有力候補と考える」。

「こう来たか…」。

そう思ってしまいそうになります。

おそらく国民民主党は野党の候補一本化が不成立だった場合、首班指名選挙で自党の代表である玉木雄一郎氏に投票するものと考えられます。しかし、立民と維新(場合によっては公明)がこれに乗っかれば、連立協議が成立していなくても、玉木氏が首相に指名されてしまうかもしれないのです。

なかなかに、驚きます。

とりわけ冒頭で見たとおり、立民、国民両党は国家の基本政策で大きな隔たりがありますし、減税や皇室を含めたさまざまな個別政策の分野においても(著者に言わせれば)にわかには埋めがたいほどに大きな差異が生じていたりもします。

最大野党である立憲民主党が、自党の党首である野田佳彦代表ではなく、(もともとは同じ民主党を母体とする集団ではあるにせよ)自分達よりも遥かに弱小勢力であるはずの国民民主党の代表を首班指名するというのは、本当に意味がわかりません。

それだったら立憲民主党はさっさと解党し、国民民主党に合流するのがスジではないでしょうか?(国民民主側が嫌がると思いますが…。)

榛葉氏は一蹴:国民民主党内では冷笑も

ただ、これに対する榛葉氏の反応は、きわめてまっとうなものです。

榛葉氏は会談後、国会内で記者団に対し、両党は「憲法や安全保障、エネルギーで決定的に考えが違う」と指摘したうえで、「異なった主義主張の政党と、打算や数合わせで首相指名選挙の行動を一緒にすることは考えていない」と一蹴したのだそうです(参考として日経や産経の記事を挙げておきます)。

立民・安住氏、首相指名「玉木氏も有力」 国民民主・榛葉氏は反発

―――2025年10月8日 15:00付 日本経済新聞電子版より

玉木氏も野党統一「有力候補」 唐突の踏み絵提案に国民民主は反発「好きに書けばいい」

―――2025/10/08 20:22付 産経ニュースより

ちなみに産経によれば、国民民主党内では「7月の参院選で伸び悩んだ立民と組むメリットはないとの見方が大勢」だとしつつ、幹部のひとりが次のように発言したと伝えています。

好きに玉木氏の名前を書けばいい。そんなことだから(立民は)選挙に負けるんだ」。

これも、正論でしょう。

もっとも、仮に立民と維新が首班指名で「玉木雄一郎」と書き、公明がこれに乗る(か、少なくとも高市氏には投票しない)場合は、「数のうえでは」、本当に玉木雄一郎政権が誕生してしまいます。

しかも、野党間に政策協定が存在していない場合、玉木氏が首相に就任したところで、閣僚を立憲民主や維新からピックアップするとも思えません。現実には玉木内閣自体が単なる「選挙管理内閣」となるのがオチではないでしょうか。

いずれにせよ、立憲民主党や維新が単なる嫌がらせで高市早苗政権の成立を阻止するためにそのような行動に出るのだとしたら、やはり、次の選挙で有権者に審判してもらうしかないでしょう。

国民民主はどう出る?

なお、昨日も指摘しましたが、自公連立政権が崩壊した場合であっても、高市氏(あるいは自民党)側には、対抗策が残されています。一番わかりやすいのは国民民主党との連立政権(または閣外協力)ですが、それだけではありません。

肝心の首相が石破茂氏であるという事実を、忘れてはなりません。

石破氏が首相在任中の最後の仕事として、内閣総辞職せずに衆院を解散すればそのまま総選挙となり、条件が許せば自民党は快勝するでしょう。なにせ、自公連立が解消していますので、自民党は公明党を気にしないで全選挙区で候補を立てることができるからです。

当然、自民党の左傾化に嫌気がさしたことで議席を伸ばした参政党や日本保守党などの「保守(?)野党」は伸び悩むことが予想されますし、2024年総選挙で棄権した有権者が自民党に戻ってくる効果もあると考えられるからです。

これに対し、もともと有権者から見放されつつあった立憲民主党に伸び代は期待できず、日本維新の会も大阪などのローカル政党となるかもしれず、さらに公明党が壊滅的な打撃をこうむる可能性が高いです。

こうした状況を踏まえると、あくまでも個人的な感想ですが、国民民主党こそむしろ、今回の首班指名では「高市早苗」に投票するのが安全かもしれません(もちろん、政策協定の存在が前提ですが)。

いずれにせよ、少数与党状態かつ自公連立崩壊の可能性が出てくるなかで、本当に今月中に高市政権が発足するのか、しばらく目が離せない展開が続きそうです。

新宿会計士:

View Comments (38)

  • 立憲民主党が首班指名で国民民主党に恩を売れば、人数比的に大量の立民議員が内閣入りさせられるでしょうね。

    政権ジャックという最悪の事態は阻止せねばならないでしょう。

    • 》政権ジャック
      まー無いでショ、現時点の状況からは
      立民が“押し売り”仕掛けてきても国民民主側は『恩』とは解さないので
      立憲民主党が勝手に首班指名で「玉木」と書いて“見返り”を期待するとか“ストーカー指向のヤラカシ勘助”ソノモノですやンw

  • 国民(維新もだけど)高市政権に付いて、中でも愛国保守寄り議員は各個自民に吸収され麻生閣下の下で保守政権の一角を担うべき。右傾化した自民党と最右翼の参政党に埋もれて議員バッチを失う高市人気に乗って当選するほうが良いだろ。

    •  自分が高市氏推しだから思うだけかもしれませんが。
       首班指名選挙は記名投票とのことですので、保守を標榜している議員は与野党問わず高市氏に投票することで人気取りに出来そうな気がします。国民民主党が挙って高市氏に投票なんてしたら、高市氏の勢いにあやかりつつ政策本位・無私の姿勢アピールも出来て、党勢超回復したり。立憲共産あたりは、先鋭化支持者に袋叩きにされるからムリかな。

       石破氏がどうするか気になるなー。シレっと高市氏に入れて生き残りを賭けててもオモロイし、孤軍自分の名前を書き続けてもオモロイ。玉木なんて書いてたら抱腹絶倒。

      • 先日のプライムニュースで玉木代表が「国民は首班指名では玉木と書く、、が情勢では変わるかもしれない」と他党党首への投票も匂わせていました。馬場顧問もいたのですが、両氏共に高市自民との同調を視野に入れた発言が目立ちましたよ。
        あと連合との兼ね合いの質問には連合の要望より議員の考えで動くみたいな強気発言もしてましたし。

  • 毎度、ばかばかしいお話を。
    ○○:「高市早苗総理を誕生させないために、立憲も維新も首相指名で玉木と書くべきだ」
    さて、皆さんは、○○に(男女関係なく)誰を入れますか。

    • もし政策のすり合わせなしに、立憲と維新が勝手に首班指名選挙で玉木党首の名前を書くことで、玉木首相が誕生しても、この玉木首相は議会運営をどうするのでしょうか。(立憲が、高市早苗総理を誕生させないために、国民民主党の外国人政策に賛成したりして)

  • さて。瀬戸際外交というのかリスカブスというのか公明党の仕草。
    彼らの存在が自民党を劣化させ宏池会が増長し悪夢の石破内閣まで至る一因を作ったことが明確になりました。党首自らの意思表示ですから誤魔化しようがない。
    企業が極度の業績不振のような事例を鑑みても、その時点では相当の出血を伴う抜本改革を行った後に、所謂V字回復するというのはある話しです。
    自民党に同じ事ができる保証はありませんが、少なくとも一昔前に比べてネットという「衆目」の環境化がある現在であるなら、抵抗勢力の執拗な妨害に打ち勝ち、事を成功させる可能性が高まったと言えるでしょう。
    抵抗勢力側がボロや本性を出した時、それを隠蔽できなくなってきたからです。
    公明党は保守に対する抵抗勢力である事をもはや隠さなくなりました。
    自民党のV字回復の為に必要な、縮んだバネに貯まったエネルギーは益々増大している段階だと感じます。
    国民民主党は立憲民主党や公明党など左派より政党の自壊衰退、そして共に現実派の自民党保守の復活を特等席から観るのがベストと思っているように感じます。

    • 「今度のおかずネタはこれや
       食欲の秋、ご飯がススムくん、メシウマ、メシウマ」

  • なぜ立憲は自分のところの党首の名前を書かないのか理解不能
    自分の党首を無能と思っているのかな

  • 首班指名までに
    ・引っ張った挙句自公連立が解消されて、
    ・自国時間的にも協議深まらず、
    ・立憲ソデにした国民民主が独自路線で「玉木」と書くと決め、
    ・立憲民主が藤田日本維新を“捲き込み”図りつつ『ナニガナンデモ高市潰し』に走り出した
    バヤイ…
    首班指名選挙で高市自民党が起死回生乾坤一擲の策としてぱろぷんてバリの「玉木」指名すると、
    ・自民党「玉木」
    ・国民民主党「玉木」
    ・立憲民主党「玉木」
    ・日本維新の会「??」
    ・以下大勢に影響せず…
    あっ! 玉木総理!?
    てな白日夢が…

  • 今頃、立民に投票した人は大きな失望を感じているでしょう。自分らの背後には自分達の主張に賛同して投票した多くの国民を背負っている自覚がないから、こういうつまらないことを言い出すように思います。
    さっさと、「あれはちょっとしたジョークでした」とゲロっちまいなよ。

    自公連立解消は賛成に一票。連立の効果は薄い割に足枷のようなデメリットが目立つ連立は、一旦解消してみて冷却期間を置いてみるのもよろしいかと。

  • 野党はまとまれないでしょうね。
    まぁ、理論上は高市総理を阻止できるし、その前提で公明党も自民党と交渉しているんでしょうけど。

    そもそも立憲民主党は、石破政権に不信任案を出せなかった時点で、(少なくとも今回は)政権を担う資格もないし、首班指名でどうこう言う資格もないと思ってます。

  • 石破氏による解散総選挙、そうなればいいなと思っています。
    結果、日本の再生につながるのか、緩やかに滅んでいくのか、見届けられないかもしれませんが。願わくばオールドメディアをはじめ、各所にはびこる勢力の断末魔を見たいものです。

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