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氏名公表は完全に逆効果?むしろ総裁選の可能性上昇か

自民党執行部(選挙管理委員会)による「臨時総裁選に賛同する議員の氏名を公表する」という措置は、逆効果だった可能性が濃厚です。先週末時点で若手・中堅議員を中心に、総裁選に賛成すると明言している議員はかなり多く、加えて政務三役(大臣、副大臣、政務官)が9月8日にかけて、相次いで辞表を提出し、内閣が崩壊してしまう可能性すらあります。

混乱の9月…まったく先が読めない!

早いもので、今日から9月です。

昔から「年齢を重ねるごとに月日が経つのが早く感じられるようになる」といいますが、つい先日、新年を迎えたばかりだと思っていたのに、今年も残すところあとたったの4ヵ月です。

国内政治に関していえば、通常、国政選挙が行われたあとは政治日程的にもあまり話題はないことが多く、年末に向けて粛々と税制改正などが行われます。また、会計・税務業界界隈も、税制改正大綱を見て、粛々とクライアント対応の準備をすれば良いようです。

ただ、今年に関していえば、政治日程が例年通りに動くかどうか、まったく読めません。

いうまでもなく、石破茂内閣がいつまでもつか、という問題があるからです。

石破首相は昨年9月の自民党総裁選を制し、首相に選ばれたものの、事実上最初の仕事である衆院解散総選挙で自民党がまさかの大敗を喫し、連立与党(自公)が過半数割れを起こしてしまいました。

辛うじて自民党は最大政党の座を維持したのと、野党がひとつにまとまらなかっため、政権交代こそ発生しませんでしたが、それでも少数与党での政権運営を余儀なくされたのです。

辞めずに居座る石破首相が諸悪の根源

常識的に考えたら、この時点で石破首相は辞任すべきでした。選挙で負けたのにトップが責任を取らないというのはおかしな話でもあるからです。

しかし、当時は補正予算、続いて通常国会と政治日程が立て込んでいたためか、「石破退陣論」はよとう内からもあまり出て来なかったようです(当時、石破首相に面と向かって辞任を要求したと述べていたのは、青山繁晴参議院議員くらいでしょうか)。

ただ、その後も自民党が(とくに保守派の)有権者を失望させるような政策が相次ぎ(たとえば「所得税と地方税の基礎控除一律75万円引き上げ」を潰す、厚年保険料上限を引き上げる、など)、挙句の果てに有権者に評判の悪い「2万円/4万円給付」というバラマキ政策を打ち出すなどしました。

案の定、6月の東京都議選では惨敗し、第1党の地位を「都民ファーストの会」に明け渡す結果となり、続く7月の参院選でも惨敗を喫したのです。

しかも、参院選では自民党は自分自身で設定した「自公合わせて改選50議席」のボーダーラインを3議席下回ってしまい、これにより自公は晴れて(?)「衆参両院で過半数割れ」という状況を実現させてしまったのです。

もしも野党側が一致団結すれば、極端な話、自公の賛成がなくてもどんな法案でも通ってしまいます。

こんな状況を作り出した人物こそ、石破首相その人であり、本来ならば、引責辞任する以外の選択肢はありません。ところが、「3連続で負けた首相」である石破氏は、驚いたことに、参院選直後にまさかの居座りを宣言しました。

まさに、石破首相自身が「諸悪の根源」と化しているフシがあるのです。

理解に苦しむ居座り理由…自身の責任も回避か?

しかも、その居座りの理由自体が理解に苦しむものです。

石破首相が居座りたければ自公維連立くらいしかない?』などでも取り上げたとおり、「首都直下型地震や南海トラフ、自然災害、史上最も厳しい安保情勢」といった諸情勢に照らし、政治空白を作らないために辞任せず続投する、と宣言したのです。

いつ来るかわからない自然災害を辞めない理由に持ってくるとは、なかなかに斜め上で驚く展開です(余談ですが、「いつ来るかわからない自然災害」が今すぐやってきたとすると、そのときにむしろ国民の信を得ていない人物が首相の座にあることの方が問題ではないでしょうか?)。

それはともかくとして、石破首相率いる自民党は現在、参院選の大敗を検証する総括委員会を設けているわけですが、その検証が遅れています。当初は8月中に検証結果を取りまとめて公表する予定とされていたのですが、現在のところ、9月2日にズレ込んでいるようです。

しかも、この検証に関し、先週金曜日夜に出てきた話題が強烈です。

時事通信によると、この総括案では首相・党総裁、執行部の責任に触れておらず、委員会では異論が出たことでこの日の取りまとめが見送られたそうです。

ということは、もしかすると9月2日の取りまとめと公表はギリギリになるか、場合によっては延期になる(そして、玉突き的に自民党総裁選も後倒しになる)かもしれません。

これなど、単なる時間稼ぎなのか、それとも石破執行部の実務能力の低さのあらわれなのか、あるいは石破首相らが本気で「裏金問題が原因で自民党が敗北した」と思い込んでいるのかはわかりません。

が、いずれにせよ、あれだけの大敗で石破首相に責任がないわけないでしょう。

政務三役の辞任ラッシュはあるのか?

もっとも、土曜日の『臨時総裁選賛否表明で「石破内閣崩壊」はあり得るのか』でも取り上げたとおり、総裁選をダラダラ延期し続けていると、そのうち内閣の崩壊が始まる可能性があります。

(あくまでも報道等のベースですが)石破首相やその周辺は、大臣や副大臣、政務官(いわゆる政務三役)を務めている議員に対しては、もしも臨時総裁選に賛同する場合には政務三役を辞めてからにしろ、などと圧力をかけているフシがあるからです。

ただ、もしそれが事実であるならば、現在政務三役に就いている人のなかでも、石破首相に「辞めてほしい」と思っている人は、辞表を出してから総裁選実施を要求する文書に署名するはずです。もしそうなると、臨時総裁選の実施を待たずに石破内閣は事実上の機能不全に陥ります。

問題は、その可能性がどこまで高いか、です。

Xを眺めていると、「永田町の関係者からの情報によると、9月8日に総裁選実施が正式決定されるだろう」といった趣旨の内容をポストする人もいるなど、現時点で総裁選実施の可能性(≒石破内閣が崩壊する可能性)がそれなりに高いとの観測もあるようです。

もっとも、当ウェブサイトとしては、現時点で「総裁選は必ず実施されるに違いない」とまで述べることは控えておきます。

とくに、自民党は昨年秋の総裁選で(おそらく多くの党員や国民の強い期待を裏切って)189人の愚か者たちが石破茂氏に投票したという前科を持つ政党でもありますので、このあたりは何が起こるか、予断をもって眺めることは控えておきたいと思う次第です。

若手・中堅議員を中心に賛同意見相次ぐ

ただ、著者自身の希望的観測も踏まえて申し上げれば、とくに若手議員を中心に、総裁選の実施に賛成する意見が少なくとも衆参両院議員(衆195人+参100人)と都道府県連会長(47人)の合計(342人)の過半数(=172人)を超える可能性は高いと信じたいところです。

当ウェブサイトでは三々五々、紹介している通り、SNSで日々情報発信しているような若手・中堅議員を中心に、なかば公然と総裁選への賛同を述べる人が増えていることも事実です。

たとえば、先日も紹介した神田潤一衆議院議員や小林史明衆議院議員などがその典型例ですが、それだけではありません。

若林洋平参議院議員や川崎秀人衆議院議員、草間剛衆議院議員、小野田紀美参議院議員、星野剛士衆議院議員など、パッと探しただけでも若手・中堅を中心に、非常に多くの議員が総裁選に(直接または間接的に)賛同しています。

なかば公然と辞任要求が広まってきた?

さらには、昨年の総裁選に出馬した小林鷹之衆議院議員が重ねて石破首相に辞任を迫っているほか、旧茂木派の若手などでも臨時総裁選を要求する方針で一致した、などと伝えられています。

オールドメディアがあれだけ一生懸命、「世論調査の結果、国民は石破首相の続投に賛成している」とする調査結果を作っているにも関わらず、こうしたオールドメディアの誘導には乗せられない程度にはリテラシーがある議員がいることは心強い限りですね。

いずれにせよ、党執行部としては一生懸命に臨時総裁選に持ち込まれないように牽制しているつもりが、若手議員を中心に、なかば公然と地滑り的に総裁選への賛同が増えているというように見えるのは皮肉です。

「氏名を公表する」と言われれば、こうなるのは当たり前でしょう。「総裁選に賛同した議員の氏名が公表される」ということは、「総裁選に賛同しなかった議員の氏名が公表されてしまった」のと同じ効果が生じるからです。誰かが差分でそのような名簿を作るのは当然だからです。

(何なら9月8日以降、当ウェブサイトにてそのような名簿を作ってみても良いかもしれません。)

いずれにせよ、「氏名公表」は脅しだとしても大失敗だったことは間違いなく、むしろ総裁選実現に向けて可能性が高まったと考えて良いのではないかと思う次第です(※といっても、くどいようですが、現時点ではまだ確定ではありませんので、予断を持つべきではないのかもしれませんが…)。

新宿会計士:

View Comments (37)

  • あと議員らの判断に石破辞めるな百人デモと辞めろ万人デモも効果あると思います。

    • 毎度、ばかばかしいお話を。
      石破総理:「辞めろ万人デモは仕込みだ。石破辞めるな百人デモは仕込みではない」
      百人を仕込むのと、万人を仕込むの。どちらがたいへんでしょうか。

      • (石破総理も含めて)人は信じたいものしか信じることができない。

      • 石破「辞めるなデモはわずか百人、だがその百人は全て一騎当千・日当二万円のプロ市民だと私は信じている。ならばデモ隊と私で総人数10万と1人の集団となる」
        「第三次居座り作戦、状況を開始する」

    • 「犬が人に噛みついてもニュースにならないが、人が犬に嚙みつけばニュースになる」。ならば「石破辞めろ万人デモはニュースにならないが、石破辞めるな百人デモはニュースになる」
      (極論ですが)どこも報道していないだけで、すでに石破辞めろ千人デモもあったかも。
      蛇足ですが、
      >https://www.sankei.com/article/20250901-WIPK3CTSB5HBTJZR6E3OWEOSNY/
      「石破辞めろデモ」に長蛇の列だそうです。だとしたら石破続投支持のオールドメディアの世論調査との整合性は、どうなるのでしょうか。(もちろん、このデモが陰謀論(?)によるものかもしれませんが、ならば続投支持も陰謀論によるものである可能性が出てきます)

  • 自民党の石破執行部の考えでは、「氏名公表は、オールドメディアの世論調査を信じない馬鹿者の氏名を晒す」という意味も、あったのではないでしょうか。しかし、(ネットでは)オールドメディアの世論調査の信頼性に疑念が生じている今、それが逆効果になる可能性が出てきたのではないでしょうか。
    蛇足ですが、「若者の票を取り込むために、SNS戦略を重視する」と言っている党が、SNSの声を完全に無視するなら、口先だけと思われるでしょう。

    • 本日の朝日新聞の政治部部長のコラムから「自民党の右にも野党ができた」。もちろん、今後、どうなるかは分かりませんが、意外と、これは大きいのでは。

    • 家族親族最優先の同族会社でも、荒稼ぎボッタクリの悪徳業者でも、口では「お客様が第一」を謳うもんですw

    • 例の「総括」が公表されたら、さすがに日和見議員たちも擁護できないのでは。
      それでも世論調査を信じる馬○者の氏名は、オールドメディアが隠蔽しても、引き算してネット上や動画サイトで晒されることになるでしょう。

  • いい加減岸田文雄氏が前回の出来レース総裁選の引責で政界引退表明してくれれば一気に情勢は動くと思うのですが、しないでしょうね…

  • 総裁選で誰が誰に投票したかならともかく、総裁選実施の要否で誰が賛成したかは、まだ「前座」でしかないですやね。
    あっちのサラミ戦術(切り取られるのは148側なので"サラまれ戦術"?)の裏の意図があるのかどうか。

  • 昔、中国地方を治めていた殿様が治世を家来に託した。
    殿様:石の上にも3年と申す、夢々約束を違わず精進せよ。
    家来:殿申し訳ございせん、3度の戦に負けてしまい、年貢を上げ戦費を工面したところ、民に一揆を起こされ、兵糧も10か月しか保ちませぬ。米の値が上がり、新しく奉行を遣わしましたが…。
    殿様:生者必衰の理あり、見事切腹して果て忠義を示せ。

    家来はそっと他人の腹を切ってみせ、儂は悪くない悪いのは戦いの場で軽口を叩いた奴だ。

  • >石破茂首相(党総裁)ら執行部の責任に触れていないとの異論があり、この日の取りまとめを見送った。9月2日の同委で修正案を協議し、同日の両院議員総会に報告する方針。

    まあほんと、今の執行部は中韓パヨク仕草が染みこんでますな。
    でもマジメに修正を求めるんじゃなくて、さっさと「謝ったら死ぬ病」が発病した総括をさせて沈めちゃえよ、とも思ってしまいますが。(笑)

    昨日だったか、斎藤財務副大臣も総裁選前倒し賛同表明で「求められれば辞める」と報じられていましたね。この人は麻生派。神田氏と小林氏は宏池会らしいので岸田氏の了承がないとは思えず、総裁選の流れは不可避じゃないかとも思いますね。最後までわかんないですけど。総裁選前倒しの流れを作ったヒーロー二人がスンズロー推しで次の流れを作る段取りだったりして。(やめてくれー)

    執行部圧力説は「ほんとかな?」と半信半疑でしたが、この報道で「そうかもね」と思うようになりました。

    岩屋外務大臣 総裁選前倒しめぐり“政務三役が賛成の場合は辞任すべき”との考えを示唆「総理に与えられた使命果たすのが最大の責任」
    https://newsdig.tbs.co.jp/articles/withbloomberg/2138379

    まあこの人には山下元法相のツイートを百回読めといいたくなります。

  • 1.オールドメディアの世論調査などたかだか2000人、3000人で年齢の偏ったままの母集団です。
    先の選挙で投票所に足を運んで投票用紙に名前を書いた数千万人とは比べるべくもない。敢えて言います、このようないい加減な報道を真に受けて続投支持など笑止の沙汰です。
    2.石破首相にだけ責任があるわけではない、こういった意見も笑止千万。なるほど首相以外にも原因はあるでしょう、しかし結果の責任は首相と幹部が負うべきものです。戦国の世に例えるなら、殿と重臣は潔く腹をめされよ。家臣領民は安堵する。

  • 石破執行部:「世論調査の結果、国民は石破首相の続投に賛成している」
    中堅・若手:非自民層(得票見込みゼロ)に人気でも仕方ないじゃん・・。
    ・・・・・
    安倍氏のお見送りに花を手向けた長蛇の列(若年・年輩問わず)に思いを馳せる。

  • 31日の石破やめろデモは多くの方々が参加されたようですね。
    対照的なのは、やめるなの方は如何にも左派プロ市民系譜らしい喧しい人達。都知事選挙の時はR4氏支援の為に緑の人を妨害する為に集結していた人達とそっくりですね。一方でやめろの方は、素人市民と言って良いでしょう。モラルある方々であったことが印象的でした。
    マスコミ・メディアが有権者二分対立などと言っていて苦笑します。
    今までもこれからもマスコミ・メディアの言う事やる事に真実は無く、あるべき姿はマスコミ・メディアの言うことの別にあるという「社会常識」が良識ある国民に更に浸透する事例になることでしょう。

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