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「教育無償化」掲げる維新…気になる政党支持率の低迷

日本維新の会は通常国会で与党に対し、予算案への賛否をてこに看板政策の教育無償化などの実現を迫る方針だ―――。これは、時事通信が報じた内容です。これが事実だとすれば、これをどう考えるべきか。正直、教育無償化は多くの国民が求めているものなのでしょうか?なんだか違う気がします。実際、TBSの世論調査でも政党支持率は国民民主党が11%であるのに対し、維新はなんとたった2.5%(!)に過ぎません。

あの頃の維新はどこにいった?

日本維新の会といえば、2021年の衆院選で獲得議席を41議席に伸ばし、2023年頃の主要な世論調査では政党支持率で軒並み立憲民主党のそれを抜いているなど、飛ぶ鳥を落とす勢いであるようにも見えました。そのうち最大野党としての地位を立憲民主党から奪うのではないかとの観測もあったのです。

ただ、満を持して(?)行われた2024年10月の衆院選では、獲得議席は38議席にやや後退してしまいました。衆院では自民党、立憲民主党に続く3番目の勢力ではありますが、28議席を有する国民民主党に迫られている状況です。

「あの頃の維新」は、いったいどこに行ってしまったのでしょうか。

ただ、こうした状況の原因について、著者自身は、現在の日本においては「政策政党」が求められているからだと考えています。

2024年の衆院選は間違いなく、SNSなどのネットメディアの社会的影響力が、新聞、テレビといったオールドメディアのそれを完全に上回ってしまったという意味での「ターニング・ポイント」でした。

そして、SNS・ネット時代においては、政党が支持されるためには「オールドメディアが好意的に報じてくれること」ではなく、「魅力的な政策を掲げてSNSなどで宣伝すること」が必要です。中身のない政党、公約が魅力的ではない政党は、いくらSNSなどを駆使したところで、有権者からはなかなか相手にされません。

よりにもよって(?)前原氏が共同代表に就任

国民民主党が躍進した理由もおそらく、「手取りを増やす」というキャッチフレーズが有権者に刺さったからであり、維新が伸び悩んだのも、「古い政治を打ち破れ」というキャッチフレーズが有権者に刺さらなかったからではないかと思いますが、それだけではありません。

維新は昨年12月、馬場伸幸代表(当時)の衆院選敗退責任を取る形でが行われた代表選で、大阪府知事の吉村洋文氏を代表に選出したのですが、吉村代表が国会議員ではないという状況で、「よりにもよって(?)」前原誠司氏を共同代表に選びました。

前原氏といえば、2023年暮れに3人の衆議院議員(※いずれも比例)と嘉田由紀子参議院議員を引き連れて国民民主党を飛び出して行ったという人物であり、維新には2024年に合流したばかりでした。

もちろん、前原氏だろうが誰だろうが、国民が求めている政策を実現し得るならば、共同代表にどなたが就任しても問題ではないはずですが、「前原体制」に対しては、どうも違和感を禁じ得ません。

維新は最近、「教育無償化」などを強く推しているのか、時事通信は6日、維新が「教育無償化で与党に圧力」、「再起めざし独自色」、などとするレポート記事を配信しています。

与党に取り込まれつつある?「年収の壁」問題は?

時事通信は、維新が「今月召集の通常国会で与党に対し、2025年度予算案への賛否をてこに看板政策の教育無償化などの実現を迫る方針」、「存在感を示すことで党勢を回復させるのが狙い」などとしていますが、これが事実だとすれば、これをどう考えるべきか。

時事通信は、こうも指摘しています。

ただ、与党に取り込まれたと有権者に判断されるリスクをはらんでおり、バランスに苦心しそうだ」。

この指摘は、なかなかに鋭いと思います。

教育無償化は一部の層には受ける政策かもしれませんが、すべての国民が恩恵を受けるものではありませんし、また、(無償化のやり方にもよりますが)私学のモラル・ハザードなどを招きかねないなどの問題も考えられます(このあたりは余裕があれば別稿にて議論してみても良いと思います)。

正直、維新は「教育無償化」よりも、どちらかといえば、せっかく社会的ムーブメントになった「手取りを増やす」に乗っかった方が有利ではないでしょうか。

当ウェブサイトではしばしば取り上げている通り、わが国では税や社保を「取り過ぎている」という問題が生じています。とりわけ社会保険料は現役の勤労層を中心に、収入の15%近くを占めることが多いです(※ただし上限があるため、年収があがれば結果的にその割合は減ります)。

また、社会保険料は雇用者が同額以上を負担しているのですが、企業から見れば「社保の会社負担分」も人件費ですので、現実にはその分も「隠れた年収」です。

東京都政管健保(令和6年3月以降分)の例でいえば、正確な負担率は厚年、健保、介護の3保険で29.88%(うち半分の14.94%が雇用者負担分)ですので、経済的な社保の負担率は約26%(=29.88%÷114.94%)です。

その残額に対して所得税(+復興税)、住民税所得割などがかかりますので、可処分所得は(社保の会社負担分を除いたベースでも)年収の8割以下、所得があがると7割台、いや、下手をすると6割台、といったケースもあります。

私たち国民は、その可処分所得から生活費を捻出しているわけですが、生活費には10%の消費税(厳密には消費税7.8%、地方消費税2.2%)を取られています。軽減税率が適用された場合も食品と新聞は8%です。

政党支持率2.5%の衝撃

つまり、この「重すぎる負担」に、国民民主党が正面から切り込んだわけであり、日本維新の会は国民民主党からキャスティングボートを奪う形でこの「減税潰し」をしようとしているかのようにも見えてしまうのです。

もし維新が国民民主党のように支持を伸ばしたいと思うのであれば、ここはひとつ、教育無償化だの、選択制夫婦別姓だのといった、(おそらくは)多くの国民が求めてもいない政策を捨て、国民民主党とともに「手取りを増やす」ための方策を自公に迫る方が現実的ではないでしょうか。

ここで興味深いのが、TBSが報じた次の記事です。

【速報】石破内閣の支持率41.4% 前回調査より0.7ポイント下落 1月JNN世論調査

―――2025/01/05 22:48付 Yahoo!ニュースより【TBS NEWS DIG Powered by JNN配信】

これによると、JNNが1月4日と5日に実施した世論調査の政党支持率は、次の通り、維新が泡沫政党に近い水準にまで支持率を落としているのです(カッコ内は前回比)。

  • 自民…26.2%(▲2.0)
  • 国民…11.0%(+2.2)
  • 立民…*8.2%(▲0.3)
  • 維新…*2.5%(▲1.5)

国民民主党が立憲民主党を上回る支持を獲得するのは、最近のほかの調査でも同様に見られる現象ですが(『少なくとも5つの支持調査で国民民主が立憲民主上回る』等参照)、それ以上に衆院の第3勢力である維新の支持率がたった2.5%というのも印象的です。

いずれにせよ、今からでも遅くないので、日本維新の会におかれては、もう少し、「国民が何を求めているか」に注目なさってはどうか、などと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (17)

  • 榛葉さんにリトル立憲民主党と言われていましたね。
    馬場さんが代表のときは第二自民党と言われており、方向性のハッキリしない何をしたいのかよく分からん政党ですね。そりゃ支持されるワケがない。

  • 政局に走る政党は支持されませんよ。
    橋下氏の「国民民主党に思い知らせてやる」発言は衝撃でした。

    立憲民主党の、くだらない揚げ足取りで自民を下げる事しかしない、政局三昧の政党よりは多少マシかもですが、維新もそういう風に見られ始めたんじゃないかと思います。

    一時期、立憲に代わる政党として期待していただけに残念ですね。

    • 自公も立民も若い世代からは指示を得てません。唯一、維新は指示されていましたが、ここ最近の動きや前原氏の自民にすり寄った姿を見て、若い世代も徐々に離れていきますね。

  • 減税潰しの維新は、自公政権と同じような選挙結果になるのでは。SNSの論調を参考にした方が良い。ベストは、手取りをもっと増やすになります。もっと増やすで国民民主と提携すべきでしょう。

  • とにかく「無償」はよくない。
    もらう側も、与える側も、どちらも腐る。
    プロセスは様々だけど、実績として必ず腐る。

    お金は、稼ぐよりも使う方が難しい。

    あとこれは妄想ですが、維新の大方針は
    「納税してない人たち」
    まで税金をトリクルダウンさせよう、させよう、としているんだ!と仮定して眺めていると、どうもスジが通るのですな。

    生活保護とか、在日とか、外国人とか、そういう層にとてもよく配慮した提案しかしてこない。

    そーゆーのに配慮するかしないかは別のところで真っ正面から議論すればよい。
    今は、なによりまず29年分の物価スライドを適用しろ!と。
    それだけですわ。

    どさくさ紛れに、余計なことすんな。

    • タダで仕事をすると、相手は喜んでくれるどころか、逆に不満をぶつけられたりします。そりゃ、お値段ゼロ円だったら"無限に言う事聞いてくれる"と思っているのに、有限しか仕事してくれないのですから。
      事情により減額してもきちんと対価を取るほうが、相手も相場感・値頃感を持ってくれて、お互い納得できる取引になります。

      本件、無償で得をするカテゴリのひとは満足するのでしょうかね。無償を飲めば飲むほど喉が渇く、そんな未来が思い浮かびます。

  • 民進党の最期はどうなった。
    昨今の国民民主は躍進した。
    そして維新の凋落ぶり・・。

    察するに、招かざる疫病神。
    ・・・・・
    *政局のままに流されるだけの存在だよね。

    • >教育無償化

      現行でも国公立大だと、それなりの所得世帯であれば、学生本人の就学意欲次第(年次ごとの単位習得)で、原則学費減免です。

      低支持率は混沌を見透かされた結果なんでしょうね。
      度を越した非課税世帯優遇は、政策ではありません。

  • 大学まで完全無償化なんてだれが求めるの
    勉強が嫌いなこどもなんて多いですよ
    座ってる時間は苦痛ですよ
    教える先生は鬱になりますよ
    教育崩壊しますよ
    机上の空論で税金のバラマキはやめてもらいたい
    就職支援も兼ねて職業教育(学校)を充実させてほしい

    • 昭和の時代は、高校の半分は職業高校でした。普通科高校で学習する内容は、生きていくのに最低限必要な知識でもなければ、職業訓練でもない 「教養科目」。はたして十代後半の全員が学習する必要があるんでしょうか?

      ネットで時々議論になる 「古文・漢文の教育は必要か?」。私の結論は 「全員には必要ない」 です。社会人になってから興味を持ったら、その時に放送大学やネットで 「学び直し」 をすればいいでしょう。

  • 教育無償化と同時に学力・能力検定も導入して、無為に学校に遊びに行かせるのは止めにしなくちゃ。それから企業も親も、学歴による差別をしたら厳罰にしなくちゃいけない。

  • 高校までの無償化は理解できますが、大学までとなると意見は分かれると思いますので、今すぐにという状態ではないのかなという気がします。
    それより、日本経済を停滞させている大きな原因である税金の取り過ぎが現在の最も大きな改善すべき日本の課題でしょうね。
    維新は、地方自治レベルの話では無く、税制や経済政策、安全保障を語らないと国政で影響力を持つことは難しいように思います。
    それから、問題議員に対する脇の甘さも支持者をうんざりさせているのではないでしょうか?
    維新は早く国民民主党との共闘を表明しないと、次回の参議院選挙も惨敗確定ですね。

    • 私もそう思う。
      大卒と高卒の生涯年収には大きな差がある。ネットで調べると6000万円と出ていた。
      つまり大学教育は投資、大学卒業証書は資産と言えるかもしれない。
      世の中には大学など行きたくない人もいる。そのような人が払う税金を使って大学に行く人の資産形成を助けていいものだろうか。
      高校授業料の無償化が支持されているのは大多数の人が高校に進学し、事実上義務教育のようになっているからだろう

  • 「教育無償化」って大学の学費まで無償化しろって言うつもりですか? 本物の馬鹿ですか?

    憲法には「国民はその能力に応じて教育を受ける権利を有する」という趣旨の条文はありますが、能力に見合わない高等教育を受ける権利までも有するとはどこにも書いていません。

    そもそも、いわゆる「Fラン大学」は(その学校法人の理事たちやそこで食っている教員たち)と小学校レベルの算数もできず小学校レベルの文章読解力も持たないのに大卒のレッテルだけ欲しい学生たち(とその親たち)以外の日本国民にとっては税金を無駄に浪費される補助金の支出先に過ぎません。

    率直に言って、現在の高卒認定試験を大学受験資格試験へと発展させて、これに合格しなければ大学を受験できないようにして、低レベルの学生しか集まらない大学は経営的に行き詰まらせて潰せば良いのです。

    その代わりに、それらクズ大学に支出していた膨大な補助金は、新たな価値とそれに基づく産業の元ネタを生み出す自然科学系(旧来の学部名で言えば理工情医薬農の各学部がカバーする分野)研究助成金や地方国立大学の設備や教員の充実に充てれば良い。

    地方国立大学の設備(図書・ネットインフラ・自然科学系の教育のための各種実験・分析機器類)が充実すれば、わざわざ遠方の大学に行くために普通の勤労者家族の家計規模にとってはとても過重な額の(東京や京都などでの)高額な住居費をどうするかという問題が地元への進学ならば解決するので、親の年収がそれほどでなくとも優秀な学生は地元で質の高い大学教育を受けられることになります。

  • 発生しないかも知れない学費より根本の生活費を国民は求めている。

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