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「シニア世代から高い支持」と自分から宣言する某新聞

著者自身の郵便受けに某新聞の勧誘チラシが投函されていました。正直、チラシは捨てるのもタダではありませんので、そういう迷惑な行為はやめていただきたいところです。ただ、そのチラシを眺めていて驚いたのが、「シニア世代の皆さまからも高い支持をいただいています」という文言で、実際、読者の声も一番若いのが50代女性、あとは60~80代、というのが実情です。

総務省のメディア利用時間調査

否応なく訪れる…SNSを制した者が選挙を制する時代』や『最新データで読む「高齢者の娯楽」となりつつあるTV』でも取り上げたとおり、総務省ウェブサイトで先日公表された、年代別のメディア利用時間数に関するデータがなかなかに興味深いです。

「令和6年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」の公表

―――2025/06/27付 総務省ウェブサイトより

これは東京経済大学コミュニケーション学部の北村智教授、東京大学の橋元良明名誉教授、青山学院大学総合文化政策学部の河井大介助教との共同研究形式で(著者が確認した限りは)少なくとも2013年以降毎年公表されているものです。

オールドメディア↓/ネット↑

結論からいえば、新聞、テレビ、ラジオといった「オールドメディア」の利用時間が①年を経るごとに、②若年層ほど減っていく(図表1)反面、インターネットの利用時間が①年を経るごとに、②若年層ほど増えてきた(図表2)、ということがよくわかるデータです。

図表1 平日のオールドメディアの利用時間
年代 2013年 2024年 増減
10代 121.1分 43.0分 ▲78.1分(▲64.49%)
20代 150.9分 60.6分 ▲90.3分(▲59.84%)
30代 199.4分 95.9分 ▲103.5分(▲51.91%)
40代 187.9分 142.1分 ▲45.8分(▲24.37%)
50代 235.8分 194.8分 ▲41.0分(▲17.39%)
60代 325.3分 296.7分 ▲28.6分(▲8.79%)
10~60代平均 214.0分 153.2分 ▲60.8分(▲28.41%)

(【出所】『情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書』や『情報通信白書』等をもとに作成。ただし、「オールドメディア」は元レポートで使われている用語ではなく、元レポートの「テレビ(リアルタイム視聴)」「テレビ(録画視聴)」「ラジオ」「新聞」を合算した数値)

図表2 平日のネットの利用時間
年代 2013年 2024年 増減
10代 99.1分 243.4分 +144.3分(+145.61%)
20代 136.7分 257.2分 +120.5分(+88.15%)
30代 87.8分 225.8分 +138.0分(+157.18%)
40代 70.0分 200.3分 +130.3分(+186.14%)
50代 61.8分 181.0分 +119.2分(+192.88%)
60代 36.7分 151.3分 +114.6分(+312.26%)
10~60代平均 77.9分 203.5分 +125.6分(+161.23%)

(【出所】『情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書』や『情報通信白書』等をもとに作成)

いかがでしょうか。

どの年代においても今やネット利用時間は約10年前と比べて大幅に増えており、すでに40代以下ではネットがオールドメディアを利用時間で完全に上回っていますし、50代・60代に関しても、逆転が生じるのはもはや時間の問題です(実際、50代に関してはすでにテレビ視聴時間をネット利用時間が上回っています)。

最後まで値上げしなかったのに…読売新聞が最盛期の半分に?

こうしたなかで、『最大手紙ですら部数の減少が止まらない日本の新聞業界』では、新聞業界の苦境について久しぶりに取り上げています。最大手紙である読売新聞が朝刊部数で550万部を割り込み、最盛期の半分近くにまで落ち込んでいるのです。

読売新聞といえば、主要紙が2023年5月以降、相次いで値上げに踏み切るなかで、価格を据え置いた数少ない全国紙のひとつであり、今年1月に値上げした際も、値上げ幅は他紙よりも抑えめにしたというメディアでもあります(図表3)。

図表3 新聞購読料の値上げ状況(朝刊のみの場合または統合版の場合)
値上げタイミング 新聞名 朝刊の値上げ幅 セットの値上げ幅
2023年5月 朝日新聞 3,500円→4,000円(+500円) 4,400円→4,900円(+500円)
西日本新聞 3,400円→3,900円(+500円) 4,400円→4,900円(+500円)
毎日新聞 3,400円→4,000円(+600円) 4,300円→4,900円(+600円)
2023年7月 日本経済新聞 4,000円→4,800円(+800円) 4,900円→5,500円(+800円)
神戸新聞 3,400円→3,900円(+500円) 4,400円→4,900円(+500円)
産経新聞 3,400円→3,900円(+500円) 4,400円→4,900円(+500円)
信濃毎日新聞 3,400円→3,900円(+500円) 4,400円→夕刊休止
京都新聞 3,400円→3,900円(+500円) 4,400円→4,900円(+500円)
河北新報 3,400円→3,900円(+500円) 4,400円→4,400円(+500円)
2024年9月 東京新聞 2,950円→3,400円(+450円) 3,700円→3,980円(+450円)
2025年1月 読売新聞 3,400円→3,800円(+400円) 4,400円→4,800円(+400円)

(【出所】報道等。なお、「朝刊」は原則として「統合版」を意味するが社によって意味が異なる可能性もある)

主要紙、とくに5つの全国紙と4つのブロック紙のなかでは、価格を据え置いている中日新聞を除くと値上げのタイミングが最も遅く、値上げ幅もささやかなものだった読売新聞こそ、他紙からの読者を獲得しそうなものです。

ただ、(新聞業界の部数などの開示が不十分ではあるにせよ)漏れ伝わるいくつかの報道、業界から出てくるレポートなどを眺めていると、どうもその読売新聞でさえ、部数が増えている兆候は見当たらないのです。

新聞はテレビと並び高齢層の娯楽に!

こうしたなかでふと思い立って、この総務省のレポートをもとに新聞の利用時間を調べてみたら、新聞の利用時間については興味深い状況が浮かんできました(図表4)。

図表4 平日の新聞の利用時間(2013年vs2024年)
年代 2013年 2024年 増減
10代 0.6分 0.5分 ▲0.1分(▲16.67%)
20代 1.4分 0.3分 ▲1.1分(▲78.57%)
30代 5.8分 1.3分 ▲4.5分(▲77.59%)
40代 8.6分 1.9分 ▲6.7分(▲77.91%)
50代 18.6分 6.3分 ▲12.3分(▲66.13%)
60代 28.0分 14.8分 ▲13.2分(▲47.14%)
10~60代平均 11.8分 4.7分 ▲7.1分(▲60.17%)

(【出所】『情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書』や『情報通信白書』等をもとに作成)

新聞に関しては、少なくとも10代に関してはほとんど変動がありません。もともと10代は2010年代においてもあまり新聞を読んでいなかった、ということでしょうか?

また、20代から40代に関しても、新聞の購読時間は7~8割ほど減っているのですが、これらは平均して人々が数分しか新聞を読んでいないのではなく、新聞を読んでいる人は1時間や2時間目を通している反面、まったく新聞を読まない人もいるのではないか、といった仮説が成り立つところです。

また、50代や60代はそれでも新聞に目を通しているのですが、その時間は毎年確実に減少しているようであり、とりわけ60代に至っては10年少々で半分近くに減少していることが確認できます。

ちなみに図表には記載していませんが、70代の新聞購読時間は、2023年が30.1分、2024年が30.5分であり、新聞がテレビとともに高齢層の娯楽と化していることはほぼ間違いないといえるでしょう。

某新聞のゴミチラシに驚く

こうしたなかで、最近、非常にのけぞってしまった話題がありました。

著者の郵便受けに投函されていたゴミチラシの数々のなかに、こんなものが含まれていたのです(チラシの新聞名部分については、いちおう伏字にしています)。

「XX新聞を読んでみませんか?」

XX新聞を読んでみませんか?シニア世代の皆さまからも高い支持をいただいています。今なら、1週間無料でお試しできます。

正直、他人様の郵便受けにこうしたゴミのようなチラシを投函していくという発想にも腹が立ちますが(処分する費用もタダではありません)、それ以上に自分で「シニア世代の皆さまから高い支持」とか言っちゃう時点で驚きます。

実際、同チラシに掲載されている「読者アンケート抜粋」も、「70代女性」、「70代男性」、「50代女性」、「70代女性」、「80代女性」、「70代女性」となっており、最も若いのが「50代女性」という時点で、新聞が業界としても若返りに失敗していることはおそらく間違いないでしょう。

いずれにせよ「XX新聞」さんに一番申し上げたいことがあるとすれば、それは次のものです。

ゴミチラシを他人の郵便ウケに勝手に投函するのはやめていただきたい」。

以上です。

新宿会計士:

View Comments (35)

  •  SEALDsだの選挙ギャルズだの、若者に訴求すべく頑張って「爺婆が想像するワカモノ」で粉飾しようとしていたのに比べれば、幾分か真当になったと評すべきです。

     ……別の表現だと「諦め」って言うんですけど。

     ただ「シニアに人気です」て広告はシニアにしか効かないのでは。自社の広告枠だって「シニアに人気!」てコピーの商品、補聴器とか昭和歌謡CDとかだろうに。

    • >SEALDs
      そう言えば、そんな団体?がありました。
      あれ?その後、どうなったのか記憶になくて、軽く検索かけたら
      一年三か月程で解散してました。

      珍しく若者が政治を語ってるなあと思ってたんですが
      胡散臭いことこの上なかったです。

      • 東京新聞、当時結成したばかりのSEALDsのことを記事内で「頼もしく感じる」と書いていた記憶。全然客観的でも中立でもないですね。

      •  デモが行える事は民主主義国家として健全なことですが、選挙が通常に機能しているのに全てをデモで変えようとし何でもかんでもデモ対象にするのは民主主義の作法を無視するものです。デモで選挙結果を覆すまでいってしまった国が存在するそうですが……
         彼らは政策決定には何らの爪痕も残せず、「むしろ年中デモに集中できるような者は一般人ではなく活動家であり、意図を持ったバックが存在する」という事の方が露呈し、その胡散臭さは若者の政治参画には悪影響すら及ぼしたと考えています。
         翻って、数年が経ち岸田-石破政権を経験した私の周囲の(彼らのことなど知らず、彼らとは違う本物の一般の)若者は最近、皮肉にも政治と選挙に関心を持ったようです。彼らの代表が海外で民主運動をしている若者たちの集まりにおいて「日本はアジアで最も民主主義が進んでいる」と評されて困惑したそうですが。政治の実態に触れ民主主義の作法に則り今回の選挙に臨むという、模範的な「民主主義国家の若者」は、デモに依らず自然に生まれたようです。

         シニアが(身勝手で恣意的な)誘導をしたところで成せなかったものが、そのシニアの醜態を見て若者が自発的に成そうとしている。「シニアから高い支持」などという本件の文句が、経済的にも政治的にも如何にどうしようもないかの証左ですね。
        ※念の為申し添えると、一般シニア世代を批判する意図は全く御座いません。

        「新しい世界を作るのは老人ではない」-クワトロ・バジーナ-

  • 「ゴミチラシを他人の郵便ウケに勝手に投函」されたので、申し込みはがきを切り取って、何も書かずに返信してやりました。
    投函者を特定されないように、ご丁寧に、出先で投函してやりました。
    迷惑行為に意趣返しして、少し、スッキリしました。

    • 実はソノ申し込みハガキには個別の識別用マーキングが施されており、ポスティング時のデータと突き合わせるコトでどのポストにポストしたのかが…てな白日夢を…てな陰謀論が
      知らんけど

      • 最近は実名記入を必須にしたアンケートがありましたよ。協力依頼が強力に強制すぎて内容は何だっけ?でした。

  • まー“惰性”で購読していた層なら「値上げ」は「契約打ち切りの契機」にはなっても「他紙へ移行の機会」にはナランっつーこってすわナ
    知らんけど

  • ゴミチラシと言えば。。。
    シルエットのR4氏のゴミチラシがポストに投函されていた事があったなぁ。
    同根の方々は行動も類似しているのでしょうねぇ。
    一つ前の投稿絡みで言えば
    あれもシルエットだから公職選挙法違反では無いと。
    ハイハイ。そうですか。

    • そういえばあのシルエットチラシを見たら、往年の名作、チュンソフトの『かまいたちの夜』を、思い出しましたよ。

  • >XX新聞を読んでみませんか?シニア世代の皆さまからも高い支持をいただいています。今なら、1週間無料でお試しできます。

    なんか、切ないですね・・・売り文句も尽きてしまったかのような。

    ゴミチラシと言えば、選挙期間に入ってから拙宅のポストには酸性チラシが投函されてましたね。あれ、いいんでしたっけ?

  • 今回の選挙の楽しみ方一つにこの「オールドメディアの影響力」ってあると思います。
    私は今回は「参政党」の支持率と得票と議席数に注目するといいんじゃないかと。

    7月に入って、オールドメディアを中心に、目に見えて参政党を下げる報道が増えたように思います。某テレビ局の報道特集などはアナウンサーにお気持ち表明までさせました。

    ところが、参政党支持者の多くは、30~40代だというような調査結果が出てて、その世代は、テレビや新聞をあまり信じてない世代だと、ここでもよく話題になったように思います。

    その裏付けとして政党支持率の世論調査があります。(NHKのデータです)
    ・6月30日更新
    https://www.nhk.or.jp/senkyo/shijiritsu/archive/2025/06_2.html
    ・7月14日更新
    https://www.nhk.or.jp/senkyo/shijiritsu/

    詳しくはリンク先を見てもらうといいのですが、肝心の参政党の支持率は
    6月30日:「参政党」が3.1%
    7月14日:「参政党」が5.9%
    と、むしろ、アンチ報道が増えてから支持率が上昇しています。

    本当に参政党支持者が30~40代だとすれば、オールドメディアがアンチ報道するほど、支持が上がるという皮肉です。
    ちょっと出来過ぎな気もしますが、いい傾向なのではないでしょうか。

    • 参政党は本質はパヨクなので、オールドメディアのネガキャンは逆に参政党の支持率を上げる為の茶番では?

        • 左のれいわ、右の参政党ってよく言われますね。
          (れいわを左右ひっくり返すと参政党)

          どちらも、偏り過ぎてて、支持はなかなか難しいです。

      • KY様
        あながち、否定できない。。。

        最近の、ってかここ1か月くらいの参政党のメディア露出が異常だと感じてました。
        「お仲間だから?」
        って勘繰ってましたが、最近(ここ2週間くらい)のマスコミのネガキャンがまた、異常すぎて「仲間やないなぁ~」とも思いはじめて。

        実際どうなのかな。。。

    • ちょっとズレますが・・・
      これ、産経の有料記事で途中までしか読めないのですが、「外国人問題は事実を報道しないマスコミの問題だ」という指摘です。

      産経:外国人問題「報道しない自由」が新たな分断と対立を生んでいる 参院選の争点に突如浮上
      https://www.sankei.com/article/20250713-L4UHUKWKDRDXVGSWJEDXOHSZRA

      マスコミが取り上げないからこそ、現実に外国人問題に直面している人々は社会から見放されていると感じるし、問題の存在を強く訴えることになるし、耳を傾ける人とつながりが深くなる。そんなサイクルがあると思います。
      参政党はそこにうまくリーチしているのだと思います。

      マスコミが正しく問題提起して報道し、与党が正面から向き合って対応していなければ、こんなことにはならなかったのではと。(取り上げないのは意図ありとしか思えないですが)
      参政党の支持率とマスコミの関係の全てをすれで説明はできるものではないと思いますが、マスコミと参政党の間にはそういう力学もあるよなーと思った次第です。

      (関係ないですが、ロシア製ボットが付けいる隙を作っているのがマスコミという構造でもあると。社会の分断装置としてのマスコミ。)

      • 確かに。もし自分が問題に直面すれば、話を聞いてくれて解決してくれそうな人を支持するのは道理です。

        マスコミが問題を問題として取り上げないのなら尚更です。
        そうしてマスコミはまた、信用を失っていくのでしょうね。

  • 自分達が騙しやすい(と思っている)シニア層に受けていると自画自賛している某新聞社。一言だけ「あんたババ○ー?」

  • 今大学の教室で何が起こってるか知ってますか。昔は学生の私語が多くて授業にならないと言われていたが、今は私語なんかしない。みんなスマホ見てるから。高校は授業中のスマホ使用を禁止している学校が多いが、学級崩壊してるところなんかいっぱいあるからね。教師にしてみりゃスマホでもみておとなしくしてくれてた方がありがたいんじゃないの? 

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