ウェブサイト9歳の節目で、ちょうど参院選の結果も出てきたところですので、あらためて当ウェブサイトの「事実と意見を峻別する」という考え方、オールドメディアとSNSの本質的な違い、そして「自由な言論と民主的な投票で世の中を変えて行く」というアプローチの有用性について、まとめておきたいと思います。
目次
ウェブサイト9年…やってきたことは「事実と意見の峻別」
少し前からお知らせしている通り、当ウェブサイトは今月、9歳の誕生日を迎えました。
当初から当ウェブサイトにてお伝えしてきたのは、「事実と意見の違い」、です。
フィクションなどの世界を別とすれば、情報には少なくとも2つの種類のものがあります。それが「事実」と「意見」です。当ウェブサイトの9年間は、この両者の峻別(しゅんべつ)に尽きるのではないかと思います。
といってもちょっと抽象的なので、具体例を出してみましょう。たとえば、先日投開票が行われた参議院議員通常選挙については、こんな具合です。
- 「今回の参院選での自民党の獲得議席は39議席で、2022年の63議席と比べ24議席減った。」
- 「今回の参院選は有権者の自民党に対する厳しい審判であり、2007年以来の再来だった。」
文章(A)と(B)は、どちらも同じような記事で見かけるものですが、じつは、情報の種類としてみれば、まったくの別物です。(A)は情報の書き手の判断が入っておらず、誰がどう書いてもだいたい同じような内容になる文章ですが、(B)は書く人によってはまったく違う内容になる可能性がある文章だからです。
主観的意見に対する異論の例
もちろん、参院選後のXなどSNSにおける反響、あるいはニューズ・サイトの記事や読者コメントなどを眺めていると、「自公合わせて改選後ベースでも過半数を喪失した」、という文脈から、「自民党が惨敗した」、などと報じるメディア、そういう感想を述べる人が大変多いことは事実でしょう。
ですので、せっかくなのでここでひとつ、異論の例を述べておきましょう。
著者自身に言わせれば、今回の参院選はむしろ有権者の評価の目が厳しい中で、自民党としては善戦したのではないかとも思います。
『石破首相が居座りたければ自公維連立くらいしかない?』でも述べたとおり、連立与党が参院側で過半数を失ったことは間違いないにせよ、あと数議席程度であれば、頑張って多数派工作をすれば、なんとか挽回できるレベルではあります。
自民党がもしも石破首相を辞めさせることに成功し、後任の総裁が「安倍路線」に戻るなどし、自民党が支持を回復していけば、その過程で野党から自民党に数名程度であれば議員を移籍させることができる(かもしれない)からです。
視点をずらすと面白い
さて、異論ついでにもうひとつ考えておきたいのが、「視点をずらす」という考え方です。
この「大型国政選挙と与党の議席」というテーマだと、忘れてはならないのが「最大野党の動向」です。
今回の参院選については自民党が注目されているフシもありますが、個人的にはむしろ、「最大野党」である立憲民主党が、党勢を拡大させるまたとないチャンスにも関わらず、現有勢力と同じ22議席の獲得に留まったことにも注目してはどうかと思います。
しかも、立憲民主党の22議席のうち1議席は東京選挙区でしたが、これも印象的です。
というのも、東京選挙区の本来の改選数は6議席のところ、欠員補充のため7議席が争われたのですが、立憲民主党はその東京選挙区で7位に滑り込み1議席を何とか確保したに過ぎないからです。下手をすると立憲民主党は東京選挙区で議席ゼロだった可能性すらある、ということです。
しかも7番目の当選者は任期が2028年までの3年ですので、現実には立憲民主党は「21.5議席」だったという言い方もできます。
2007年の参院選といえば自民党が37議席しか取れずに惨敗し、当時の最大野党だった民主党が60議席を獲得したのですが、今回の参院選はたしかに自民党が39議席しか取れなかったものの、最大野党である立憲民主党は「21.5議席」(?)しか取れなかったわけです。
そして、立憲民主党が伸び悩んだ部分をかっさらっていったのが国民民主党であり、参政党であったのだ、などと考えると、先ほどの(B)の文章も一面的に過ぎるような気がします。
いずれにせよ、この例でもわかる通り、当ウェブサイトでは「客観的に確認できる事実」と「その事実をもとにした主観的な意見」は明確に峻別(しゅんべつ)すべきだと考えており、この9年間、その方針で運営してきたつもりです(※もっとも、それが本当に実践できていたかどうかは別問題ですが)。
オールドメディアの退潮の9年間
さて、この9年間で、やはり最も大きく変わったことがあるとすれば、それは新聞やテレビを中心とするオールドメディアの退潮です。
ただ、これも当ウェブサイトで長年指摘し続けてきたとおり、オールドメディアが廃れていくのは、ある意味で必然です。なぜならば、オールドメディアには、この「事実と意見の峻別」ができていないからです。
インターネットがなかった時代、私たち一般人が情報を入手する手段は、もっぱら新聞とテレビでした。
人々は家に帰ったらテレビを点けて、音楽番組を見たり、ドラマを見たり、ニューズ番組を見たりして過ごしたものですし、どこの家でもたいていの場合は新聞を取っていて、社会人一年目の人は、先輩や上司から「新聞を読め」と指導されたものです。
ところが、この9年間で、オールドメディアの社会に対する影響力が、みるみるうちに減っていったのです。いうまでもなく、スマートフォンなどの便利なデバイスが普及し、インターネット環境が社会の隅々にまでいきわたったからです。
2007年の参院選(ないしは2009年の衆院選)と、今回の参院選(ないしは昨年の衆院選)は、自民党が大敗を喫したという意味では表面的には大変良く似ていますが、きわめて大きな違いがあるとしたら、選挙に大きな影響を与えたのがオールドメディアか、ネットか、という点です。
とりわけ2009年の総選挙はオールドメディアがこぞって政権交代をあおり、自民党の良い政策を隠蔽(いんぺい)し、やたらと民主党を持ち上げる報道を行っていました(『先祖返りする立憲民主党、今度の標語は「変えよう。」』等参照)。
これに対し、今回の選挙では、決定的な影響を与えたのは間違いなくSNSであり、そのSNSには明確な司令塔が存在しません。山手線の駅名を関した怪しげな自称会計士がXで「お前が自民党の下野を煽っている張本人だろう」などと批判されることもないではありませんが、そんな影響力、個人にあるわけがありません。
著者自身はここに、有権者の漠然とした「意思」のようなものがあるのではないかと考えています。
テレビ出演者の発言が即時ネットで反論される時代
つまり、2007年から2009年の選挙では、新聞やテレビといったオールドメディアが「意思」を作り、さもそれが国民世論であるかのごとくメディアでさかんに宣伝したのですが、2024年と2025年の選挙では、こうしたオールドメディアの「意思」が国民世論となることに失敗したのです。
こうした仮説を立てたうえで、紹介しておきたいのがこんな話題です。
「国民を馬鹿にしている」玉川徹 参院選高投票率への“苦言”に疑問の声続出
―――2025/07/21 17:43付 Yahoo!ニュースより【女性自身配信】
これはコメンテーターの玉川徹氏(※記事原文では「玉川徹」と呼び捨てにされています)が21日のテレビ番組に出演した際の発言を巡り、「波紋を呼んでいる」とするものです。
『女性自身』によると玉川氏は、今回の参院選で投票率(※放送当時の推定)が前回と比べ5ポイント上昇したことを巡る話題で、「SNSに感化されて行動を起こした人が相当数いる」などと発言(※正確な発言は原文をお読みください)。
玉川氏の発言を巡ってネット上では「知識がない人の投票に疑問を呈した」と捉えた人も多く、ネット上では疑問の声が続出している、などとしています。
この玉川氏の発言を巡るネット上での議論、じつは著者自身も存じ上げていますが、それと同時に著者自身は玉川氏の発言の全体を正確に視聴していたわけではないため、玉川氏がいかなる文脈でそのように発言したかについて断定したうえで批判することは控えたいと思います。
しかし、ここで重要なことがあるとすれば、テレビで著名人が話した内容に対し、ほぼ即座にネット上で反論が生じる時代が訪れている、という事実ではないでしょうか。
インフルエンサー自身も「民主的に」選ばれている
実際、オールドメディア時代だとテレビ出演者などが自分の政治的な意見を述べ、それに少なくない有権者が感化され、影響を受けるということがあり得たのですが、昨今だとXなどのインフルエンサーにその役割が取って代わられているのです。
しかも、オールドメディアの出演者は一般人が選んだ人ではありませんが、ネットのインフルエンサーの多くはネットで支持を得たからこそインフルエンサーになっているのであり、間接的にはSNSのアルゴリズムに従ってはいるものの、一般人が民主的に選んだようなものです。
このように考えていくと、この9年間で、限りなく直接民主主義に近い状況が出現し始めているのではないか、といった気がします。
もちろん、こうした変化のすべてが無条件に「素晴らしいもの」であるという保証はなく、一部政党のように実現もできない極論を述べて人々をたぶらかすような動きもないわけではありません。
しかし、それと同時に『参院選は有権者の絶妙な采配結果』などでも述べたとおり、やはり日本国民は賢い人が多く、適切な情報さえあれば、有権者は全体的に適切に意思決定していけるのではないでしょうか。
その意味で、「自由な言論と民主的な投票で世の中を良くする」という考え方は、たしかに時間もかかるかもしれませんが、アプローチとしては決して間違っておらず、むしろ積極的に推進すべきものであるように思えてならないのですが、いかがでしょうか?
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1 2 次へ »比例代表得票数 (衆院選から参院選の増減数)
参政 742万 (+555万)
保守 298万 (+184万)
国民 762万 (+145万)
社民 121万 (+28万)
れいわ 388万 (+8万)
共産 286万 (-50万)
維新 437万 (-73万)
公明 521万 (-75万)
自民 1280万 (-178万)
立憲 739万 (-417万)
今回の最大の敗者って、もしかして自民では無く立憲なのでは?
とてもいい傾向です
日本人の感覚は皆さんと同じようです
通貨スワップ10兆円が最初の仕事
これが周知されていますね
おお、流石の考察!
自分も同意見です。議席を減らしては居ませんが、それは立憲が選ばれたわけではなさそうですからね
石破氏に限らず、彼を散々「国民人気が高い」と吹聴し続け、あまつさえ優先順位の低い夫婦別姓制度ばかりを取り上げて他の重要争点をはぐらかし続けてきたマスコミも「退陣」必至でしょうね。玉石混交の玉以外しかない。
>大きな違いがあるとしたら、選挙に大きな影響を与えたのがオールドメディアか、ネットか、という点です。
「排外主義」キャンペーンで参政党に集中攻撃を加えたオールドメディアでしたが、結果は大躍進でした。兵庫県知事選っぽかったですね。
>参院選結果に海外から懸念の声…「政治的マヒの時代」、参政党の躍進「右傾化の流れ」「排外主義」
https://www.yomiuri.co.jp/election/sangiin/20250721-OYT1T50153/
外国にご注進してるとは。これじゃますます信用を無くすだろ。
投票率の5%上昇は「大幅」といえる数値かとは思いますが……しかし「以前は政治がわかる人だけが選挙に行っていた」などという思い込みの前提を置き、そこに「たかが」5%の違いで全くの未知の恐ろしい世界に踏み込んだなどと評せる、氏の思考は計り知れません。まぁ恐らくは「TVの言うことをちゃんと鵜呑みにしてくれる人」の意でしょうけども。個人的には今回もっと投票率が増えるものかと思っていたくらいです。
それが社会にどんな影響を与えるかがわからない?そんな馬鹿な。単純に「その時限りの感情だとしてもより一層民意に近づく結果が現れる」だけです。
どうも、選挙は思慮深い人のみが参画した方がより良い結果になるのではと憂慮される方は一定数おられるようですが(ただしこれは玉川氏のことではありません)。愛国心故かとは思うものの、本質を見誤っています。
選挙とは「民主的により良い国家を実現する」のが目的だと一見すると思えますし、結果はそうあってほしいものですが、選挙の真の目的は「民主的に国家を運営する」事のみではないでしょうか。そこで舵取りを誤ることは十二分にあり得るのです。そして民意からの結果でならば誤っても良いし、誤った責任を国民で負うのみです。「愚王が勝手に舵取りを誤るくらいならば民衆皆で仲良く誤ったほうがマシ」が民主主義の出発点でしょう。
誤らない事を至上とするのならば、国民全員で参画などしてはならず、選ばれし賢者のみでなければ(であっても)不可能なのは自明です。愚鈍な人、不運にして困窮する人、反国家的な思考の人、全てに公民権が認められているのは、単純至極に理念の表れです。
長々綴りましたが、玉川氏に捧ぐ言葉は非常に短くて済みそうです。
「何考えてんだオメー」
結果が気に食わないので思いつきで理屈をつけてみた、というだけでしょうね。思想の良し悪しはともかく、元よりあのような考えを彼なりにしっかりと持っていたのであれば、選挙前、平時からそういった訴えをしていなければおかしいですから。
ついでに言えば「この比例の投票は分析したい」などと不思議な事を述べられたようですが、分析能力も実際にやる気も全く無いでしょう。思い込みが出発点の分析(笑)とやらを是非とも拝見したくはありますが。
とはいえ、自選挙区の結果が毎回気に食わない私も自戒せねばなぁ。
野党(マスゴミ)の酷さを見て仕方なく自民党を選ぶ時間が長くイライラが募った日本国民
自公政権以外を選択すれば政治の停滞が起きることを前提に動いたと思います
それが自公減少ほどほど、立憲維持、共産公明激減、参政国民上げ、その他無視
これを国会議員の方々が正確に国民の意思を理解できればいいのですが
総理の椅子にしがみついていやいやをしている様では時間がかかりそうです
今は奥様が「いつまでダラダラしてんじゃねーよ」と一括していただければ治まるんですけどね
ただし
参政国民はこれからいろいろと傷が出るでしょうから次回選挙でどうなるかが勝負で
それはネットの力が発揮されるでしょう
参院選の結果が出ましたが、破防法の対象である共産党が三人も議席を獲得したこと、また、
朝日新聞と共に所謂慰安婦問題を捏造した社民党党首、立民の辻XX美が議席を得たこと考えると、選挙民は賢いのだろうけど、歴史をどこまで認識しているのか不安になります。
立民のRが当選したのことにも、驚きを隠せません。WEB主さんの仰る、誰を落とすか、という視点では、まだまだ選挙制度自体甘い気がします。
また、奈良市議にもかつての迷惑YOUTYBERが当選するなど、奈良市民どうしちゃったの?という気になりますし。
石平氏が言うように、この日本という国を愛するという気持ちのない政治屋は、議員になるべきではないと思いますが、余りにも右方向の考えでしょうか?
玉川氏は炎上の常連なので、今回も特に何の反応も示さないと予想します。
参政党が躍進した事へのオールドメディアのいら立ちを代弁しただけでしょうしね。
選挙中、選挙後、色々なサイトや情報、発信を見てきましたが大連立ですかねえ。
保守系議員を潰して権力基盤を固める為の続投ですよ。
国民は選挙とかしても意味無い事が分かっちゃったし
いつも楽しみに拝読しております。
当選確実がどうなっているのか、選挙速報見たさで久しぶりにテレビを見ました。この玉川徹氏に限らずテレビ各局に出てくるコメンテーターの分析によると、今回の選挙結果は愚かな国民がポピュリズムに乗せられた結果だと認識されているようですね。
ブログ主様が書かれているように、今回の選挙結果は有権者が全体的に適切な意思決定をした絶妙な結果と思います。一方テレビ局は民意に敬意を払わず、有権者=視聴者が馬鹿だから起きたことだと報道している・・・見たことを後悔しつつすぐにテレビを消しました。