「石破茂首相が例の商品券問題に関連し『すべてを犠牲にして一日も休まず働き続けてきた』などと開き直ったようだ。この首相、本当に許せない…!」―――。果たして本当にそうでしょうか?じつはこの「すべてを犠牲にして一日も休まず」云々の発言、石破首相の19日の参院予算委員会によるものだそうですが、それを報じた元記事を読むと、また違った真相が見えてきます。
目次
客観的証拠と適切な推論の重要性
当ウェブサイトでを長らくご愛読くださっている方ならば何となくお気づきかもしれませんが、著者自身は石破茂首相について、「好き」「嫌い」という感情でいえば、「嫌い」です。
ただ、当ウェブサイトの普段の議論はできるだけ客観的証拠と適切な推論に沿って展開しようと努めているつもりです(それができているかどうかは読者の皆様に判断をお任せします)。「客観的証拠」「適切な推論」は、そのどちらかが欠けても正しい結論は導けないからです。
だからこそ、当ウェブサイトの議論は個人的な「好き」「嫌い」の感情を極力排し、あるがままの事象をどう見るか、という観点を重視しているのであり、したがって、石破首相、あるいは石破政権下の政策についても、良いものについては素直に「良い」と認めるのが当ウェブサイトとしてのスタンスです。
たとえば次のような記事がその典型例でしょう。
戸籍の国籍欄「台湾」表記を可能に 法務省、5月から
―――2025年2月17日 5:00付 日本経済新聞電子版より
日経を含め、複数のメディアが先月中旬に報じたところによると、法務省は今年5月以降、外国人と結婚した日本人の戸籍の配偶者の国籍欄に国名だけでなく地域名を記載することを可能にするのだそうであり、これによりたとえば台湾出身者についても国籍欄に「中国」ではなく「台湾」などと記載できるのだとか。
良いは良いと素直に認めるべき
もちろん、これを石破首相自身「だけ」の功績と見るかどうかについては微妙ですが(もしかすると法務省の功績とみるべきかもしれません)、著者自身が注目する石破政権の「良い政策」はほかにもいくつかあり、良い政策は素直に「良い」と認めるべき、とするのが個人的な見解です。
こうした論調、一部の読者の皆様にとっては気に入らないのかもしれませんが(たとえば「自民党は下野すべき」と思う人は、自民党政権を褒めるような論調を一切取ってはならない、などと考えるかもしれません)、残念ながら、「嫌いな相手の功績を全否定」というのは、当ウェブサイトのスタンスではありません。
石破首相や現在の自民党を巡っては、例の「年収の壁」問題や「ガソリン減税」問題、あるいは「高額療養費問題」に「厚年保険料問題」、果ては「10万円商品券」問題に至るまで、評価できないポイントの方が遥かに多いため、結果的に当ウェブサイトが石破政権を批判しているように見えるのかもしれません。
しかし、批判するにせよ評価するにせよ、基本的には必ず論拠が必要という点については、改めて指摘するまでもないでしょう。
(そういえば、霞が関が大好きな人たちが、またぞろ当ウェブサイトへの批判をしているようですが、補助金ビジネスを批判されるのがそんなに不都合なのでしょうか?笑)
「すべてを犠牲にして一日も休むことなく働いてきた」
さて、本稿で取り上げておきたいのは、石破首相のこんな発言です。
「(私は)すべてを犠牲にして一日も休むことなく働いてきた」。
これは、石破首相が19日の参院予算委員会で自身の商品券配布問題に関連して発言したものとして、一部の「まとめサイト」で批判されているものです。
これが事実ならば、なんともひどい開き直りで、なんとも許せない発言です。
自分で商品券を配るなど(違法性があるかどうかはともかくとして)有権者の信頼を損ねることをしておきながら、「俺はすべてを犠牲にして一日も休まず働いてきたんだ」、は、いくらなんでも有権者を舐めすぎです。
こんな発言をするふざけた首相、一刻も早くクビにすべき、と思う有権者は多いのではないでしょうか。
ところが、結論から言えば、これはその発言を転載した「まとめサイト」による印象操作です。
同まとめサイト引用しているのは、『産経ニュース』のこんな記事です。
石破茂首相、商品券配布「反省」 参院予算委、改めて陳謝 自民、信頼回復努力を
―――2025/03/19 10:56付 産経ニュースより
原文を読むと…「主語」をわざと抜いている!
産経の報道によると、石破首相の正確な発言は、こうです。
「政治家はすべてを犠牲にして一日も休むことなく働いてきた。当然のことだとの思いにもう一度立ち返らなければならない」。
この発言を読むと、石破首相の答弁について、まったく違った印象を抱きます。石破首相の「すべてを犠牲にして一日も休まず」は「政治家一般」としての発言であり、「自分がそうやってきた」という意味合いではないことは明らかです。
つまり、某まとめサイトの記事、なにがおかしいかといえば、この「政治家は」という主語をわざと抜いて、『【石破首相】「全てを犠牲にして一日も休むことなく働いてきた」→商品券配布に“反省”』と、あたかも石破首相が「俺はすべてを犠牲にして一日も休まず働いてきた」と述べたかのように印象操作していることにあります。
そのうえで石破首相は自身の商品券配布問題についても「深く反省をしている」としたうえで「大変申し訳ない」と陳謝しており、くだんの「すべてを犠牲に一日も休まず」も、質問に立った自民党の岩本剛人氏の「もう一度原点に立ち返るべきだ」などのやり取りで出てきたものです。
低レベルな「まとめサイト」は淘汰される?
石破首相の「商品券事件」自体、(違法性があるかどうかは微妙ではあるにせよ)首相本人が「政治とカネ」の問題で(おもに旧安倍派の議員らに)非公認などの制裁を加えてきたという事実があることを踏まえると、「お粗末」のヒトコトに尽きます。
しかし、だからといって本人の発言を捏造したり、本人の発言を歪曲したりしてよい、という話にはなりません。
それだと2009年の衆院選で自民党を惨敗に追い込んだような一部のオールドメディアによる偏向報道と、やっていることがあまり変わりません。
そういえば、以前の『「安倍総理の肖像で石破を迎える米国」という悪質デマ』では、米ホワイトハウスを訪問した石破首相を、ドナルド・J・トランプ米大統領が故・安倍晋三総理大臣の肖像画を掲げて出迎えた、とする悪質なフェイクニューズを取り上げたことがあります。
「トランプ大統領、石破との会談で安倍総理の写真をど真ん中に掲げて日本国民にメッセージを送る」。あえて該当するウェブサイトは挙げませんが、これは石破首相の訪米に関連してとあるサイトが掲載した悪質なフェイクニューズです。そのサイトが引用した写真では、たしかに安倍総理の写真が掲げられていますが、これはホワイトハウスが公表した写真をデジタル修正したものだからです。PV稼ぎのためとはいえ、さすがに虚偽の写真を掲載するのは、悪質です。宣伝していないのに…多くの方々に読んでいただいていることに感謝!本当に、... 「安倍総理の肖像で石破を迎える米国」という悪質デマ - 新宿会計士の政治経済評論 |
時代の流れから見て、インターネットの社会的影響力が増してくるのは必然ですが、やはり、この手の悪質な「まとめサイト」が多数出現してくることも避けられないのでしょう。
もっとも、著者自身もながらくネットの世界でウェブ評論を行っていますが、一部政治家の発言を捏造して記事に掲載していたようなサイトは数年単位でだいたい廃れていくように思えます。読者層が偏るうえ、飽きられるのかもしれませんね(あるいは名誉棄損で訴えられてサイト閉鎖に追い込まれているのでしょうか?)。
いずれにせよ、「石破憎し」で事実を曲げるような記事については、いかがなものかと思う次第です。
View Comments (9)
所詮、メディアはファクトよりインパクトであり、石破首相を主語にした方が、売れるからではないでしょうか。
懸命にやっても成果が伴わないのは職が合ってないんですよ。転職をお薦めします。
ソーリー。
時々脈絡もなく急に安倍氏や高市氏持ち出して石破や現政権sageするのもいかがと思うんスけどねえ
特に片方は既に故人だし物凄く罰当たりじゃないのかな?
会計士様に敢えて反論いたします
確かに文章の直接の意味は会計士様の指摘の通りですが
ねばねば論法を散々聞かされてきた印象としては
彼の人物は心中の核心を巧みにぼかして言う事に長けています
某まとめサイトがどこを指しているかは分かりませんが
私自身これは「自分は誠心誠意努力している(だからいちいち文句付けるな)」
と遠回しに言っているのだと解釈します
かつて森氏が「女は話が長い」と発言をとがめられた件も
日頃の差別感情がふと出てしまった面もあると思いますが
「何が正しいとか、こうすべきだとかごちゃごちゃ言うな」
「俺様の利権ネット―ワークを利用すれば事はスイスイ運ぶんだ」
という風に理解していました
まあ、裏の意味を考えていたら人それぞれ限りないと思います
ネット上の議論を俯瞰して見れるサイトがないのが問題ですが、個々人の書き込みの権利が個々に帰属するということだと思いますので、勝手にキュレーションもできないのでしょう。俯瞰して見れる自然言語処理,AIのサイトがあると、このような記事も書けなくなるかもしれません。
「政治家はすべてを犠牲にして一日も休むことなく働いてきた。」
私もそうだと言っているのでしょうけど、かなり違和感がありますね。ほんまかいなとしか思えません。全てを犠牲にしてくれと頼んだ覚えもありませんし、嫌なら政治家辞めれば良いのです。
以前「俺は寝ていないんだ」と言った社長を思い出します。責任者という立場に負担を感じるのなら社長にならなければ良いのです。
政治家は全てを犠牲にしているという発言には違和感しかありません。
先生!
国会の審議中や慰霊祭式典の最中に居眠りするのは「休む」に含まれますか?
「政治家はすべてを犠牲にして一日も休むことなく働いてきた。」
私もそうだと言っているのでしょうけど、かなり違和感がありますね。ほんまかいなとしか思えません。全てを犠牲にしてくれと頼んだ覚えもありませんし、嫌なら政治家辞めれば良いのです。
以前「私は寝ていないんだ」と言った社長を思い出します。責任者という立場に負担を感じるのなら社長にならなければ良いのです。
政治家は全てを犠牲にしているという発言には違和感しかありません。
外出先で送信に失敗したと思っていたものが送信されていました。
失礼しました。