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中古マンション成約価格上昇も「東京一極集中」が続く

当ウェブサイトにおいて最近、なかば定期的に確認しているデータが、東日本レインズが毎月公表する首都圏の中古マンションの成約価格です。これによると2025年4月の中古マンション成約価格は東京都心部を中心に引き続き上昇基調にある一方、それ以外の地域ではピークアウトしつつあることが示唆されています。

東京都心部で一戸建ては非現実的?

首都圏、とりわけ東京都区内に居住している人にとっては、多くの場合は一戸建て(※とくに持ち家)よりも、現実的にはマンションなどの共同住宅(自己物件、賃貸物件問わず)に住まざるを得ません。

総務省が昨年9月に公表した『令和5年住宅・土地統計調査住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果』によると、住宅に占める「共同住宅」の割合は、東京都では71.6%と他道府県に比べて群を抜いて高く、必然的に、マンションやアパートなどに住んでいる人が多いことが示唆されます。

東京都内は物価が高いとされる一方、仕事も多く、また、乳幼児・小中学生などに対する医療費が無料になるなど子育て支援が充実していることもあってか、比較的最近まで人口流入が続いてきたため、東京都内のマンション価格相場は景気動向などを読むうえでも参考になるデータといえるのではないでしょうか。

東日本レインズデータだとマンション価格は東京集中傾向

こうしたなか、公益財団法人東日本不動産流通機構(東日本レインズ)は毎月、首都圏の中古マンションの価格(成約、新規、在庫)など不動産価格に関するデータを公表しており、これについては『レインズデータライブラリー』のページで閲覧することができます。

これについては当ウェブサイトでは最近、なかば定例的にチェックするようにしているのですが、ここ数ヵ月でひとつ、興味深い現象が生じているように思えてなりません。

それは、首都圏のマンション価格の「東京集中」です。

まずは、首都圏のマンション価格(成約価格、平米単価)全体を調べてみると、図表1のとおり、首都圏全体で見るとマンション価格は高止まりしていることがわかります(以下、本稿において図表の出所は東日本レインズ『レインズデータライブラリー』データをもとに作成)。

図表1 中古マンション成約状況(首都圏)

(【出所】東日本レインズ公表データをもとに作成)

ところが、これを一都三県について確認すると、図表2のとおり、価格の上昇が継続しているのは東京都内だけであり、それ以外の三県(埼玉県、千葉県、神奈川県)については、マンション価格はピークアウトしたようにも見えます。

図表2-1 中古マンション成約状況(東京都)

図表2-2 中古マンション成約状況(埼玉県)

図表2-3 中古マンション成約状況(千葉県)

図表2-4 中古マンション成約状況(神奈川県)

これは、なかなかに興味深い現象です。

日本全体として不動産価格がピークをつけているなかで、東京都内だけ上昇が続いている、などと見るべきなのか、それとも投機的なマネーが入っていると見るべきなのか、などについては現時点で断言できませんが、いずれにせよ、東京都内にマンションを買うというハードルが上昇していることは間違いなさそうです。

東京都心部のマンション価格が堅調

次に、同じ東京都内でも、都心部(都心3区)、城東、城南、城西、城北、多摩地区でも、状況は微妙に異なります。都心部ほど価格上昇が続いている反面、城東地区や多摩地区などは三県ほどではないにせよ、価格がピークアウトしつつある感があるからです(図表3)。

図表3-1 中古マンション成約状況(東京都 都心3区(千代田区、中央区、港区))

図表3-2 中古マンション成約状況(東京都 城東地区 (台東区、江東区、江戸川区、墨田区、葛飾区、足立区、荒川区))

図表3-3 中古マンション成約状況(東京都 城南地区(品川区、大田区、目黒区、世田谷区))

図表3-4 中古マンション成約状況(東京都 城西地区 (新宿区、渋谷区、杉並区、中野区))

図表3-5 中古マンション成約状況(東京都 城北地区 (文京区、豊島区、北区、板橋区、練馬区))

図表3-6 中古マンション成約状況(東京都 多摩地区(都区部・島嶼部以外))

(【出所】東日本レインズ公表データをもとに作成)

このことから、キーワードがひとつあるとしたら、「都心集中」、ではないでしょうか。

子育て物件自体「手が届かない」…?

このようなデータを見ると、とくに若い子育て世帯などにとって、東京都心部は引き続き不動産価格が高止まりし、少なくとも「物件を購入する」という観点からは、なかなかに暮らし辛い地域と化している様子が伺えます。

とくに、子育て世帯は(子供の年齢などにも応じて)それなりに広い物件が必要となるからです。

UR都市開発機構ウェブサイトの2019年11月15日付の『四人家族に理想の間取り~ライフステージに合わせた快適な住まいを~』という記事によれば、夫婦2人と子供2人の4人家族に必要な最低の面積は50平米(理想をいえば95平米)、などとされています。

これを単純に当てはめたら、家族4人で暮らすための最低の面積を備えた50平米の中古マンションの価格は、首都圏全体の平均だと4056万円、東京都内だと5633万円、都心3区の場合は1億円を超えてしまう、という計算です(図表4)。

図表4 地区別・50平米の物件価格(単純計算、2025年4月時点)

地区 平米単価 50平米の物件
首都圏 81.11万円 4056万円
東京都 112.65万円 5633万円
都心3区 224.22万円 1億1211万円
城東地区 91.3万円 4565万円
城南地区 124.34万円 6217万円
城西地区 142.76万円 7138万円
城北地区 94.21万円 4711万円
多摩地区 50.9万円 2545万円
埼玉県 42.35万円 2118万円
千葉県 38.27万円 1914万円
神奈川県 57.52万円 2876万円

(【出所】東日本レインズ公表データをもとに作成)

ただ、同じ50平米の中古マンションであっても、多摩地区だと2545万円で3000万円以下で購入できますし、神奈川県だと2876万円、埼玉県だと2118万円、そして千葉県だと1914万円でそれぞれ購入できる、という計算です(※あくまでも計算上は、ですが)。

マンションを投資と見るか?

いずれにせよ、現実問題としては、駅近の新築・築浅のタワマン物件などのように、上記の平均価格では購入できないというケースも多いでしょう。

しかし、普段から申し上げているとおり、そもそも子育ての期間は人生の中で限られています。

たとえば夫婦2人、2歳違いで2人の子供を持っている場合、上の子が6歳で就学し、下の子が18歳で高校を卒業するまでの年数は14年間ですが、その14年間限定で広めの賃貸物件に暮らし、子供がどちらも就職(あるいは大学に進学)したのを機に夫婦2人で暮らせる物件に移る、という選択肢もあります。

(※もっとも、)

というより、「投資家」目線でいえば、実際のところ持ち家感覚で取得できる物件は東京都内にさほど多くありません。東京都内のマンションは収益物件に適したワンルームマンションの供給が多いこともあり、正直、「家族で暮らせる」というタイプのマンションは少ないと思われます。

このように考えたら、「子育てをするために東京都内に家を買う」というのも、考えようです。

というよりも、東京都内の場合だと、「家」に対する感覚が、他の道府県などと比べると、より投資収益性という視点に沿ったものとならざるを得ないのではないか、などと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (1)

  • ファミリータイプのオーナーチェンジ物件が投資として面白いと言っていた。
    ただし現金を持っていればの話。
    投資物件は銀行ローンが付きにくい。その分安く買える。店子が出て行けばれっきとした中古マンションの仲間入り、ローンも組みやすく高く売れる。