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役所「ご理解ください」がエビデンスで殴られる時代に

最近、ちょっとした点に気付きました。役所やその擁護者らから出てくる「ご理解ください」、とする趣旨の情報発信が、このSNS時代に通用しなくなっていることです。例の「年金流用問題」に関連し、厚労省の立場に立った情報発信を続けるアカウントが「デマを広めるな」、「正しい言い分を広報せよ」、などと言い出しているのですが、これにSNSは「理解もしないし支持もしない」、「エビデンスで殴る」、で応じているのです。

2025/06/04 12:25追記

記事にサムネイルが抜けていましたので追加しています(記事内容に変化はありません)。

国民民主の退勢は反ワクチン活動家擁立が原因では?

昨日の『有権者とSNSで対話することはポピュリズムではない』では、「ポピュリズム」、という単語をもとに、「SNSなどを通じて有権者との真摯な対話を目指す姿勢」は「ポピュリズムとはいえないのではないか」、という仮説を提示しました。

国民民主、勢いに陰り 「餌」発言、火消しに躍起

―――2025/06/02 07:04付 Yahoo!ニュースより【時事通信配信】

これは、時事通信が配信した記事で、国民民主党が山尾志桜里・元衆議院議員を今夏の参院選全国比例で擁立したことで、同党に対する高い支持の「潮目が変わった」、などと指摘するものです。

国民民主党が(最近の一部調査で)支持率低下傾向を見せていることは事実ですが、個人的にその原因が「山尾氏の擁立」だけにあるとする見解には違和感があります。どちらかといえば山尾氏というよりも、反ワクチン活動家を擁立した方が問題ではないか、などと思うからです。

SNSを使った情報発信の先駆的事例

ただ、国民民主党が昨年衆院選で勢力を公示前の4倍に増やした実績などから判断すると、国民民主党が「手取りを増やす」を含めた優れた政策を掲げて党勢を拡大してきたことはほぼ間違いなく、こうした政策がSNSを通じて一般国民に共有されたことが同党の強みだったのではないかと思います。

余談ですが、SNSでミドルインカム以上の層、勤労層などに支持されている政党が、反ワクチンなどの非科学的な思想を持つ候補者を擁立した瞬間、少なくない有権者が「裏切られた」と感じたとしても、それはそれで不思議ではありません。

つまり、「SNSを使って有権者と対話に務める」という姿勢自体は、高く評価できるものでもあります。

その意味で、「ターゲットとなる支持者層とSNSなどを通じて対話を繰り返し、政策をブラッシュ・アップしていく」というのは、次世代の政党のモデルとなり得るものです。

役所の用語「ご理解ください」

こうしたなかで、国民民主党がSNSで高く評価され、また、SNSで叩かれていることは、確実に世の中が変わりつつあることを実感させる現象ですが、それだけではありません。

ここ数日のSNSの議論を眺めているなかで、もうひとつ気付いたのが、「ご理解ください」、という趣旨の表現です。

例の年金制度の「厚年から国年への積立金流用」に関連し、とある著名人が、こんな趣旨の内容を述べたのです。

  • 政治家の役割は、若者世代の不満に寄り添いつつも、なにが本当の情報なのかを見極めたうえで現実的な提案をし、正しい情報発信をしていくこと
  • デマに惑わされないために広報に力を入れていくことも課題であり、(賦課方式は持続可能でないとする)間違った情報発信を正していくことが必要だ

…。

くどいようですが、現在の年金制度が勤労層から年金層への、あるいは厚年加入者から国年加入者への一方的な所得移転となっており、著しい不均衡が生じている点については、先日の『数値で見る国年と厚年の経済性と「積立金流用」の実態』なども含め、当ウェブサイトでは何度も指摘してきた通りです。

数学的な検証をしたわけでもないくせに、これを「誤解だ」、「デマだ」、などと騒いだ挙句、厚労省などの役所の言い分を広めることを「正しい情報発信」、などと言われても困ります。

役所や立憲民主党などの「年金改革法案は将来受け取る年金が減らないためのものだ」、などとする言い分自体が間違っているからです。

理解もしないし支持もしない、エビデンスでタコ殴り

そして、この「ご理解ください」、「正しい情報」、といった発言から垣間見えるのは、「俺たち役所が決めたのだから、お前たち国民はそれに従え」、とでもいわんばかりの、官僚の傲慢さそのものです。

冷静に考えてみたら、官僚という存在は私たち国民から選挙で選ばれた者ではありません。単なる事務方です。

その単なる事務方が法律を企画したり、立法に介入したりすること自体もおこがましい話です(ついでにいえば、それをきちんと批判してこなかったメディアの責任も重大です)。

ただ、こうした「ご理解ください」に対して、SNSの反応は、もっと興味深いものです。

理解もしないし支持もしない」。

つまり、厚労省など役所の言い分に対し、その言い分を唯々諾々と「わかりました、理解します、異論も唱えません」と反応するのではなく、それに対し大量のエビデンスや数値をもとに、逆にSNSでタコ殴りにされる、というのが実情です。

もちろん、当ウェブサイトも期待運用利回りや賦課方式、『ねんきん定期便』などの問題点も含め、これまで厚労省などの言い分を批判して来た側だと思いますが、こうした反論が同時多発的に生じていることは、私たちの社会において見過ごすことができない大きな変化であることは間違いないでしょう。

時代は変わった…いい加減、気付け!

いずれにせよ、役所が方針を決めて新聞、テレビを通じてそれを垂れ流し、国民が役所の決定に唯々諾々と従っていく、といった時代は、もう過去のものになりました。

官僚も政治家も、そのことに、いい加減気付くべきです。

故・安倍晋三総理大臣の時代には盤石だった自民党の支持基盤も、「石破茂体制」の9ヵ月ほどですっかりガタガタになりましたし、最大野党である立憲民主党は年金法案で、野党第2党の日本維新の会は「手取りを増やす」を潰したことで、それぞれ「炎上」しまくっています。

それに、政治不信が募れば極端なことを唱える政党が躍進しかねないため、やはりまともな政党が良い政策を掲げ、普通以上の候補者を擁立してほしいと思うのは、贅沢な願いなのでしょうか?

(どうでも良いですが、国民民主党もせめて反ワクチン活動家の擁立を取り消した方が良いと思うのですが、いかがでしょうか?)

新宿会計士:

View Comments (28)

  • 立憲のある有名議員のツイートです。

    https://x.com/TeamSugioHideya/status/1929893223352119670
    立憲民主党が主導した年金改革について様々な誤解が広がっています。興味がおありの方はぜひご一読ください。

    厚労省HPのキャプチャをペタンコ貼り付けてるだけなんですよね。
    この件では他の立憲議員もこの形式のツイートが多くて、自らの言葉で説明しているパターンは少ないです。法案の中身をどこまで理解していたか怪しいと思ってます。
    例の産経記事にもありますが、

    >立民に集中する批判をかわすためか、党会合に呼んだ厚労省からも法案の意義を説明するよう求めた。

    立憲「こんな法案だとは思わなかった!厚労省が作った法案なんだからお前らが責任取れよー!」
    そこらへんがホンネなんじゃないすかね。他責志向的に。

  • 内容は理解した。その上でおかしいと思う点があるので批判する。

    こんなところでしょうか?

  • 毎度、ばかばかしいお話を。
    お役所:「時代が変わったことを理解するということは、我々の中の和を乱すことだ」
    まさか。

    • (もちろん、一概に年齢だけではありませんが)高齢者も、時代が変わったことを理解したくないのではないでしょうか。

  • 「チミの主張したい内容は理解した。で、明らかオカシイトコロが複数有るのだが…」
    てトコすか
    知らんけど

  • 店「転売や買い占め対策の為、おひとり様1点とさせていただきます。ご不便をおかけしますが、ご理解を賜るようお願い申し上げます」
    →わかる

    官「払った保険料に見合った給付はありませんが、そういう制度なので、ご不便をおかけしますが、ご理解を賜るようお願い申し上げます」
    →嫌だ、制度を変えろ

    官僚や政治家は日本人を馬鹿だと思ってるんですかね。

    • ただ、、、あながち間違いでもないかもしれないのが悲しいところ。
      だって、地方選挙の7割弱の国民が選挙に行かずに、すべての政策にYesですから。
      (意思を示さないのはYesと同じ)

      > 理解もしないし支持もしない、エビデンスでタコ殴り
      いい傾向ではあると思うんですけど、官僚や政治家はSNSでいくら言っても無駄かもです。
      みんな選挙に行ってほしい。

      > 国民民主党もせめて反ワクチン活動家の擁立を取り消した方が良い
      今取り下げても「ポピュリズム」として叩かれるんじゃないかと思います。

      玉木の「餌」発言もそうですが、最近のメディアの動向を見ると、国民民主党を腐したい勢力がマスコミを使って貶めているように見えます。
      (必要以上に、メディアの書き方が国民民主党に厳しいように思う)
      まぁ、個人の感想ですが。

  • 「ご理解ください!(丁寧ではあるが命令形)」は上意下達の常套句。
    SNSでの発信(相互疎通の場)は、官報でのソレでは無いのに・・。
    ・・・・・

    >良い政策を掲げ、普通以上の候補者を擁立してほしい

    玉木:彼には実績がある。普通以上の存在だ!
    事実:彼には実績がある。”不通・異常”の・・。

  • >>>役所が方針を決めて新聞、テレビを通じてそれを垂れ流し、国民が役所の決定に唯々諾々と従っていく、といった時代

    わかるー!!!もうその手法は通用しないんだよ!!!

  • 年金納めるよりニーサ積み立てる方がお得かも
    いや、石破君とトラちゃんじゃ、先行きわからんぞ
    なら、定期預金でもした方がましか・・・
    いやいや、宝くじ買う方が期待値高かったりして・・・

    あの莫大なプール資金、どこへ消えてしまったのでしょう

  • >厚年加入者から国年加入者への一方的な所得移転となっており

    今回の「流用」問題のことなら私の理解とちょっと違うな。
    「国民年金」「厚生年金」は年金の「入口」の名前。
    「国民年金」から入って国民年金しか払ったことのない人は高齢になると「基礎年金」だけを受け取る。
    「厚生年金」から入って厚生年金しか払ったことのない人は高齢になると「基礎年金」と厚生年金の報酬比例を受け取る。

    流用の問題はどの年金に入っていたかにかかわらずある年齢層は(氷河期世代と言われているが)基礎年金の額が著しく低くなる。この調整のため厚生年金の積み立てを使うらしい。

    誰か訂正あればお願いします。

    • >流用の問題はどの年金に入っていたかにかかわらずある年齢層は(氷河期世代と言われているが)基礎年金の額が著しく低くなる。この調整のため厚生年金の積み立てを使うらしい。

      はい。明確な間違いです。
      厚労省審議会資料をちゃんと読んで勉強してください。
      https://shinjukuacc.com/20250531-01/

      1階部分(基礎年金)⇒国民年金+厚生年金
      2階部分(報酬比例)⇒厚生年金のみ

      2階部分の積立金のうち65兆円を1階部分に充てます(ちなみに基礎年金は同額税金が充てられますが財源はど〜するんでしょ?)。
      この65兆円は厚年加入者のみが負担したものであり国年加入者は負担していません。
      これを日本語で流用といいます。

      • >この65兆円は厚年加入者のみが負担したものであり国年加入者は負担していません

        そのとおりですが
        国民年金加入者の中に基礎年金が低年金にならない人がいるように、
        厚生年金加入者の中に基礎年金部分が低年金の人はいないのですか?
        そもそも最初から最後まで国民年金加入者、または厚生年金加入者の率はそれぞれ6-7%と聞いたことがある。
        どの年金に入っていたかにかかわらずある年齢層は(氷河期世代と言われているが)基礎年金の額が著しく低い。とはこのこと。

        • >国民年金加入者の中に基礎年金が低年金にならない人がいるように、
          基礎年金満額支給されてても生活保護受給している人はいますが?
          年金受給額分生保の金額が減額されるだけです。

      • Aさん(架空)の話をすればわかりやすいかも。
        Aさんは55歳、ある中小企業に勤めている。勤続10年だ。55歳で10年勤続? その前は?
        実は大学を卒業したのが就職氷河期真っ最中、正社員の職にはつけず、アルバイトや派遣社員として働いてきた。その間、年金には入っていない。
        今の会社であと10年働けそうだが、年金の支払い期間が短く、かなりの低年金になりそうだ。
        就職氷河期は10年以上続いたので私のような人は多いらしく、最近政府が対策を考えているという。厚生年金の2階部分を使うと言っているが、ネットをみると厚生年金積立金の国民年金への流用と言っている。私は国民年金には一度も加入したことも払ったこともないが、なぜ国民年金への流用なのか。基礎年金への流用の間違いではないのか。10年後に私がもらうのは老齢基礎年金と厚生年金報酬比例部分のはずだが。

        • 「〜と聞いたことがある」
          「〜という」
          「ネットを見ると」
          っていうのが多すぎません?

          ちゃんと情報源をひとつずつ特定してその情報源に何と書かれているかを
          「正 し く 読 む」
          ことから始めた方が良いかもしれませんね。知らんけど。

          • よく読んでください、
            これAさんという架空の人物の話ですよ。
            このように書くのが理解が速いと思ってね。

            国民年金という入口から入ったカネは基礎年金に貯まる。
            それは厚生年金から入ったカネも同じ。(2階部分は別のところに貯まるが)
            流用は基礎年金の中の低年金者に対して計画していたようだ。(反発が強すぎて法案に「やる」とは書けなかったようだが)

            私はこのような流用に対して賛成しているのではない。逆に「ビタ一文」払うなと言いたい。
            理由は3つある。

            ① 年金は障害年金や遺族年金など除けば、多く払った人、長く払った人が多くもらうものだ。
            少なく払った人が多くもらうようなことはするべきではない。そういうことは福祉の世界でやってくれ。

            ② 低年金の高齢者が増える=生活保護が増えるということを用心してやっているとしたら本来税金でやるべき対策を厚生年金の積立金を使ってやろうとしていることになる。これは2重の流用。

            ③ 就職氷河期にあたったというのは気の毒だが、そういうタイミングの悪さから来る不幸は世の中にはいくらでもあるのではないか。戦争の時期に兵隊にとられて戦死とか。

          • 当ウェブサイトはコメント自由なので、間違った知識を打ち込んでドヤ顔するのもいちおう自由ではあります。

            ただし、先ほども申し上げましたが、コメントする前に、ひとつひとつの情報源をちゃんと特定して、それらの情報源に何と書かれてあるかを「正しく読む」ことから始めた方が良いと思います。

            というか、事実誤認が多すぎます。

            >国民年金という入口から入ったカネは基礎年金に貯まる。
            >それは厚生年金から入ったカネも同じ。

            ま、「もっと勉強してください」としか言いようがありませんね。

          • しつこくて申し訳ありませんが

            サイト主様のコメントに
            「厚年加入者から国年加入者への一方的な所得移転となっており」とありますが、出所お教えていただければと思います。
            これに関しては長年厚生年金に加入(保険料を払った)した者として是非実態を知りたい。

      • しつこくて申し訳ありませんが

        サイト主様のコメントに
        「厚年加入者から国年加入者への一方的な所得移転となっており」とありますが、出所お教えていただければと思います。
        これに関しては長年厚生年金に加入(保険料を払った)した者として是非実態を知りたい。

        • ブログ主さんが
          >はい。明確な間違いです。
          >厚労省審議会資料をちゃんと読んで勉強してください。
          >https://shinjukuacc.com/20250531-01/

          >1階部分(基礎年金)⇒国民年金+厚生年金
          >2階部分(報酬比例)⇒厚生年金のみ
          って説明してますよー。

          • 別の匿名のコメント主様、ありがとうございました。
            厚労省年金部会資料は下記記事で既に紹介済みです。
            https://shinjukuacc.com/20250531-01/

            厚年積立金を基礎年金に「活用」って、ちゃんと書いてあるんだけどなぁ。
            てか、このコメント主さん、他人の文章をまともに読んでないんだよなぁ。

          • たびたび失礼
            資料拝見しました。これ今回の法案の元になったものでしょうか。であるならば、これからやることですよね。

            サイト主様のコメントで、「現在の年金制度が」
            「厚年加入者から国年加入者への一方的な所得移転となっており」とあり小生はこれを過去から行われていたことと解釈して、そのような資料があれば見せてほしいとお願いしたものです。
            それとも同様のことは過去にも行われたのでしょうか。

        • 資料クレクレするまえに、ブログ主さんがわざわざソース示してるんだから、ちゃんと読んだら?失礼ですよ?

          • たびたび失礼
            資料拝見しました。これ今回の法案の元になったものでしょうか。であるならば、これからやることですよね。

            サイト主様のコメントで、
            「厚年加入者から国年加入者への一方的な所得移転となっており」とあり小生はこれを過去から行われていたことと解釈して、そのような資料があれば見せてほしいとお願いしたものです。
            それとも同様のことは過去にも行われたのでしょうか。

  • 潮目を変えたのはSNSという考え方が一般的ですが、個人的にはネット証券の普及も大きな役割を果たしていると考えています
    自分で長期的に運用すれば年利3%程度であれば素人でも問題なく達成でき、複利の力により若い頃の積立金額が非常に大きいものになる(=年金のパフォーマンスが悪すぎる)ことに多くの人が気づいたと思います
    年金の破綻を誤魔化すために新旧NISAで個人の投資を促してきた自民党の活動が実は政府官僚の首を絞めていたというオチ

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