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米団体調査で今年も日本は「G7で2番目に自由な国」

浮き彫りになる「報道の自由度ランキング」のデタラメぶり

今年も米NGOの「フリーダムハウス」(FH)が世界の自由度に関するスコアリングを公表しました。これによると日本の評点は100点満点中なんと96点と、10年連続してG7で2番目に高いスコアを獲得しています。一方、かの有名な「報道の自由度ランキング」で日本より上位だったはずのコンゴ共和国は17点、ガボンは20点、モーリタニアは39点だったのだそうです。こんな実態を報じないからこそ、日本のオールドメディアは人々からの信頼を失うのではないでしょうか。

「日本は報道の自由度が低い国だ」

一部の新聞やテレビがしきりに強調する論点があるとしたら、「日本は報道の自由がない国だ」、というものです。

というのも、パリに本部を置く「国境なき記者団」(reporters sans frontières, RSF)が公表する『報道の自由度ランキング』(Classement de la liberté de la presse)では、毎年のように、非常に低い順位を記録しているからです。

ためしにデータが入手できる2002年にさかのぼり、G7諸国(日本以外は米国、カナダ、英国、フランス、ドイツ、イタリア)とこの報道の自由度を比較してみると、とりわけ2017年以降は日本がG7で最下位にあることがよくわかります(図表1)。

図表1 報道の自由度ランキング・G7比較

(【出所】reporters sans frontières, Classement de la liberté de la presse 過去データをもとに作成)

ちなみに2024年の順序は世界180ヵ国中の70位であり、これはアフリカのコンゴ共和国(69位)やガボン(56位)、モーリタニア(33位)などと比べても圧倒的に低く、正直、これだと「日本には報道の自由がない」と言われてしまうと、つい、信じてしまうかもしれません。

このランキング、なにかおかしくないですか?

ただ、日本は島国であり、私たち日本人の多くにとって、外国に出かけるのは非常にハードルが高いかもしれませんが、現実問題、外国に出かけてみると、日本社会がそこまで息苦しく不自由なのかといわれると、それはそれで疑問です。

実際、日本では首相を筆頭に、政治家を批判する書籍は書店で平積みになっていますし、新聞、テレビなどのオールドメディアも、あることないこと書きたてて与党を舌鋒鋭く批判しています(なぜか石破茂政権になってからは、オールドメディアの与党批判の舌鋒も鈍っているようですが…)。

また、ネット上で「報道しない自由」などと批判される通り、オールドメディアは「編集権」を盾に取り、とうてい公正とは言い難い報道番組などを垂れ流していても、それによって当局から罰せられることはありません。

なぜ、日本社会は、かくも「報道の自由度」が低いのでしょうか。

客観性と検証可能性がないRSFランキング

結論からいいます。

RSFのランキングが、デタラメだからです。

そもそもRSFのランキングは、「なぜその順位なのか」という評点のプロセスが開示されていません。

ここ数年に関して言えば、RSFのランキングには(言い訳程度に)5つほどの評価項目が付記されるようになったのですが、2021年以前に関してはこの評価項目すら開示されておらず、私たち一般市民としては、RSFが出してきたランキングの「結果」だけを突き付けられる格好となっています。

つまり、RSFランキングには、客観性がなく、検証可能性がないのです。

自然に考えて、日本社会がコンゴ、ガボン、モーリタニアなどと比べても「報道の自由が制限されている」などと聞くと、国際情勢の専門家からすれば一発で、「それはないな」、などと考えるでしょう。

たとえば日本よりもランキングがひとつ上のコンゴ共和国に関しては、RSFのレポートでは次のような趣旨の記載が確認できます。

  • ジャーナリストに対する恣意的な拘束は稀であるものの、(それが行われれば)非常に長期化する傾向にある
  • テレビチャンネルを含む多くのメディアは権力者の親族に所属しており、情報の独立性は強く損なわれている
  • 1997年以来続く権威主義的体制のもと、大統領またはその追随者によるメディアへの圧力、脅威、制裁があり、自己検閲が行われている
  • メディア規制機関の長は大統領によって任命されている
  • 2022年12月には規制機関は問題の内容を明示することなしにチャンネルを1週間停止することを決定した

…。

はて?

日本で「メディア規制機関」が「理由を明示せずにテレビ局に1週間の停波を命じる」ということはあるのでしょうか?首相の親族がテレビ局や新聞社の株式を保有し、テレビ局や新聞社が首相批判を絶対にしない、ということがあるのでしょうか?

疑問です。

このように、ちょっと調べたらすぐわかることですが、RSFのランキングはデタラメであり、恣意的です。

少なくとも日本では政府批判したジャーナリストが拘束されたり、裁判なしに処刑されたりすることはありません(SNSで立憲民主党を揶揄する画像を投稿したユーザーが、立憲民主党により刑事告発されるなどした事例はありますが…)。

というよりも、日本に関する記述を見ていると、記者クラブの存在を問題視するような記述もあるため(『日本の報道の自由度を引き下げているのはメディア自身』)、RSFのランキングを引き下げている原因を作っているのは、オールドメディア自身なのかもしれません。

いずれにせよ、このRSFランキング、少なくとも日本に関しては恣意的でデタラメな代物である、という点については、以前の『【総論】「報道の自由度ランキング」信頼性を検証する』などでも詳しく論じていますので、是非ともご参照ください。

本稿は「総論」的な内容です。ある国・地域が自由であるかどうかに関するランキングないし評点として著名なもののひとつが、フランスに本部を置く「国境なき記者団(RSF)」の「報道の自由度ランキング」、米国に本部を置く「フリーダムハウス」による「世界の自由度」調査です。ただ、RSFランキングでは日本は世界180ヵ国中70位と主要先進7ヵ国中最低だ、などとする情報が独り歩きしているのですが、このランキング自体を信頼して良いのでしょうか。RSFランキングでは日本はG7最低水準先日の『林智裕氏が公表の待望「ネチ...
【総論】「報道の自由度ランキング」信頼性を検証する - 新宿会計士の政治経済評論

フリーダムハウスの最新データ:日本は世界11位

さて、前置きが長くなりましたが、世界にはその国・社会の自由度に関するランキングがほかにも存在します。

そのなかでもとくに著名なものがあるとしたら、それは米非政府組織「フリーダムハウス」(Freedom House, FH)が公表している「世界の自由度評価」(Global Freedom Scores)ではないでしょうか。

RSFランキングと比べ、この「FH世界の自由度評価」が優れている点は、その客観性にあります。

FHは世界各国・地域について、「政治的権利」(Political Rights)に関する評価項目を10項目、「市民の自由」(Civil Liberties)に関する評価項目を15個、あわせて25個の設問で評価しており、それぞれの設問は4点満点とし、100点満点中でその国・地域が何点であるかを計算しているのです。

もちろん、当ウェブサイトとしてはこのFHランキングについて、「絶対的に正しい」、などと言うつもりはありません。

しかし、少なくともこのランキング、検証可能性は高く、その評点について「おかしい」と思うならば、個別項目についての評点と、その評点が付されることになった論拠を読みに行けば、それが正しい評価であるかどうかを議論することができるのです。

これが、RSFのデタラメランキングとの最大の違いです。

そして、このFHランキングは例年2月末から3月中旬ごろにかけて公表されるのですが、今年、つまり2025年版の速報がすでに公表されていたようです。

図表2 フリーダムハウス・世界の自由度評点上位国・地域(2025年)
ランキング 国・地域 評点
1位 フィンランド 100点
2位 ニュージーランド、ノルウェー、スウェーデン 99点
5位 カナダ、デンマーク、アイルランド、ルクセンブルク、オランダ、サンマリノ 97点
11位 ベルギー、エストニア、日本、ポルトガル、スロベニア、スイス、ウルグアイ 96点
18位 豪州、チリ、ドイツ、アイスランド 95点

(【出所】Freedom House, Global Freedom Scores データをもとに作成)

日本は10年連続で96点:G7で比較しても2番目に高い国

トップは100点満点のフィンランドで、これに99点のニュージーランド、ノルウェー、スウェーデンが続き、97点となったカナダなど6ヵ国が同率5位、96点の日本が他の6ヵ国とともに11位に入っています。

また、G7だけで比較しておくと、図表3のとおり、日本は2016年以降、96点を獲得し続けており、G7中で見れば、カナダに続いて2番目です。

図表3 FH自由度ランキング・G7比較

(【出所】Freedom House, Global Freedom Scores データをもとに作成)

上記図表1で見たRSFランキングとは打って変わり、日本の地位が非常に高いのが印象的です(ちなみにG7諸国で圧倒的に低いのは米国であり、イタリア、フランスなども日本と比べると自由度が低い社会だ、ということです)。

このような評点となった理由について、FHは現時点で、まだ2025年ランキングの詳細データを公表していませんが(だから速報なのでしょう)、昨年までのレポートでいえば、日本は「政治的権利」で40点満点、「市民の自由」でも60点中56点という高得点を得ています。

評点が下がる理由があるとしたら、(RSFレポートでも指摘されていた)「記者クラブ制度」などですが、逆にいえば、日本はオールドメディアが独占している記者クラブ利権が消滅すれば、カナダと並び、世界でも最も自由な社会になれる、ということでもあります。

RSFランキングのデタラメさの事例

こうしたなかで、ついでなので、今回の2025年版のFHランキングを、RSFランキング(※ただし2024年版)と対比させてみたいと思います。ここでチェックしておきたいのが、両者のズレです。

FHで日本の評点は2016年以来10年連続して96点という高得点なのですが、その一方、RSFでは日本は70位と、コンゴ、ガボン、モーリタニアなどよりもさらに低いランキングにとどまっています。

しかし、両者を突合してみると、RSFで日本より上位に位置する69ヵ国について、FHランキングで日本より評点が低い国が、なんと60ヵ国(!)もありました。しかも、ただ60ヵ国あるだけでなく、評点が日本と比べ著しく低い国も散見されるのです。

その中でもとくに印象的なのが、図表4のような諸国です。

図表4 2024年版RSFで日本より上位だが2025年版FHで日本より下位の国の例
国・地域 RSF FH
コンゴ共和国 69位 17点
ウクライナ 61位 49点
ガボン 56位 20点
コートジボワール 53位 49点
アルメニア 43位 54点
モーリタニア 33位 39点
※日本 70位 96点

(【出所】reporters sans frontières, Classement de la liberté de la presse および Freedom House, Global Freedom Scores データをもとに作成)

…。

なんとも印象的です。

やはり、FH評点で17点に過ぎないコンゴ共和国がRSFランキングで日本より上位の69位、という時点で、FH評点とRSFランキングの少なくともいずれかは虚偽であることは明白であり、常識的に考えて、虚偽であるのはランキングの透明性がないRSFの方の可能性が非常に濃厚であることは間違いありません。

正直、こんなランキングをありがたがって報じる一方、より透明性が高いはずのFHスコアリングをほとんど報じないからこそ、日本のオールドメディアは完全に人々の信頼を失ってしまったのではないか、などと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (10)

  • 毎度、ばかばかしいお話を。
    日本マスゴミ村:「日本の報道の自由度が、G7のなかで2番目という米NGOのフリーダムハウスはオカシイ」
    フリーダムハウス:「日本の報道の自由度が高く評価されたのだから、日本は喜んでいいのでは」
    日本マスゴミ村:「日本の報道の自由度が高いのは、我々のお気持ちにあわない」
    フリーダムハウス:「報道の自由度はジャーナリストを対象にしたもので、マスゴミは対象外だ」
    蛇足ですが、日本ではファクトより、お気持ちなのでしょうか。
    さらに蛇足ですが、日本がG7のなかで2番目ということは、日本より報道の自由度が低いG7の国が、5カ国あることになりますね。

    • ジャニーズ問題やフジテレビ問題をみると、日本には報道の自由がない、それどころかオールドメディア自身が報道の自由を捨てているのでは。(そう言われれば、某会計士も文句を言わないのでは)
      蛇足ですが、日本より「報道の自由度ランキング」が上の国で、政府による報道機関への弾圧があったなら、日本政府も報道機関への弾圧をしなければ、不味いのではないでしょうか。

  • RSFのは、各国記者団による自己採点的な主観ランキング
    FHのは、機関調査員による他者採点的な客観ランキング

    ↑相対的に上記であれば「批判のしやすさ指数」が導けそうですね。
    (指数 = RSF順位 ÷ FH順位)

  • 世間体に言えば、『マスコミは権力に虐げられており、国家権力に立ち向かう正義の味方でなければならない』、という事でしょう。その絵を描くために、マスコミの自由度ランキングは下位でなければならない。

    不都合な事実は握りつぶすという、本末転倒というか自作自演というか、まぁそいうことなのでしょうね。SNSが無い時代であればそれでいいのでしょうけど、SNSでいろいろバレてしまったからには、こういう自作自演は「ただの痛い人」になってしまいました。

    ただ、最近の財務省のプロパガンダを見て思うのですが、やはりマスコミは権力の犬なのかもしれません。権力に逆らえず筆を曲げる。それでも軽減税率やら不動産の優遇やらで頭が上がらない時点で同情の余地もないですがね。

    • マスコミが実際に立ち向かっているのは「国家権力」ではなく「既得権益を壊そうとする人たち」であると、多くの人に知れ渡ってしまいました。

  • 乗り物の自由度ランキング「1位はとても細かく動けて免許不要で持ち運べる電動キックボード!!個人で持てず毎回お金がかかって線路の上しか走れず時間通りにしか動けない電車は最下位!!」(他、馬車や犬ゾリなども上位にランクイン)

     ……くらい意味ないですからね。茶番やってるだけならまだしも、これを引用してきて「これからは電動キックボードだ!鉄道なんかだめだめ!!」とか"乗り物の便利さ"比べだと印象操作して利用しようとする連中の救えなさ。
     FHの方は、速度だとか積載量、安全性などを明示して比較して「鉄道は超便利」とした、と。

  • まーオールドメディアさんらは“我が意を得た”ネタ元を日本国外に求め“寡聞な民衆”相手に出羽守キメコミたいダケなんやろから“意に沿わぬネタ元”はアーアーミエナイキコエナイーーままやろなァ、知らんけど