自民党が国民民主党に提示した「年収の壁引き上げ」に関する概要が判明しました。玉木雄一郎氏によると、年収200万円以下の層に対しては基礎控除を大幅に増やす一方、年収区分に応じて基礎控除を変えるという、きわめて複雑怪奇な仕組みであり、これに給与所得控除の最低保障額などが加わるという意味では、公平でも中立でも簡素でもありません。では、なぜ自民党がこんな案を出してきたのでしょうか?もしかして維新が予算案に賛成する見通しを立てたからなのでしょうか?
目次
見えてきた自民案
税の3原則とは…?
税の3原則とは、「公平・中立・簡素」をいう。これについて、国税庁『税の学習コーナー』によると、「社会の構成員として、税を広く公平に分かち合っていくため、「公平・中立・簡素」を原則とした税の制度としています」、と記載されている。
まったく、意味がわからないとは、こういうことをいうのでしょうか。
昨日の『財務省は年収の壁引き上げを何とか骨抜きにしたいのか』では、一部報道をベースに、政府・与党(おそらくは財務省と自民党税調あたりでしょうか?)がいわゆる「年収の壁103万円の壁」をめぐり、低所得者に厚くなるように引き上げる、とする案を国民民主党に提示する、とする話題を取り上げました。
どうやらこれらの報道は、事実だったようです。
国民民主党の玉木雄一郎代表(※役職停止中)は18日夜、いわゆる「103万円の壁」を巡って自公国3党の協議で自民党側から提示されたとみられる「案」のペーパーを、Xにポストしました。
文字起こししてみた
その「案」、若干不鮮明ではありますが、画像をもとに文字起こしすると、こんな具合です。
(案)
1 いわゆる「103万円の壁」
(1)令和7年分及び令和8年分の所得税について基礎控除の特例を創設する。
給与収入200万円相当以下…37万円上乗せ(※恒久的な措置)
給与収入200万円相当~500万円相当以下…10万円上乗せ(※令和7年分及び令和8年分の措置)
(注)給与所得者については、年末調整において適用する。
(参考)課税最低限は160万円(一般的な社会保険料支払いがある場合、180万円)となる。
(2)今後の対応
令和9年以降の本特例の取扱いについては、令和8年度予算編成及び税制改正において、所得税の抜本的な改革に係る検討と併せて、歳入・歳出両面の取組による財源の確保とともに検討する。
(参考)我が国の経済社会の構造変化を踏まえ、各種所得の課税の在り方及び人的控除をはじめとする各種控除の在り方の見直しを含む所得税の抜本的な改革について検討する。
物価上昇局面における税負担の調整について、源泉徴収義務者への影響も勘案しつつ、物価の上昇等を踏まえて基礎控除等の額を適時に引き上げることとし、所得悦の抜本的な改革において具体案を検討する。
2 いわゆる「ガソリンの暫定税率」
いわゆる「ガソリンの暫定税率」の廃止については、令和6年12月11日の事長合意に基づき、自動車関係諸税全体の見直しの議論と併せて、財源確保など、これに伴う諸課題の解決策や具体的な実施方法等について、引き続き協議を進める。
…。
基礎控除はなんと6段階に!?
このペーパー自体、いろいろと情報が足りないのですが、これと玉木氏のポスト内容と合わせることで、今回の自民案の骨格は図表のような具合でしょう。
図表 自民案の概要
年収区分 | 基礎控除 | 給与所得控除 | 備考 |
~200万円 | 95万円(+47万) | 65万円 | 恒久措置 |
~500万円 | 68万円(+20万) | ほぼ現行どおり? | 2年間限定 |
~所得2400万円 | 58万円(+10万) | 現行通り | 恒久措置? |
~所得2450万円 | 42万円?(+10万) | 現行通り | 恒久措置? |
~所得2500万円 | 26万円?(+10万) | 現行通り | 恒久措置? |
所得2500万円~ | ゼロ | 現行通り | 恒久措置? |
(【前提】基礎控除と給与所得控除については『減税巡るショボすぎる自公案…国民に喧嘩売った財務省』で示した情報に加え、今般の玉木氏のポストなども参考に推定。正確性を保証するものではない)
なんだかいろいろと強烈です。
基礎控除だけで6段階もあるという複雑怪奇な仕組みに加え、給与所得控除に至っては恩恵が生じる層が低所得層に限られるなど、減税効果は極めて限定的です(そもそも所得2500万円超の層の基礎控除がゼロになるという現在の仕組みも意味不明ですが…)。
だいいち、税の3原則(公平・中立・簡素)は、いったいどこに行ったのでしょうか?
とうてい、公平とも中立とも簡素ともいえません。
中間層の国民を苛立たせていませんか?
なにより、国民の多数を占めるとみられる中間層は、この案を見て、いったい何を思うのでしょうか?減税の効果が及ぶ層が極めて少数の範囲に限られると考えられるなかで、やはり自分たちのサイフに直接的に影響する論点については、議論を見守っているだけで苛立つのではないでしょうか?
故・安倍晋三総理大臣の時代に自民党を支持していたのは、じつは大卒後すぐに就職したような世代であったり、働く若年層世代であったり、といった「現役層」だった、というのが著者の個人的な仮説なのですが、この半年の「年収の壁議論」を受け、自民党支持層からこの現役層が一気に離反していかないでしょうか?
気になってなりません。
いちおう、(役職停止中とはいえ同党の代表でもある)玉木氏の現時点の反応を見る限り、国民民主党自身は現在のところ「対決より解決」を掲げて自公国3党協議から離脱せず、粘り強く交渉する意欲を見せているようにも見えます。
しかし、それを見守る国民・有権者の側は、待てど暮らせど大胆な減税パッケージが自民党側から出てこないことに、そろそろ苛立ちも見えてきたのではないでしょうか?
維新が予算案に賛成する目途でも立ったのか?
もちろん、自民党側がこんな案を出してきた理由については、いくつかの仮説が考えられます。
それらの仮説のなかでもとくに大きなものは、やはり、日本維新の会との政策協議が成立する―――、つまり、国民民主の合意がなくても予算が通る―――目途が立った、というものがあります。
実際、一部の報道によれば、現時点で維新が自公の予算案に賛成票を投じる可能性が高まっているようです。
維新が政府予算案に賛成で調整…私立高の就学支援金45万7000円以上の文書合意を前提に
―――2025/02/18 11:04付 Yahoo!ニュースより【読売新聞オンライン配信】
読売の報道によると、石破茂首相が私立高向けの就学支援金について、2026年度から年45万7000円を基準に引き上げを検討する意向を表明したことを受け、維新は「2025年度政府予算案に賛成する方向で調整に入った」のだそうです。
もちろん、維新が政府案に賛成する条件としては、社会保険料の負担軽減も挙げているため、このまますんなりと予算案が通るという保証はありません。
しかし、少なくとも維新側は「年収の壁178万円」や「ガソリン暫定税率廃止」などを予算賛成の条件にはしていませんので、もしも高校無償化や社保の負担軽減などで維新が自公側と折り合いをつけることに成功すれば、年収の壁議論はこのままペンディングとなり、国民民主案は実現しない、という可能性も濃厚となります。
「石破自民党」にとって、現在の国民世論(SNS世論)の現状が自民党にとって極めて厳しい状況に陥りつつあるという現実が見えているのか、どうにも気になるところです。
有権者の側も参院選に向け感覚を研ぎ澄ますべき良い機会
いずれにせよ、国民民主党が自民党に対し、「年収の壁」議論で中途半端なところで妥協するのか、それとも協議決裂を恐れずに「初志貫徹」を目指すのかはわかりません。
ただ、もしも国民民主党が中途半端なところで妥協したり、日本維新の会が予算案への賛成をダシに「年収の壁引き上げ」を潰したりすれば、国民は両党に対して深く失望するかもしれませんし、逆に、国民民主党がもう1度、席を蹴って立ったとしても、有権者の側は同党に対して失望しないかもしれません。
いずれにせよ、私たち有権者の側も、そろそろ夏の参院選に向けて、感覚を研ぎ澄ます良い機会なのかもしれない、などと思う次第です。
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1972年209万人→2025年75万人→2040年45万人という出生数の推移。国内需要は、縮小します。これを推進してきたのが自民党政権。
日本国民としては、出生数を反転させて、人口減少を食い止めたい。経済政策としては、まずは子育て世代の「手取りを増やす」が必須。
この「手取りを増やす」に抵抗する自民党政権。日本人消滅を目指しているの?
自民党のだしてきた案、178万円の収入の人の税がどうなるか。
基礎控除は95万、給与所得控除がはっきりしないが200万円に対して65万円なら(現行200万円で68万)あまり変わっていないのでは?
たとえば178万円の収入に対して63万円とすると壁は158万円になる。あと20万円。
財務省の考えていることはたぶん;103万円の壁の話はわかった。それを上げるのはいいがその恩恵が「壁」で問題になっているパート従業員以外の普通のサラリーマンにおよぶ金額は少なくしたい。
「103万円の壁」もう30年も変わっていないそうだ。
「下の子も中学生になったし私もパートに出ようかしら」と37-38歳の主婦は結局のところ103万円以外を知らずに働くのをやめて年金をもらう歳になってしまった。
無策とは恐ろしいことだ。
もう自民党てより、その後ろとの戦いですね、
与野党含めて政治家を入れ替える位の覚悟を持つタイミングですかねえ。
まーナカナカ国民納税者有権者をナメた案で来ましたナ自由民主党サン
基礎控除引き上げを求める有権者に「キモチはワカル」でお茶濁し頭低くして逃げを打ってきた自由民主党議員(国・地方問わず)も肚括って覚悟せにゃナラン“ターン”に突入シマシタえ
近々の増税までちゃっかり視程に載せた(しかもオールドメディアあまり(全く?)触れない)コレで国民民主党に席を蹴らせて日本維新の会とヨロシュウにニギニギ、従前の123万円で“自民党内への”減税アリバイでオケってトコすか?
日本維新も前原元旧民主党代表をリード役に大阪維新巻き込んで終焉に向かう決意をしたンかな??
岩谷センセも役職就いて“イケイケ”のツモリか知らんけどジブン選挙区でもソコまで人気無いから維新共々ヒトツフタツ踏み違えたら次無いで知らんけど
まー云うて参院選は夏やしソコまでに国民民主党を引き摺り降ろす算段有るンやろな自由民主党も
あートーキョーはよーわからんから元大統領夫人のワンイシュー政党にヤラレんちゃん???
ソラ無いヤロ!知らんけど
>肚括って覚悟せにゃナラン“ターン”に突入
保守派の会合立ち上げやら、法務大臣が職員に月餅配って、なんて話が湧き始めた今日この頃。月餅くらいで政権攻撃ってちょっとアレ過ぎだと思いますけど。
コノ間の“自民党しぐさ”から国民納税者有権者に「自民党には減税するつもりはない」「自民党には経済を活性化させるつもりはない」「自民党は財務省既得権益を守り育てるために国民経済を供物にすることが当然と考えている」などとかんじさせる考えさせる思わせる事態にハマり込んでいるコトに、自由民主党ソノモノが不感症に成りすぎておるンでしょうヨ
知らんけど
小分けにして、各個撃破していく、清々しいまでの姑息な手段。
これは、取って配ると同じで、小さな既得権益をたくさん作って支配していく方法ですね。
3党協議の時系列はネットで確認できる範囲ではざっくりこんな感じでした。
11/14 3党協議の実施を確認
11/20 3党政調会長、合意文書に署名
12/13 自公、123万円案を提示
12/17 国民民主党、協議打ち切り
12/20 3党幹事長、協議再開合意
12/24 宮沢御大のスケジュールの都合で3党政調+税調会合開催できず
(1ヶ月以上何もなし)
2/4 3党政調会長、協議再開確認
2/18 所得制限付き基礎控除案(ショボい)提示 ←イマココ
3月末 国会会期末
(xのGrokを試したけ日付がウソだらけで修正が大変でした)
年末の決裂から今回の案提示まで約2ヶ月。国会の会期末の3末までわずか1ヶ月ちょい。なのに案は実質減税とはほど遠い。
「財源ガー」と言っておきながら財源を実質議論した形跡もなく、バナナの叩き売りをやってるようにしか見えない。
自民の対応は不誠実と言われても仕方ないのでは。
今までは自公案として出てましたが今回は自民案のようで、公明が難色だそうです。
「壁」見直し、自民案は不十分 公明代表が石破首相に
https://www.jiji.com/jc/article?k=2025021800524
とすると、「公明の仲立ち」で再修正の茶番もあるのでしょうか。
とすると、自民は一体、誰の顔色をうかがって言い訳しているんでしょうか。まさか財務省?(笑)
いずれにせよ、こんな抵抗の一つ一つが自民党の支持へ影響を与えていく気がします。
国会が終わればオールドメディアの石破政権批判はなくなる(と思う)でしょう。参院選の結果への、オールドメディアの影響力、ネットの影響力、どちらがどうか結果が楽しみです。
追加
12/12 補正予算、 国民民主(+維新)が賛成で衆院通過
宮沢御大に鈴付けられる人がいないんでしょうね。政権関係者の中に。
任期6年の参院議員で地盤も盤石、自民の税調会長としては適任かも。(笑)
2021年11月 党税調会長就任、党広島県連会長交代 宮沢→岸田 (第二次岸田内閣)
お前か。
複雑な減税を提案し目眩ましを行う裏で、山梨学院大学など孔子学院開設、ファーウェイとの全面提携、附属高校では中国で現地入試を行い中国人高校留学生を大量送り込む計画の一部が、私立高校無償化でしよう。そして戸籍の破壊。若い中国人に日本語無料習得させ中国による日本植民地化計画に加担する財務省、政府。参院選では必ず見極めて投票します。
木っ端役人が考え付きそうな、いかにも姑息な回避案であり、どこが「骨太」なんかいな? 小骨だらけで食べられへんわー。看板倒れもよいところでっせ。
とにかく複雑で分かりにくい日本の制度がまた一つ増えるのを目撃している感じです。結局のところ国民には本当に必要な人への支援になっているのかどうかよく分からないほど複雑怪奇にしてしまい、「自称」減税を行ったとして曖昧に終わる予感がします。
これまでは、その「自称」減税をマスコミがそのまま伝えて、国民は「よう分らんけど、そんなものかいな」と思わされてきたけれど、SNSが発達してカラクリが明かされるようになった現在、これまで同様のやり方が通用するのかどうか、ですよね。
元祖何もしない人
「精神誠意努力してまいります、ねばねば」