李在明(り・ざいめい)政権が韓国で誕生しました。日本を代表する優れた韓国観察者である鈴置高史氏が、さっそく、その意味を解説してくれました。日本のメディアは李在明政権がいつ反日を仕掛けてくるかばかりを気にしているフシがあるのですがこれに対する鈴置氏の答えは、意外なものです。「それは愚問だ」。果たしていったいどういう意味なのでしょうか。
目次
韓国の民主主義はどうなってしまうのか
6月4日といえば、世界的には中国共産党政権が1989年6月4日に発生させた「天安門事件」が有名ですが、それだけではありません。
今年、すなわち2025年6月4日といえば、もしかすると後世の人が振り返って、韓国で民主主義が終焉を迎えた日として記憶されるかもしれないのです。
すでに報じられている通り、先日大統領職を罷免された尹錫悦(いん・しゃくえつ)氏の後任として、李在明(り・ざいめい)氏が選出されたからです。
李在明氏がいかなる人物であるかについてもさることながら、個人的には、裁判所がいとも簡単に大統領職の権限を停止し、罷免してしまうことが常態化したことに、大きな驚きがあります。
こうした隣国の姿を眺めていると、やはり民主主義は定着するのに大変に長い時間と努力、政治的エネルギーが必要である一方、壊れるときはじつにあっけないものなのだという点がよくわかります。
著者自身も過去には韓国が台湾とともに経済発展して「先進国」となり、日本と同じように成熟した民主主義国家となるに違いない、といった見通しを見っていた時期もあるのですが、少なくとも政治に関していえば、まがりなりにも民主主義が定着し運用されている日本や台湾と比べ、「韓国の特殊性」が目につきます。
法を軽視する韓国…民主主義自壊の兆候はあった
そして、やはり民主主義が壊れてくると、そのことはさまざまな分野に波及します。
その最たるものは、法の軽視です。
いうまでもなく、韓国といえば日本との関係において、さまざまな法や条約、国際的な約束を破ってきた国です。
「朝鮮半島で戦時中、日帝により強制徴用された」などと自称する、いわゆる自称元徴用工らが日本企業を相手取って韓国の裁判所で訴訟を起こし、驚くことに、韓国の最高裁に相当する大法院が日本企業に対して損害賠償を命じた事件は、この国が法の精神をないがしろにする社会であることが判明しました。
この問題、結局のところ、自称元徴用工らが本当に「日帝」によって「違法な強制徴用」をされたのかどうか、という観点もさることながら、それ以上に1965年の日韓請求権協定で完全かつ不可逆的に解決した両国間の請求権を蒸し返すという意味で、二重の不法行為です。
ただ、日本との関係でいえば、たしかに韓国の国際法破りは問題ですが、韓国が日本との関係で国際法ひとつろくに守れない国であるという事実は、そもそも法治国家として機能していない、ということでもあるのです。
そのことを警告した著作物のことを、個人的には勝手に、「韓国3部作」と呼んでいます。
韓国3部作
鈴置氏は韓国観察者であるとともに、じつは「日本観察者」でもある
この韓国3部作を著したのは、「韓国観察者」と名乗る鈴置高史氏です。
ただ、普段から当ウェブサイトにて報告している通り、鈴置氏は「韓国観察者」であるだけでなく、韓国という鏡に映った日本を記述しているのではないかと思います。
とりわけ自称元徴用工問題などの対応を巡っては、韓国政府、とりわけ文在寅(ぶん・ざいいん)政権のやり方自体、国際法的に見ても極めて理不尽かつ不誠実なものである反面、韓国に対するまともな制裁も検討しない日本政府の姿勢に違和感を覚えた日本人は多かったでしょう。
つまり、日韓問題とは、常軌を逸した国際法違反行為を繰り返す韓国と、それに対して韓国を日本と同等の法治国家とみなして交渉しようとする日本政府の齟齬にあるのであり、日韓関係を円滑化させるためには、ときの外務大臣に鈴置論考の熟読を義務付ければ良いのではないかと思うのはここだけの話です。
それはともかく、李在明政権の韓国が一体どうなってしまうのか。
日本の隣に民主主義騙る専制国家が出現か
これに関する、まさに「日本国民必読」ともいえる論考が出て来ています。
韓国で始まる「反日」よりも深刻な「報復」の時代 “保守派は監獄送りで根こそぎに”宣言の李在明大統領――鈴置高史氏が読む
―――2025年06月04日付 デイリー新潮『鈴置高史 半島を読む』より
鈴置氏の冒頭発言を紹介しておきましょう。
「日本では、李在明政権の『反日ぶり』ばかりに注目が集まります。しかし、より見逃せないのが韓国に再び独裁体制が生まれることです。日本の隣に『民主主義を謳う専制国家』が登場するのです」。
いきなり、結論が出てきました。
ふだん、鈴置論考を読んでいない人にとっては、「いったい何を言ってるんですか?」、「韓国は1988年ソウル五輪の前後で民主化し、歴代大統領も民選が続いてるでしょ?」、という感想を持つかもしれません。
しかし、そう思う人にこそ、この論考を熟読していただきたいと思います。
鈴置氏は新聞社の出身者ですが、新聞記者らしからず、山ほど客観的に確認できる証拠付きで、李在明政権の危険性を示す兆候を示しているのです。
その兆候のひとつが、「保守派の根絶やし」です。
「李在明大統領が代表を務めてきた『共に民主党』はすでに法制司法委員会で『内乱・外患特別検察官法』を通過させ、本会議に送付済みです。同党は国会で3分の2近くの議席を持ちますので、本会議を開けば成立します」。
この「内乱・外患特別検察官法」が成立すれば、おそらく速やかに国会で特別検察官を任命し、前政権時代の閣僚の捜査に踏み切る、とするのが鈴置氏の見立てであり、さらに捜査対象には昨年12月の戒厳令当時の与党だった「国民の力」の有力議員にも及ぶだろう、としています。
李在明氏は保守派を「根絶やし」に?
なんだか、歴史の教科書に出てきた李氏朝鮮そのものではないでしょうか。これが、こんなくだりです。
「――左派は保守を『根絶やし』にするつもりですね。」
「鈴置:李朝以来の韓国の伝統です。力を握った側が反対派を皆殺しにするのがこの国のやり方です。『国民の力』は5月30日、『政治報復だ』との報道官声明を発表しましたが、蟷螂の斧です。国会で少数党であるうえ、大統領も左派に取られたのですから為す術がありません」。
実際、李在明氏が左派、李在明氏自身が代表を務める「ともに民主党」も左派で、しかも鈴置氏の指摘通り、「ともに民主党」は韓国国会で3分の2近い圧倒的多数を求めています。選挙を制した左派が選挙で負けた保守派を「犯罪捜査」名目で逮捕・投獄すれば、それはもう立派な独裁国家です。
あるいは第一次大戦後に発足したドイツ・ヴァイマール共和国が崩壊していくときも、これと似たような状況だったのかもしれません。
ただし、もちろん、そうすんなりと行くという保証もありません。鈴置氏はこう続けます。
「こんな無茶をすれば、保守の側が『窮鼠猫を噛む』行動に出かねません。テロ事件もあり得ます。<略>軍のクーデターだって起きかねません」。
これが鈴置氏の警戒する、「新政権が発足しても内戦含みの状況」です。
今回の鈴置論考、ほかにも引用したい箇所が山ほどあるのですが(いちいち頷きながら読んでしまう論考です)、著作権の都合もあるため、文中からの本稿での引用はこのあたりとさせていただきます。
とりわけ「憲政の常道」が韓国に存在しないこと、および、それがいつ韓国に定着するかという見通しなども含め、今回の鈴置論考、いつにもまして読む価値が高いです。どうか読者の皆様も直接、この鈴置論考をお読みくださると幸いです。
韓国とどう向き合えば?→鈴置氏「それは愚問だ」
ただし、「これで最後にする」と申し上げておいてなんですが、もう1箇所、どうしても引用しておきたい記述があります。果たして李在明政権がいつ、反日を仕掛けてくるか、という問いかけに対する、鈴置氏のこんな回答です。
「問題はそれ以前にあります。形だけでも海洋勢力側に留まっていた韓国が、これから内部崩壊していく可能性が高いのです。『新政権の韓国にどう向き合うべきか』との質問をしばしば受けますが、それは愚問です。『向き合う』も何も、相手が自ら崩れて行くのですから」。
…。
ここについて、さらに掘り下げた論考が、是非とも読みたいところです。
鈴置氏の論考が現在の石破茂政権、あるいは自民党・石破執行部に響いているかどうかはわかりませんが、少なくとも日本の政界には、それなりの良識を持った政治家がまだ多数います。石破政権・石破自民には響かなくても、良識的な政治家に届けば儲けものです。
(※あるいは石破政権がオロオロしすぎて余計なことをする前に事態がさらに進んでいく、という可能性もありそうな気もしますが…。)
そして、なにより私たち有権者の側が理論武装しなければなりません。
Xではごくまれに、自称保守論客がこんな趣旨のことを述べているのを見かけることがあります。
「韓国の左派政権はさすがにマズい。だから日本も韓国に介入し、左派政権が暴走しないよう、あるいは左派政権への対抗勢力を支援するようにすべきだ」。
これ、とんでもない話です。
著者自身も当ウェブサイトを運営してきたなかで、複数の読者の皆様から、「外交を通じて相手を変えられると思うな」、と教えていただきました。李氏朝鮮を巡る混乱も、今になって思えば、大日本帝国として積極的に介入すべきではなかったのかもしれません。
その意味で重要なことは、むしろこれから先ではないか、などと思う次第です。
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1 2 次へ »どの順番で外国訪問するか。
中国―米国―日本なら「やっぱりね」
米国―中国―日本なら「慎重だね、何考えてるやら」
日本―中国―米国なら「やばい、カネくれ、スワップくれがはじまるぞ」
例3が笑えません、怖すぎる。
馬鹿な石破、岸田政権なら血税を湯水の様に使って国益を売り渡すでしょう。もっと生活に困窮すれば私も命を捨ててテロに走ろうかと思いますが、まだ人生に未練が有ります。特に岸田だけはこの国から追放しなければ。
最初の半年ぐらいは国内のことで忙しいだろうけど、その後いろいろ難癖付けてくるだろう。
安心なのはそのころ石破さんは退陣しているだろうということ。
>李朝以来の韓国の伝統です。力を握った側が反対派を皆殺しにするのがこの国のやり方です
財閥のトップがいつまでたっても創業者一族の理由はこれでしょう。
経営手腕を見込んで一族以外をトップに据えたら、あっというまにその人の一族で固められる。
新大統領は、大韓民国にとって最後の将軍徳川慶喜になるかも?アーメン
徳川慶喜と日本国にあまりにも失礼では?
少なくとも韓国人に自らの権力を放棄してでも国家100年の為に江戸城無血開城と言った自己犠牲、政治判断は出来ないでしょうね。誰も一歩も譲らず結局誰も助からないを繰り返してきた民族ですから。
在日を経営陣に入れる日本企業がこれを危惧しています
いつのまにか在日に経営を牛耳られる日が
NHKを始め新聞TVは既に経営陣に入り活発に活動中(放送内容を見ればわかります)
小泉米などに浮かれている場合では有りません
NHKは秋のネット受信料に必死です。アナウンサーが「QRコード」を連呼しています
これを抑えれば情弱老人が自然減で受信料は減り続けます
NHK放送センターに事務所を構えるCCTVはいつまでいるのやら
新大統領
株式市場は歓迎ムードのようだ(つまり上げてる)為替もウォン高にふれてる。
それは、ほとんど何も意味しませんよ。
ドルベースでの株価は同じなんだから。
あ、しまった匿名相手に…
ウォン高は韓国銀行が必死で「ウォン買いい」してますね。外貨保有が減ってますから。でも、4000億ドル以上ありますから当面は問題無い(はず)。
やはり今の韓国は未来の日本の姿なのでは、と思う。
左派のトップが韓国の大統領です。
始まりとも言えるニュース↓
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250603/k10014824991000.html
これは言論統制に他ならない。自民党が選挙でやばそうだからと出してきた一手。
論旨とは無関係なコメント失礼します。
>鈴置氏は新聞社の出身者ですが、新聞記者らしからず、山ほど客観的に確認できる証拠付きで、李在明政権の危険性を示す兆候を示しているのです。
いえいえ、新聞記者(報道に関わる者全て)こそ、客観的に確認できる証拠とともに論を展開するのは当然でしょう。
いや、だからこれブログ主さまの皮肉ですってば…
失礼しました。。
だいたひかるのネタの流れ、冒頭に「冗談を言います」はオーディエンス層を幅広くという意味では正解だったのかもシレナイ…
知らんけど
どうなってしまうのでしょうか。ワクワクが止まりません。
>ワクワクが止まりません
私も。特に経済分野。
韓国は今景気悪いらしいから人気取りで何かやらかしそう。
*他責社会の結露
韓国民は、政策云々(うんぬん)を抜きにして、『政権をひっくり返す』のが熟成した民主主義の在り方だと思ってるんだもの・・。
良きにつけ悪しきにつけ避けられぬ積弊清算。避けられぬ国内粛正の嵐と対外翻意。でも仕方ないよね彼らが選択したんだし・・。
・・・・・
小学生:ハーイ! 先生、政治って大好きですか?
李先生:そうだね。専制政治はとても大好きだよ♡
・・。
難民申請やら政治亡命やらが海を渡ってコチラに来る前ににサッサと弾く段取りを…無理か
知らんけど
派閥に分かれて対立するのは半島の伝統文化のようなものらしく。何はともあれ対立する。そして相手を根絶やしにしようとする。
内部力学は左派が内ゲバやるのとそっくりです。
>「共に民主党」は最高裁の裁判官を14人から30人へと増やす法案を準備中です。増員分の裁判官のほとんどは左派が占めることになるのでしょう。
>大統領か国会が支配する――いずれにしても左派が握ることになります。
"半島式民主"が高じて、そのうち"民意"を得てワイマール体制の全権委任法のようなことまでやっていくのでしょう。でも彼らは日常の"対立"の延長としてやっているだけで、そんな大逸れたことをしている自覚はない気がします。あるべき歴史を"造る"ために歴史事実の改竄が当たり前の国ですから、他国の歴史なんて知るわけもない。
韓国では日本を批判するときに「ドイツを見習え」と言います。皮肉なもんです。(笑)
出生率も驚異の0.7台です。崩壊は別にいいんですが、難民は困りますね。
ゲル岩屋氏はじめ自民のリベラル系は「welcome 難民様!」とかやりそうで気がかりです。
間違えて返信欄に書いてしまいました。
すみません。
本日の論考を読んで改めて頭に浮かんだのは、特亜専制国家の国の名前。
どういう訳か、反対語の位置づけと思われる共和国を自称しています。
中華人民共和国:People's Republic of China
朝鮮民主主義人民共和国:The Democratic People's Republic of Korea
大韓民国 :Republic of Korea
西側世界で言う専制主義のことは彼らの思考世界では民主主義と言うものと定義づけられているのかもしれません。
或いは逆に、西側世界で言う民主主義は、彼らの思考世界では彼らが行っている専制主義のように見えるのかもしれません。
中国はわざわざ「People's Republic」、北朝鮮は更にわざわざ「Democratic People's Republic 」としているのが味わい深いです。
それに比べると韓国は「Republic」のみ。
「民主主義において先を行く2国に比べたら、自国は遅れている」。
他者との比較で自分の立ち位置を確認、優位性を見出す事がアイデンティティであるのがK国人の国民性ですから、この立ち位置は許し難かったのだろうなぁ。そう思いました。