年収の壁を103万円から178万円に引き上げよ、とする国民民主党の主張に対し、「それはシステム的に不可能だ」、などと強く反発していた人たちがいました。たかが基礎控除を48万円から123万円に引き上げるのが「システム的に難しい」とも思えませんが、そのわりに、自公両党が「壁」を123万円に引き上げる(しかも基礎控除10万円、給与所得控除10万円)ことに対してそこまで批判が出ている雰囲気はありません。
「年収103万円の壁」を巡り、国民民主党が178万円への引き上げを求めていたことに関連し、自公側がこれを123万円への引き上げで妥結させようとしているらしい、とする話題は、『減税巡るショボすぎる自公案…国民に喧嘩売った財務省』でも取り上げたとおりです。
これについては当該記事でも述べたとおり、当ウェブサイトとしては、国民民主案と比べて自公案だと減税の規模が小さすぎ、景気浮揚効果もほとんどないのではないかと懸念しているのですが、これについてそう判断する具体的な根拠については、「数字で」既に示した通りでもあります。
ただ、本稿で補足的に触れておきたいのが、「基礎控除引き上げに反対していた者たち」の言い分です。
『否が応でもSNSと付き合わなければならない時代到来』でも紹介しましたが、著者自身がX(旧ツイッター)上でここ数ヵ月間、「減税絶対反対派」の人たちとディスカッション(?)を行った際の経緯を振り返っておくと、こんな具合です。
パターン①「借金は税金で返すべき」論者
(相手)「国の借金では税金で返さなきゃならない」
(新宿)「政府債務は60年償還ルールの範囲内で借換が可能だが?」
(相手)「借換ではダメ。必ず税金で返せなきゃならない。法律でそう決まっている」
(新宿)「法律がおかしかったら変えたら良いのでは?」
(相手)「そんなことをしたらただでさえ落ちている日本円という通貨の信認がさらに落ちる」
(新宿)「IMFのデータだと日本円は外貨準備組入れ額が増えているのだが?」
(相手)「あなたとは議論にならないのでブロックします」
パターン②「基礎控除引き上げは絶対反対」論者
(相手)「基礎控除を引き上げるためには複雑な制度を議論しなければならない」
(新宿)「基礎控除の引き上げは根拠法である所得税法と地方税法の2つの条文を書き換えたうえでいわゆる甲欄表を変えればお終いでは?」
(相手)「そんな単純なものではない、基礎控除を変えたらそれにともない社会保険料の計算にも影響が生じるし源泉徴収票のフォーマットも変えなきゃいけないし人材教育も必要」
(新宿)「社会保険料の料率は基礎控除と無関係だし源泉徴収票のフォーマットにも影響しないし人材教育に至っては意味不明」
(相手)「専門知識で殴るな!あなたとは議論にならないのでブロックします」
…。
本当に面白い人たちと言わざるを得ません(ただ、イーロン・マスク氏がCEOを務めている現在のX社は、Xのさまざまなシステムを興味深く作り変えており、たとえばブロックされていても相手のポストを見ることができるのでブロックしてもあまり意味はないのですが…)。
いずれにせよ、国民民主党が主張していた「基礎控除引き上げ」を巡って、「それは無理だ」、「システム的に難しい」などと主張した人々が、自公両党が進めようとしている基礎控除と給与所得控除を10万円ずつ引き上げるとする税制改正方針に対し、「それは無理だ」、「システム的に難しい」と批判しているフシはありません。
国民民主党の案だと改正するのは基礎控除だけですが、自公両党の案だと給与所得控除を引き上げるため、むしろシステム的にはこちらの方が複雑ではないでしょうか。
なんだかいろいろと謎と言わざるを得ない今日この頃だと思う次第です。
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仮にシステム改修等が必要だとしても、どうせ改修するならば少額ずつ刻みになどせず一度に大幅に変更した方が良い、と言えてしまいますね。いっそ次の半世紀も見据えて基礎控除だけで200万とかにすれば、改修とかしなくて済んじゃいますね。実際に事務上の手間が尋常ではなくかかり続けている消費税も廃止しますか。税率減ではシステム改修ガーですからね、廃止です。
いよいよ財源が足りない?とりあえず入国税やな。
まー実際何年か前に「基礎控除を10万円引き上げて、同時に給与所得控除を10万円引き下げ」ヤってますからネ
自営業者なんて基礎控除しか関係ナイし、社会保険料は基本的に各種控除後の金額を元に計算するダケやんけあほらし
178万とか200万とか実際の数字をいじるよりは最低給与などから計算する方式にした方が自動的に変動するから都度都度の議論や改正の手間が減るのでは?と思いました
取引先の学生アルバイト達は全員国民民主党支持らしい。
わかりやすい至近の金の話は強いですね
玉木氏が税調が実際に出したと思われる123万円のペーパーのスキャンをアップしていました。
https://x.com/tamakiyuichiro/status/1869393122033315870/photo/1
○目的 省略
○対応案 省略
○施行時期
令和7年分所得から適用
※ 源泉徴収義務者の事務負担、システム対応負担に配慮
事務負担とかシステム対応負担に配慮して実施可能だそうですよ。
自民税調会長の宮沢御大のお墨付きです。(笑)
定額減税ではそんな配慮してないでしょうに。
で、「財源は?」
(歪極まりない)軽減税率制度に比べたら事務手続きの負担なんてたかが知れていますよね。
「国民民主党が余計な主張をしたばっかりに、憲法改正にも匹敵する困難なシステム改修をやらされる破目になった。」とか言ってたりして....
一方、基礎控除と給与所得控除それぞれ10万円減の「年収の壁引き下げ」だったら、何も言わないかも。
財務省は物理的にどうこうされるまで変わらない気がして来ました。
所得控除を178万円にしたときに本当に税収がいくら減るのか、試算していただけないでしょうか。
政府の試算が稚拙だという指摘はよく目にするのですが、では本当は幾らの減収なのかという具体的数字は見たことがありません。
「自分でヤレば?」という返しにたどり着く『試算』に必要な基礎データは以下
「所得税納税者全員の徴税に係るデータ」
よーするに“全納税者の確定申告書の内容及びソレに類するデータ”が必要ですナ
国税庁なら持っとるでしょ
“個人特定”出来る項目は要りませんが、大枠の「納税者数は何人で税収総額はいくら」みたいなデータではダメ
極端なハナシ、テキトーに仮に納税者総数100人税収100万円だったとして、「1万円が100人」の場合と「1000円が99人と901000円が1人」の場合では控除額変動後の結果も変わるでショーから
財務省は真面目に試算する気が有れば出来るハズでっけど、冗談みたいなペラ紙1枚で済ませたのはヤル気が無いからで、民間で試算しようにも個別具体的な徴税金額データて…
まー仮に個人特定出来ない様「納税額順に呼び番号でも振った一覧表」でも出してるならドコゾのシンクタンクなりソレコソ国民民主党なりが提示しよるでな、きっと
そーゆー意味では『財務省は国民が税金についてまじめに考えることを阻害している』ちゅうコトデンナ
財務省の常識では、減税しても人々はそれを溜め込み世の中に流れないらしいので(このインフレで?嫌でも流出するでしょ?)
翻って財務省の役人の預貯金には外形課税が必要なのではないかという疑問が出てしまいます