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税収過去最高なのに財務省関係者「税収全く足りない」

過去最高の税収を受け、財務省関係者は「無駄な支出があるんじゃないかって声は受け止めないといけないけど、財政再建には、全く税収が足りていませんから。そもそもが大幅な赤字財政なんですよ」と述べたらしいです。控え目に言って頭おかしいとしか言いようがありません。「大幅な財政赤字」という認識自体が事実誤認ですが、それ以上に「財政再建」とやらの手段として、増税しか選択肢にない時点で、まさに「税の亡者」そのものです。

国の借金論のおかしさ

当ウェブサイトではこれまで何度も繰り返してきたとおり、いわゆる「国の借金」論のおかしさは、そのロジックの杜撰さにあります。

「国の借金」論とは、わかりやすくいえば、「日本は国の借金がたくさんあるから、このままだと国債を返せなくなり、日本が財政破綻してしまう」、といった主張です。

あるいは「国の借金」というストック面だけでなく、「日本は毎年のように財政赤字を計上しているから、財政は危機的だ」といった具合にフロー面から問題視する論法もあります(あるいはその両者をわざとゴチャマゼにする向きもありますが…)。

個人や企業と同一視する時点でおかしい

このあたり、私たち個人で考えてみればなんとなくわかるかもしれませんが、山ほどおカネを借りてしまったらたしかにおカネを返せなくなることもあるでしょうし、借金が返せなくなって自己破産しなければならないことだってあるかもしれません。

また、企業(とくに一般事業会社)も同じで、借金を重ねれば、その分、財務健全性は悪化するでしょうし、信用状態が悪化すれば、コベナンツ(財務制限条項)に抵触して期限の利益を喪失し、最悪の場合、事業継続の断念に追い込まれることもあります。

それだけ、借金というのは怖いものだ、と、私たち現代日本人は子供のころから教え込まれているフシがあります。

こうした個人、一般事業会社などの感覚的な常識に照らすと、「おカネを借り過ぎることは怖いこと」、「国の借金もこれと同じ」、などと思ってしまうのも、ある意味ではやむを得ない話なのかもしれません。

ただ、本当に当たり前の話ですが、こうした個人や一般事業会社の感覚で、「おカネを借り過ぎたら返せなくなる」などと議論してしまうと、結論を誤ります。

そもそも「国の借金」という用語自体が誤っているという点もさることながら(正しくは「中央政府の債務」と称すべきです)、それ以上に、国家の債務は個人や企業と同じ感覚で論じることはできません。自国通貨建ての国債の場合、その政府の財務健全性は、一国の資金循環との関係で決定されるからです。

国債は半永久的に借換が可能

まず、政府は死にません。

財務省は勝手に「60年償還ルール」なるものを設けていますが、自国通貨建ての政府債務の場合は国内に資金余剰がある限り、半永久的に借換が可能ですし、(現在の日本のように)国内の資金余剰状況が解消していないときは、むしろ国債を増発することが有益だったりもします。

そして、国債を「返す」方法も、べつにひととおりではありません。

「税率を上げて税金をかき集め、それで国債を返す」というのも手ですし、「歳出を削減して国債を返す」のも手ですが、それだけではありません。たとえば政府が保有している資産や権利を売却して資金を捻出し、国債を返すという手もあります。

ただ、国家の場合、やはり最も有効な手段は、経済成長です。

「国の借金」論者が大好きな「日本は国の借金がたくさんある」を巡っては、ロジックのひとつに、「国の借金の額はGDPの2倍」、なる主張があります。

何度も指摘している通り、そもそも論として「借金」の総額をGDPと比較して、何か意味があるとも思えませんが、それでも百歩譲って「公的債務残高GDP比率」が問題だというのならば、「借金」を減らすだけでなく、GDPを増やすのもひとつの手です。

これは、どういうことでしょうか。

公的債務を減らすのではなく、GDPを拡大しても良いのでは?

たとえば公的債務残高が1200兆円、GDPが600兆円という状態が「問題だ」、「公的債務残高をGDPと同額にすべきだ」とおっしゃるのならば、公的債務残高を600兆円に圧縮するのではなく、GDPを1200兆円に増やしたって良いはずです。

経済成長率が1%なら、GDPが2倍になるまでおよそ70年の時間が必要ですが、成長率が2%になれば35年で、3%になれば23年で、それぞれGDPが倍になります。成長率が5%ならば14年、7%ならば10年あまりでGDPが倍になります。

また、GDPが3倍になるのに必要な時間は、成長率が1%ならば110年かかりますが、成長率が2%なら55年、3%なら37年、5%なら23年、そして7%なら16年もあれば十分です。

このため、国債の発行残高をさらに600兆円追加して1800兆円にし、その代わり減税などによって国民の可処分所得を増やすなどして経済成長を7%にまで加速させれば、現在は600兆円のGDPが16年後には1800兆円に増えます。

これが、「経済成長を通じた公的債務負担の圧縮」というテクニックです。

以上より、公的債務負担圧縮のテクニックとしては、少なくとも次のようなものがあることがわかります。

  • ①税金を引上げる。
  • ②歳出を削減する。
  • ③資産を売却する。
  • ④経済成長させる。

しかし、財務省が出してくるのは、いつも①の案ばかりです。

日本政府は巨額の資産を持っているくせに、それらの資産を売却しようともしませんし、また、歳出削減についてもあまり積極的には見えません。財務省にとっては「(税を)取って(補助金などを)配る」、といったところに、利権が生じているのかもしれません。

まさに税の亡者と呼ぶにふさわしいでしょう。

控え目に言って頭おかしい

さて、そんな財務省の「税の亡者」ぶりを示すエピソードが、またしても出てきました。

「払うことで生活厳しく」最大の収入源は消費税…来年度税収 過去最大の78.4兆円

―――2024/12/26 00:32付 Yahoo!ニュースより【テレ朝news配信】

これは、来年度税収見通しが過去最大となったこと(『財源論者に不都合な事実…来年度税収見通しは過去最高』等参照)に関連する記事ですが、本稿で引用したいのは、記事の末尾にある、「財務省関係者」が述べたとする、次の内容です。

無駄な支出があるんじゃないかって声は受け止めないといけないけど、財政再建には、全く税収が足りていませんから。そもそもが大幅な赤字財政なんですよ」。

…。

控え目に言って、頭おかしい―――。

これが、著者自身のざっくばらんな感想です(※もちろん、この「財務省関係者」とやらが本当にこんなことを述べたのだ、という前提条件は付きますが…)。

「そもそもが大幅な財政赤字なんですよ」、の部分で、思わず「ウソおっしゃい」、などと叫びそうになった方もいらっしゃるかもしれません。『財源論者に不都合な事実…来年度税収見通しは過去最高』でも指摘したとおり、ここ数年、一般会計では毎年のように、巨額の剰余金を計上しているからです。

いったいどこが「赤字」なのでしょうか。

意味がわかりません。

ただ、この「財務省関係者」とやらは、どうやら「財政再建(?)」とやらの手段は「税金を上げること」しかないと考えているらしいのですが、本気でそんなことを考えているならば頭が悪過ぎますし、上記②~④の手法があることを知っていてわざと隠しているならば邪悪です。

財務官僚、じつは頭良くない?

閑話休題。

Xでちょっとした話題となっていたのが、「なぜ財務省は『年収の壁』引上げに全力で抵抗するのか」、というテーマです。

これについてはこんな趣旨の仮説が出ていました。

財務省や自民党税調インナーとしては、絶対に減税に応じないことで、『俺たちを怒らせると絶対に減税に応じないぞ』というメッセージを国民に伝えているようなものだ」。

たしかに、これもあるかもしれません。

この見解が正しいかどうかはわかりません。

ただ、仮にこの見解が正しかったとして、そうすることが彼らの狙い通りなのか、という問題があります。

もっと言えば、財務省や自民党税調インナーは、このSNS社会において、すでに公開の場に引きずり出されてしまったわけです。彼らの身勝手な議論とともに、です。

当たり前ですが、財務省や自民党税調のインナーの「恐ろしさ」(?)とやらは、内輪にしか伝わりませんし、霞が関や永田町の独自のルールのなかで、限られた人数にしか通用しません。SNS空間でそれが一般人に伝わるわけがないのです。

Xのユーザーが何人いるのかわかりませんが、想像するに、少なくとも数百万人、下手をすると数千万人レベルの国民が、SNSを通じて財務官僚を猛烈に叩き始めているのです。

財務官僚は霞ヶ関村では偉そうにしているのかもしれませんが、そもそも国民から選挙で選ばれているわけでもないわけですし、SNSなどにおける議論にも、おそらくは極端に弱いのです。

その意味で、財務官僚が「頭が良い」とする世間の俗説に対しては、著者自身は非常に否定的でもあります。じつは、財務官僚はとっても頭が悪いのではないでしょうか。

そして、頑なに減税を拒む財務官僚に対しては、SNSなどでは「国民から選ばれたわけでもないくせに、なにを偉そうな」、といった批判の圧力が、今後、高まることはあっても低下することはあり得ないでしょうし、財務省の「炎上」も、これから延々続くのではないでしょうか。

そんなことを想う今日この頃です。

新宿会計士:

View Comments (32)

  • 大変だ、ではまず財務省職員と関連団体で働いていた人間は財産を余さず全部国庫に寄付しましょう!
    なあに、生活保護があるんですし大丈夫ですよ?

    • そんなに税がたらないと言っている財務省の官僚は天下り先豊富ですよね。しかも好待遇。
      普通に考えれば集めた税で好き勝手してないか?という事です。

      そもそも貨幣は物々交換が難しいから始まったんですから、財政が赤字なんて国内ではありえないと思いますがね。

      本当に財政が赤字だと経済が大混乱していると想像するのですが・・・終戦直後のように

  • 髙橋洋一さんが言うてましたけど、財務官僚って東大法学部出身なんでしょ?
    専門の勉強したわけやないし、東大の経済学って未だにマルクス経済学やって聞いたで。
    そんなんが新卒で財務省はいったら、そらぁ世間一般でいうところのバカ、いうのができあがってもしょうがないんちゃうかな、しらんけど。

  • 「役人は、ほっとおくと、(部下を管理するも含めて)自らの仕事と書類を増やす」ということでしょうか。
    蛇足ですが、(役人だけではないかもしれませんが)役人の仕事のなかには、FAXを読む(下手な字なら、自分しか読めない)、その読み人の管理職もあるのではないでしょうか。(だから、FAX廃止に反対しているのですね)

  • 「財務省は、実は天動説のバカ」
    くらいの状況なのかもですねえ。

    新宿さんの受売りですが、TOYOTAのバランスシートで社員一人あたり借金が過大だから、一切の設備投資はまかりならん!とか、言いますかね?

    投資が無ければ組織は壊死します。
    投資が悪い訳がなくて、よい投資ならOKで、悪い投資ならNGというだけですわ。

    財源がぁ~、と言うのはラクちんですな。
    公共福祉が減りますよぉ~、と言うのもラクちんですな。

    普通なら、WBPC問題みたいに「領収書なしで監査OK」みたいなザル支出を厳しく絞り上げて絞り上げて、それから有権者に泣きつくもんですよ。

    例えばコロナの最中に、出張不可能になったお陰で旅費がちょっとびっくりするくらいに浮きました。
    取締役会でどよめくような金額。
    かといって売上はさして変わらず。
    WEB会議が積極的に推進されたのは、乗ってくる裏ドラが巨大で即効性だったから、みたいにも見えますね。

    弊社でこんなだから、自治体や国ならば、もっと凄まじい金額が浮いてるはずですが、そういう予算組み替えの話はトンと聞こえてこないし、議員もツッコミ入れてませんな。

    500万円でないとカローラ作れません!
    とか泣き言してたら倒産します。
    200万円で作れバカ!
    そういう健全なやりとりをしないと。

    収入と支出の二つに財務省を割るか、会計検査院や税務署の人員と予算を百倍にするとか、なにか仕組みの変更が必要なんでしょうね。

    • 200万円で売れる車を作れ!じゃないかな?原価は販価の半分以下のはず。

  • 「実家からの仕送り(=無心?)だより」での就学層には、
    「足りなければ稼げばいい」って感覚が無いのかもですね。

    「税金を引き上げる」のが唯一無二の『フロー(不労)対策』
    「有るところから搾り取る」ことしか知らないのかと・・。
    ・・・・・

    近所のおじさんが言ってました。
    仕事ができない奴は、地頭が悪いんじゃなくて「頭の使い方が良くない(視野が狭い)んだ!」ってですね・・。

  • >財務省関係者「税収全く足りない」
    と言うよりも
    財務関係者の『頭脳がまったく足りていない』のでは?と思ってしまいましたね。
    政治が全くアホウな官僚を制御できなかったのが所謂失われた30年でしょうか?そういえば宮澤とか言うヤツがいましたね。昔も今も一族揃って、、、、選んでいるのが国民ですから仕方ありませんね。地方も国政も弁護士と官僚の天下り先が政治屋ですから、ごくわずかには真っ当な人もいるようですが、この国の失われた30年はまだまだ続くよ何処までも?なかなか根本的に良くはなりませんかな?おらが村の先生を無条件に当選させるのはやめましょうね。西川きよし先生がおっしゃっていた『小さいことからコツコツと』アホウな政治屋を排除していきましょう。(とりあえず小泉の小僧?)

  • まー結局「敷かれたレールの上を無批判に突っ走るしか出来ないガリ勉バカしか財務官僚としては務まらない」っつーコトなんスかネ?
    デキル人間はサッサと能力を活かせる場へ移るか、ソモソモ財務省にナンゾ行かないってトコでFA??
    そら国家公務員も加速度的に人材難になりマスわナァ???
    知らんけど

  • 昨日の記事のコメ欄で紹介した動画ですが、定額減税で財務省と戦った元官房副長官の木原氏の指摘によれば、頭の悪いその根源も単年度主義だからということだそうです。

    発言の私なりの解釈ですが、財務省は二言目には「財源がない」と言う。壊れたレコードのように。その理由は「単年度主義」だから。今年減税をすると、その同じ年に減税による増収効果が出なければ減税分は丸々歳入不足となるので「その年に穴埋めの財源が必要」となる。
    この理屈だと単年度で減収となる恒久減税は永遠にできません。(※宮沢御大「税は理屈」)
    「複数年度で見ればいいじゃん」と言っても、財務省はその議論には絶対に乗らない。
    財務省が言ってることはそういうことで、バカと言えばバカなんですが、要求側に常に突きつけられる金科玉条を死守しているのでしょう。バカの一つ覚えで「財源がない」と言えるんだから楽ですよね。

    定額減税で宮沢が早々に「一年限り」と言い放ちましたが、要求側がその論点を外してなんとかやりたい政策を実現したとしても、財務省としては「財源がない」点の弱みは握ったままだから、即座にフタをしたということでしょう。
    マスコミがありがたがってその「ご神託」を垂れ流し、世間の期待値は萎んでしまい、定額減税1年限りが既成事実となってしまった。
    3党協議でも7兆円減収の根拠薄弱の資料を出した割には、その後に財源の議論をしていないように見えることと符合します。複数年度の提案をしても議論は成立しなかったのでは。

    国民民主がどうやって突破を図るかわかりませんが、どっちみち自民の執行部にやる気がないようだとなかなか厳しいでしょうね。自民は次の選挙で負ける可能性は高まりますがそれがわかる感度はなさそうですし。

    それはそれとして、ネットでは常識的な観点で、財務省がバカなことを言う度に「バカ」と言ってあげることは大事ですよね。ガンガンいきましょう。(笑)

    ダラダラと失礼しました。

  • 赤字国債出してるから余った分を即償還しなきゃいけない。だから赤字で税が余ってるわけじゃない。
    と言ってる人がいました。
    いや余らせとるやん。とは思ったのですがそも赤字国債のこと知らんなぁと思って軽く調べたら国債の発行が認められていない?とか...片手間に調べるのは時間ないと思って諦めましたがこれ、国債なしで経済成長ってできるんです?
    いわゆる「借金」だからってほんとに全部償還して返しちゃったら銀行券死ぬんじゃない?って思ったんですが、実際どうなるんでしょう?
    もうわけわからんけど社畜には調べる暇ないなあと諦めました

  • >公的債務負担圧縮のテクニック④経済成長させる。
    これは、財務省の権限を越えているのではないですかね。だから、財務省の発想から欠けている。
    本来は、予算編成・予算執行でも経済成長を意識すべきなのですが、それも見られない。
    財務省には、財政あって経済政策なし。
    経済政策は政治(国会)の仕事なのでは。
    その意味で、財務省は経済政策に口を出してはいけない。越権行為でしょう。

    • 経済成長に責任を負う任務付与か役所の設置が必要なのでしょうね。
      財務省のいいようにされている現状があるので、政治の不作為の問題と言えるとも思います。財務省の所業が免責されるわけではないですが。

      • 財務省の機能を分割してソレゾレ独立した庁にしてまわないと経済企画庁の二番煎じに終わりそーナンで、とりま社保徴税コミの歳入庁創設と内閣府主計局あたりを狙ってみんデスかい??
        知らんけど

      • 産業振興とかミクロ経済はわかっても、マクロ経済は政治家も抽象的過ぎて、票にならないだろうし、どんなもんですかね。

      • 次の省庁再編があるならターゲットになるんじゃないすかね。
        高市氏は総裁選で省庁再編を言ってましたが。

        石破氏?絶対ないね。

        • 省庁再編も必要だけど、最高裁判事に国民審査があるように、省庁の事務次官も国民審査の対象にすべきと思いますね。
          国民に罷免権を与えて欲しいです。

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