石破茂首相が一種の「居座り」を決め込むなかで、自民党内で「石破下ろし」が発生するのかどうかについては気になるところです。こうしたなかで、自民党の「党則第6条第4項」が発動された場合は、石破氏を自民党総裁から解任することができるかもしれませんが、じつはそれで解くことができるのは「自民党総裁」としての地位に過ぎず、石破氏があくまでも首相の座に留まることは、「あくまでも法的には」可能です。この場合、いかなる混乱が生じるのでしょうか。
目次
「地震が来るかもしれないから辞めないよ」
『石破首相が居座りたければ自公維連立くらいしかない?』でも紹介したとおり、参議院議員通常選挙で自民党が公明党と合わせても改選後議席数で過半数を割り込むという大敗を喫したにもかかわらず、石破茂首相(自民党総裁)は居座るつもりだそうです。
石破首相の発言、ごく大雑把に要約すれば、「参院選には負けたけど比較第1党だし国際情勢も厳しいし地震が来るかもしれないから辞めないよ」、といったところですが、なんとも呆れた話です。
「いつ地震が来るかもわからないから辞めないよ」が通じるのなら、そもそも政権交代自体発生し得ませんし、「比較第1党になったから辞めないよ」、が通じるのならば、有権者としては「では次の選挙では御党を比較第2党以下にしてやろう」、で応じるかもしれません。
なにより石破氏自身がかつて、選挙に負けたときに安倍晋三総理大臣や麻生太郎総理大臣らに対し、「責任を取って辞めてほしい」と要求していたという事実を踏まえるならば、こうした石破氏の態度はダブルスタンダードそのものであり、なんとも情けない話です。
歴史的大敗受け、グループや地方組織からは退陣論も
そんな石破氏の態度に対し、いくつかのグループ、あるいは地方組織などでは、退陣論も強まっているようです。
たとえば石破茂氏の「自民党総裁」としての地位に対しモノを申す動きとしては、後述する「両院議員総会」などにおける辞職勧告などが考えられるのですが、これについてはたとえば旧茂木派で両院議員総会開催を求める動きも出てきています。
【速報】旧茂木派の中堅若手が両院議員総会開催要求
―――2025年07月22日 17時48分付 共同通信より
これに加えて個人的に調査した限りにおいては、いくつかの県で、自民党の県連、あるいはその県選出の国会議員などの間で、石破氏に対し辞任を求める何らかの動きがあるようです。
これらのなかには、現時点において、表立って動いているというものもある一方、そうでないものもあるため、石破氏の退陣を求める声が今後、うねりとなって党本部に押し寄せるのか、それとも立ち消えとなるのかについては、見極めが必要ではあります。
両院議員懇談会がそのまま両院議員総会になる可能性は?
ただ、その一方で、旧茂木派の動きなどを除くと、現時点において党本部の側で石破首相に対する強い批判の声が渦巻いているようには見えませんが、こちらについてはどう考えればよいのでしょうか。
そのヒントとなり得るのが、先ほども少し触れた両院議員総会です。これについては「両院議員懇談会」が行われるとする話題が参考になるかもしれません。
石破退陣論高まる中…31日に両院議員懇談会を開催 続投方針理解得られるか
―――2025/07/21 18:25付 Yahoo!ニュースより【テレ朝NEWS配信】
テレ朝その他のメディアの報道によると、参院選を受けた臨時国会を8月1日に召集するのに先立って、自民党が今月31日に両院議員懇談会を開催するのだそうですが、(あくまでも個人的な見方ですが)この懇談会が臨時の両院議員総会に格上げされる可能性があります。
自民党の党則第35条によると、衆参両院議員の3分の1以上から召集の要求があったときに、その要求があった日から7日以内に会長が両院議員総会を招集することとされているからです。
自由民主党党則第35条
両院議員総会は、会長が招集する。党所属の国会議員の三分の一以上から招集の要求があったときは、会長は、その要求があった日から起算して七日以内に、両院議員総会を招集すべきものとする。
両院議員懇談会にはその名の通り、両院議員が集まっているわけですから、その場で懇談会がそのまま両院議員総会に切り替えられ、その両院議員総会の場で石破茂総裁に対する「総裁辞任勧告」のようなものが出される、といった流れが可能性としては考えられます。
自民党の党則を読む限りにおいては、国会議員の3分の1以上の要求があった場合、両院議員総会の開催自体を総裁など執行部側が止めることはできません。懇談会が両院議員総会として自然成立する、といった流れ自体、さほどおかしなものではありません。
もし辞任勧告に石破氏が従わなければ…伝家の宝刀か?
もちろん、仮に両院議員総会が開かれ、その場でこのような勧告が出されたとしても、それはあくまでも勧告に過ぎず、石破総裁にはそれに従う義務などありません。
しかし、両院議員総会で出てきた辞職勧告には重みがありますので、もし石破氏がこれに従わなければ、次に考えられるのは、当ウェブサイトで先日からしばしば言及している、伝家の宝刀である「党則第6条第4項」の出番となるかもしれません。
自由民主党党則第6条第4項
総裁の任期満了前に、党所属の国会議員及び都道府県支部連合会代表各一名の総数の過半数の要求があったときは、総裁が任期中に欠けた場合の総裁を公選する選挙の例により、総裁の選挙を行う。
この条項は、自民党総裁が任期中であったとしても、「国会議員と都道府県支部連合会代表各1名の総数」の過半数が要求した場合、新しい総裁を選び出す選挙を行うことができる、というものです。
この第4項にある「総裁が任期中に欠けた場合の総裁を公選する選挙」は、第6条第2項に規定が設けられています。
自由民主党党則第6条第2項
総裁が任期中に欠けた場合には、原則として、前項の規定により後任の総裁を公選する。ただし、特に緊急を要するときは、党大会に代わる両院議員総会においてその後任を選任することができる。
この「党大会に代わる両院議員総会」、直近だと2020年9月14日、安倍晋三総理大臣(※故人)の後継者として菅義偉総理大臣(※当時は官房長官、現在は自民党副総裁)が選ばれた事例があります(なお、菅総理は石破茂・現首相や岸田文雄・前首相らを得票で圧倒しています)。
もちろん、現実的には、いわゆる「トランプ関税」が発動するとされる8月1日をまたぐなどするため、石破首相側は「トランプ関税への対応」を言い訳にして、これに全力で抵抗する可能性もありますが、逆に8月1日をまたいでしまえば、石破首相としては短期的に抵抗する理由が失われます。
(※本件について楽観は禁物であるものの、著者自身としては、トランプ政権がなんだかんだと理由をつけて関税の発動を先延ばしにする、といった展開を予想していたりもします。トランプ政権から見て石破政権は交渉するに値する相手ではないからです。)
いずれにせよ、両院議員懇談会からの両院議員総会、そこでの辞職勧告、そしてリコールという流れが、自民党内の手続としては非常に自然なものだといえるかもしれません。
法的に「居座り」は可能
ただし、こうした一連の動きは必ずしも円滑に進むとは限らず、むしろ、国政に非常に大きな混乱をもたらす可能性があることも間違いありません。石破首相があくまでも抵抗を決め込むならば、首相の座への「居座り」も、法的には可能だからです。
石破茂氏には「自民党総裁」としての側面と、「内閣総理大臣」としての側面があります。自民党党則第6条第4項で辞めさせられるのは「自民党総裁」としての職であり、「内閣総理大臣」としての職ではありません。
もちろん、自公両党は石破内閣から閣僚を引き上げる、といった動きに出るかもしれませんが、最悪の場合、辞職した大臣(あるいは石破首相が罷免した大臣)のポストを石破首相自身が兼務すれば、極端な話、石破氏ひとりでも「内閣」は成り立ちます。
(※余談ですが、1994年に当時の新生党の党首だった羽田孜氏が首相になったとき、紆余曲折あってたった1日ではありますが羽田首相がすべての閣僚を兼務する「一人内閣」状態となったことがある、という前例もあります。)
下手をすれば新総裁が選ばれるなか、石破首相が自民党総裁ではなくなったにもかかわらず、あくまでも内閣総理大臣として居座ることだって可能ですし、さらには一種の「自爆テロ」的な発想で解散総選挙をチラつかせて不信任決議案可決や首班指名選挙を行わないように牽制することだって考えられます。
これに対し、もしも自民党側が「現時点で解散総選挙をされても困る」と考えるならば、異例の少数与党ですらない内閣が存続しかねません(※もっとも、予算案なども一切通らないと思いますが…)。
あるいは(可能性は極めて低いものの)石破氏自身が立憲民主党に移籍し、左派政党などの支持を受けるなどすれば、(自公政権ではなくなるにせよ)「石破内閣」自体は延命させられなくもありません。
対抗策は内閣不信任決議案
もちろん、さすがに「立憲民主党・石破政権」は極論ではありますが、それでも石破首相の「自民党から離れての居座りリスク」は十分に想定されるところです。もしそこまで事態がこじれた場合、自民党側にはいかなる対抗策があるでしょうか。
真っ先に考えられるのが、内閣不信任決議案です。
自民党内で新総裁体制が発足すれば、その自民党が内閣不信任決議案を取りまとめ、他の野党と共同してその不信任案を可決させて首相の座から引きずりおろそうとする、といったシナリオも現実味を帯びてきます。
この場合は、最悪の事態(?)として、石破首相が内閣総辞職に応じず、解散総選挙で応じることもできますが、自民党としては新総裁体制の信を問うための選挙は歓迎でしょう。
もちろん、自民党自身がかつて地頭の総裁だった人物が首班を務める内閣の不信任案を出すというのも異例中の異例です。党総裁経験者が離党した事例としては、海部俊樹元首相などのものがありますが、さすがに現職総裁・現職首相の「非公認」は、自民党の歴史上、あまり例がありません。
ただ、ここまで極端な事態になった場合は、すでに自民党が新総裁体制となっているため、新総裁体制下の自民党が石破首相を「反党行為」として除名したうえで公認せず、それどころか石破氏の選挙区に「刺客」を送り込んでくる、といった対応策も講じるかもしれません。
もともとは石破氏が撒いた種
以上に示した「異例な対応」も、元はといえば石破氏自身が撒いた種でもあります。
昨年の衆院選、先月の東京都議選、今回の参院選と3回連続して敗北し、それでもなお辞職せずに居座っているというのは異常ですし、その石破氏自身がかつてときの総理大臣に辞職を求めていたこともあるという事実を踏まえるならば、厚顔無恥以外の何者でもないでしょう。
このように考えたら、自民党が異例の「党則第4条第6項」(リコール)を発動し、現職総裁を解任したうえで、最悪、そのまま反党行為で除名する、といった可能性があるのかどうか。
それとも自民党がリコールすらできずに石破首相と一緒にズブズブ沈んでいくのか。
今後の展開に注目する価値はありそうです。
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1 2 3 次へ »内閣不信任案を自民側から出すとしても、何時もは恒例行事みたいに同案を乱発していたのに、前回は日和って見送った立憲が同調しない可能性もあります。野党にとっては石破内閣が続いてくれた方が都合がいいのでは?
自民側が出すのであれば立憲の賛成は必要ないのでは?それこそ維新や国民民主が賛成すれば難なく可決すると思いますが。
内閣不信任案が出た場合、国民の目があるので、立憲も賛成せざるを得ないと思います。
……普通に考えたら。
しかし、昨今の石破氏を見るに、普通に考えたら、という考えがどこまで通用するのか疑心暗鬼になります。
『地頭の総裁』.....こりゃ、勝てぬ。
&鳥頭の野党第一党党首。
石破だから石頭のはず。
今回の論考。。。頭痛ものです。こんな阿呆を「国民に人気の石破議員」とわざわざ枕言葉をつけて言っていたマスコミ・メディア。マスコミ・メディア情報を真に受けたのか、岸田氏に怯えたのか190名近くの票を集め高市候補を落選させた同僚議員ども。同僚であるはずの同党保守右派議員を中心に同僚議員を次々と失職させ、石破氏に投票した議員の期待に応えるどころか予想を超えるかのような自民党破壊工作の実績を上げる石破氏。
「地震発言」を真顔で言う位の人ですから、今回例示されたような普通ならあり得ない仮説もあり得ると思えてしまうのが悲しい。
こういう人に権力を持たすとこうなる、という社会実験が目の前で行われているという気分です。
自民党が破壊し尽される前に地方一揆或いは中央保守右派一揆或いは両方の一揆を期待します。
はっきり言って、今の石破氏は「辞める勇気がない」のだと思います。もともと党内での基盤が強くなかった彼はメディアでの評判を頼りに支持を広げてきたので、それが崩れた今となっては辞任したら最期、長期的孤立は避けられず、政治生命を絶たれたも同然になるでしょう。
しかしながら居座っても状況は好転しないので、石破氏自身や自民党の今後を考えたら辞めるのが最善です。地震だの関税交渉だの言っていますが、今の石破体制ではどちらも対処できる状態ではなく、力を失った政権こそ政治的空白になります。
>力を失った政権こそ政治的空白
そのとおりです。
強い首相こそ国力を育てる。一日延命が伸びるごとに日本が弱って行きます。
自民党党員の組織自浄能力に一層注目が集まります。
民意が示されている(選挙大敗)にも関わらず、権力にしがみつく石破茂と言う男。1回くらいならまだしも、3回連続で。こういうのを独裁者、民主主義の破壊者と言って差し支えないんじゃないかと思う。
選挙結果を受け入れないのならば、中国共産党と何が違うのか。
安倍総理を独裁者だ、ヒトラーの再来だ、ナチス政権だと言っていたメディア知識人は、今こそ石破茂と言う男を糾弾するべきじゃないですかねぇー(棒)
今後の展開は難しいですね。何しろ常識が通用しませんから。
今日、麻生総理と会談と言う話もあるので、最後の説得かもしれません。
ここまでくれば、歴史に(悪い意味の)名を残してほしいと思う次第です。
地震を理由に内閣総理大臣の地位に留まり軍部(自衛隊)を掌握して最高指揮官でいつづける可能性もゼロでなさそうですね。その場限りの嘘をつく司令官です。
しかし志高く免状や辞令を受けた際に103代総理大臣石破茂だとシニカルな笑いが出でそうであります。
石破総理が国会議事堂に自衛隊を配置して立てこもり、非常事態宣言を発令して国家の全権を握って石破総統が誕生するという可能性もあるかもしれません。
“民意”に対しては鈍感力を発揮し続け、トランプ大統領からは逃げて己が恐懦は明後日が方に吠え、詭弁を弄したツモリで悦に入る…
居座りたい:自己満足優先したい
ソノタメに陣営ひいては国益翻って国民に害を為すコトは厭わず、自身は常に被害意識を隠さず周りのせいと愚痴る…
「ゴブリンか」
知らんけど
石破降ろしが失敗したとき、自民党反石破派(麻生派、保守派?)がどうするのか、楽しみでワクワクしてます。
石破さんが、後ろから打って失敗したときは、自民党から出て(追い出されて)いた時期があったと記憶しているのですが。
当然、反石破派は、石破さんほどクズではないので、失敗した場合の自らの進退を覚悟の上でのことだと思います。
そうでなければ、ただのガス抜きパフォーマンスかもしれませんね。
いずれにしても、その後の自民党は、どのように有権者から見られるのでしょうか?
JA様、私は石破が辞めるのは既定路線だと思います。
あとは「辞め方」だけじゃないかと。
最後まで駄々こねて権力にしがみついた挙句辞めさせられるのか、潔く身を引くのか、やけくその解散総選挙に打って出るのか。
個人的には、最初の「辞めさせられる」方向に行って欲しいと思います。
そのあたりを見ててもワクワクするかもしれません。
唖然としました。
利益の9割を上納金として持っていかれるとは、なんどもみじめなビジネス。努力の成果はい1割しか手元に残らないとは。そんな仕事には関わりたくないです。
普通の製造業の、手元に残る給与=人件費は売り上げの1割くらいです。