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世論調査では高市氏リードだが…「崖っぷち」の自民党

例の「やらせコメント事件」を巡って、小泉進次郎氏は土曜日、「一部行き過ぎた表現があった」としたうえで、「知らなかったとはいえ、本当に申し訳ない」と謝罪したそうです。このひとことで、小泉氏が「やらせコメント」の深刻さを理解していないことが明らかです。問題の本質は「表現の内容」ではなく、「やらせコメントそのものが国民の意見を偽造する行為であること」にあるからです。

自民党総裁選、当初は取り上げないつもりだった

当ウェブサイトでは当初、現在行われている自民党総裁選について、あまり積極的に取り上げる予定はありませんでした。

普段から当ウェブサイトをご参照いただいている方ならばご存じかと思いますが、当ウェブサイトでは現在進行形で行われている選挙(国政選挙、地方選挙)については、選挙期間中、つまり告示・公示日から投開票日の午後8時までの期間は、できるだけ話題として取り上げないようにしているからです。

また、選挙について取り上げることがあるとしても、できるだけ候補者名や所属政党名などについては伏せるなど、ささやかではありますが、当ウェブサイトが選挙結果に影響を与えることを回避しようと努力しているつもりです(公選法上は、そこまでの厳密さが必ずしも求められるものではありませんが…)。

今回の自民党総裁選も、基本的にはこの当ウェブサイトにおけるポリシーを踏襲していこうと思っていました。

いちおう、自民党総裁選自体は「自由民主党」という政党が内部で行う私的なものですので、当然、公選法などの適用はありませんが、それでもできる限り客観的な「観察者」であることに努めるという観点からは、やはり、あまり不必要に選挙結果への影響を煽るかのコンテンツは望ましくないと考えていたからです。

(※なお、これはあくまでも当ウェブサイト側の話であって、Xのアカウントについては法令とXのルールに従い、適切に運営しているつもりです。Xのアカウント、もともとは当ウェブサイトの宣伝目的で開設したものですが、最近だとXの方がボリューム的に増えてきている気がします。余談ですが。)

やらせコメント事件のインパクト

ただ、この総裁選について眺めていると、やはり、どうしても言及せざるを得ない「事件」が多々発生していることも事実です。

その「番狂わせ」のひとつが、週刊文春が24日付で掲載した、こんな話題です。

【証拠メール入手】小泉進次郎「卑劣ステマ」を暴く!|自民総裁選 茶番劇の舞台裏

「石破さんを説得できたのスゴい」「泥臭い仕事もこなして一皮むけたのね」―― 選対幹部から進次郎動画にヤラセ書き込みの指示が出た。“例文集”には歯の浮くような文言や、他候補への誹謗中傷が24パターンも…。<<続きを読む>>
―――2025/09/24付 週刊文春より

これは小泉陣営内で、小泉進次郎氏を褒め称える、あるいは小泉氏以外の候補(高市早苗氏か?)をけなすようなコメントをニコニコ動画に入力するような協力要請メールが流れていた、などとするものです。

これについてはすでに『小泉陣営に「ステマ報道」も…肝心の効果のほどは不明』でも取り上げたとおり、小泉陣営自身が先週金曜日までに、文春報道が大筋で事実であることを認めていますので、当ウェブサイトとしても積極的に取り上げることに転換したのです。

なぜあっさり認めたのか

ただ、著者自身はこの文春報道を陣営の事務局長代理を務める小林史明衆議院議員があっさりと認めたことに、多少の違和感も覚えていました。

というのも、これを認めてしまうことで、小泉陣営に対して総裁選が決定的に不利に働くことは、容易に想像がつくところだからです。

もう少し踏み込んで言うと、「陣営側がたいした言い訳もせずにあっさりと事実関係を認めた」というのは、この問題の深刻さを陣営側が認識していなかったのではないか、といった証拠でもあるのです。その典型例が、産経ニュースなどが報じた、ネット番組における小泉氏本人の発言です。

報道等によれば、27日夜に行われた5候補による討論会で、小泉氏が「文例の中に、一部行き過ぎた表現があった」などとしたうえで、「知らなかったとはいえ、本当に申し訳ない」と陳謝。ほかの4候補もこの問題についてはとくに追及しなかった、などとしています。

問題は「表現」ではなく「国民の声を偽造したこと」

ただ、自民党総裁選の場で他の候補・他の陣営がこの問題を積極的に追及しないからといって、この問題を幕引きにして良い、という話ではありません。

これについては山手線の駅名を冠した怪しい自称会計士が申している通り、小泉氏自身はこの問題を「表現の問題」などと勘違いしているフシがありますが、現実には、この問題の本質は「やらせコメントの書き込みを通じて、一般国民の声を偽造したこと」にあります。

しかも、元デジタル相でもある牧島かれん氏は陣営の総務・広報班長を辞任したそうですが、これについては牧島氏が責任を取ったからではなく、どちらかといえば「殺害予告、事務所に対する爆破予告が寄せられる事態」になり、「本人も命の危機を感じた」ためなのだそうです。

自民総裁選・小泉氏「責任はトップの私に」 陣営幹部の牧島氏辞任明かし「命の危険感じている」

―――2025/09/27 15:03付 Yahoo!ニュースより【FNNプライムオンライン(フジテレビ系)配信】

なんだか、どこかの高校が高校野球への出場を辞退したとき(『高校野球「出場辞退」に見る…SNS時代のリスク管理』等参照)と、そっくりな言い訳ですね。

ただ、この問題はやはり、相当に深刻に受け止めておく必要があります。

やらせコメントは、「表現の問題」ではなく、インターネット上の世論を偽造するという意味では、党員や国民を騙す、非常に問題のある行為だからです。もっといえば、自民党総裁公選規程(第12条第2項)において禁止される「選挙の清潔、明朗および公正を害する行為」そのものではないでしょうか。

自由民主党 総裁公選規程 第12条(選挙運動等)

総裁選挙における選挙運動は、党本部管理委員会の定めるところによりこれを行うものとし、それ以外の選挙運動は、何人もこれを行ってはならない。

2 何人も、選挙の清潔、明朗及び公正を害する行為を行ってはならない。

3 選挙期間内において党の名誉を著しく損ねる行為が認められる場合は、党本部管理委員会は党紀委員会の審議の対象として要請することができる。

小泉氏は出馬辞退せず…ではどうなるのか

やはり常識的に考えたら、この問題が発覚した小泉氏は総裁選への出馬を辞退するのがスジであるようにも思えます(もちろん、「やらせコメントを打ち込んだら総裁選出馬を辞退しなければならない」という規定はありませんが、小泉陣営がやったことはそのくらいに重い行為でもあるわけです)。

ただし、結果論として、小泉氏は現時点までにおいて総裁選への出馬を取りやめる方針は示しておらず、引き続き、総裁選を継続することは間違いなさそうです。

そして、このことが小泉氏および自民党に対し、どういう影響を与えるのかは気になるところです。

とくに昨年9月の総裁選のように、自民党が党員票で1位になった高市早苗氏を決選投票で落とし、石破茂氏という「禁忌肢」を選び出す程度には危機感のない組織であることを思い出しておくと、それと同じことが発生したらどうなるでしょうか。

仮に今回も高市氏が党員票トップとなり、小泉氏が2位となって決選投票にもつれ込み、最終的には国会議員票が再び党員票をひっくり返して小泉氏を次の総裁に選び出せば、おそらく、小泉氏が自民党最後の首相となります。

(あくまでもSNSにおける反応などを見る限り)少なくない国民は今回のやらせコメント騒動にかなりの怒りを覚えており、そのような問題を起こした小泉氏を総裁に選んでしまうような組織を、次の選挙で支持するとも思えません。

もちろん、高市氏とともに決選投票にもつれ込んだのが小泉氏以外の人物―――たとえば、林芳正氏―――だったとして、土壇場で高市氏を落選させて林氏を選んだとしても、やはり同様に、次の選挙で自民党が惨敗する可能性は高いです。

ただ、小泉氏を選び出したら、その瞬間、おそらくSNS層を中心とする保守層の多くは、完全に自民党を見限ることでしょう。

世論は高市氏がトップ

さて、こうしたなかで、共同通信や日経新聞が出してきた世論調査では、やはり高市氏に対する支持率が高いことが見えてきます。

【速報】自民支持層は高市、小泉、林氏の順

―――2025年09月28日 16時03分付 共同通信より

「次の自民党総裁」高市氏34%首位 小泉氏25%・林氏14%で続く

―――2025年9月28日 19:00付 日本経済新聞電子版より

(おそらくは回答者属性等の年齢補正を行っていないであろう)メディアの世論調査でもこういう状況なのですから、現実の世界では、高市待望論はさらに高い可能性があります。

(※なお、著者自身の立場は、「高市氏が万全の候補だとは思わないにせよ、少なくとも高市氏を落選させて変な総裁を選んだら、その瞬間、自民党が終わる」というものです。)

もちろん、くどいようですが、今回の選挙は国政選挙ではなく、自民党という政党の内部の選挙に過ぎません。自民党が高市氏ではなく高市氏以外の候補、とりわけ小泉氏か林氏を選び出す可能性は排除できないと考えており、したがって、本件についても予断を持つことは厳に慎まなければならない話です。

ただ、このような状態で、高市氏が1位、小泉氏が2位につけ、昨年総裁選と同様決選投票で高市氏を落としてしまった場合だと、もしかしたら一部の有権者は、こう思うかもしれません。

これで心おきなく自民党候補を落選させられる」。

崖っぷちの自民党

正直、著者自身にとっては、高市氏であれ、小林鷹之氏であれ、茂木敏充氏であれ、あるいは自民党以外であれ、厳しさを増す日本の安保環境をしっかりと舵取りしてくれるとともに、官僚機構(財務、厚労、総務省など)を抑えて減税してくれる候補であれば誰でも良いと考えています。

現実問題として政権担当能力が最もあるのは自民党ですので、経済政策的にリフレ、外交安全政策的にタカ派の人物が自民党総裁に就任し、場合によっては同じくリフレ派的な発想を持つ野党とも連携してくれるならば、なお嬉しいです。

しかし、自民党が昨年に続き、再び変な人物を総裁に選び出せば、それは多くの保守派にとっては「自民党はもはや、有権者の期待にこたえられなくなっている」とみなされることになるでしょう。その意味で、現在の自民党は、まさに崖っぷちです。

今回のやらせコメント事件がその決定打となっていなければ良いのですが…。

新宿会計士:

View Comments (32)

  • 国民の声の偽装を何故アッサリ認めたか
    小泉等左派に対してはマスゴミが擁護でやってる毎度の工作で当たり前だと麻痺してしまっているからでは?

    • これ馬鹿な左派野党がやってるんじやなく、政権を担う与党がやっているヤバさよ。

    • そのとおり(大盛り)

      遠からず実施になるであろう衆議院選挙、誰を落選させるのか事前検討を始めるタイミングになりましたね。

  • 「対話の可能性も最初からないというのであれば、頭を下げてお願いする話でもない」と野党第一党立憲の野田党首が述べたとの報道が出ました。
    頭を下げてまでと言葉にした、立憲主導の野党統一行動は起き得ない。
    いい話じゃないですか♪ 党首が認めた、立憲民主は転落したのです。
    そして、連携相手を定めることのできない自民は、『まともな政治』を走らせることは困難になった。これが石破総裁体制が導いた「自民党の最期」次どうしていいか分からず、その場でくるくる回って先へ進めない「にゃんにゃこ舞」を続ける。
    多くの人が指摘していた、大げさな絵空事でなかったと、共通理解事項としてはっきりしてしまいました。

  • ヤラせコメントというより、粉飾コメント、虚偽コメント。粉飾答弁、虚偽答弁を国会でもやるということでしょう。80兆円も虚偽コメントで誤魔化せるという認識なのでしょうね。自民党

    • 一般人になりすまして、架空のコメントを流す、まさに架空の売上を計上して粉飾決算を行う会社のようです。こんな倫理感なのでしょうか。自民党は。

  • 世論調査通りになるのなら、石破続投になってなければオカシイのでは。
    蛇足ですが、30日に石破総理が訪韓しますが、ここでの言動が、石破政策の引継ぎを言っている自民党総裁選候補に、影響するのではないでしょうか。

  • すごく不思議に思うのは、小泉議員って総裁になって何をしようと考えているのか?現状の資質能力で総裁が務まると考えているのか?ということなんですよね。また、支持している(といわれている)方々は、本当に彼をリーダーに戴くつもりなんでしょうか?次の選挙を案じることがないのでしょうか?総裁選の騒ぎを見てこのように感じました。

  • 小泉氏はバックにいる支援者の操り人形なので、ことの重大さを理解していないし、理解する能力が無いのでは無いかと思います。ま、危機管理・対応力がまるで無いことは明白になりましたね。

  • 自作自演コメントは読者への詐欺であり、言論に対する冒涜
    https://shinjukuacc.com/20190507-01/

    ↑こちらの過去稿に通じるものですね。

    彼のモラル(意識の在り様)が問われます。
    ・・・・・

    Q. "自作自演"って書いてなんと読むの?
    A. "jisaku・・the・・end." だよねー・・。

  • 自民党の神奈川県自民党組織。
    河野氏、小泉氏、菅氏、甘利氏あたりの名前が思い出してきます。
    あと昔、職場労組の応援で動員させられた浅尾慶一郎氏とか。
    中国利権にまみれてしまった人、生粋のボンボン、折角良い仕事していたのに脳疾患なのか知らんが変質してしまった人、折角CPTPP交渉で良い仕事していたのにそれが原因なのか落選運動の憂き目にあい引退に追い込まれた人。長い物に巻かれたのか自民に鞍替えして小泉氏支持している人。
    こんな印象。。。
    神奈川県自民党組織。
    闇の世界だなぁと思ってしまいます。

  • フォロワー90万人って純粋に凄いよね。【参考:フォロワー数上位順、敬称略】高市早苗 900,973 @takaichi_sanae小泉進次 149,772 @shinjirokoiz茂木敏充 _95,119 @moteging小林鷹之 _91,214 @kobahawk 林 芳正 _41,190 @hayashi09615064 https://t.co/4d6EH3l0qU— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 29, 2025

    新宿会計士さんのこのツイートがたまたまタイムラインに入ってきてふと思ったんですが、有権者との対話でSNSを使わなかったりリプ欄を閉じている議員はだいたい、このネットの高市支持が高い状態を「偏向したり偽の情報によって世論が捻じ曲げられている」と認識しているのかもしれないですね。だとすると、対抗するためにある程度のヤラセや誹謗中傷は許される、と考える。小泉釈明会見時に現れた陣営の問題認識の軽さにはそんな面もあるんではないかと。

    私なんぞはオールドメディアの発信を含むより多くの情報に接した人々の、現時点の判断が収斂した状態だと思うんですけどね。
    釈明会見には陣営幹部の考えが現れていると思いますが、やっぱ「有権者はアホ」と思ってるのかな。

    • >釈明会見には陣営幹部の考えが
       普段から敵としても味方としても相手をしている官僚達の「文学」に慣れすぎているのかもしれません。「デマを認めます申し訳ない」で済むところを、「表現に瑕疵があったので誤解を招いた、自分に責任は無いがトップとして謝る」などと、余計な修飾をモリモリにして煙に巻きつつ結局責任は逃れる。思えばかの有名な「記憶にございません」答弁からして、政界の文化なのでしょう。
       問題に対してこれで済むと思っているというよりは、「アイツラの相手は」これで済むという事でしょうから、要するに、仰るように「有権者はアホ」という認識からでしょう。

       そりゃあ有権者には私含めまだまだアホが多かろうとは思います。そしてこれは人類である以上、改善はしつつも完全解決(アホの消滅)はありえません。
       しかし、ネット・SNS登場によって、アホであろうがなかろうが発信も受信も可能になり、特にアホでない者が無視できない影響力を場外から発揮できるようになってしまった。オールドメディア時代では自動的に封殺されていた部分。ここがまだまだ理解できておらず、アホな者しか認識できていない(そうでない者もアホと認識)からあの対処。オールド脳なのでしょう。
       もう「政界」なんて、(案外低レベルな)エリート層で隔絶されたヴェールに包まれた世界だとか思っていないで、(案外高レベルな)一般人の延長線でしか無いのではないかと思います。

       何回アホって書いたんだろ、弾かれそう。

      • >普段から敵としても味方としても相手をしている官僚達の「文学」に慣れすぎているのかもしれません。「デマを認めます申し訳ない」で済むところを、

        同じものを感じます。こんな構図が見える度にアホとは遠い位置にいる木原誠二氏の顔が頭に浮かぶのは私だけかも知れませんが。
        ダメコンと"お作法"を兼ねてやってるつもりなのだろうと思います。
        でも、過失による不幸な事件などで責任者が結果責任を認めれば済むような些細な問題であれば、そのやり方も有効だったろうと思います。しかし、今回のように民主主義の一丁目一番地的な重い問題では、それでは傷口が広がるだけでダメコンにならないと思うんですよね。
        そこが読めないのか、無視して強行突破が勝ち筋と捉えているのか、どっちかわかりませんが。短期決戦の受験勉強じゃあるまいし、長期的には信頼を失って負けるだけだと思います。

        >(案外高レベルな)一般人の延長線でしか無いのではないかと思います。

        ネットで政界の人の動きも高解像度で知れるようになってから、私もそう感じるようになりました。
        粗い情報時代には情報の行間で「きっと、凡人には思いつかないプロの仕事をしているんだろう」と、補完することも可能でした。
        ところが情報の解像度が高まると、例えば時系列の本人の行動が読めたりするので、「結局サラリーマンの我々と考え方も行動も変わらないな」という感想に到達するケースが増えるんですよね。
        共感するところ多でした。

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