ふだん、1月といえば外国人観光客の入国者数が減るはずの季節です。ところがどうでしょう、2025年に関していえば、訪日外国人が3,781,200人(※速報値)と、過去最多を更新しました。前年同月比でも109万人以上増えています。外国人観光客急増による経済効果は期待される反面、労働集約産業である観光業において、ここまでの観光客を受け入れる余力が我が国にあるのかは気になるところです。
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訪日外国人378万人…先月は一気に過去最多を更新
訪日外国人が、一気に過去最多を更新しました。
日本政府観光局(JNTO)が19日に公表した『訪日外客統計』の最新データによると、2025年1月に日本を訪れた外国人が3,781,200人(※速報値)と、先月(2024年12月)の3,489,800人に続き、過去最多記録しました(図表1)。
図表1 訪日外国人・月次データ
(【出所】JNTOデータをもとに作成)
驚くべき変化です。
コロナ前だと2019年7月の2,991,189人が過去最多だったのですが、コロナ禍で日本政府が外国人観光客の受け入れを中断し、2022年10月に再開するまでの期間、訪日外国人は激減した状態でした。
しかし、外国人観光客の受け入れが再開され、正常化するなかで、訪日客は伸び続けており、とくに昨年3月に3,081,781人と、史上初めて単月で300万人の大台を記録するなど、昨年は12ヵ月のうち7ヵ月において、訪日外国人が300万人を超えたのです。
旧正月「だけ」が原因とはいえない訪日客急増
しかも、例年1月といえば、それほど観光客などが多くない月でもあります。
たとえば昨年、つまり2024年1月に関しても、訪日外国人は2,688,478人であり、コロナ前と比べて増えているとはいえ、300万人の大台には達していませんでした。それが、今年は1月だけで3,781,200人と前年同月比で109万人以上増えている(増加率換算では+40.64%)のです。
これについてJNTOはこう説明しています。
「2024年は2月であった旧正月(春節)が今年は1月となり、アジアの多くの市場で旧正月に合わせた旅行需要の高まりがみられたほか、ウィンタースポーツ需要等により豪州や米国などを中心に前年同月に比べ一層の旅行者数の増加があったことなどが今月の押し上げ要因となった」。
しかし、このうちの「旧正月」も、訪日外国人急増の要因分析としては不十分です。
昨年2月の訪日外国人は2,788,224人であり、これと比べてもなお約99万人、訪日客が増えているからです。これを月次グラフで示しておくと、より明らかでしょう(図表2)。
図表2 日本を訪問した外国人合計
(【出所】JNTOデータをもとに作成)
1月でこれですから、通年でどこまで訪日外国人が増えるのか、なかなかに恐ろしいところでもあります。
旧正月を祝う国・地域からの入国者が上位4位までを占める
ちなみに訪日外国人の出身国・地域別に見た内訳が、図表3です。
図表3 訪日外国人・国籍別内訳(2025年1月)
国 | 人数 | 構成割合 |
1位:中国 | 980,300 | 25.93% |
2位:韓国 | 967,100 | 25.58% |
3位:台湾 | 593,400 | 15.69% |
4位:香港 | 243,700 | 6.45% |
5位:米国 | 182,500 | 4.83% |
6位:豪州 | 140,200 | 3.71% |
7位:タイ | 96,800 | 2.56% |
8位:マレーシア | 75,000 | 1.98% |
9位:フィリピン | 72,200 | 1.91% |
10位:インドネシア | 63,200 | 1.67% |
その他 | 366,800 | 9.70% |
総数 | 3,781,200 | 100.00% |
(【出所】JNTOデータをもとに作成)
内訳で見ると旧正月を祝う風習がある国・地域(中国、韓国、台湾、香港)が上位を占めているため、たしかに「旧正月」による訪日需要が高まったのだ、といった仮説は成り立つところではあります。
しかし、上位10ヵ国・地域に関しては、いずれも前年比で見てプラスになっていることも見逃せません(図表4)。
図表4 訪日外国人・国籍別内訳(2025年1月vs2024年1月)
国 | 人数の変化 | 増減・増減率 |
1位:中国 | 416,088(15.48%)→980,300(25.93%) | +564,212(+135.60%) |
2位:韓国 | 857,039(31.88%)→967,100(25.58%) | +110,061(+12.84%) |
3位:台湾 | 492,288(18.31%)→593,400(15.69%) | +101,112(+20.54%) |
4位:香港 | 186,300(6.93%)→243,700(6.45%) | +57,400(+30.81%) |
5位:米国 | 131,855(4.90%)→182,500(4.83%) | +50,645(+38.41%) |
6位:豪州 | 103,604(3.85%)→140,200(3.71%) | +36,596(+35.32%) |
7位:タイ | 90,585(3.37%)→96,800(2.56%) | +6,215(+6.86%) |
8位:マレーシア | 32,079(1.19%)→75,000(1.98%) | +42,921(+133.80%) |
9位:フィリピン | 56,776(2.11%)→72,200(1.91%) | +15,424(+27.17%) |
10位:インドネシア | 41,287(1.54%)→63,200(1.67%) | +21,913(+53.07%) |
その他 | 280,577(10.44%)→366,800(9.70%) | +86,223(+30.73%) |
総数 | 2,688,478(100.00%)→3,781,200(100.00%) | +1,092,722(+40.64%) |
(【出所】JNTOデータをもとに作成)
大きな効果だけでなく、副作用も!
なかなかに、強烈です。
訪日外国人を出身国別にみると、前年比2倍以上に増えている中国人の増加が非常に目立ちますが、それ以外の国・地域に関しても、少なくとも上位10ヵ国・地域に関してはいずれも増えています。
多くの外国人が日本を訪問し、日本食を楽しみ、日本を体験し、日本のファンになってくれること自体、経済効果のみならず、日本に対し非常に大きな効果をもたらしますし、「反日国」として知られていた一部の国においても、日本に対する敵愾心が鎮静化する効果もあることは間違いありません。
ただ、それと同時に、私たち一般の日本国民にとっては、交通網の渋滞、観光地などの価格上昇、さらにはオーバーツーリズムによる各種観光公害の発生などについては、そろそろ看過できる次元を超えてきていることも間違いありません。
著者自身はわりと頻繁に地方出張をする事業を営んでいるわけですが、やはり、近年だと多くの地域で外国人観光客の姿を目にするようになりましたし、正直、日本人のビジネスマンが廉価で宿泊できるような施設が減っているのも気になるところです。
観光客適正化のための入国税などの議論を望みたい
少なくとも、日本人・外国人を問わず徴収されている出国税(ひとり1回1,000円)を廃止し、外国人短期入国者のみを対象にした、ある程度高額な入国税(たとえばひとり1回数万円レベルのもの)を導入するなどして、訪日外国人観光客の適正化を実施することを検討すべきでしょう。
これに加えて現在は外国人観光客などに対して実施されている消費税等の免税という制度も廃止を検討すべきだと個人的には考えているのですが、このあたり、増税が大好きなはずの財務省がダンマリを決め込んでいるのは不思議な気もします。
なにより、現在の日本は観光業などの「労働集約産業」で稼ぐビジネスモデルではなく、半導体製造装置などの先端工業品や金融資産の対外投資などで大いに稼いでいることを忘れてはなりません(『またもや日本が「世界最大の債権国」に=国際与信統計』等参照)。
いずれにせよ、働き手が不足するこれからの日本において、半導体産業などが復活を遂げていくなかで、観光産業が人手不足などで悲鳴を上げる前に、政治家の皆様には、需要を適正化するための入国税などを、是非とも検討していただきたいと思う次第です。
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目先の利益を得るために忙しく、ICTAI投資をやる時間がないというのが現状のようです。是非、国民民主党政権の時には、大規模な入国税で一息ついて、ICTAI投資に政策誘導していただきたいと思います。
財務省には元々は日本国籍じゃない人が多いから、入国税に断固反対なのかも~。
非居住外国人に対する入国税新設には大賛成です。
数万円はちょっと高いが、1万円ならTDL入園料と同程度なので日本国への入国も同じ様なものと考えれば納得されるのではないかと思います。
3000万人で3000億円ですので、大した金額ではないが、地方(観光地に限らず)の医療・治安維持等インフラ支援に使えば一石二鳥かと。
加えて、日本国に害を及ぼさないレベルの医療保険・傷害保健への加入も入国条件にすべきと思う。