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自民党が再生する「唯一の方法」

政治家の本分は「良い政策を立案して実行すること」にあります。2度の国政選挙で惨敗し、自公両党を衆参両院で過半数割れに追い込んだ石破茂政権を巡って、なぜかいくつかのメディアの世論調査では「続投」への支持もみられるようですが、それでも石破政権の「続投」はあり得ない話ですし、もっといえば、自民党が再生するためには良い政策を立案し実行する以外にありません。もっとも、選ぶ後継総裁によっては比較的考えが近い政党との連携もあり得る話ではないでしょうか。

時事通信調査では首相辞任反対が賛成を上回る

時事通信が14日に報じた同社の世論調査では、内閣支持率が前月比7ポイント近く上昇するとともに、石破茂首相の辞任「反対」が「賛成」を上回ったことなどが、ネット上でちょっとした話題となっているようです。

内閣支持6.5ポイント増の27.3% 首相辞任、反対が上回る―時事世論調査

―――2025年08月14日17時00分付 時事通信より

時事通信によると、参院選の結果を受けて首相が「辞任すべきか」については「思わない」が39.9%で「思う」の36.9%を(小幅とはいえ)上回ったのだそうです。

ただ、これが話題となっている理由はおそらく、石破氏に対する「辞めるな」という世論が多数を占めていることへの肌感覚としての違和感ではないか、という気がします。

昨日の『石破氏巡る「TICAD花道論」』でも触れたとおり、主要メディアの中ではすでにNHKが石破首相の「続投論」に関する世論調査を公表しています。

石破内閣「支持」7ポイント上がり38%「不支持」45% 世論調査

―――2025年8月12日 19時00分付 NHK NEWS WEBより

NHKの場合はすでに種明かしがされている

選挙で惨敗しているのに支持率が上がるというのも極めて不自然ですが、それ以上に印象的なのが、こんな記述です。

石破総理大臣が参議院選挙の敗北後、続投の意向を示していることへの賛否をたずねたところ、『賛成』が49%、『反対』が40%

すなわち、NHKも時事通信も、どちらの調査によったとしても、世論の多数は石破首相の続投に「賛成」している、ということです。

しかしながら、すでにネット上では「種明かし」がなされているとおり、NHKの調査に関していえば世論調査の対象者は(現実の有権者の年齢構成と比べて)高齢者に大きく偏っており、また、現実の有権者の年齢構成に補正すれば結論が逆転することが判明しています。

弁護士で日本公共利益研究所主任研究員でもある楊井人文氏のポストを再掲しておきましょう。

なかなかに驚く話です。

今回の時事通信の調査も、もしかすると、このNHK世論調査のような年齢構成の偏りなどが存在していたりしないでしょうか?

気になるところです。

政党支持率で見たら立民は4番手に!

ただ、それと同時に世論調査というものは質問の方式、尋ね方、質問の順番などによっても変化します(時事通信の場合は電話ではなく、今月の調査に関しては全国18歳以上の2,000人を対象に個別面接方式で実施しており、有効回収率は56.9%だったと記載されています)。

このため、「最も確実な世論は選挙である」という鉄則に照らすならば、衆参双方で自民党が(公明党とあわせて)過半数を喪失した状況は、「世論の多数が石破首相の続投に賛成している」という調査結果を正当化するものではありません。

というよりも、『居座る石破氏を臨時総裁選で降ろさないと自民は終わる』などでも指摘したとおり、自然に考えて、石破首相の続投は自民党にとって、選択肢としては「あり得ないもの」です。

実際、今回の時事通信の世論調査で注目したい箇所が、政党支持率です。

これを上位順に並べると、なかなかに驚く結果が出ています。

政党支持率 時事通信(8/8~8/11)
  • 自民…15.7%(▲0.7)
  • 参政…*7.6%(+2.9)
  • 国民…*6.8%(+3.7)
  • 立民…*5.5%(+0.0)
  • 公明…*3.7%(+0.6)
  • 維新…*2.4%(+0.9)
  • 共産…*1.8%(+0.2)
  • 保守…*1.6%(+0.5)
  • れ新…*1.5%(▲0.6)
  • 未来…*0.6%
  • 社民…*0.5%(+0.2)

(【出所】時事通信記事)

支持率トップは自民党ですが、15.7%しか支持がなく、内閣支持率(27.3%)と合わせた「青木率」は43%で、「危機水準」とされる50%を大きく割り込んでいます。

また、2番目が参政党、3番目が国民民主党で、それぞれ7月の調査と比べて3~4ポイント近く上昇しており(まるで参院選の結果を受けて慌てて修正したかにも見えるのですが、気のせいでしょうか?)、対し最大野党で国会で2番目の勢力を持つ立憲民主党が4番手に沈んでいます。

自民、立民、維新はいずれも政策が拒絶されたのでは?

なんとも興味深い話です。

著者自身の私見も交えて申し上げるなら、自民党の支持率が低調であるのは「政治とカネ」の問題が原因なのではなく、単純に「減税を拒否したこと」が原因であり、また、立憲民主党の支持率が低調なのも、例の「年金流用法案」に同党が加担したことを有権者が拒絶しているだけの話ではないでしょうか。

さらに、かつては立民を上回り支持率で2番目に浮上していたこともあった日本維新の会が、今回の調査では(前月と比べ支持率はいくぶんか持ち直しているにせよ)6番手になっているのも、同党が前原誠司・共同代表(当時)のもとで「手取りを増やす」「ガソリン減税」を叩き潰したことが響いているのかもしれません。

もっとも、自民党がここから大きく復活するヒントもあります。

「次期首相」高市氏トップ 自民支持層では石破氏 時事世論調査

―――2025/08/14 17:02付 Yahoo!ニュースより【時事通信配信】

同じく時事通信の調査によると、「高市早苗総理大臣」への待望論が高まっているのだそうです。

石破首相の続投への支持が不支持を上回っていながらにして高市総理待望論が高まっているというのもなんだかよくわかりません。

ただ、自然に考えて、政治家の本業は「必要な法制度を作ること」、「現在の法制度をより良い姿に変えて行くこと」にある、という原点に立ち返るなら、自民党が復活する唯一の方法も、国民・有権者の不満に耳を傾け、経済などに関する正しい知見に基づいて適切に行動する以外にありません。

適切な後任総裁を選べるかが最初の試金石

現時点で「高市総理」が実現するのかどうか、あるいはそれが実現したとして、高市「総理」が正しい外交・安全保障戦略、正しい経済政策を立案し実行するかどうかは見通せません(なにせ自公は衆参両院で過半数を割っています)。

しかし、可能性の議論だけをするならば、「石破政権には絶対に協力しない」と公言している国民民主党の玉木雄一郎代表も、高市「総理」であれば態度を軟化させるかもしれませんし、維新や参政など、自民党と比較的支持層が近いと思われる政党の協力を取り付けられる可能性もゼロではありません。

このように考えていくと、自民党が再生する道のりはけっして平坦ではありませんが、「適切な政策を立案して実行する」という政党としての原点に立ち戻る以外に再生の可能性はなく、また、それをすることが再生への近道でもある、という点については指摘しておく価値があるでしょう。

その意味では、自民党の最初の試金石は、石破総裁をとっとと引きずりおろして適切な後任総裁を選べるかどうかにあることは間違いないといえるのです。

新宿会計士:

View Comments (14)

  • 論者が幾つもの理由を挙げていますが、高市総裁誕生を歓迎しない理由がある勢力はまだまだ多くいます。しかも、ここ数年の選挙の結果、総裁選挙で高市氏を選択すると思われる自民党議員の多くは元議員にさせられてしまいました。
    多勢に無勢。高市氏と共に行動するであろう同志の衰退。
    既に手遅れ感漂うのが、中道右派有権者から見た今の自民党だと思います。

  • 明日先の大戦の反省を石破さんは述べるそうですが、

    まずは、ご自分の言動がこれだけ変わることを反省しましょう。

    それがまず一歩、再生への道

  • 石破茂総理がお辞めになることが自民党再生の第一歩。あとは文部科学省と統一協力を解体させること

  • 数年前には保守感出してた党がこの体たらく
    これじゃ安心して支持できないわね

  • 自民党が復権するには総裁選の結果だけでなく解散総選挙で大勝するぐらいできないと何も主体的にできず存在感が薄くなるから過去の状態に戻るのはなかなか難しいという印象。
    仮に自民党がなんちゃって保守政党から以前の状態に戻ったとして、既に他の選択肢に流れてしまった今の現役世代が自民党を過去と同じように支持するだろうか?
    悪夢の民主党政権はわかり易く駄目すぎたから自民党が復権できたけど地道に優れた政策を提示し続けるしかなさそう。

    • 少数与党の自民党政権が、政権・国会運営で野党の協力を取り付けるために、参院選で支持を集めた手取りを増やす、日本人ファーストといった要求に対応すれば、それは野党の手柄になって、次の解散総選挙でも議席を大幅に増やす支持要因になるでしょうから、自民党の支持は戻らないでしょうね。
      実は現役世代の切実な声に応えられない老舗政党であることがはっきりした。生活が苦しいという国民の声に対し、消費税を守り抜くと応じる集団です。
      立憲民主党、日本共産党、公明党などと同じグループの衰退政党であることがはっきりした。積極的に支持されるのではなく、リベラル政党はイヤ、国民も参政もイヤ、という消極的選択で支持される政党でしかなくなった。そういう意味では、コア支持層のいる立憲他よりも政党としてさらに問題は深刻かもしれない。
      トランプ大統領のような日本ファーストという柱で政策、政権運営を掲げる党首が現れないと、非リベラルの一政党に没落していくでしょうね。そして西欧のような多党化の時代に入っていく。

  • 今日までに引きずり降ろさず今後も日本に謝罪を繰り返させる石破声明出させた段階で自民党は負けでしょう。
    覆せるとしたら高市総裁コースのみで、他の総裁だったら社会党路線でしょうね。何しろここ数年の左傾化で政権担当能力もろくに無くなっちゃったし。

    • >今日までに引きずり降ろさず今後も日本に謝罪を繰り返させる石破声明出させた段階で自民党は負けでしょう。

      激しく同意します。生きている限り、もう自民党には投票しません。

  • 与党が勝つ方法はただ一つ。
    経済を良くするです。
    経済的に不満がなければ、大体の人は現状をわざわざ変えようなどと考えないものです。
    で、経済を良くする方法は簡単で失業率を下げて緩やかなインフレにする事です。
    安倍総理がやってきた事です。
    しかし、石破総理は安倍総理のやり方は真似したくなさそうですし、安倍総理の否定から入ってるのでこの現状はむべなるかな。

  • 自民党の再生は、日本の具体的なエクイティストーリーを国民に向かって話せる議員が出てくるかどうかだと思います。ジバン、カンバン、カバンが充実して選挙に強いだけの議員の集団になってしまった感じで、国民を鼓舞できるような迫力がある人物がいないように思います。SNS時代になって、議員本人の能力も国民にバレてしまう状況で、選挙を取り巻く外部環境が変わってしまったと考えますと、議員本人の戦略やケイパビリティを早急に見直す必要がありそうです。

  • 自民党を見ていると、レッド/ブルーオーシャンという言葉を思い起こす。
    昔の自民党は保守という競合相手のいないブルーオーシャンにいました。票は入れ食いだったと思います。
    岸田・石破の時代に自民党は勝手にリベラルに向かって進んだ。オールドメディアという間違った羅針盤に従った結果でしょう。
    しかし、リベラルの世界は多数の競合(立民、国民、共産、れいわ、、)がひしめくレッドオーシャンです。おっとり刀で自民が来ても、票なんか入れてくれる人はいない。ただ、オールドメディアの受けはよくなるので、内閣支持率は高い。ただ、選挙はボロボロ。
    そうこうしているうちに本末のブルーオーシャンは参政・保守などに占拠され始めている・・・・。
    自民党の復活は難しいでしょうし、別に復活することが望ましいとも思いません。新しい住民が新しい世界を作っていくでしょう。

    • たしかに。
      昔は保守政党を新しく作っても自民党より保守はパイが小さすぎた。
      けど、今は自民党が左翼よりになったので 保守のパイが大きいところが取れるようになったのがデカイですね。

  • 役人は政治家の言うことを聞かず
    政治家は国民の言うことを聞かず
    国民は役人と政治家に従う

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