テレビ局がこの先生きのこるためには、いっそのこと、アニメなどに特化してしまえば良いではないか―――。地上波でアニメが増えているとする趣旨の記事から、そんなことをふと思いつきました。そういえば、米系の投資ファンドが4年前、日本のテレビ局に対し「地上波の免許返上も検討せよ」と迫っていたことを思い出します。いっそのこと、テレビ局もアニメなどに特化し、コスト削減のために平日昼間は停波し、東京湾岸の空き地を買収してテーマパークをオープンするなどの方策はいかがでしょうか?
目次
劣化するテレビ局
「テレビ局がこの先生きのこるためには、いったい何が必要か」。
当ウェブサイトは普段から、テレビのことを新聞とともに「オールドメディア」呼ばわりしているため、一部のオールドメディア界隈の関係者からはずいぶんと嫌われている、と聞いたことがあります。
ちなみに当ウェブサイトでテレビを「オールドメディア」と呼ぶ理由はさまざまですが、その最たるものは、テレビ業界が「正確な情報を人々に送り届ける」という役割を、なかば放棄しているフシがあることです。これは、テレビを水道にたとえてみればよくわかります。
私たちは、上水道からは無色透明のきれいな水が出て来るものだと期待していますが、現在のテレビが垂れ流しているコンテンツは、「水道局の担当者のその日の気分に応じて、色がついていたり、味が付いていたりする水道水」のようなものではないかと思うのです。
テレビ局の劣化は、もはや隠せないのではないでしょうか。
ネットは情報の多様性+反論が可能
もちろん、最近話題のSNSにしたって、また、YouTubeなどの動画サイトにしたって、流れている情報は正確なものであるとは限りません。なかにはテレビ番組と遜色のない、いや、テレビ番組よりも酷い情報番組などが、動画配信サイトなどで流されていたりもします。
ただ、SNSや動画サイトの大きな長所は、情報が無限にあることと、誤った内容に対しては敢然と反論することが許されることにあります。
また、ネットの情報だと、情報の受け手側も、最初から「この情報が正しいのか」ということを慎重に吟味しながら判断しているフシがありますし、また、「俺たちの情報は絶対に正しい!」とでもいわんばかりのテレビの情報と異なり、ネットの情報は「情報の出し手」側も、さまざまな情報を証拠付きで流す傾向があるようです(※)。
(※もっとも、現実のところ、「情報の出し手」のクオリティもさまざまです。ウェブ評論やXなどを長年やっていると、よくぞここまでいい加減な情報を流すものだ、などと思ってしまうサイトやユーザーに出会うこともありますが、この点についてはいずれまた機会があれば別稿にて触れたいと思います。)
ネット利用時間が40代以下でテレビ、新聞、ラジオを下回る
いずれにせよ、このSNS/ネット全盛時代にあって、テレビはこのままジリジリと社会的影響力を喪失していくのではないか、というのが著者自身の見立てでもあります。
現実問題、総務省『情報通信白書』に掲載されたデータで見ても、若年層を中心に、テレビの視聴時間は減る一方です。
図表1に示した通り、2013年時点ではまだテレビ視聴時間はそれなりに多く、10代や20代を中心にネット利用時間とテレビ視聴時間はほぼ拮抗していたものの、30代以降だとまだまだテレビの方が圧倒的な優位にありました。
図表1 平日のメディア利用時間(分、2013年)
(【出所】総務省『情報通信白書』等を参考に作成)
ところが、2023年時点では図表2の通り、40代までのほぼ全年代で、ネット利用時間がテレビ(と新聞、ラジオを合わせた時間)を上回っており、50代でもネットがテレビ視聴時間をほんの少し上回ったことが示されています。
図表2 平日のメディア利用時間(分、2023年)
(【出所】総務省『情報通信白書』等を参考に作成)
すなわち、テレビはいまや完全に「高齢者の娯楽」であり、少なくとも若者からはほとんど相手にされていないことが示唆される、というわけです。
この点、なぜ若年層がテレビを見なくなったのかについては諸説ありますが、当ウェブサイトではこれまでさんざん議論して来たとおり、端的に言えば、ネットとテレビを比べ、「テレビがネットよりつまらなくなった」、あるいは「テレビがネットより有用性が落ちた」、ということではないかと思います。
報道バラエティ番組、ワイドショーなどといわれる情報番組などは、とりわけこうした「不正確な情報発信」で批判されているコンテンツであろうと考えられますが、想像するに、テレビ局の側としても年々番組制作予算が減るなかで、安い製作費で手っ取り早く視聴率が稼げるこれらの情報番組は「麻薬」のようなものなのでしょう。
それに、ワイドショーのような、「出演者がさまざまな話題に対し見解を述べていく」という形式のものであれば、最近だと地上波テレビだけでなく、インターネット上にも似たような「番組」が多く配信されるようになりつつあります。『虎ノ門ニュース』などがその典型例でしょう。
したがって、テレビ業界は数少ない収益源(?)である情報番組の分野でも、ネットに侵食されていく未来が視野に入っているわけです。
『オタク総研』によると23時台のアニメ枠が急増中らしい
ただ、どんな業界であっても、どこかに「活路」を見出すことはできます。
「テレビ業界がこの先生きのこる」ための活路もどこかにあるのではないでしょうか。
(※なお、「この先生きのこる」と書いていますが、読み方は「このせんせいきのこる」ではなく「このさきいきのこる」です、念のため。)
こうしたなかで、Yahoo!ニュースにこんな記事が配信されているのが目に付きました。
なぜ?民放各局で23時台の“アニメ枠”が急増中…テレ朝も来春新設で「ぬ~べ~」など放送、フジテレビも繰り上げ編成
―――2024/12/18 07:15付 Yahoo!ニュースより【オタク総研配信】
記事配信者欄には『オタク総研』、とあり、テレビ各局が23時代のアニメ枠に力を入れ始めた、とする話題です。
この点、著者自身、アニメには正直、あまり詳しくありません(世田谷区の平屋の豪邸にお住いの7人家族や埼玉県春日部市にお住いの4人家族、練馬区に居住する発達障害の児童と青狸あたりなら、なんとなく知見はありますが…)。
したがって、記事に出て来るアニメの具体的な名前を見ても、あまりイメージがつかない、というのが正直なところではあります。
ただ、テレビ局経営という観点からは、アニメはひとつのソリューションとなり得ます。
まず、多くの場合、アニメは組織的に制作しなければならないことが多いと考えられるため、個人クリエイターがオリジナルのアニメを制作して配信するには限界があります。
また、アニメの場合はそれなりの製作費がかかるものの、たとえば子供向けのアニメの場合、「玩具会社とタイアップしてグッズを作って販売する」、「映画化する」、「コンテンツをDVD化して再販する」などのかたちで二次展開が可能であるため、うまくやればそれなりに儲かります。
さらに、最近だと日本のアニメはマンガ、ゲームなどとともに世界各国から注目されており、コンテンツを外国に輸出するなどの活用も可能です。
もちろん、VOD(ビデオ・オンデマンド)などが最近、オリジナルのアニメを制作して配信し始めていたりもしますが、やはりアニメ制作では地上波・民放各局などに一日の長があることは間違いありません。
だからこそ、地上波テレビ局がアニメに力を入れるのは、自然な発想でもあるのでしょう。
いっそのこと、放送免許返上を検討しては?
このように考えていくと、テレビ局も結局、アニメやドラマ、あるいはスポーツ中継などのように、「テレビならでは」の強みが生かせるようなコンテンツで生きていくしかない、という、当然の結論が出てきます。
つまり、テレビ業界は報道が苦手なのですから、いっそのこと、報道からは撤退し、たとえば「アニメ専門チャンネル」、「ドラマ専門チャンネル」、「音楽専門チャンネル」といった具合に、コンテンツ型ビジネスに特化していく道を探るべきではないでしょうか。
このあたり、かつて『米系投資ファンド「日本の地上波テレビに将来性なし」』などでもしょうかいしたとおり、米国のアクティビスト・ファンドがかつて日本のテレビ局に対し、こんな趣旨の提案を突き付けたことを思い出します。
- 地上波免許の返上を検討せよ(多額の投資が求められるわりに収益性が低い)
- 親会社や関連会社などとの株式の持合関係を整理せよ
- 系列局を再編し、地上波放送設備投資を抑制せ世
- コンテンツビジネスに特化するために関連会社の映画会社をグループの中核に据えよ
…。
どれも、ごく当たり前のまっとうな主張です。
たとえば日本のテレビ局がアニメ専門チャンネルに向けて脱皮を図り、極端な話、将来的には放送免許自体を返上し、「日本のウォルト・ディズニー」を目指す、というのも賢明な選択肢かもしれません。
実際、練馬区の発達障害の小学生が21世紀の未来からやってきた狸型ロボから「ひみつどうぐ」(※不良品)を掴まされて酷い目に遭うという趣旨のギャグマンガは、毎年必ず映画化もされていますし、世代を越え、国境を越えて愛されていると聞きます。
また、今年ですでに21作目となった、(おもに)女性が変身して悪と戦うアニメは、おもに小学生女子(と一部中高年男性)からは大人気を博しているとされますし、春日部市の幼稚園児(クソガキ)を主役にしたアニメも、過去に何度も映画化されているそうです。
このように考えていくと、たとえば空き地が目立つ東京湾岸の土地を大々的に買収し、そこに大規模なテーマパークを建設して(※おりしも地下鉄も開業するようです)、そこを千葉県の某遊園地のような「聖地」にしてしまう、というのはひとつの選択肢かもしれません。
(※といっても、経営的にその設備投資に耐えられるのかどうかは知りませんが…。)
いずれにせよ、一種のメディアミックスとして、アニメ、ライダーなどのコンテンツを平日夕方から夜にかけ、あるいは土日祝に地上波で集中的に放送し、コスト削減のため、平日昼間はいっそのこと完全停波してしまえば良いのではないでしょうか。
こうした経営の転換が図れるならば、もしかしたらテレビもうまく生き残っていける…のかもしれません。
View Comments (19)
いっそのこと、テレビ局はネット配信に特化すれば。ネットなら、例え視聴者が録画していなくても、後から何回でも見直すことが出来ますし、視聴していなかった話題になった番組を、後から何度でも見直すことができます。テレビ番組は、そのネット番組に誘導するための宣伝と割り切って。(テレビ番組だと、24時間に1時間番組を24本しか放送できませんが、ネットなら、何本でも配信できます)
すみません。少し追加で。
テレビ番組は、たまたま、それを視聴した人に、周りの友人にSNSや口コミで、ネット配信番組を視聴するように拡散してもらえるための材料を割り切って。
最近、若い子に「昨日のTV番組面白かったね。」って言っても「いや~TV見てないので」という場面が増えました。
例えば「みぽりん亡くなったな~」って盛り上げているのはほぼ40歳代以上でした。
マスコミの記者は転職してYouTuberになればいいのでは?と思います。
かつてはゴールデンタイム帯に多くのアニメが放映されていました。
それが1枠消え1枠消え
現在はほぼ絶滅され朝や夕方
深夜でなければアニメは放送できなくなりました
詰まるところテレビ局のアニメ軽視です。
ところが映画の興行収入を見るにアニメが上位独占しています。
テレビ局の認識と視聴者の需要がネジ曲がっているのです。
やっと気がついてよりを戻そうとしていますが
もう遅い!
インターネットで多くの番組が見れる時代です。
世界的に有名なワンピースといった作品がテレビで見れない地域があります
ならもうネット配信しか期待できません。
これからはネット配信主になりテレビ配信が従として報道されるのではないでしょうか?
ワイドショーなら、過去に話題になったネタを使えないので再放送できませんが、アニメなら、再放送することができます。そして、ドラマと違ってアニメなら、設定を何時代にしても、かかる費用は同じです。
今後は、AIとCGで、アニメと実写との区別が困難になるのでは。
責めるというよりホメ殺しスタイルだし、代案提示されてるし、なので著者には好感ですわ。
儒教的に上から目線で威圧してマウントを取ろうとするのは、オールドメディアやオールド知識人の定番ですが、
「君たちはやればできる子なんだから」
と、優しく説明すれば、
「そ、そうかなあ~」
と、彼らも免許を返上して選択と集中に取り組むかもしれませんからね。(笑)
「アニメはコメ付きで観ないと」
テレビではなくネットでアニメ等の作品を視聴すると感想を書き込んだり他人のコメを読んだり、ソレを画面にリアルタイムに表示されるのを含めた一体感で楽しめる時代です。映画館で皆同時に笑ったりする臨場感に似ていますかね。
つまりは情報の双方向性や情報の集積によって本編以上の高密度な情報(感情的な意味も含めて)が瞬時に得られます。
そうでなくても視聴者同士の情報共有はネットを介して行うしかありません。
テレビ局が独自ち制作出来るのならまだしもネットとテレビで同じ作品が放送されたり、今では豊富な資金力でネットのほうがレベルの高い作品を作れたりするので、広告もろくに集められないテレビがアニメに注力するのも不可能でしょうね。
話がそれますが。YouTube が 視聴率首位になりそうです。
データが証明「YouTubeに食われる放送局」の実態
https://toyokeizai.net/articles/-/450243
日本の富が流出することと表裏一体なので、もやもや感があります。
かつては一般人参加の番組や、素人からアイドルを発掘する番組などテレビには夢がありました。いつから夢がなくなってつまらなくなったのでしょうか。
“夢”煽りが過ぎて裏が透けちまって“幻”とバレたあたり…??
知らんけど
今季は視たい作品が無いおじさん「今季は視たい作品が無い。」
アニメが人気コンテンツとして市民権を得ても、TVアニメは結局はジャンプ漫画等に乗っかって金をかけた部分が陽の部分ではあるものの、(今年悪い意味で話題になったドラマ同様)粗製乱造や原作改変で浪費を続けているのが陰の部分という感じで。週に追われて予算を削られてアジアの制作所に押されて、とまさにTV番組的短所も詰め込まれています。
先日、"AKIRA"がyoutubeで1週間無料配信され、1日経たずに100万再生を回っていました。早めに視終えてしまったので、最終的にどこまで伸びたかわかりませんが。1週間のうちに自由に(途切れても可)約2時間充てれば伝説的名作が無料で視聴できるたわけですが、はたしてTVでAKIRAが放送されたとして、同じ結果が出せたかどうか。というか、過去に放送はあったようですが、今ノーカットでゴールデンタイムに放送できるのかどうか。
結局はアニメコンテンツにしても活かし切れるのはネット(VOD)の方であり、TVコンテンツとしては強さはまだあるものの、"勝てる"わけではないなぁと。……規制と制約があるからこそ家族で安心して見られるというのはあるかな?
サブスク独占配信の映像コンテンツも増えてますし。ネットは権利関係の整理が必要なものの"youtuberとの同時視聴"といった楽しみ方も生まれています。ニコ動でコメントが画面に流れて共有感を出すというのから、さらに進んでいるわけです。独りで集中したかったらオフにすれば良いだけですしね。
テレビが生き残るのは、アニメではなく「洋画・邦画・ドラマ」かな。
バラエティはやめてほしい。
アメリカで「SYOUGUN」が話題になったのは本格的に俳優が取り組んだのが視聴者に指示されたからです。
テレビを活性化するには、役者を育てていくこと、広告料を上げていくことしかないです。
わざわざ行かなければならなかった映画館から茶の間で見られるテレビに移り、今はいつでも手元にあるスマホへという流れ。
テレビ局は設備をYouTuber に貸し出し(技術者付きで)貸しスタジオになる。
ラジオはどうなってる? あれぞオワコンか。最近はタクシー乗ってもラジオは聞こえてこない。
野外作業の時クマよけに使っています。ニュース(道路気象情報)や時報が流れるので番組内容は関係なしで重宝しています。