不祥事に揺れるテレビ局が、あろうことか、社長記者会見を「クローズド」にしてしまったようです。とある男性タレントと「芸能関係の女性」のトラブルを巡り、それにフジテレビ幹部が関わっていたとする疑惑を巡り、フジテレビの港浩一社長が17日に行った記者会見では映像撮影が禁止され、中継もなく、また、参加する記者も限定されたというのです。テレビ業界が普段から偉そうに「報道の自由」を標榜していることを思い出しておくと、なかなかに呆れた事件です。
目次
不祥事があった会社に社長会見を求めるメディア
当ウェブサイトでは長らく、新聞、テレビを中心とするオールドメディア業界を巡っては、「その発する情報の不正確さ」と並んで、「ダブル・スタンダードぶり」を、テーマとして取り上げてきました。
どこかの会社で何らかの不祥事や事故などが発生した場合、オールドメディア関係者がカメラやマイクを持ってその企業に押し掛けたりするのは当たり前のように見られますし、社長会見の設定を要求したうえで、メディア記者らはときとしてかなり無礼な質問を投げつけたりすることもあります。
たとえば、ちょうど2年前に読売新聞オンラインが配信した次の記事によれば、さまざまな企業不祥事などに関する社長記者会見の様子が取り上げられています。
「社員は悪くありませんから」「私は寝てないんですよ」…企業イメージ、トップの謝罪次第で一変
―――2023/01/17 05:00付 読売新聞オンラインより
このなかでこんなくだりが出てきます。
「雪印乳業の集団食中毒事件では、石川哲郎社長が会見を打ち切った後、記者に詰め寄られて『私は寝てないんですよ』と言い放った。この失言が猛烈な批判を浴びた」。
メディア記者は会見の場を「失言を引き出す機会」にしていなかったのか
たしかに、集団食中毒という不祥事を発生させた会社の社長が、記者の前で「私は寝てないんですよ」と発言してしまったことを「失言」といわれればそのとおりでしょう。
ただ、(これは著者自身の私見ですが)記者会見という場はときとしてメディア記者が相手に対し「失言」を引き出す機会として悪用されているフシがあることもたしかです。要は、記者会見を一種の「糾弾の場」として利用したフシがある、ということです。
このように考えるならば、雪印の件もメディア記者らにとって、社長の「私は寝てない」発言は多くの人が食中毒に苦しむなかで消費者の雪印に対する敵愾心(てきがいしん)を煽るのに十分な「成果」だったといえるのかもしれません。
もっといえば、一部の記者の中には、記者会見の場を使い、ときとして相手に反論を許さず舌鋒鋭く相手を追い詰めることで「失言」あるいは「問題発言」を引き出し、それにより相手の信用を失墜させることを目的にしているのではないかと疑われるケースもあります(とくに政治家に対する会見などがその典型例でしょう)。
いずれにせよ、オールドメディアは企業不祥事などに際し、その企業の本社などに押し掛け、社長会見を開くことを要求したり、ビル周辺を歩いている従業員らに対し(本人に無断で姿を撮影するなどしたうえで)マイクを向けたり、酷い時には本社ビルなどを報道ヘリで空撮したりします。
さらには、メディア記者はその会社の社長・会長宅に押し掛け、本人が在宅しているであろう早朝・深夜の時間帯等に呼び鈴を鳴らしたり、近所の人に取材をしたりすることもあります(これがいわゆる「突撃取材」です)。「ワイドショー」と呼ばれる番組がその典型例でしょう。
こうした過度な取材を通じて、「あの企業は悪い会社だ」、といったイメージが植え付けられることもありますし、また、企業としてはそうしたターゲットとされないよう、一種の「みかじめ料」的に、決して安くないCM料を負担していたフシがあるのです。
野球選手の新居を報じた日本のテレビ局
なお、少しだけ余談です。
テレビ局の「行き過ぎた取材」は、企業不祥事以外の分野でもしばしば発生しています。
昨年は米メジャーリーグ・ドジャーズの大谷翔平選手がロサンゼルス郊外に新居を購入したところ、フジテレビと日本テレビを中心とする日本のメディアが近隣住民にインタビューするなどし、あろうことか、新居の外観がわかる映像をも放送した、という「事件」もありました。
《大谷翔平、受難再び》“30億円新居”情報の流出騒動 家具アーティストのSNS経由で特定され、“豪邸と寝室写真”がネット上を回遊
―――2024.10.23 07:00付 女性セブンより
小学館『NEWSポストセブン』やその他のいくつかの報道記事によると、大谷氏は結局、問題の新居への入居を見送り売却したとの話もありますが、これもメディアの過度な取材により実害が生じた事例のひとつとして記憶されるべきものです。
(※もっとも、一部メディアは、LAで今年1月に発生している山火事の影響で、大谷氏が購入・売却した新居も全焼したとの情報を掲載しているようですが、このあたりについては真偽不祥です。)
腐敗トライアングル構造:身内の不祥事は庇う
いずれにせよ、企業不祥事などが発生した場合(や著名人が新居を購入した場合)などに際し、メディアがその企業にかなり行き過ぎた取材を行うこともある、という点については間違いないところです。
しかし、ここでもっと理解に苦しむ点があるとすれば、メディア業界から何らかの不祥事ないしスキャンダルなどが発覚した場合、不思議なことに、同業他社はその社に対して舌鋒鋭く追及するということにはあまり熱心でないというフシが見られる、という点です。
というよりも、オールドメディアは自分たちにとって都合が良い内容とそうでない内容で報じ方や取材方法を変えているフシがあります。『世論を「鎮圧」できなくなった官僚とオールドメディア』でも述べた「腐敗基本構造」がその典型例でしょう。
腐敗トライアングルの基本構造
- 「野党議員やメディアに不祥事が生じても、官僚機構は立件しない」。
- 「官僚機構や野党議員に不祥事が生じても、メディアは報道しない」。
- 「官僚機構やメディアに不祥事が生じても、野党議員は追及しない」。
©新宿会計士の政治経済評論(https://shinjukuacc.com/)
そして、オールドメディアは同業他社で何らかの不祥事が発覚しても、あまり舌鋒鋭く追及することはありません。
日テレ系列の日本海テレビで2023年11月頃、日本テレビの「看板番組」である『24時間テレビ』に関連し、日本海テレビが集めた募金の一部を同社の幹部が着服していたことが判明しましたが、調べた限り、主要メディアが日本海テレビ、あるいは日テレに「突撃取材」したという事実は見当たりません。
あるいは、昨年は人気漫画のドラマ化でテレビ局側が漫画作者の意向を無視したストーリー改変をしたとして、原作者がそれを苦にみずから命を絶つという痛ましい出来事がありましたが、この問題で、やはり同業他社などが問題のテレビ局に「突撃取材」したという事実は見当たりません。
不思議ですね。
フジ社長の密室会見
こうした文脈で取り上げておきたいのが、「フジテレビ社長密室会見事件」です。
フジテレビを巡っては昨年12月頃からの週刊誌報道により、現在、フジテレビの編成幹部が関わる著名男性タレントとの会食に「芸能関係者の女性」が参加させられ、「トラブル」に巻き込まれたとする疑惑が持ち上がっているそうです。
この件を巡って行われたフジ社長の「緊急会見」が、密室で行われたというのです。ここでは『スポニチアネックス』の記事を紹介します。
フジ港社長、緊急会見 異例の“クローズ会見”ウェブ媒体、週刊誌、映像撮影NG
―――2025/01/18 04:11付 Yahoo!ニュースより【スポニチアネックス配信】
スポニチの記事によるとフジテレビの港浩一社長の会見では、在京の一般紙、スポーツ紙、通信社などで構成されるラジオ・テレビ記者会に加盟していないウェブ媒体や週刊誌の参加は認められず、生配信もない「異例のクローズ(ド)会見」となったのだそうです。
会見では(加盟社ではない)NHK、あるいはフジ以外の在京キー局の記者も出席したものの、映像撮影は禁止という代物で、参加者を限定したことについてフジテレビ側はこう説明したそうです。
「会見の方策を考えた結果、総合的に判断し記者会主催の定例の社長会見ということでやらせていただいた」。
なるほど、この言い分はなかなかに強烈です。
なにも説明になっていないからです。
テレビ業界といえば、普段、舌鋒鋭く「報道の自由」を主張している人たちですが、自分たちについては自由な報道を認めず、フリーの記者らを排除し、それどころか映像撮影まで禁止したのですから、冗談にしても笑えません。
疑惑の衝撃もさることながら、普段、他者に対しては舌鋒鋭く「説明責任」を求めておきながら、自分たちにとって都合の悪い事実についてはこうやって逃げるのがテレビ局なのでしょう。まさにダブル・スタンダードの極みです。
著者自身などは、普段からマスメディアの皆さんがやっているように、フジテレビの社長宅に早朝や深夜の時間帯に呼び鈴を鳴らしたり、報道ヘリで爆音を立てながら社長宅を映したり、社長宅の近隣で張り込んだりしたうえで、カメラの前で社長のコメントを強引に取ってくるくらいのことはしてほしいと思ってみたりもします。
早速始まったスポンサー離れ…これから加速か
ただ、それ以上に問題なのは、スポンサー側でしょう。これまでどおり「みかじめ料」的にテレビのスポンサーとなり続けるかどうか、判断を迫られるからです。
すでにテレビ局の社会的影響力は、SNSを含めたネットに完全に逆転されており、「都合が悪い内容を報じられたりしないようにする」という、一種の「みかじめ料」としての効果は薄れていますが、それだけではありません。
とりわけわが国の上場企業においては、反社会的な勢力に対して金員を渡すことがタブーとなっていますし、また、反社会的な行為を助長するようなあらゆる支出が厳しくチェックされる時代となりつつあるのです。
このため、フジテレビ(あるいはその他の民放各局)に広告料を支払っている各社にとっては、その広告支出先であるテレビ局の放送内容であったり、テレビ局従業員の倫理観であったり、といった論点に、今まで以上に敏感にならざるを得ません。
こうしたなかで取り上げておきたい話題が、これです。
日本生命、フジテレビCMを見直し トラブルへの社員関与報道で 19日からACジャパンに差し替え
―――2025.01.18 04:35付 ニッキンONLINEより
金融の業界紙『ニッキン』の電子版の記事によると、日本生命保険相互会社が19日以降、同社がスポンサーを務めるフジテレビの2つの番組について、自社CMから公益社団法人ACジャパンのCMに差し替える対応を取るのだそうです。
ニッキンは「他の生損保ではまだ様子見で具体的な対応に至っていないケースが多い」としつつも、「業種を問わず、他の企業でもフジテレビへのCM出稿を見直す動きが広がるかが注目されている」としているのですが、これはまったくそのとおりでしょう。
反社会的な団体等への出資に非常に厳しい金融機関・生損保がこのような対応を取るのは自然な流れですが、これら以外の業種に属する事業会社等においても、当然、(とりわけ上場企業等では)広告の出稿基準が厳格化するのは当然のことです。
実際、ニッキンの記事以外にも、たとえばいくつかの記事で、こうした動きがトヨタ自動車や明治安田生命保険などにも広がっていると指摘されています。
明治安田、フジCM差し止め 日本生命やトヨタも―中居さんトラブル
―――2025年01月18日20時22分付 時事通信より
さらに、(なぜか知りませんが)最近はスポンサー企業に対し一般消費者が電話やメールなどで「お問い合わせ」を行うことが増えているようであり(不思議ですね)、こうした「お問い合わせ」は今後、増えることはあっても減ることはないでしょう。
ただでさえ、最近のテレビは「つまらない」と感じる人が増えているなかで、こうした社会的圧力が高まっていけば、テレビ業界からの視聴者離れとスポンサー離れ、そしてクリエイター離れが同時進行で進んでいくことは目に見えています。
その意味で、今回の「テレビ局密室会見事件」も、テレビ、そしてオールドメディア業界の衰亡を象徴するひとつの出来事だといえるのかもしれません。
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欺瞞と隠蔽はいつもセットです。
「今のフジテレビ放送」これから Youtube 投稿動画が相次いで、全世界が日本の TV メディア産業の腐敗を記事にしだすことでしょう。
そうばん番組が作れなくなるだろうな。そう考えて来ました。出演機会がなくなった芸能人や知識人の収入が絶たれる。スポンサーシップの意味と仕組みが変わった。この世を回しているのは、カネの回転させる仕組みである。TV局社長はその役目を自ら破壊した。次に自壊するのは新聞業界だ。新聞記者大失業時代は今年から。
オールドメディア「最後に勝つのは俺達だ!アホな国民はすぐに忘れる!ゲーッハッハッハ!!!」
これを契機に、有耶無耶になっていた外国人株主比率問題も俎上に上がって欲しいものです、勿論フジテレビ以外も。
NHKの国際放送問題も有耶無耶になりつつありますが本来NHK解体になり得るほどの不祥事ですよね。
スポンサー離れで、変な特権意識が改まればいいんですけどね。
「俺たちの費用勤続(ひようきんぞく=高人件費体質)」は終わり。
・・ってことで。
今は「契約だからカネは払うがうちのCM流さないでくれ」に対して空いたところは「ACジャパン」でということだろう。
タイム(番組提供+コマーシャル)で「この番組はごらんのスポンサーの提供で御送りします」という部分どうするのかな。
フジでコマーシャルを流すことが「リスク」になっている現状ではこれからも降りるスポンサーが続出するだろう。次に下りないスポンサーに対する好奇の目、ガセ情報、トンデモ話。
「しょうがね~なうちも降りるか」ということになる。フジをつけると朝から晩までACジャパン状態になる。
コマーシャルのはかなさを思い知り、「コマーシャルなしでも製品の売れ行きにあんまり影響ないね」となり他の局のコマーシャルも減る。
フジは収入激減、希望退職、停波、ユーチューバーのための貸しスタジオ、編集請負になる。
TV業界が貸しスタジオ編集請負ビジネスで転業存続できるかについては当方は疑問に思います。
クリエイティブなクリエーターが、クリエイティブなクラウドで、クリエイティビティを日々発揮している。必要なのは動画編集 PC と(必要ならリビングを装飾した)スタジオ代わり舞台装置、取材はスマホ、実時間生中継も可能。そんな時代に巨大装置産業の残存値打ちは小さい。
石破茂首相、政治記者に何かコメントを求められるはずですが、コトバ選び次第では致命傷になる。フジテレビを庇うのかと。
テレビ局といえども、謝罪記者会見に失敗すれば、会社が倒産することもあり得る、という前例になるのでしょうか。(もしフジテレビが倒産すれば、フジテレビ正社員が、抗議デモをするのでしょうか)
蛇足ですが、フジテレビは、いざとなれば不動産業の収入で、テレビ業務を続けていけばよい、と考えているのではないでしょうか。
(テレビ欄だけで、番組を視聴していないので恐縮ですが)今話題のフジテレビ系番組の本日の「ザ・プライム」は、「中国人、日本移住加速」だそうです。これは、視聴率のために煽っているのでしょうか。それとも、日本への警告でしょうか。
企業であれ個人であれ、都合の悪いことは隠しておきたい、というのは古今東西共通の心持ちだとは思いますが、自社社員の公益意識の高まりとSNSの発展により、もはや難しくなってきました。
それを踏まえて、不祥事が発生した際の「おわび会見」におけるトップの振る舞いは、企業イメージに対し、致命的な打撃となりかねません。
先般のフジ社長の記者会見は、これまで舌鋒鋭く追及してきたことを勘案しなくても、ひどいものでしたね。スポンサー企業が、次々とCM降板を発表したのは、当然だろうと思います。
私も、大した影響はありませんが、それ以来8CHを見ないことにしております。
> それ以来8CHを見ないことにしております。
8CHだけでは済まないかもしれませんね。
TBSで三谷幸喜氏が「一番やっぱり知りたいのは、これはじゃあ、フジテレビだけの話なのか、っていうところですよね」とコメントしたそうです。TBSのアナウンサーはそれに答えず逸らしたらしいと。
会見に参加できたのは記者クラブ加盟社だけで、録音禁止、メモは手書きメモのみ。その記者クラブ加盟各社が、誇らしげに発言内容を全文掲載している。が、どこを見ても厳しく追及する質問は載っていない。
フジテレビの社長会見は、記者クラブの問題までも見せてつけてくれた。
低俗な話になってしまうが、SMAPのメンバーにもレポーターが言っていたが知らん振りでごまかしていた。SMAPも終わってしまった。
チャラい業界なんだろね。
歴代女子アナの結婚相手みてみりゃ俳優、歌舞伎役者、プロ野球選手、お笑い芸人、その他タレント。
あわよくば玉の輿とおもって女子アナになってるのかな。
安住紳一郎アナウンサーがこの件に関して:
「打ち上げ、飲み会、懇親会のようなものに女性スタッフや女性アナウンサーが参加するということは、ごくごく普通にあります。そこで信頼を得て、自分の仕事に将来つなげていく、というのはビジネスとして決して間違ったことではないと思います」
社内の会であればYesだろう。
社外の人との懇親会になんで会社の女性スタッフ、女子アナ呼ぶの。