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小林鷹之氏が石破首相に名誉ある撤退勧告=ネット番組

昨年9月の総裁選にも出馬した自民党の衆議院議員・小林鷹之氏が土曜日、フリージャーナリストの反町理氏の主催するネット番組に出演し、石破茂首相に対し自ら身を引くように求めました。これは、石破氏にとっては「名誉ある撤退」の最後のチャンスなのかもしれません。というのも、本日以降、自民党の臨時総裁選に向けた動きが本格化するからです。ただ、この石破氏の居座り劇も、見方を変えれば、究極的には自民党が有権者の声に本当に耳を傾けるきっかけにすべきものでもあります。

自民党が石破総裁体制を支えるべき前提

以前からの繰り返しで恐縮ですが、当ウェブサイトでは昨年9月の『自民党は「石破体制」を挙党一致でしっかり支えるべき』で、こんな趣旨のことを申し上げました。

  • 著者自身、石破茂氏は正直「嫌い」であるが、こうした「個人的な人の好み」と「その人が総理・総裁に就任することで日本がどうなるか」という論点はまったく別物である
  • 石破氏は自民党が党則で定めた正式なルールに則って総裁に選ばれたのであり、なんらかの不正によって自民党総裁選を制したわけではない
  • 私たち有権者としては、まずはその自民党の選択を尊重するのが筋であり、そのうえで、どうしても今回の自民党総裁選に納得がいかないのであれば、次の選挙では自民党以外の政党や候補者に票を投じれば良いだけの話である

そのうえで、「私たち有権者の側に求められるのは、石破氏が『論功恩賞人事』ではなく『適材適所人事』ができるかどうか、悲観もせず、さりとて楽観もせず、まずはしっかりと見極めるという態度ではないか」、などと申し上げたのです。

この記事については、現在でも撤回するつもりはありません。

執筆した時点で得ていた情報に従い、一般論をまとめたものだからであり、また、同記事を執筆した時点においては、石破氏が組閣した際にどんな閣僚を起用するか、解散総選挙に踏み切った際にどんな公約を打ち出し、どんな選挙戦を展開するか、などについてはまだ見えていなかったからです。

その前提条件は完全に崩れている

いずれにせよ、当時、当ウェブサイトでは、次のように主張しました。

石破総裁は保守派にとって不本意ではないかもしれないにせよ、いったん総裁に選んでしまった以上、石破氏が何をするかをしっかり見極めるべきだし、自民党は石破体制をしっかりと支えるべき」、

これ自体、「当時としては」正しい主張だったと思う次第です。

ただ、非常に残念なことに、この前提条件は、いまや完全に崩れていると断じざるを得ません。石破茂体制の動きは、多くの保守派の有権者を落胆させるものだったこともまた間違いないからです。

旧清和政策研究会(旧安倍派)の「裏金」議員をターゲットにした非公認などの二重処分など、自民党がみずから「裏金」を政治問題化したこともさることながら、それで「自爆」的に衆院で過半数割れすると、今度は国民民主党や日本維新の会などを両天秤に。

さらには(おそらくは少なくない有権者が期待したであろう)国民民主党が提唱していた「手取りを増やす」(所得税と住民税の基礎控除の一律75万円引上げ)を叩き潰し、立憲民主党と共同して「年金流用法案」を可決させたうえで「一律2~4万円給付」などを打ち出したのです。

こうして満を持して迎えた7月の参院選では、自ら設定した過半数ライン(自公合わせて50議席)を下回る47議席しか取れず、自公は衆参双方で過半数割れするという、なかなかに強烈な結果に終わりました。

それでも辞めない石破首相…驚きの言い訳

しかも、有権者の信を得られなかった以上、石破首相は常識的には辞任すべきところですが、なんと驚いたことに、石破首相は参院選から1ヵ月近く経過した現時点でも、辞めずに居座っています。石破氏は辞めない理由として、(とてもわかりやすくいえば)こんなことを述べています。

参院選には負けたけど、それでも自民党は比較第1党だったし国際情勢も厳しいし地震が来るかもしれないから辞めないよ。国政に空白を作りたくないから」(『石破首相が居座りたければ自公維連立くらいしかない?』等参照)。

なかなかに、斬新な理由付けです。

いちおう真面目にツッコミを入れておくならば、いつ来るかわからない地震を理由に「俺は辞めないぞ」というのも強烈ですが、国民から信を得ていない人物が首相に居座っていること自体、むしろ大災害に際しての政府の対処機能を低下させることにもつながりかねないところでしょう。

本日以降議論が本格化?「前例のない臨時総裁選」

ただ、これについては現在、自民党の側において、石破首相をなかば強制的に辞めさせるための手続が進んでいることも事実です。

前例なき臨時総裁選巡り自民選管が初会合開催へ=今週』でも取り上げたとおり、自民党の総裁選の選挙管理委員会は19日(つまり本日)にも会合を開き、自民党の党則に従い臨時総裁選を実施すべきかどうかをどのように確認するかを議論するようです。

これに関しては時事通信が18日付でこんな「続報」も出しています。

総裁選前倒し巡り議論スタート 自民選管、19日会合 意思確認の時期焦点

―――2025/08/18 21:12付 Yahoo!ニュースより【時事通信より】

時事通信によると石破氏の退陣を求める旧安倍、旧茂木両派などの議員は、可能な限り早期に意思確認をスタートさせたい考えであるのに対し、党幹部は18日、意思確認は8月末に取りまとめる参院選の総括を踏まえた上で実施すべきだとの認識を示した、などとされています。

そのうえで時事通信は「報道各社の世論調査では内閣支持率が上昇し、首相の続投を支持する声が強まる傾向にある」、などとしていますが、これは報道として明らかな蛇足でしょう。

そもそもその報道各社の世論調査とやらが正しいかどうかもよくわからないからです(※ただし、これについてはまた別途、当ウェブサイトでは議論したいと思う次第です)。

焦点は172人が賛成するかどうか

さて、あらためて党則を読んでおきましょう。

自由民主党党則第6条第4項

総裁の任期満了前に、党所属の国会議員及び都道府県支部連合会代表各一名の総数の過半数の要求があったときは、総裁が任期中に欠けた場合の総裁を公選する選挙の例により、総裁の選挙を行う。

党則第6条第4項をそのまま当てはめたら、自民党所属国会議員(議長を除けば衆院195人、参院100人)と各都道府県連会長(47人)の合計342人の過半数である172人が要求した場合には、石破氏の自民党総裁としての任期(2027年9月)よりも前の段階で、臨時総裁選が行われるはずです。

ただ、これについては「172人が総裁選を要求している」のかどうかをどうやって確認するかがポイントであり、まずはその方法を議論するのが本日の会合の目的なのだとか。

いずれにせよ、自民党内でこうした無駄な手続きが発生していること自体、石破首相が素直に辞めずに居座っていることが諸悪の根源であり、その意味で、石破氏が居座ることにより、すでに政治の停滞は生じてしまっている格好です。

仮にこの「172人要件」が満たされる可能性が高いのだとしても、先ほどの時事通信の報道通りなら、執行部はできるだけ総裁選の実施を先延ばしするために、意思確認をチンタラ行うことで時間稼ぎをするなど、政治の停滞がさらに長引くおそれもありそうです。

小林鷹之氏の警告

さて、それはともかく、現時点であまり予断めいたことは述べるべきではないにせよ、個人的には自民党が臨時総裁選を決定する可能性はそれなりに高いと考えています。

そもそも石破体制を続けるにしても、衆参両院で過半数を制していない状態であらゆる法案が停滞する可能性があるわけですし、現状を打開するための衆院解散・総選挙を選ぶにしても、選挙に弱い石破氏のもとで自民党が勝てる見通しもありません。

もし自民党議員らが常識的な判断を下せる人たちなのであれば、一刻も早く石破氏を引きずり降ろす以外に選択肢はありません。

こうしたなかで目に付いたのが、こんな話題です。

昨年の自民党総裁選にも出馬したことで注目された小林鷹之衆議院議員が土曜日、フリージャーナリストとなった反町理氏が主宰するネット番組『反町理のソコが聞きたい』に出演。動画の20分目以降で、こんな趣旨の発言をしたのです。

  • (石破首相は参議院での)『改選過半数』という、ある意味では低い目標を、必達目標とおっしゃった」。
  • その目標すら達成できなかった以上、組織の在り方としてトップが責任を取らないと、組織のガバナンス上問題を残すことになる」。
  • (ただし)『退陣』という言葉は使いたくない。(石破氏を総裁から)引きずりおろすとなれば世界に対しそれがどう見えるか」。

すなわち、参院選敗北の責任を取って組織のトップである石破氏が自ら身を引くべき、とするのが小林氏の見解であるとともに、その石破氏が自民党のトップであるとともに日本のトップでもあるという状態で、そのトップを「引きずりおろす」ことには慎重であるべきだ、とするのが小林氏の主張だと考えて良いでしょう。

「今ならギリギリ名誉ある撤退が可能」

そのうえで、小林氏は、こんな趣旨の見解を述べたのです。

石破総裁ご自身の名誉のためにも、ご自身で決断をしていただくことが望ましい」。

意訳すれば、「今ならギリギリ、名誉ある撤退が可能だ」、「自ら身を引くことを決断すれば、自身の名誉を守れる」、「今決断しなければ自民党は『あんたじゃダメだよ』と宣告することになる」、という警告でしょう。

まさに、正論です。

ただ、小林氏の警告は正論といえますが、その反面、こうした正論が通用する人物であれば、石破氏はとうの昔に辞意を表明していたでしょう。逆にいえば、石破氏はこれまでの自民党総裁とはまったく異質の人物だ、ということです(もちろん、「悪い意味で」、です)。

そして、このままでいけば、(現時点ではあくまでも著者自身の観測も含めて、ですが、)かなり高い確率で自民党総裁選に突入していくでしょう。

もちろん、党則の規定上、石破首相本人も臨時総裁選に出馬が可能ですが(著者私見)、そのためには石破氏が20人の推薦人を集めることが必要です。果たしてこれだけの推薦人をもう一度集めることができるのでしょうか?

そして、臨時総裁選が可決されるということは、国会議員と都道府県連会長の合計の過半が石破氏に「お前じゃダメだ」と判断を下した、ということを意味しますので、石破氏が第1回投票、決選投票を勝ち残れる可能性は極めて低いでしょう。

つまり、石破氏は自民党結党以来、任期半ばで自民党の手続に従い辞めさせられた初めての総裁となる可能性が高いのであり、史上最高の宰相と名高い安倍総理と比べられる形で、後世に記憶される情けない首相となる可能性が高い、ということでもあります。

石破氏の居座り劇からの教訓

ただし、今回の石破氏の居座り劇、考えようによっては石破氏だけの話ではなく、自民党全体、あるいは世の中全体の話だ、といういいかたもできるかもしれません。

そもそもこうした往生際の悪い人物を自民党総裁に選んでしまったこと自体、昨年の総裁選で石破氏に投票してしまった189人の国会議員の責任でもあります(想像するに、この189人は新聞やテレビの報道、官僚機構などの情報が絶対的に正しいとでも勘違いしているのではないでしょうか)。

ただ、石破氏のような人物に総裁選で投票してしまった189人は、ちょっと新聞やテレビといったオールドメディアや官僚機構などから距離を置いて、冷静になる必要があるのではないでしょうか。

そもそも論ですが、新聞、テレビなどのオールドメディア、あるいは官僚機構などが正しい情報を流していると信じている人は、ネット世代では少数派でしょう。

こうしたなかで、石破首相を支持している人が、(状況証拠に照らせば)おそらくは高齢層に極端に偏っているという状況は、今後、自民党が再生していくためのヒントを示しています。

「有権者が望む政策を打ち出さない限り、今後、自民党は選挙で負け続ける」、ということです。

ちなみにこの「有権者が望む政策を打ち出さない限り選挙で勝てない」というのは、べつに自民党に限った話ではありません。最大野党である立憲民主党、あるいは直近の参院選で大躍進した参政党、国民民主党といった政党、さらにはその他のすべての政党にも、同様に成り立つ話です。

有権者が現在、何を望んでいるのか。

それに真摯に向き合うことでしか、自民党が再生する可能性はありませんし、また、「有権者に真摯に向き合え」、は、自民党を倒して自分たちこそ政権の座に就きたいと願うすべての政党にも同様に成り立つ話である、という点については改めて指摘するまでもないでしょう。

新宿会計士:

View Comments (27)

  • 世の中には、絶対に謝ることが出来ない人、絶対に自分の間違いを認めることが出来ない人がいます。石破総理も、このような人ではないでしょうか。
    蛇足ですが、(年齢に関係なく)石破総理は、すでに老害になったのではないでしょうか。もしかして、石破総理は、超法規的に自民党前倒し総裁選を拒否するかもしれません。

    • 毎度、ばかばかしいお話を。
      朝日新聞:「もし石破総裁に自民党前倒し総裁選の推薦人20人が集まらなくても、総裁選に出すべきだ」
      ありそうだな。

      • どうも公明党を介して中国共産党があの手この手で石破政権存続をしているようですね。(高市つぶしも岸田に指示したようです)

        私もこの情報はにわかに信じてませんでしたが、実はかなり真実のようです。

    • 日本の政界で、リベラル勢力が細くなってきたので、穏健保守(?)もリベラル扱いされるようになったのではないでしょうか。そういえば、自民党も英語ではリベラル派でしたっけ。

      • 日本のリベラルと言う呼称は世界のリベラルとは意味が真逆ですから。本来リベラル(自由主義)とは減税と福祉の縮小を柱とした小さな政府を目指します。減税下で、富を増やすも、低福祉で死ぬのも個人の才覚責任であり自由です。コレに対するがソーシャリズム(社会主義)重税とそれによる手厚い福祉の大きな政府を主張します。で、源自民は重税と低福祉しか提供しておらず、野党は野党で減税と手厚い福祉と言う矛盾した内容を主張する馬⭕️ばかりです。本当に日本の政治は腐敗している。

    • >絶対に謝ることが出来ない人、

      特亜には向こうから言われなくても簡単に頭を下げますよ。

  • >こうした正論が通用する人物であれば、石破氏はとうの昔に辞意を表明していたでしょう。

     人知を超えた存在です。さっさと星に帰れ!

  • 入れた189人がリベラル新党作ればいいんですよ。自民党は改憲を目指す政党。

  • > 石破総裁ご自身の名誉のためにも、ご自身で決断をしていただくことが望ましい
    もうこの段階はとっくに終わっていると思いますよ。本人辞めないって言ってんですから、最後のチャンスなど必要ないでしょう。引きずりおろすだけです。
    逆に、辞めない人にこんなことを言う小林は、続投容認派としか見えないです。

  • >「有権者が望む政策を打ち出さない限り、今後、自民党は選挙で負け続ける」

     有権者が望む政策=ポピュリズム らしいですからね。詰んでます。

  • >石破総裁ご自身の名誉のため?
    こんな卑怯な男に名誉の機会を与える必要があるのか?
    と、私は思いますけれども。
    自民党、ウダウダしてないで、とっとと総裁選しろ‼️
    と、多くの国民の皆さんは思っておられるのでは?
    ただ、反自民左派界隈の方々は石破さんを熱烈歓迎のようですね。
    これはこれで中々面白い社会現象だと思います。

  • 悪い意味で歴史に残るだけなので「名誉なき撤退」では。
    自民党総裁選は冷ややかな目線で結果を見るしかない。
    安倍総理の時代が自民党上振れ、石破総理の今が下振れだとすれば、その中間ぐらいが期待値かなぁ。
    小泉氏になったら石破氏より悪いと言われることはなさそうだが選挙で勝つために大衆迎合して思い付きを拡散しそうで結果さらに負けてもおかしくない。
    そうなっても粛々と選挙に臨むぐらいの気持ち。

  • セブンに変身できなくなった団隊員こと石破首相の後継者はやはり小泉JRかこばホークかな?若い人に託すしか?
    旧安倍派の幹部は退場してください。

    • 財務省の手先と言われている?らしい?コバホーク
      能無しの只のア◯ウと言われている?らしい?小泉の小僧
      石破さんの後釜にこれでいいのか?自民党
      と、思ってしまってはあきませんかね?
      「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理を表す。」
      そろそろ引き時では。

  • まあこれから引きずり降ろすので、「言ったよね?」という証拠はたくさん残すに越したことはないですわね。

    反町氏のチャネル、力作が揃ってますけど1本が長いので、テーマに沿った短いダイジェスト版もあるといいんですけどね。無編集版はもちろんあった上で。(あっちに書けと)

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