既存メディアは年齢補正もしないで石破内閣の続投支持が多数派であるかのごとく報じているフシがありますが、やはり年齢補正を加えれば、残念ながら「石破続投支持」は多数派ではない可能性が高そうです。ただ、ここでもうひとつ興味深いのが、石破首相の続投を支持しているのが「▼自民支持者でもなく、▼自民に投票しておらず、▼これからも自民に投票しない」層である、とする実証研究です。
目次
なぜか首相続投支持が多数派に?
個人的に、少し前から気になっている話題のひとつが、石破茂内閣に対する支持率の上昇、あるいは石破首相の続投を支持する世論調査結果です。
たとえば日曜日だけでも、共同通信が「首相の辞任の必要なし」が57%だったとする調査結果を発表していますし、また、毎日新聞世論調査でも内閣支持率が「6ヵ月ぶりに30%台を回復した」などとする結果が出ていると報じられています。
さらに読売新聞もまた、石破首相が辞任するべきだと「思う」との回答が42%で前回の54%を下回るとともに、「思わない」は50%と前回の35%から上昇したと報じています。
首相の辞任「必要ない」57% 内閣支持率35%、共同通信調査
―――2025/08/24 17:08付 Yahoo!ニュースより【共同通信配信】
石破内閣支持率33% 6カ月ぶりに30%台回復 毎日新聞世論調査
―――2025/08/24 17:00付 Yahoo!ニュースより【毎日新聞配信】
石破内閣支持率39%で前回から17ポイント上昇、「首相辞任するべきだ」42%…読売世論調査
―――2025/08/24 22:00付 Yahoo!ニュースより【読売新聞オンライン配信】
楊井氏「年代別回答割合や補正の有無などがわからない」
普段、当ウェブサイトでは毎日新聞の世論調査結果を取り上げることは基本的にありませんが、本稿では例外的に、共同通信や読売新聞のものと並んで毎日新聞の調査を取り上げたのには理由があります。
この3の記事、ヤフコメの「エキスパート・コメント」に弁護士で日本公共利益研究所主任研究員でもある楊井人文氏がコメント(というか鋭く適切なツッコミ)を行っているからです。
楊井氏はこの3つの記事に対し、年代別回答割合や補正(ウエイト集計)の有無、補正前の単純集計値といったデータが現時点でわからないことを指摘しています(※ただし毎日新聞調査だと、これとは別の記事で「年代別回答の差が大きかった」と伝えているそうです)。
この指摘でピンと来た人は多いと思いますが、楊井氏といえば、Xのポスト、あるいは『Yahoo!ニュース』への寄稿記事で、今月行われたNHKの世論調査について「単純集計と年齢補正ベースでは(石破首相続投論についての)賛否が逆転する」とする事実を指摘した人物です。
「石破首相続投 賛成多数」 年齢補正で賛否逆転 高齢者に偏った世論調査にNHK「課題と認識」
―――2025/08/18 18:27付 Yahoo!ニュースより
まだ読んでいないという人は、是非ともこれらの記事をチェックしていただきたいと思います。
ただ、それはともかくとして、参院選で敗北したはずの政権に対する支持率が上昇に転じたというのも、なんだか腑に落ちない話ではないでしょうか。
昔からよく「世論調査」のことを「世論操作」だと揶揄する人もいるわけですが、正直、現在のメディアの世論調査結果が国民・有権者の総意を正確に代弁しているとも思えないところです。
横浜商科大・田中氏の優れた分析…正確性に拘った調査
さて、こうしたなかで気になった記事がもうひとつあります。
2025年8月臨界点―石破政権はなぜ支持率が下がらないのか
―――2025年8月24日 12:42付 noteより
『note』に日曜日付で公開された、横浜商科大学商学部の田中辰雄教授が執筆したものです(※ただし、記事冒頭に「出所を明示していただければ無断転載自由です」とありますが、本稿では全文の転載は控えたいと思います)。
田中氏の着眼点は、こうです。
- 石破内閣の支持率は30%を超えて安定しており、直近ではむしろ上がったという報告もある
- 規模は小さいが石破辞めるなというデモも行われた
- 自民党支持者に限った時の内閣支持率が6割以上という報道が出たこともある
…。
すなわち、選挙に負けたら内閣支持率が下がり、内閣は退陣に追い込まれるのが通例なのに、現在の石破政権、与党が衆参両院で過半数割れを起こしているのにその退陣劇がなかなか行われないことについて、ウェブモニター調査をもとに探る、という趣向です。
(※余談ですが、記事では「2025年10月10~12日に行われたウエブモニター調査」、との記述がありますが、この「2025年10月」のくだりは「2025年8月」の誤植だと思われます。)
ちなみにこの調査、昨年衆院選直後と今年の参院選直後、そして今回と3回、同じ人に対して訪ねているため追跡が可能であり、また、対象者は18~79歳までの1855人で、「トラップ設問」で「不適切回答」を除外しているのだそうです。
ただし、ウェブ調査では回答者が若年層に偏るため、「回答者の年齢別構成が人口×投票率の比率に等しくなるようウェイトをかけて調整」している、などとしており、この時点でメディアが実施する世論調査と比べると、ずいぶんと正確性に拘っているといえるかもしれません。
続投支持の4割の主流は非自民層だった!
それはともかく、この方法で調査をすると、石破首相が「辞任すべき」については「思う」が46%、「思わない」が42%でいくつかのメディア調査とは違って「辞任すべき」が多数派となります(このあたりは「既存メディア調査でも年齢補正を掛けたら石破辞任論が多数となる」という楊井人文氏の指摘とも整合しています)。
ただ、田中氏の論考で興味深いのが、「3度にわたり選挙に敗れ、自身が率いる政党の支持率が20%程度しかない政党の党首に対して、総理を辞めなくてよいという声が4割もある」という異例さの指摘です。
田中氏によると、この「辞任すべきでない」と答えた4割の層(人数でいえば731人だそうです)、「自民党を支持しておらず、自民党に投票もしておらず、今後も自民党に投票する予定もない」、とする人が多数を占めていた、というのです。
「辞めるべきと思わない」731人のプロフィール
- 支持する政党…自民(22.7%)、非自民(33.8%)、支持政党なし・投票しない(43.5%)
- 参院選投票先…自民(21.4%)、非自民(55.2%)、支持政党なし・投票しない(23.4%)
- 現在の投票先…自民(22.8%)、非自民(49.4%)、支持政党なし・投票しない(27.8%)
(【出所】田中氏のnote記事。なお、「現在の投票先」とは「いま選挙があった場合に投票する先」の意)
自民党左派の非合理的な行動の謎
これは、なかなかに見事な調査結果です。
田中氏の記事ではほかにも、石破首相が辞任すべきと思わない人の割合を支持政党と結び付けて分析したりしているのですが(これにより、自民党以外にも公明党、立憲民主党、日本共産党に石破内閣の支持者が多いことがわかります)、これが石破内閣の本質ではないでしょうか。
また、田中氏の論考では、自民党の支持層が「変質した」という点、政治思想的な保守が参政党や国民民主党に流れたとする点、あるいは高市早苗氏がもしも総理大臣だった場合は自民党はもっと勝てていたという点を、データ分析から明らかにしています。
これに加えて田中氏の論考の末尾では、「自民党左派の非合理的な行動」などに関する考察もあるのですが、これらはすべて素晴らしいと断じざるを得ないので、ぜひともリンク先のnote記事『2025年8月臨界点―石破政権はなぜ支持率が下がらないのか』の全文をお読みいただきたいと思う次第です。
View Comments (23)
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
1 2 次へ »オールド野党は 選挙が怖いのです。
いつも 野党お決まりの内閣不信任の提出で 総辞職ではなく解散されたら 与党はもちろんオールド勢も 議席数減少確実でしょ。
今回は沈黙。
だからオールド野党支持者も、「石破やめるな」なのです。
皆が合理的に行動して生じた結果が異例
田中教授の論考は非常に秀逸ですね。
現時点では最も腹落ちする分析だと思います。
個人的には自民党右派の動きが遅すぎて、どんどん傷口がひろがっている気がしてなりません。
左にとって右への揺り戻しが怖いというのはわかる。
しばらく行き場をなくした保守派が日の目を見ることなくフェードアウトするまで石破氏でいきたいというのもわかる。
しかし有権者側の考え方が短期で変わるわけもなく、保守層は変わらず保守層なので票の行方が読めなくなるだけでいなくなるわけじゃない。
ここまでこじれたらどうせ短期での改善は望めないと思うし、なるようになる(ぐらいのスタンスでいたい)。
それにしてもなんで政治家を右と左にわけたがるんだろう。どちらかというと実務能力の有無でわけるべき。どっちが有能とは明言しないけど、石破政権の実務能力の壊滅的な無さ……
すでに出尽くしているお話と思いますが、結果と評価の違いでは?
アンケート(世論調査?)の回答を単純に集計したら石破続投が多くなるのでしょう。
ただ、回答者の偏り(バイアス)があるので、その集計結果がすなわち全体を表すとは言えず、そのまま鵜呑みにして意思決定すると、大やけどする場合がある。
回答者の属性をふまえてバイアス補正をしないとほんとのところは分からないので、アンケート(世論調査?)の回答結果を「全体の世論」としてしまうのは問題で、回答者の属性やその分布まで公開してくれれば役に立つデータなのに、というところでしょうか?
なるほど!つまり石破を支持しだした人は左派陣営って事か。
国政選挙は当分しないでしょ
支持率が上がらないオールド政党はこのまま過ごそうとしてますね
でも地方選挙で負け続けるのは目に見えます
さあ選挙に行きましょう
自民公明立憲維新共産を落としましょう
三年後
148「いまは衆議院選挙をしている場合ではない」
オールドメディア「そ~だそ~だ」
また、ホンマかいなという調査が出てきましたね。
・石破首相の戦後80年メッセージ発出 自民支持層の約8割が「賛成」
https://news.yahoo.co.jp/articles/c2fa043328eeeae9a7abcf300d4af09347aa278d
47都道府県の地方票は、今後の選挙を考えると石破さんでは無理と成りそう。
流石のメディアも隠せられない、記事になり始めている。
戦勝国側に回りたい中間派が雪崩を起こすか。
記名式・名簿開示で困っているのは石破さん側についた議員さんでは。
当然敗戦側は干されるでしょうな、旧派閥のバックアップも期待できなし。
六韜の一節でも実行してるんですかねぇ。忠臣、愛国的な政治家を貶してから、次に出たポっと出の(どう考えてもダメな)総理を辞めるな国民的人気だの高支持だのと喧伝して。
大昔の外交、つまりブラインド環境に於いてであれば実に狡猾な手法なんですが、情報に溢れたフルオープンな現代で、良いところが全く挙げられない人物を持ち上げたって、「何言ってんだこの新聞(等)」で、持ち上げる方も持ち上げられる方もバカにされちゃって、ただでさえ薄い信用がさらに消えるんですが。
せめてこのバk…正直者さんの731人には、支持政党は偽装しろと指示しておくべきでしたね。
>六韜の一節
まったくの同感。
彼の実務力を自身で測りもせず、テレビ・新聞に踊らされた189人の旧態依然。
田中氏の分析は数値に基づいてこれらを明らかにしたことの功績大ですね。
直感ではそうは思っていても「単なる感想ですよね」で終わりですが、数字の事実は覆せないですものね。
>自民党左派の非合理的な行動の謎
私もここはよくわかりません。外から見えない党内事情があるのかないのか。
党が左に舵を切っても、自らが落選することはない選挙区盤石な少数の議員によって(広島とか鳥取とか神奈川とか)「これでうるさい保守派が根絶やしにできるならok」と、党全体が締め上げられている、そんな構図くらいしか思いつきませんね。(妄想です)
まあ後は、小選挙区制になって皆に嫌われたくない病を煩う議員が増えて、「左旋回もまたヨシ」なんて呑気に受け止めてる議員も増えてるんじゃないかとか。(妄想です)
後者も結構重症だと思います。