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石破総裁解任の2つのアプローチ

産経ニュースの「独自」報道によれば、23日の会談では麻生太郎総理が「石破自民党では選挙に勝てない」とし、石破首相に「対応をすべきだ」と要求したそうです。石破首相の「私の出処進退については一切話は出ていない」とする発言とは猛烈に矛盾しますね。それはともかくとして、この際、両院議員総会での解任と党則第6条第4項による臨時の総裁選の違いについても整理しておきましょう。

自民重鎮が石破首相に「出処進退を要求していない」?本当?

当ウェブサイトでは参院選終了後、連日のように石破茂首相の進退についての話題を取り上げています。

といっても、少なくともこれまでの報道などから判断する限り、現時点において、石破首相が自ら「辞める」とは述べていません。昨日はいくつかのメディアが「石破首相、退陣」と報じましたが(『複数メディアが「石破首相退陣表明」観測を報じ始める』等参照)、石破首相本人がこれを直ちに否定しているほどです。

これについては、どう考えれば良いでしょうか。

状況証拠からして、著者自身は石破氏の周囲、とりわけ自民党の重鎮らは、石破氏に対し自ら身を引くようにアドバイスを出したのではないかと考えており、これについて述べたのが、今朝の『【仮説】総理経験者との面談は「最後通牒」だったのか』です。

石破首相は23日、麻生太郎総理大臣、菅義偉総理大臣、そして岸田文雄・前首相の3人の「総理大臣経験者」と会談したものの、記者団に対し「私の出処進退については一切話は出ていない」などと述べ、3人の重鎮からは退陣を迫られなかったと述べた、というのです。

ただ、これについては今朝も説明したとおり、(あくまでも著者自身の憶測ですが)重鎮側は石破氏に対し、言葉を選びながら「自ら身を引け」と伝えたものの、石破氏の側はこれを理解できず、「自身の出処進退については一切話が出なかった」と勘違いしたと考えると辻褄が合います。

産経の報道だと麻生総理が石破氏に「対応すべき」

では、なぜ石破氏は「自身の出処進退については一切話が出なかった」と述べたのでしょうか。

その理由もおそらくは簡単で、石破氏が重鎮の発言を理解できない程度に頭が悪いからではないでしょうか。

それはともかくとして、当ウェブサイトの「石破首相の頭が悪すぎて重鎮の引退勧告を理解できなかった」とする仮説が間違っていないことを示す有力な証拠が、ひとつ、出てきました。日付が変わった24日に、産経ニュースがこんな「独自記事」を出してきたのです。

<独自>麻生氏「石破自民では選挙勝てない」首相に進退迫る 岸田氏同調、菅氏分裂危機感

―――2025/07/24 00:58付 産経ニュースより

産経は「自民党重鎮」の話として、23日の会談の様子について、麻生総理が石破首相に対し、次のように迫ったと報じています。

石破自民党では選挙に勝てないことが明らかになった。対応をすべきだ」。

これが事実だとすれば、自然に考えて、麻生総理が石破首相に辞任を迫った、ということを意味します。

石破首相の「私の出処進退について一切話は出ていない」とする発言とは矛盾しますが、ただ、これも、麻生総理の「対応すべき」発言が「自ら身を引け」という意味だと理解できない程度には石破首相の頭が悪いからだ、と考えれば、一応の辻褄は合います。

これに加えて産経ニュースは、岸田前首相は「選挙の検証も大事だが、その後のシナリオも明らかにすべきだ」、「そうでなければ党内はもたない」などと述べたとし、また、菅総理も「党の分裂に強い危機感を示した」、などと伝えています。

どれも「石破さん、自ら身を引け」という直接的な発言ではありませんが、しかし、通常の理解力があれば、3人の総理大臣経験者が一致して「自ら身を引け」と婉曲に伝えていることは明らかでしょう。

両院議員総会に向けた動き

それはともかくとして、今回の石破首相の「居座り」は、「内閣総理大臣たるもの、自らを律し、自ら身を引くべきときに身を引く」という慣習的(あるいは紳士協定的)なルールが通用しない者が首相の座に就いてしまうことのリスクが表面化した案件であるといえるかもしれません。

正直、自民党にとって最も自然な流れは、選挙であれだけの惨敗を喫した以上、自民党総裁たる石破氏本人が引責辞任したうえで、自民党が新総裁を選び出し、辞任した石破氏やその石破氏を支えた元閣僚らを含め、新総裁のもとで自民党が一致団結することにあります。

じつは、これこそが自民党の最大の強みであり、また、過去に2度下野したにも関わらず、2度も与党に返り咲くという軌跡の根源です。

菅総理のいう「党分裂」とは、石破首相が過去の慣習的・紳士協定的ルールを破り、自ら身を引かずに居座ることで党がまとまらなくなるという危機意識ではないでしょうか。

こうしたなかで、本稿でもうひとつ紹介したいのが、同じく産経ニュースのこんな記事です。

退陣不可避、追い込まれた石破首相 「退陣報道」3度否定、表明すればレームダック化必至

―――2025/07/23 20:37付 産経ニュースより

こちらの記事では、石破首相が「続投困難な状況に追い込まれた」、「退陣は不可避な情勢だ」、などとしつつも、8月には広島・長崎の原爆忌や終戦の日の各式典、さらにはアフリカ開発会議(TICAD)などの「重要な日程が続き」、「日程に穴をあけられない」、などとする石破首相側の言い分が掲載されています。

ただ、ここで注目しておきたいのが、こんな記述です。

『重要な事項』の議決権を持つ両院議員総会の開催を求める署名集めの動きが麻生派、旧安倍派、旧茂木派を中心に水面下で始まった。首相サイドでは、署名数が開催要件の『所属国会議員の3分の1以上』に達するとの見立てが強まった」。

両院議員総会による自民総裁の解任

これについて産経の記事では、間接的に両院議員総会で自民党総裁を解任する、といった流れが紹介されていますが、これは、どういう意味でしょうか。

自民党党則第33条第1項には、こんな規定があります。

自由民主党党則第33条第1項

両院議員総会は、党の運営及び国会活動に関する特に重要な事項を審議決定するものとし、特に緊急を要する事項に関しては、両院議員総会の決定をもって党大会の議決に代えることができる。ただし、党大会の議決に代える場合は、構成員の三分の二以上の出席がなければ審議決定することができない。

おそらくこの党則第33条第1項に従い、両院議員総会の3分の2以上の出席をもって「とくに緊急を要する事項」として石破総裁の解任を決議する、という流れが、この産経記事の言いたいことではないでしょうか(※ただし、この場合、同第2項で党大会の承認が必要とされていますが…)。

個人的に、自民党の両院議員総会で「総裁の解任」が決議できるのかどうかはよくわかりませんが(おそらくその前例もないでしょう)、ただ、報道等から判断する限りは、どうやら一部議員の間では「両院議員総会での解任」は現実的な選択肢として挙がっているようです。

この場合は8月1日に召集が予定されている臨時国会に合わせて石破内閣が総辞職し、その場で臨時の首相を臨時に選び(自民党副総裁でもある菅義偉総理あたりでしょうか?)、改めて自民党総裁選を行って9月に再び新しい首相を選ぶ、といった流れが考えられます。

ただし、両院議員総会で総裁の解任が可能なのだとしても、この手続はあくまでも石破氏を「自民党総裁から辞めさせる手続」に過ぎず、石破氏の「内閣総理大臣としての地位」を失わせるというものではありません。

極端な話、石破首相が自民党総裁から解任されたにも関わらず、首相の座に居座る、といった可能性も考えられます。

第6条第4項による臨時の総裁選

ついでに、当ウェブサイトでこれまで説明してきた自民党の党則「第6条第4項」についても振り返っておきましょう。これは、「党所属国会議員および都道府県支部連合会代表各1名の総数の過半数」が求めたときに、総裁選を行わなければならない、とする規定です。

自由民主党党則第6条第4項

総裁の任期満了前に、党所属の国会議員及び都道府県支部連合会代表各一名の総数の過半数の要求があったときは、総裁が任期中に欠けた場合の総裁を公選する選挙の例により、総裁の選挙を行う。

この場合は同第2項に定める「総裁が任期中に欠けた場合の総裁公選」のルールを準用し、選挙を行う、というものです。

自由民主党党則第6条第2項

総裁が任期中に欠けた場合には、原則として、前項の規定により後任の総裁を公選する。ただし、特に緊急を要するときは、党大会に代わる両院議員総会においてその後任を選任することができる。

具体的には、どういう流れでしょうか。

これについて『総裁公選規程』第8条第1項によれば、選挙自体は総裁の任期満了の1ヵ月前までに、党本部管理委員会が決定・公表しなければならないとされていますが、「総裁が任期中に欠けたことにより臨時の総裁選を行う場合」に関しては、これが「1ヵ月前までに」、ではなく、「速やかに」、とあります。

総裁公選規程第8条第1項

総裁選挙の施行期日は、総裁の任期満了の一か月前までに(総裁が任期中に欠けたことにより臨時の総裁選挙を行う場合にあっては、速やかに)、党本部管理委員会が総務会の議を経てこれを決定し、公表するものとする。

そのうえで、党本部管理委員会が総裁選挙の施行期日を決定し、総裁選挙の告示日、候補者届出締切日、投票日などの選挙日程を定める(同第2項)のですが、その告示については「投票日の12日前までにしなければならない」、とする規定も設けられています(同第3項)。

総裁公選規程第8条第3項

総裁選挙の告示は、党所属国会議員の投票(以下「議員投票」という)の投票日の十二日前までにしなければならない。

ということは、告示してから投票日までは、逆算してどんなに早くても12日以上の日程が必要であり、仮にその「告示日」が7月25日(金)であれば、投票日は最短でもその12日後である8月6日(水)以降である必要があります。

これに加え、もしも「告示日」が7月28日(月)であれば、その12日後は8月9日(土)であるため、もし土日祝を避けるのであれば、投票日は8月12日(火)以降です。

時間的には早期解任は難しいのか?

現実には選挙日程その他の都合を考えると、やはり石破首相が発出を狙っているとされる「8月15日の戦後80年談話」を阻止するには、この「党則第6条第4項」アプローチだとスケジュール的には非現実的でもあります。

ただ、この「党則第6条第4項」アプローチは「両院議員総会」と比べ、時間がかかるという短所はあるにせよ、総裁を辞めさせるうえでの党大会の事後承認は必要ではないという長所もあります。

いずれにせよ、石破首相が「居座る」ならば、日が経つごとに自民党の党に対する信認は傷ついていくかもしれませんが、これに自民党の議員らがどう対応するのか、まずはしっかり見極めてみる必要があることは間違いなさそうです。

新宿会計士:

View Comments (31)

  • 80年談話を出したいからグダグダと居座ると聞こえてきました
    それにどうせ大した談話を出せないだろうから「すぐ辞める」のが最適とも
    この辺でしょうねえ
    無能な働き者が動き回るのは良くない。醜い。害しかない
    国政レベルで3連敗。
    挙句にあの社民党からも「責任を取らない党首はありえない」
    なんて言われてしまう
    鳥取県にこれ以上恥をかかせないで

  • 日本は世界的にも最高レベルの「High-context culture」社会であると認識しています。京都文化はその頂点なのでしょう。
    従って、他国から来訪する方々は須らく「Low-context culture」の社会に馴染んだ方々なので、その最前線に於いてはお互いの文化の違いを理解する事が現地化に向けての課題になります。
    石破氏は日本社会で活動する人には珍しく「Low-context culture」の人の様子。アタマの問題かもしれないが育ちの問題なのかも? と思いました。

  • なんだかですね。麻生氏が勝てないと言いますが、石破一人のせいとしか考えていませんね。自民党の問題は公明党といつまで連立でいくつもり。とか消費減税、外国人優遇処置、スパイ防止法、移民問題、NHKのスクランブル化、106万円の壁、企業団体献金など数々の問題を一つも解決せずに、放置していることにあきれた国民が下したのが今回の選挙だと思います。

    国民目線で政治をしない限り、子供みたいな石破が去って別の総理が誕生しても国民はもう振り返らないと思います。

  • 石破首相の対応を見ていると、多文化共生の難しさをつくづく感じますね。

    • 価値観が違う 言葉の通じない人がその国の宰相である事は(ほとんどの)国民にとって
      不幸である 

      異なる文化と共生する必要は十分に理解しても 常にマイノリティーを常に優先する必要
      なんて どう考えても歪んだ善意だと思う今日この頃

  • 2つめの記事から引用

    >総裁の座にしがみつき、自民議員が総会で解任を決議する内輪もめを演じれば「自民は国民にさらに見放される」(政権幹部)のは確実だ。

    まー、自民が負けたメカニズムはいろいろ考えられるんで一概には言えないですが、石破氏が居座るより降ろされた方が自民党への好感度は高まるんじゃないですかね。(笑)

  • まー自民党はんも『今般参院選の結果をうけて総裁解任に向かう両院議員総会』ならば“大概の議員”は『地元の理解を得るための地場回り』の為に『この週末を費やす必要も無い』情況ではナイカイナト思われまするので、『前倒し28日』などとノンビリやっとらんで『緊急前倒し26日』に両院議員総会ヤッチマウ位の速度感でも傍目には遅い位の印象ちゃうンかナ?
    どーせ馘キルならセッカク馘るンがイチバン効果的なタイミングをハカらな、グダる程コストレシオ悪なるで知らんけど

  •  なんだかんだで9月頃まで居座ったり、周りが疲れてあきらめたりそういう未来もあるような気がします。
     そのうち批判が激励に聞こえはじめるのです!

  • ホント、189人には猛省を!

    『石破氏の 振出す手形は 空手形(からてがた)』
    「担いだ神輿が軽すぎた」事例なのかもですね。

    ・・・・・

    続・石破伝説!!

    相も変わらず経済オンチ
    まさに首相が一番ウンチ
    バカな認識日本がピンチ
    そこで国民選挙でパンチ


    他責志向で同志にメンチ
    おはな畑の作法でランチ
    泥縄政策イカれたケンチ
    彼の中身は自民のアンチ


    引退勧告足りないニンチ(認知
    記者会見での狡猾トンチ(頓知
    過去の追及消ないゲンチ(言質
    麻生閻魔の右手にペンチ(舌抜き!)
    ・・。

      • 2024決選投票で石破茂に投票した国会議員というタイトルの有志の方が調査された表を自分の端末にダウンロードしています。この名前でググッても現在は検知できない様子。
        各議員の地元マス・メディア報道や本人発X情報等で調査されています。凡そ80人強の方々が載っています。
        同じく高市さんに投票した議員表版もダウンロードしました。
        地元議員は石破投票でこの表見てガックリきたものです。

    • ゴルァ!なんて書き込みを…

      バツとしてツイッターに晒してやるモン!

  • まあ、直近の火消し例で云うならば、

    破壊の女神を公認(内定)してしまった国民民主党が、引き返せなくなる前になんとか
    「エンガチョ(内定取消)」
    して、なんとか登り調子を消さずに済んだ事が、よい教訓でしょうかね。

    それにしても、手遅れかなあ。

    『寄生獣』的に云うなら、すでに寄生されている重鎮だらけだ!とこうもハッキリしてしまったのだし、寄生されてない人たちは露骨に粛清追放されて、もう息をしてない様子ですから。

  • 毎度、ばかばかしいお話を。
    石破総理:「神が総理を続けるように、お命じになった」
    まあ。神が「総理を辞めろ」と言っても拒否するでしょうけど。

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