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「安倍総理の肖像で石破を迎える米国」という悪質デマ

「トランプ大統領、石破との会談で安倍総理の写真をど真ん中に掲げて日本国民にメッセージを送る」。あえて該当するウェブサイトは挙げませんが、これは石破首相の訪米に関連してとあるサイトが掲載した悪質なフェイクニューズです。そのサイトが引用した写真では、たしかに安倍総理の写真が掲げられていますが、これはホワイトハウスが公表した写真をデジタル修正したものだからです。PV稼ぎのためとはいえ、さすがに虚偽の写真を掲載するのは、悪質です。

宣伝していないのに…多くの方々に読んでいただいていることに感謝!

本当に、面白い時代になったものだと思います。

当ウェブサイトは「読んでくださった方々の知的好奇心を刺激すること」を目的に、2016年7月より、著者自身が政治や経済などからそのときの話題を選び、日替わりで提供することをウリにして運営してきました。

最近は著者自身が(ガラにもなく)多忙であるという事情もあってか、数年前と比べると記事の更新頻度は落ちてしまっていますが、それでも短時間で投稿できるX(旧ツイッター)と組み合わせることで、情報発信については何とか維持しているつもりです。

ただ、これも冷静に考えてみると、すごい話です。

べつに当ウェブサイトのことは新聞やテレビなどで宣伝したわけではないのですが、それでも日々、少なくない人々が当ウェブサイトをご訪問くださっていただいているからです。

これに加えて、Xのアカウント(@shinjukuacc)に関しても、昨晩時点で2.4万人あまりのフォロワーの方がいらっしゃいますし、フォローしてくださる方々の中には現職・元職の国会議員、都道府県・市区町村議会議員を含め、政治家の方々もいらっしゃるようです。

やはり、「国の借金論は間違っている」、「日本は財政再建を必要としていない」、「減税こそ日本経済を強くする手段だ」、といった主張を、当ウェブサイトで続けていることは、長い目で見れば、それなりに大きな意義があるのではないかと思う次第です。

仮定の議論で誤りが生じることはある

ただ、多くの方々に当ウェブサイトを訪れていただき、また、Xのアカウントをフォローしていただけるのは本当にありがたい話ではありますが、著者自身も「PVを稼ぐため」、「フォロワーを稼ぐため」などを目的に、虚偽の内容や派手な内容を当ウェブサイトやXに投稿することは控えたいと思っています。

なぜそう申し上げるのかといえば、それをやった瞬間、「ウェブ評論家」としての資格を喪失すると確信しているからです。

もちろん、当ウェブサイトの場合は、何らかな不確定な情報などをベースに議論することもあるため、結果的に当ウェブサイトの議論の前提情報が誤っていた、という可能性はあります(とりわけ、報道をベースに議論を進める場合は、そのようなリスクはあります)。

しかし、ここで大切なことがあるとすれば、話題を選ぶ際に、その話題を選んだ時点では、その話題自体が事実であると信じるに足る根拠があることであり、また、それがない場合は「この情報が誤っている可能性はあるが、正しいという仮定すれば、なにがいえるか」、といった「仮定の置き方」にあります。

そして、最初から明らかに誤っていると思しき内容を、知らんぷりして、わざと「正しい」という前提条件を置いたうえで引用するのは、知的に不誠実です。

ましてや、ちょっと事実関係を調べたらすぐにバレるようなネタを使うのは、それは読者の皆様を騙しているのと同じです。

石破首相の訪米は大成功だった

さて、前提条件はこのくらいにしましょう。

石破茂首相が先日、米国を訪問し、ドナルド・J・トランプ大統領と面会したことが、話題となっています。

正直なところ、著者自身は石破首相のことは「好き」ではありませんが、この首脳会談自体は非常に良かったと考えています。首脳会談のおもな内容は外務省ウェブサイト『日米首脳会談』に掲載されていますが、大変多くの内容が協議され、多大な成果があがったと考えられるからです。

とくに故・安倍晋三総理大臣のライフワークでもあった「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の実現に向けた協業の再確認がなされたことに加え、日米同盟の強化、核の傘、尖閣への安保第5条の適用、普天間移設といった従来の関係を再確認。

そのうえで、日本の対米投資額を1兆ドルに引き上げるとの石破首相のコミットに対し、トランプ大統領からは「日本企業による対米投資への強い歓迎」という言葉を引き出すことに成功しました。これは、ジョー・バイデン前米大統領が妨害した日本製鉄によるUSスティール買収に道筋をつける者とも考えられます。

ほかにもエネルギー安保、日中関係、台湾海峡の安定、北朝鮮の非核化、拉致問題の即時解決、そして日米豪印・日米韓・日米比といった「同士国連携のさらなる強化」へのコミットメントもなされています。

ホワイトハウスの投稿からもわかる…米国は日本の首相を歓迎している

それはともかくとして、トランプ氏は安倍総理と非常に仲が良かったという事情もあり、その安倍総理の「宿敵(?)」でもある石破首相のことは快く感じていないに違いない、といった言説が、一部インフルエンサーの方々から流れていることは事実です。

ただ、米ホワイトハウスが現地時間7日付でXにポストしたこんな画像を見ると、少なくともホワイトハウス側はシンプルに石破首相を歓迎していると考えるのが自然でしょう。

この点、著者自身もトランプ氏と個人的な知り合いではありませんので、トランプ氏の「内面」については、わかりません。もしかしたら、トランプ氏自身は石破首相のことを嫌っているのかもしれませんし、利用できるなら利用してやろう、などと思っているのかもしれません。

しかし、ホワイトハウスのこの写真を見る限りにおいては、(少なくとも表面上は)日米首脳が楽しそうに握手を交わしていて、現在の日米関係をさまざまな意味において象徴していると考えるのが自然な受け止めに近いのではないでしょうか。

外交は長い関係の連続のうえに立つ

実際のところ、外交は首脳同士の親近感も重要ですが、「個人対個人」ではなく「国家対国家」のお付き合いでもあるため、首脳個人の感情を越えて、国家間の長い付き合い(とくに外交・安全保障上、経済上)という文脈も加味して考慮されるべき筋合いのものです。

今回の日米首脳会談を巡っても、「(日本の首相が)石破(氏)だから失敗するに違いない」、などと単純なものではなく、安倍総理や麻生太郎総理大臣、菅義偉総理大臣、あるいは岸田文雄前首相らが培ってきた信頼関係を、石破首相も当然引き継いでいるわけです。

とりわけ、米国で2021年に共和党から民主党への政権交代が発生した際も、安倍総理が唱えたFOIPは菅総理がきっちりと引き継ぎましたし(『FOIP・価値外交…菅外交、たった1年で多大な成果』等参照)、現在の日米関係もその延長線上に存在すると考えるのが自然でしょう。

「安倍総理の写真で石破首相を迎えたホワイトハウス」

ところが、「石破(氏)が日米関係をメチャクチャにしている」と言いたいがためでしょうか、こんな写真(図表1)を張り付けて、『トランプ大統領、石破との会談で安倍総理の写真をど真ん中に掲げて日本国民にメッセージを送る』、などとする記事を公開したサイトがあったようです。

図表1 安倍総理の写真を掲げて石破首相を迎えたホワイトハウス

(【出所】Xアカウント@AutismCapital

たしかに写真だと、トランプ氏とニコニコ握手する石破首相の後ろに安倍総理の写真がデカデカと掲げられています。そのうえで、この写真を引用した記事で、「石破が、トランプ大統領をヨイショするも」、「一枚の写真が、すべてを表してしまう」、などと称している、というわけです。

しかし、ちょっと待ってください。

先ほど紹介したホワイトハウスのXへの投稿だと、この肖像画は安倍総理ではありません(図表2)。

図表2 ホワイトハウスがXに投稿したオリジナルの写真

(【出所】Xアカウント@WhiteHouse

早い話が、フェイクニューズです。

いちおう、そのサイトのURLを当ウェブサイト側から示すことはしませんが(そのサイトのPVカウントになるのもしゃくなので)、ただ、いくらPV稼ぎのためだからといって、ここまで露骨な偽造写真をウェブサイトにデカデカと掲載するのは、いかがなものかと思います。

PV稼ぎでウソをつくのはウェブサイトとして最低の行為

繰り返しになりますが、著者自身は石破首相を好きか、好きでないかと問われれば、「好きではない」と答えます。

しかし、こうした個人的な好き・嫌いの感情が表に立ち、今回の日米首脳会談の成果を正しく評価できなくなってしまうようであれば、それはウェブ評論家としてはかなり失敗していると言わざるを得ませんし、ましてや明らかにデジタル加工された虚偽の写真をさも事実であるかのように使うのは悪質です。

また、当該サイトも海外のフェイク・アカウントに騙された被害者だ、と主張するかもしれませんが、こうした主張は成り立ちません。ホワイトハウスのXアカウントが公開しているオリジナル写真と照合すれば、虚偽であることが一発でわかるからです。

さすがにここまでくると、当該サイトは「PV稼ぎでウソ、デマをバラまく悪質なアカウント/ブログサイト」と断じて差し支えないでしょう。PV稼ぎでウソをつくのは、さすがにウェブサイトとして最低の行為です。

いずれにせよ、少なくとも当ウェブサイトでは、これまでも、これからも、出所は可能な限り明示すること、記事執筆時点で事実かどうか確認が取れていない情報については可能な限りその旨記載すること、などに努めてまいりたいと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (20)

  • 1日経って既に評価は出そろいつつありますが、成果はあったし成功としか言えないですよね。うまくやったと思います。
    首相補佐官の長島氏のツイートが印象的でした。総裁選で二階派から推薦人に入らされた人。

    長島昭久
    https://x.com/nagashima21/status/1888366286352384322
    今回の日米首脳会談の成功は、石破総理が無我の境地で準備に没頭し、それをNSS霞が関が一丸となって支えたことは勿論、安倍総理の偉大なレガシーを基盤として、昭恵さんによる事前の会談がトランプ大統領に大きなインパクトを与えたことを決して見逃すことはできません。オール🇯🇵の勝利。
    ===

    「無我の境地」ですって。(笑)
    首相就任後は外交安保のヘンな発信はほとんどフタをしていましたが、この人の頑張りもあるんじゃ無いのと思いました。
    川上という内閣参与もいるんですけどね。鳩山外交化はしませんでした。岸田路線とは酷似。

  • 捏造や流布が許されないのは当然ですが、一時的な出来事だけで評価するのも早計でしょう。そもそも、石破氏を選んだ時点で、自民党はもはや保守政党とは言えなくなっています。現在の日本は、中国と米国の間で明確な立場を示せず、かつての韓国のような扱いを受けるようになっていくのではないかと考えています。

    • 首脳会談の事実、写真からみて成功と評価するのが早計なら、石破氏を選んだ一事で保守政党でないとする評価も同じでしょう。
      非論理性、流布の妙な用法、前提や事実なしに考えを押し出す短絡は、馬鹿に投票権を与えるなと主張した某氏に重なって見えます。

      • 石破を選んだことは単なる出来事ではないでしょう。彼の政策や発言はリベラル寄りであり、保守層からの支持が薄いのは明らかです。これを単なる一時的な出来事として片付けるのは適切だと思いませんが、まあ考えは人それぞれですね。

    • 首脳会談の評価と、首相や内閣や与党そのものの評価は評価軸が別なんですよね。
      本記事は前者に限った評価、論点だと思います。石破内閣ヨシ、なんて言ってない。
      記事の意図には、論点を区別しましょうというのもあ入ってます。ネット上には石破憎しのあまり、会談は失敗と言う意見も見られましたんで、牽制でしょう。

      ということを踏まえれば、本記事の結論を論点違いで否定するのではなく、論点が違うことを明示して主張すれば行き違いも少なくなるかもです。
      行き違いがあった方が盛り上がりますけどね。

  • 何を以て大成功とするかは、いろいろと定義と言うか、考え方があると思うのですが、少なくとも、安倍外交の路線をそのまま継承するような感じですし、すぐに関税を掛けられるという事もなさそうなので、そういう意味では、自民党でよかったと言えるし、成功だったのかもしれません。

    ただ、決してハンサムでもない石破に対して「彼のようにハンサムになりたい」とか、明らかなお世辞って、少し日本の首相が馬鹿にされた様でちょっと残念に思います。(石破をハンサムと思っている人すみません)
    何と言うか、相性が悪い二人が二人で話をしなきゃいけない時に、当たり障りのない天気の話とか、容姿を褒め合うとか、そんな印象を受けました。

    まぁ、個人的な感想で言えば、何よりもマスコミ全社が「成功だった」って言うのが気に入りません。(決して失敗と言いたいわけではない)

    • まぁ、トランプに言わせれば、いっぱい貢ぐ約束をしたので、リップサービスをしたのかもしれないですけど。
      今回の会談は石破が、と言うよりも外務省が頑張ったのかもしれませんね。

  • 中身を検証してみて下さい。
    台湾有事になったら日本も戦争に巻き込まれる事をコミットメントしたようなものです。
    法契約と同じように細部まで検証して下さい。

    憲法9条が事実上の無効化されるのは、アメリカ軍が攻撃を受けた時です。

    https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA07EG70X00C25A2000000/

    台湾や沖縄の今の状態は。

    >【解説】中国が宗教や暴力団経由で台湾軍人をスパイに...日本が学ぶべきこと

    https://www.fnn.jp/articles/-/820387

    >習近平の「一言」がきっかけで、中国が沖縄を狙い始めた…! 共産党「浸透工作」の実態を暴く

    https://news.yahoo.co.jp/articles/371e017bc93e8a9e5784a075cd1596c5d5a915e4

    • 台湾有事になったら米国とは関係無しに日本が巻き込まれる可能性が極めて高いので、日本としては米国を巻き込めないと逆にヤバい、ってのが政府の従来の考え方で、個人的には合理的と思います。
      与那国と台湾の距離は100kmくらいだし、先日の中国のミサイル訓練でも日本のEEZに撃ち込んでましたね。
      まあそこは、今更と思います。

  • こういうフェイクニュースを土台にして軽はずみなことを言う、記者、議員、自称知識人も同様に悪質で、要注意だと思う。

  • あーやだやだまた読解力の低いのが涌いてるわ
    石破首相が首相としてどうなのかという論点と日本の外交は別でしょ
    石破首相を選んだ自民党が駄目って話と
    今回の個別の会談が成功だったかどうかって話は
    ちゃんと分けて考えましょうね

    ところで記事で取り上げられているニュース
    Total News World トランプ大統領、石破との会談で安倍総理の写真をど真ん中に掲げて日本国民にメッセージを送る http://totalnewsjp.com/2025/02/08/trump-3159/
    これですね
    Total News Worldはフェイクニュースが多いので釣られないように気を付けましょう

  • 今回のトランプ石破会談。強面ジャイアンが気弱で根暗な子分を表面上笑顔で羽交い締めしている図に見えました。主観ですけど。
    下手なことしたらどうなるか分かってるよな?とね。

  • まあ、今回の首脳会談は成果があったのは確かですね。
    あとは今後はどうなるのかなあと、前準備に時間をかけて有能な人達が頑張った結果だと思いますしね。

  • 共和党は民主党以上に習近平国家主席の国際的影響力拡大路線に対する警戒心が強いと思います。
    特に日本は、地政学的にも経済的にも、中国と対峙する上において大変重要な立場にあります。
    アメリカの立場からすれば、いきなり日本に難題を吹っ掛けて日米関係を損なうのは下作です。
    まずは日米友好を中国に見せつけると言う作戦から始めるのが正解では無いでしょうか?
    日本も日米友好を中国に見せつけて中国に付け入る隙を与えないという事を意識する必要があります。
    トランプ大統領の顔色だけを窺って一喜一憂しているのはあまりにもレベルが低いと言わざるを得ません。
    もう少し主体性を持てないものですかね?

  • 毎度、ばかばかしいお話しを。
    石破総理:「安倍元総理の力をお借りするために、ホワイトハウスに安倍元総理の肖像画を掲げてもらったのだ」
    もしそうなら、各国、トランプ大統領との会談に、安倍元総理の肖像画を掲げるのではないでしょうか。
    蛇足ですが、もし成果を出せるのなら、誰の肖像画でもよいのでは、ないでしょうか。

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